2025.05.22

自社ECのデータ分析・活用

自社ECのデータ分析・活用

消費者のオンラインシフトに伴い、ECサイトの利用が増加しています。需要に応えるべくECサイトを運営する小売業が増えている一方で、楽天市場やAmazonなどのECモールを利用しているユーザーが多く、自社ECを軌道に乗せられていない企業は多いかと思います。

本記事ではECの3つの課題と解決策、ECでのデータ分析・活用の具体例や成功事例、CDPによるデータ分析・活用について紹介します。

データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

自社ECの運営でデータ分析・活用の重要性が増している理由

ECを利用したビジネスにおいて、データ分析とその活用の重要性は年々高まっています。その背景には、顧客ニーズの多様化や競争環境の激化、テクノロジーの進化による大量データの取得が可能になったことなどが挙げられます。

こうした変化の中で、EC運用におけるデータ活用は、主に3つの領域に分類されます。

まず重要なのは、顧客価値の最大化です。膨大なアクセスログや購買履歴、カゴ落ちデータなどを活用することで、顧客一人ひとりのニーズをより正確に把握し、最適なタイミングと内容でアプローチすることが可能になります。その結果、リピート購入の促進や離脱防止といったLTV(顧客生涯価値)の向上が期待され、ECを利用した事業の成長を支える土台となります。

2つ目に挙げられるのが、事業運営の最適化です。商品動向や在庫状況、配送状況といった業務データを分析し、日々のオペレーションに反映させることで、機会損失や過剰在庫を抑制可能です。加えて、配送ルートなどにもデータを活用することで、業務効率の向上だけでなく、配送スピードや正確性の向上による顧客体験の改善にも繋がります。

3つ目に、経営判断の高度化が挙げられます。売上・利益・販促効果・商品回転率などのKPIを統合的に把握することで、現場レベルのPDCAだけでなく、経営層による中長期的な意思決定を支援する役割も果たします。

ECを利用する現場では既に多くのシステムが導入され、個別にデータが蓄積されているのが一般的です。今後、それらの莫大なデータを統合し、横断的に分析・活用できるかどうかが、競合他社との明確な差別化要因となっていきます。

このような背景を踏まえ、本記事ではECを利用する企業のマーケティング領域に焦点を置き、顧客データをどのように分析・活用していくかを解説します。

自社ECの運営における3つの課題

ECを運営する企業が抱える主な課題は3つあります。

  • 流入ユーザーが増えない
  • 見込み顧客を取りこぼしている
  • リピーターが増えない

流入ユーザーが増えない

BtoCのEC市場が伸び続けている一方で、流入ユーザーが増えないことに課題がある企業が多いです。

楽天市場やAmazonなどのモール型ECとは異なり、自社ECにはプラットフォーム自体に集客力があるわけではありません。そのため、ECの存在をどれだけ認知してもらい、訪問に繋げられるかは、自社の集客施策に大きく左右されます。また、継続的な流入を得るためには、コンテンツ設計の甘さ、検索意図とずれた情報発信、ブランド認知の弱さ、施策の分断などが障壁になることもあります。

このような背景を踏まえると、単にアクセス数を追うだけでは不十分です。誰に・何を・いつ・どのような文脈で届けるのかを見直し、流入を確実に増やしていく戦略的な設計が、自社ECの成長には欠かせません。

見込み顧客を取りこぼしている

自社ECに流入したユーザーが、必ずしも購入に至るとは限りません。実際には、商品に興味を示している見込み顧客が、購入手続きに入る前やその途中で離脱してしまうケースは少なくありません。

株式会社イー・エージェンシーの調査によると、カートに商品を入れたものの購入せずに離脱してしまう、いわゆる「カゴ落ち」ユーザーの割合は、2024年において平均約63.3%に達しています。このことから、商品の購入意思を示した顧客の一定数が、何らかの理由で途中で購入を断念していることが分かります。

購入の意思はありながらも「後で購入しよう」と考えて一時的に離脱し、そのまま購買に至らないケースは多いです。こうした行動は一見すると自然なように感じますが、企業側からは原因が可視化しづらく、対策が後手になりがちです。また、入力フォームが煩雑だったり、購入直前にアカウントの作成が求められたりなど、手続き面でのストレスによって購入を断念するパターンも、見込み顧客の取りこぼしケースとしてよく見られます。

このように、顧客が途中で購買をやめてしまうパターンはさまざまです。定量的な分析をもとにユーザーの離脱行動の理由や不満を把握できなければ、場当たり的な施策に終始してしまう可能性も否定できません。

リピーターが増えない

長期的な売上を確保するためには、定期的に自社のECを訪れて購入してくれるリピーターの獲得が必須です。

新規顧客の獲得にはコストがかかる一方で、既存顧客による再購入は比較的低コストで収益に繋がります。そのため、リピーターを増やすことは、EC運営におけるLTV最大化の観点からも重要なテーマと言えます。しかし実際には、自社ECでリピーターを安定的に増やすのは簡単ではありません。

リピーターが増えない大きな要因の1つに、購入後のフォローやコミュニケーションの不足が挙げられます。例えば、商品購入後に何の接点もなければ、顧客の記憶からブランドの存在は徐々に薄れていきます。たとえ商品に満足していても、再購入のきっかけがなければ、そのまま他社に流れてしまうことは少なくありません。

特に楽天市場やAmazonといった大手ECモールは、すでにアカウントを保有しているユーザーが多く、購入までの手間が少ないうえに、レビューや価格、配送条件などを一度に比較できる仕組みが整っています。そのため、操作に慣れたユーザーにとっては非常にスムーズで、心理的ハードルの低い購買体験が提供されています。こうした中で、明確な再訪の動機や自社ECで購入するメリットを提示できなければ、ユーザーはモール型ECへと流れてしまうのが実情です。

リピーターを獲得するには「またこのサイトで買いたい」と思ってもらえるような商品体験・購入体験の設計と、購入後にも継続的に接点を持ち続けるコミュニケーションの仕組みが必要です。

自社ECの運営における課題の解決策

紹介した3つの課題を解決するためには、自社で蓄積されたデータが1つに統合されていることが重要です。

ECを運営している企業がMAやCRMなどさまざまなマーケティングツールを導入した結果、顧客のデータを別々の場所で収集・管理することになり、バラバラになってしまう「データのサイロ化」が起きているケースが多々あります。

data silos

関連:データのサイロ化とは?2つの原因と解決策、サイロ化を解消するツールを紹介

データのサイロ化が起きていると、断片的なデータをもとにしか顧客を理解できないため正しい顧客理解に繋がらず、施策も的外れになる可能性が高まります。

オンライン・オフライン問わず、さまざまなチャネル・ツールで収集したデータを収集・統合することで、顧客を多面的に理解できるようになります。また、深い顧客理解をもとに戦略を設計することで、より顧客視点での施策を実行可能です。

顧客データの統合によって期待できる変化について、詳しくは下記の無料動画をご覧ください。

無料動画:データ統合で何が変わる?顧客体験を高める顧客データ統合の基礎

データ統合で何が変わる?顧客体験を高める顧客データ統合の基礎

そのうえで、自社でECを運営する企業が抱える3つの課題の具体的な解決策を紹介します。

流入ユーザーを増やすための施策

流入ユーザーを増やすには、ユーザーがECにたどり着くまでのプロセスを丁寧に設計し、それぞれのフェーズに応じた施策を実行する必要があります。ここでは、以下の3つのフェーズに分けて、具体的な施策の例を紹介します。

  • 認知を広げる
  • 興味関心の喚起
  • ECへの訪問の誘導・促進

認知を広げる

自社ECの集客を強化するには、まず商品やブランドをまだ知らない層を対象に、ECの存在を認知してもらう接点を設計する必要があります。この段階では、商品の魅力やベネフィットを伝える前に、まずECの存在を知ってもらう、記憶に残してもらうことが主な目的です。

具体的には、接触機会の最大化を軸に、ディスプレイ広告やSNS広告などのリーチ系チャネルを利用することが多いです。また、SNS上でのキャンペーンやUGC(ユーザー生成コンテンツ)など、ユーザー自身の投稿を促す仕掛けも、自然な形での認知拡大に繋がります。

こうした施策の効果を高めるには、リーチや初回接触の質を意識することが重要です。インプレッション数や広告のリーチ数に加え、新規訪問者の割合・ブランド名・商品名の検索数の変化・広告想起率などを分析し、訴求軸ごとの成果を比較・改善していきましょう。

興味関心の喚起

商品やブランドの存在は認知しているものの、なんとなく知っているだけの状態にある顧客には、関心を深めるための導線設計が必要です。このフェーズでは「自分にも関係があるかもしれない」と感じさせ、web検索や自社ECへの訪問といった行動に繋げることが重要です。

例えば「朝の準備に時間がかかる方へ」といった具体的な課題や生活シーンを切り口にしたバナー広告や短尺動画を配信することで、受動的なユーザーの関心を引き出すことができます。また、SNSを利用して、商品カテゴリにまつわるあるあるネタや、共感を喚起するストーリー設計のコンテンツを通じて、ユーザーの自然な行動を促すことが可能です。

すでにブランドサイトやキャンペーンページを訪問済みのユーザーに対しては、リマーケティング広告による再接触も有効です。過去の閲覧コンテンツや流入経路に応じて、ユーザーごとに広告を出し分けることで、関心を一段階深めるきっかけを提供できます。あわせて、ブランドサイトから自社ECへのスムーズな導線を意識したLP設計やリンク配置も効果を期待できます。

ECへの訪問の誘導・促進

自社のブランドや商品に関心を持ち始めているユーザーに対しては、ECを訪れる理由を明確に伝えることが重要です。

例えば、オンライン限定商品の存在や、ECでのみ提供される特典を訴求することで、EC訪問の動機付けが可能となります。こうした情報は、SNSやブランドサイト、アプリなどの接点において、簡潔かつ明確に伝えることが効果的です。

また、実店舗で購入経験のあるユーザーには、ECならではの利便性を訴求することが有効です。例えば、レビューや評価の確認、在庫状況・再入荷通知の閲覧など、ECの特性を活かした訴求によって、利用を促すことができます。

チャネルごとの役割を明確にし、それぞれの利点を補完し合うようなコミュニケーション設計を行うことで、ユーザーにとって最適な購買体験を提供できます。

関連:タッチポイント(顧客接点)とは?チャネルとの違いや強化方法、増やす際の注意点

見込み顧客の成約率を上げるための施策

自社ECへの流入を強化できても、そこから購買行動に至らずに離脱してしまえば、一向に売上は伸びません。ECに訪れた見込み顧客の成約率を上げるための施策を、顧客が購買に至るまでの導線をもとに以下の5つの段階に分けて紹介します。

  • カテゴリー・一覧ページを閲覧している段階
  • 特定の商品ページを閲覧している段階
  • 商品をカートに入れた段階
  • 決済手続きの段階
  • 一度離脱してしまった段階

カテゴリー・一覧ページを閲覧している段階

ECに流入してから、カテゴリーや一覧ページを閲覧している状態のユーザーは、まだ購入を前提とした検討段階には至っていないケースが大半です。特に初めてECを訪れたユーザーの場合、どこに何があるのかわからない、自分に合う商品が見つけられないといった理由で、そのまま離脱してしまうことも少なくありません。

この段階では「気になる商品が見つかる」という体験をいかに早く提供できるかが重要です。例えば、一覧ページの上部やサイドエリアに「初めての方へ」「目的別で探す」といったガイドの役割を果たすナビゲーションを設置することで、ユーザーにとって次にどう行動すればよいかが明確になり、回遊の促進に繋がります。

また、ユーザーが利用しやすいUI・UXを整えることも有効です。例えば、検索機能の絞り込み条件の初期値をwebの行動データに合わせて調整したり、初回訪問者向けの案内ポップアップやレコメンド表示を導入したりするなど、導線の整備とナビゲーションの分かりやすさを高める設計が求められます。

こうした導線設計の有効性を把握するには、一覧ページから商品詳細ページへの遷移率をセグメント別に比較・分析することが効果的です。初回訪問ユーザーとリピーターの行動傾向を比較することで、どの導線がどのユーザー層に効果的かを把握でき、ナビゲーションやレコメンド設計の改善に活かすことができます。

これらの工夫により、ユーザーは「とりあえず見てみよう」「この商品、ちょっと気になるかも」といった心理状態になり、特定の商品ページを閲覧するといった商品を検討するフェーズにスムーズに移行できます。

関連:セグメンテーションとは?2つの観点での活用方法と成功事例

特定の商品ページを閲覧している段階

特定の商品ページを閲覧しているユーザーは、すでにその商品に関心を持っており、購入を検討する段階に入っています。そのため、ユーザーの不安を取り除き「自分に合っていそう」「買っても後悔しなさそう」と感じてもらえるような情報設計が重要です。

例えば、商品の仕様や特長、サイズや使い方といった基本情報に加え、実際の利用シーンをイメージできる写真や説明、ユーザーのレビューやスタッフからのコメントなどを充実させることで、購入後の使用イメージが具体的に湧きやすくなります。

また、購入を迷っているユーザーをサポートする仕組みを導入することも有効です。チャット接客や自動応答、選び方ガイド、FAQの表示など、判断を手助けするような情報への導線を整えることで、不安の解消と購入の後押しに繋がります。

この段階では、商品ページからカート投入までの遷移率や、ページ滞在時間・スクロール率などの行動データを分析することで、改善のヒントが得られます。例えば、コスメブランドにおいて色味選びの段階で離脱が多い場合は、ユーザーが自分に合うカラーを判断できていない可能性があります。その場合は、肌色タイプ別のおすすめカラー例や、実際の使用者によるビフォーアフターの画像、肌質や好みに応じたレコメンドなどを追加することで、不安の軽減に繋がります。

商品をカートに入れた段階

商品をカートに入れたユーザーは、購入意欲が高い状態にあるものの、そのまま決済に進まず離脱してしまう可能性もあります。この段階では、今すぐ購入する理由が明確でない、操作に迷う、手続きが面倒に感じるといった、心理的・操作的な障壁を取り除くことがポイントです。

例えば「あと○時間で本日の発送に間に合います」や「本日23:59までの限定割引」といった、今購入することで得られる具体的なメリットをカート画面に表示することで、今買うべき理由を具体的に伝えることができます。関連商品のレコメンドやクーポンコードの案内、支払い方法の明示なども、離脱防止に効果的です。

また、カート画面における情報の配置や見せ方も、ユーザー行動に大きく影響します。クーポン欄や送料、在庫状況など、視線が集まりやすい要素の配置をABテストで検証することで、どの要素がボトルネックになっているかを定量的に把握することが可能です。

カートから決済手続きへとスムーズに誘導するためには、購入の動機付けと安心して操作できる導線設計の両立が不可欠です。ユーザーの行動データに基づいたページ設計と、最適なタイミングでの訴求によって、購入前の最後の段階である決済手続きへの移行率を高めていきましょう。

決済手続きの段階

決済の手続き画面に移行した購入意欲の高いユーザーも、決済手続きの煩雑さや不安要素によって離脱してしまうケースがあります。

この段階では、スムーズかつストレスなく購入を完了できる体験設計が重要です。たとえば、入力項目を必要最低限に絞ったうえで、郵便番号による住所の自動補完や、クレジットカードのスキャン入力、会員登録不要で使えるゲスト購入機能などを導入することで、入力負担を大きく軽減できます。

また、購入完了までのステップ数が多い場合には、現在のステップと残りの工程を視覚的に示す進捗バーなどが有効です。ユーザーに決済完了までの道のりを明確に示すことで、途中離脱を防ぎやすくなります。加えて、配送方法や支払い手段が限られていると、希望条件に合わず離脱される恐れがあるため、多様な選択肢を用意しておくことも欠かせません。

購入完了が目前に迫った段階での離脱は、大きな機会損失に繋がります。心理的・操作的な障壁を丁寧に取り除き、ユーザーが安心して決済完了まで進める環境を整えることが、CVRの最大化には欠かせません。

一度離脱してしまった段階

商品をカートに入れた、あるいは商品ページを詳しく閲覧したにもかかわらず、何らかの理由で一度離脱してしまったユーザーに再度購入を促すことは、ECにおける成約率改善の重要なポイントです。

このフェーズでは、ユーザーが「関心はあったが、購買を途中で中断された」状態にあることを前提に、再訪のきっかけを設計する必要があります。例えば、ログイン済みのユーザーやメールアドレスを取得しているユーザーに対しては、カート情報を活用したリマインドメールを送ったり、アプリで色違いのアイテムの入荷を通知することで、再訪・再検討を促すことが可能です。

メールアドレスを取得していないユーザーに対しては、リマーケティング広告を活用し、閲覧履歴やカート情報をもとに外部のwebサイトやSNS上で再訪のきっかけを提供するといったアプローチが有効です。また、離脱直前に表示されるポップアップも効果的です。次回使えるクーポンや閲覧中の商品を保存する旨の案内を表示することで、再訪時のメリットを印象付けることができます。

施策の効果を測定する際には、リマインドメールの開封率・クリック率・CV率、カート保持率、再訪ユーザーの再購入率などを指標とし、どの訴求やタイミングが再訪に最も貢献しているかを分析することが重要です。

関連:デジタルマーケティングの効果測定の方法と指標、分析に役立つツール

リピーターを増やすための施策

リピーターを増やすことで、より少ないコストで長期的な売上を確保できるようになります。商品を購入してからの顧客の状態を下記の4つに分けたうえで、それぞれの段階で有効な施策の例を紹介します。

  • 初めて商品を購入した直後の段階
  • 商品の初回使用の段階
  • 再購入を検討している段階
  • 再購入が完了した段階

初めて商品を購入した直後の段階

この段階では「ちゃんと購入できているか」「きちんと届くのか」といった不安を解消し、安心感を提供することが最優先です。購入完了メールや発送予定日の案内、配送ステータスの共有など、基本的なフォローを丁寧に行うことで、顧客満足度を損なうリスクを最小限に抑えることができます。

また、商品が届くまでの期間を活用し、利用前の期待感を高める情報提供も有効です。例えば、ECで食品を扱っている企業の場合、届いたその日にすぐ使える時短アレンジレシピや、商品が長持ちする保存のコツといったコンテンツをメールなどで事前に配信することで、顧客は到着前から購入商品の利用イメージを膨らませることができます。

分析の観点では、購入後に配信したフォローメールの開封率やクリック率から、どの情報が顧客にとって有益だったかを把握できます。さらに、商品到着までの期間におけるサイトやアプリへの再訪率、初回購入から一定期間内の再購入率を追うことで、初期体験がLTVに与える影響を測ることが可能です。

商品の初回使用の段階

商品到着後、顧客が実際に使い始めるタイミングは、体験価値を定着させ、リピート購入やブランドへの信頼形成を促進するうえで非常に重要です。この段階では、使用時の不明点や戸惑いを軽減するサポートが求められます。

例えば、購入後数日を目安に、正しい使い方や利用上の注意、よくある質問への回答をまとめたフォローアップメールを配信することで、使用時の不安を減らし、満足感を高めることができます。アパレルであれば着こなし例、家電であれば設定方法や初期トラブルへの対処法など、商材ごとの利用をサポートするコンテンツが効果的です。

また、使用感に関する簡単なアンケートを通じてフィードバックを収集することで、顧客の声を把握しつつ自然な形で商品との接点を維持できます。アンケート結果は、ユーザーの満足度や課題の可視化に役立ち、CX(顧客体験)の向上に向けた貴重なインサイトとなります。

アンケートの作成や結果の分析、施策への活用方法について、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。そのまま使えるアンケートの設問例も紹介しています。

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再購入を検討している段階

このフェーズでは、顧客の利用サイクルに合わせたアプローチと、再購入の動機付けとなる情報提供がポイントになります。

例えば、日用品や消耗品など一定の使用サイクルが想定される商品では「前回のご購入から◯日が経過しました。そろそろ残量が気になる頃かもしれません」といったリマインドメールを配信することで、再購入を促すことができます。

ここで重要なのは、商品の使用ペースをあらかじめ想定し、適切なタイミングでアプローチを行うことです。初回購入から再購入までの平均日数・商品カテゴリごとの再購入率・リマインド配信の有無によるCVRの違い・EC訪問後の再購入完了率といった指標を活用することで、訴求タイミングを検証できます。

実際にECを訪れて再購入を検討しているユーザーに対しては、より踏み込んだ導線設計が求められます。例えば、前回購入した商品をワンクリックで再注文できる仕組みや購入履歴に基づくレコメンドの表示、前回と同じ配送先・支払い方法の自動入力など、迷わず・手間なく再購入できるUI・UXの設計が効果的です。

このように「また買いたい」と思っている顧客を逃さず、スムーズに再購入へと導くためには、気がかりや面倒を先回りして解消する設計と、顧客視点に立った情報設計が欠かせません。

再購入が完了した段階

一度再購入に至った顧客は、すでに商品やブランドに一定の信頼を寄せています。この段階では「また買ってよかった」「これからも使い続けたい」と感じてもらえる体験を提供し、継続的な関係を築くことが求められます。

具体的な施策として効果的なのが、購入回数に応じたアプローチです。例えば、2回目以降の購入で次回使える割引クーポンを発行する、3回目の購入で記念品やサンプルを同梱する、5回目の購入で限定商品の優先案内を行うといったように、継続的な購買に対するインセンティブを段階的に提供することで、買い続ける価値を実感してもらう仕組みを構築できます。

こうした優遇施策は、単なる特典の提供にとどまらず「選ばれている顧客」としての満足感や帰属意識を育むことで、ブランドへの愛着やエンゲージメントの深化にも繋がります。

分析の観点では、購入回数別のLTV、ポイントの利用状況、レビュー投稿率などの指標をもとに、顧客ロイヤルティの向上を定量的に把握することが有効です。これにより、どのタイミングでどのような施策を講じるべきかを見極めやすくなり、施策の精度向上も期待できます。

このように、再購入を完了した顧客に対しては、体験価値を積み重ねながら関係性を深めていくことで、ファン化やロイヤルティの向上を促し、継続的な売上の柱として育成していくことが重要です。

顧客体験を向上し、選ばれ続ける企業となるためのコミュニケーション再構築について、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。

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自社ECのデータ分析・活用事例

西松屋

子育て世代向けの商品を展開する株式会社西松屋チェーンの事例を紹介します。

西松屋は、長年にわたり楽天市場やAmazonといったモール型ECを中心に販売してきました。しかし、モール依存が進むことで、販促費の高騰や顧客データが取得できないといった課題が顕在化します。また、自社のブランドとしての世界観やコミュニケーションを十分に表現しにくいという制約もあり、顧客との関係性の深まりが限定的になっていました。

こうした状況を打破するために、自社ECサイトを立ち上げ、1st Party Dataの蓄積と活用に本格的に着手しました。具体的には、ユーザーの購買履歴・閲覧履歴・属性情報などをもとに、子どもの月齢に合わせた商品レコメンドや育児情報の配信を実施します。また、LINEや公式アプリを利用し、セグメントごとの最適な情報発信を行うなど、ユーザーの成長フェーズに寄り添ったOne to Oneマーケティングを展開しました。

その結果、LINE経由での再訪・再購入が大きく伸び、自社ECの継続利用率も改善しました。顧客ごとのニーズに合わせた情報提供が可能になったことで、モールと自社ECを併用する顧客も増え、チャネルの役割分担と最適化も進んでいます。

ケイシイシイ

北海道・小樽の洋菓子ブランド「ルタオ」を販売している株式会社ケイシイシイの事例を紹介します。

ケイシイシイはECチャネルでの売上を伸ばす中で、主に2つの課題を抱えていました。1つは、購入直前での離脱、いわゆる「カゴ落ち」や「決済直前離脱」への対応です。もう1つは、既存顧客へのアプローチが画一的で、継続的な関係構築や再購入の促進が十分にできていないことです。

これらの課題を解決するために、ユーザーがECサイト上で離脱しそうなタイミングを検知し、ポップアップやチャットボットでリアルタイムに声をかけるweb接客施策を実行しました。また、LTVの高い既存顧客に対しては、購入履歴や嗜好に応じて最適化されたパーソナライズDMを配信する仕組みを構築しました。

その結果、web接客によるCVRは大きく改善し、パーソナライズDMの施策ではレスポンス率が約2倍に向上するなど、売上にも明確なインパクトが表れました。

アダストリア

30以上のブランドが集まる公式webサイト「.st(ドットエスティ)」を運営している株式会社アダストリアの事例を紹介します。

アダストリアはリアル店舗を中心としながらデジタル施策にも注力しており「ECサイトは買うだけの場所ではない」という認識のもとで自社ECサイトも運営しています。顧客が自社ECサイトで商品を購入しレビューまで行うと顧客のデータが溜まっていくため、そのデータを活用して顧客体験の向上に努めています。

実際にレビューコメントを分析し、その傾向をもとに商品を開発してヒット商品が生まれた事例も生まれています。また、実店舗の陳列商品を選ぶ際に自社ECのデータを活用するなど、データを活用し顧客体験の向上を目指すさまざまな取り組みが行われています。

自社ECを運営する企業がアプローチを成功させるCDPでのデータ活用

ECを利用する企業で起こりがちなデータのサイロ化を解消し、それぞれの課題に対する対策を進めるには、データを一元管理するインフラを整える必要がありますが、CDPの導入が1つの選択肢になります。

CDPとは「カスタマー データ プラットフォーム:Customer Data Platform」の略称で、企業が持つ顧客データを「実在する個人」に紐付けて統合・管理し、顧客一人ひとりの正確な理解を可能にするプラットフォームです。顧客一人ひとりに合わせた体験を提供できるよう、さまざまな外部ツールに連携することができます。

integralcore integration

関連:CDPとは?機能や部門・業界別の活用例、今後の動向などをまとめて解説

ECを利用している企業がCDPを導入することで可能になること・メリットを3つ紹介します。

  • 顧客データを一元管理
  • 顧客データの分析
  • 顧客との適切なコミュニケーション

顧客データを一元管理

CDPは、名前やメールアドレスなどの個人情報、webの行動データ、EC・実店舗の購入履歴など、顧客に関するあらゆるデータを収集し「実在する個人」にデータを紐付けて一元管理できます。

ECを利用している企業の場合、1人の顧客に対してECサイトと実店舗で別々のIDを振り、別人として管理されているケースが多々あります。CDPを導入することで、IDを1つにしてECサイトと実店舗での顧客データを統合し、1人の顧客として扱えるようになります。

その結果、分析精度が高まり顧客理解が深まるだけでなく、オンラインとオフラインを融合させた施策の実施も可能になります。

例えば、実店舗で特定商品を購入した顧客に対して、EC上で関連アイテムのクーポンを配信するといった、チャネルをまたいだクロスセル施策も可能です。

顧客データの分析

CDPは顧客データを一元管理できるだけでなく、BIツールなどの分析ツールとも連携可能です。分析に必要なデータの整形や統合処理をCDP側であらかじめ行い、分析ツールにスムーズに受け渡すことで、作業の効率化と分析スピードの向上が期待できます。

例えば、CDPは以下のようなツール・システムと連携できます。

ツール名 BI / 分析ツール
ツールの例 ・Tableau
・Looker Studio(旧Google Data Portal)
・Yellowfin
・Amazon QuickSight
・DOMO
・Redash など

各ツールで収集したデータを分析するためには、データを整形・統合し、分析に適した形に加工する必要があります。こうした作業は通常、専門的な知識や時間が求められ、運用コストが課題となります。

しかし、CDPはあらかじめ定義した形で必要なデータをスムーズに分析ツールへ連携できるため、データ分析・活用のハードルを大きく下げることが可能です。

例えば、チャネル別のECへの流入数とCV数の相関などを可視化し、マーケティング戦略に反映させることができます。

CDPと分析ツールの連携で具体的にどのような分析・施策が行えるようになるのかについて、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。事例や分析・施策の例などを紹介しています。

無料資料:CDPによる顧客理解と分析|BI連携でひろがるデータの可視化

CDPによる顧客理解と分析|BI連携でひろがるデータの可視化

顧客の状態に合わせたコミュニケーション

CDPは施策を行うツール(MA・プッシュ通知・web接客ツールなど)に連携でき、分析した結果をもとに顧客に対して適切にアプローチしていくことが可能です。

例えば、CDPは以下のようなツール・システムと連携することが可能です。

ツール名 MA / メール配信 / その他施策
ツールの例 ・Marketo
・Marketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot)
・HubSpot
・Synergy!
・Karte
・DLPO
・LINE
・Repro
・WEBCAS email など

CDPは、分析結果や保有データをもとにセグメントを作成でき、そのセグメント情報をコミュニケーションツールと連携することで、顧客一人ひとりへの最適な情報提供を可能にします。

CDPについて、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。CDPの機能や役割、ほかのツールとの違いなど、導入前に知っておくべき情報をまとめて紹介しています。

無料資料:CDP検討マニュアル|CDPとは?DMP・CRM・DWH・MAとの違い、導入のタイミング

CDP検討マニュアル|CDPとは?DMP・CRM・DWH・MAとの違い、導入のタイミング

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