近年、市場の変化によって「市場シェア」を拡大する戦略から「顧客シェア」を高めていく戦略に転換している企業が増えています。それに伴い、一人ひとり異なるアプローチを行いながら、顧客と良い関係を構築をする「One to Oneマーケティング」が注目されています。
本記事では、One to Oneマーケティングとはなにか、マスマーケティングやパーソナライズとの違い、具体的な手法・事例や実践事例、One to Oneマーケティングを成功させるポイントについて紹介します。
One to Oneマーケティングの概要についてすでに理解されている方は、こちらをクリックしてください。具体的な手法、事例について紹介している部分までスキップできます。
One to Oneマーケティングとは
One to Oneマーケティングとは、顧客に対して必要な情報を的確に届けることで、顧客と企業の間に良好な関係性を築き、顧客のロイヤルティを高め、LTVを最大化することを目的としているマーケティング活動です。
アメリカで1993年に出版されたマーケティングコンサルタントのドン・ペパーズとマーサ・ロジャーズの共著 「The One to One Future: Building Relationships One Customer at a Time. Doubleday Business.」(邦題「One to Oneマーケティング - 顧客リレーションシップ戦略」)の中で提唱されました。
もともとOne to Oneマーケティングは、既存顧客と良好な関係を築き、長期的なリピーターになってもらい、企業の利益を最大化することを目的とした「リレーションシップマーケティング」の考え方の上に成り立っています。
One to Oneマーケティングとマスマーケティング
One to Oneマーケティングの対義語として挙げられるのが、マスマーケティングです。
マスマーケティングとは、テレビCM、新聞、雑誌のように特定のチャネルの集団を対象に、同一のアプローチをとることで全体的な利益拡大を目的とした手法です。
One to Oneマーケティングは顧客に必要な情報を届けて満足度を高め、自社の商品を自ら選んでもらう状態を作ることを目指しますが、マスマーケティングは商品を多くの人に知ってもらうことを目指す活動のため、マーケティング活動の目的が異なります。
One to Oneマーケティングとパーソナライズの違い
One to Oneマーケティングと似た言葉にパーソナライズがあります。
パーソナライズは、顧客の属性や購買・行動履歴に基づいて最適な情報を提供する手法であり、One to Oneマーケティングはパーソナライズされた施策を実行するための全体設計、といった意味合いの違いがあります。
パーソナライズを行う際に、顧客起点でパーソナライズを実施できていないケースやCVに注視したパーソナライズを行った結果、顧客にとってよくないコミュニケーションを行ってしまうケースも多くあります。したがって、One to Oneマーケティングの顧客理解・体験の向上のためのシナリオ設計などに基づいて、パーソナライズの施策を行うことが必要です。
関連:パーソナライズとは?BtoB / BtoCでの施策例や実現に必要な4つのデータと注意点
One to Oneマーケティングの重要性が増した背景
One to Oneマーケティングが重要視されるようになった理由には、主に以下の2点が挙げられます。
顧客シェア拡大戦略への移行
1つ目が、顧客シェア拡大戦略への移行です。
経済活動が活発だった時代は、いかに市場シェアを拡大するかが、企業にとって至上命題でした。そのため、ある程度の集団を対象にアプローチを行うマスマーケティング施策が主流でした。
現在は、人口減少などによって、経済活動が縮小傾向にあるため、マスマーケティングのような「市場シェア」を拡大する戦略から、顧客の自社への支出の割合を高める「顧客シェア」を高めていく戦略へと転換したため、One to Oneマーケティングが注目されるようになりました。
デジタル化の進行による活用可能なデータの増大
2つ目が、デジタル化の進行による活用可能なデータの増大による影響です。
One to Oneマーケティングの概念は30年以上前から提唱されていましたが、昨今のデジタルやIT技術が進化したことにより、顧客の情報は以前よりも収集しやすくなり、膨大なデータを解析してカテゴライズを行うことができるようになりました。
これらの技術を用いることで、何万人、何百万人という顧客に対しても、一人ひとり異なるアプローチができるようになったため、One to Oneマーケティングに取り組む企業が増えています。
One to Oneマーケティングの特徴・メリット
One to Oneマーケティングの代表的な特徴・メリットを2つ紹介します。
顧客との信頼関係を構築できる
企業側から顧客へと一方的に発信する情報は、受け取る側のニーズによっては有益な情報にも不要な情報にもなり得ます。具体例として、実店舗とECサイトを運営している企業で、店舗で購入した商品をECサイト上でもおすすめしてしまうケースなどが挙げられます。そのような顧客にとって望まないコミュニケーションをとってしまうと、顧客と信頼関係を築けず、顧客離れに繋がる恐れがあります。
一方、One to Oneマーケティングに基づいたアプローチは、顧客にとって有益な情報を提供することにより、企業に対する信頼感や愛着心を育て、顧客との良好な関係構築に繋がります。
収益向上に繋がる
One to Oneマーケティングは、顧客の行動履歴や購買履歴をもとに分析し、それぞれの顧客に最適なタイミングで適切なアプローチができるため、より購買に繋がりやすい特徴があります。
例えば、商品を定期的に購入している顧客と、一度商品を購入してからしばらく購入していない顧客に同じ内容の購買促進メールを送信しても、それぞれの顧客に最適なアプローチができているとはいえず、収益性が高い施策とは言えません。
定期的な購買客には、会員ランクのステップアップに関するメールを送信し新たな購買を促進することで、同一内容のメールを送るよりも収益が見込める施策になります。、同様に、休眠顧客に対して、季節限定の特別なキャンペーンの告知に関するメールを送信し次なる購買を促進することにより、より顧客の購買意欲を高める効果を期待できます。
新規顧客を獲得するよりも既存顧客を維持する方がコストが低いことはよく知られています。顧客がサービスやコミュニケーションに満足していれば、競合他社ではなく自社を支持してくれる可能性が高くなり、自社の商品やサービスを継続的に利用してもらうことで収益向上にも繋がります。
One to Oneマーケティングの主な手法
One to Oneマーケティングといっても、その手法はさまざまです。One to Oneマーケティングの代表的な6つの手法を紹介します。
レコメンデーション
レコメンデーションとは、主にECサイトにおいて、過去の購入履歴や閲覧履歴から類似商品や関連商品などをおすすめする手法です。
アパレル関連のECサイトを閲覧中の顧客に、閲覧した商品や関連商品を紹介したり、閲覧中の商品を取り入れたスタッフのコーディネートの例を紹介するケースなどがあります。
顧客が興味・関心のある商品をおすすめすることにより、購買率の向上だけでなく、UXの改善にも効果的です。
リターゲティング広告
リターゲティング広告とは、自社のwebサイトに訪問したユーザーをCookieの情報をもとに追跡して、他のサイト上で広告を表示させるweb広告です。
例えば、顧客がECサイト上で特定の商品を閲覧した際、他のブランドの商品と比較するため、閲覧していたECサイトから離脱することも少なくありません。そのような顧客に対してリターゲティング広告を打つことで、顧客は以前訪れたECサイトに再訪問し、商品を購入してもらえる可能性があります。
一度サイトに訪れた顧客は商品やサービスに興味・関心を持っている可能性が高く、その顧客に直接的にアプローチできるため、高い広告効果を期待できます。検討期間が長くなる傾向のある高額な商品や比較検討すべき項目の多い商品と相性が良い手法です。
ただし、現在は個人情報保護の観点から、リターゲーション広告に利用されている3rd Party Cookieの規制が進んでいる点に留意する必要があります。SafariやFirefoxでは、すでに3rd Party Cookieがブロックされています。2024年中に3rd Party Cookieの廃止が完了予定だったGoogle Chromeも、その予定が延期されたとはいえ、近いうちに3rd Party Cookieが廃止される見込みです。
このように、世界的に規制が進んでいる中で、3rd Party Cookieを利用した従来のリターゲーション広告は減少傾向にあり、今後より一層減少していくことが予想されます。
関連:顧客データ活用とプライバシー問題の両立。顧客に信頼されるデータの扱い方
メール配信・DM送付
メール配信・DM送付は、メールアドレスや住所などの顧客情報を収集している場合に使える手法です。
メール配信・DM送付でのOne to Oneマーケティングの実現例としては、一人ひとりの顧客に適したクーポンの配信が挙げられます。頻繁に店舗に訪れる顧客にはクロスセルを狙ったセット割のクーポンの配信し、休眠顧客には掘り起こしを目的として新商品の情報を記載したDMを送付するなどそれぞれの顧客に適したメール・DMを送付することで、購買意欲を刺激し収益向上を実現できます。
BtoCはもちろん、見込み顧客の購買意欲を促進し受注に結び付けるBtoBのリードナーチャリング施策の実行にも有効です。
関連:リードナーチャリングの役割と3つの手法、見込み顧客の育成に役立つマーケティングツール
動的コンテンツ
動的コンテンツとは、顧客が求める情報を的確に届けるために、webサイト上で顧客の流入経路や訪問時間、会員情報によって異なるメッセージを表示する手法です。
例えば、ECサイト上で特定の商品を購入した顧客と未購入の顧客のメッセージを出しわけるケースが挙げられます。購入した顧客には関連商品を紹介するバナーを表示し、未購入の顧客にはキャンペーンの告知に関するバナーを表示することで、CVRの向上を期待できます。
また、会員制のサービスでログイン後の画面を契約者と未契約者に分けることで、UXの改善だけでなく、新規取引の促進やクロスセル・アップセルにも効果的です。
ロイヤルティプログラム
ロイヤルティプログラムとは、顧客の購入頻度や累計購入額に応じて特典を提供する手法です。
多くの企業が実践している例として、スマホのアプリを使ったロイヤルティプログラムがあります。商品を購入する時にスマホのアプリ画面を見せることでポイントが貯まり、ポイント数に応じてステータスが上がります。各ステータスに応じて、割引クーポンを提供したり購入金額に対するポイント率の向上などの特典を用意することで、顧客ロイヤルティの向上を図れます。
顧客ロイヤルティが向上すると、顧客単価の向上やLTVの向上、さらには口コミによる宣伝効果も期待できます。
カスタマーサポート
カスタマーサポートは、顧客の問合せや購入履歴をもとに、カスタマイズされたサポートを提供する手法です。
例として、特定の商品について質問した顧客に対して、その商品のアップデート情報や関連商品の情報を提供するケースなどが挙げられます。顧客体験を向上させ顧客との信頼関係の強化に繋がるだけでなく、クロスセルによる売上の向上効果も期待できます。
また、カスタマーサポートの結果をさらに追跡し、既存商品の改善や新規商品の開発に活かすことにより、さらなるOne to Oneマーケティングの実現に繋げることが可能です。
関連:カスタマーサクセスとは?役割やKPI、成功へのポイント4つ
One to Oneマーケティングの成功事例
One to Oneマーケティングに取り組んでいる企業の事例を紹介します。
スターバックス
世界最大級の喫茶店チェーンであるスターバックスの事例を紹介します。
スターバックスでは特定の顧客と繋がり続けるためには、デジタルを活用し一人ひとりの顧客に適した情報・サポートの提供が必要であると考え、2017年からロイヤルティプログラムの一環として「スターバックス リワード」をローンチしました。
スターバックス リワードにはいくつかの機能がありますが、その代表例がポイントシステムです。商品の購入額に応じてポイントが貯まり、貯まったポイントをドリンクやフード、コーヒー豆などに交換できます。
ポイントシステムの他にも、スターバックス リワードには顧客により良い体験を提供するための機能が備わっており、その代表例として挙げられるのが「マイコーヒーパスポート」と「マイストアパスポート」機能です。
「マイコーヒーパスポート」は購入したコーヒー豆のスタンプを表示し、味の感想や淹れ方のポイント、豆の挽き具合などの情報を書き込める機能で、顧客が自分自身で購入したコーヒー豆のさまざまな楽しみ方を見つけるきっかけを提供することが狙いでした。「マイストアパスポート」は来店翌日に顧客が利用した店舗のオリジナル画像とメッセージが表示される機能であり、顧客が御朱印集めの感覚でさまざまな店舗を巡る楽しみを作ることが狙いです。
このように、ポイントを付与して顧客に経済的なメリットを還元するだけでなく、顧客体験の向上を狙った機能を搭載しプログラム全体で顧客ロイヤルティの向上を図った結果、提供開始後から約5年間で会員数を150万人から750万人まで伸ばし、会員の利用率の向上にも成功しました。
一休.com
高級ホテル・旅館専門予約サイトである一休.comの事例を紹介します。
一休.comは、多くの企業が新型コロナウイルスの影響を受けた旅行・観光業界において、国内宿泊販売額を伸ばした数少ない企業の1つです。成功した要因には、データドリブン経営で一人ひとりの顧客に最適なサービスを提供した点があります。
具体的な施策の1つに、検索結果のパーソナライズが挙げられます。例えば、顧客A~Eの5名がエリアや宿泊日時、期間などの項目を同じ条件で検索した場合でも、閲覧履歴や宿泊履歴などのデータから、それぞれの顧客の好みに合わせた宿が表示されるようになっています。
このような施策を実行することで、一休.comの2022年と2023年の国内宿泊販売額は、コロナ禍以前の2~3倍まで伸長しました。
一休.comは今後もデータをもとに顧客理解を図り、一人ひとりの顧客が求めているサービスを提供することにより、さらなるOne to Oneマーケティングの実現に取り組む予定です。
ディノス コーポレーション
通販大手のディノス コーポレーション(旧:ディノス・セシール)の事例を紹介します。
ディノス コーポレーションは、DM送付やレコメンデーションの手法を用いてOne to Oneマーケティングを実施しました。
DM送付の施策としては、ECサイト上でカゴ落ち情報を抽出し、最短24時間以内にカートに入っている商品内容を一人ひとり印刷内容を変えて発送するという取り組みを行いました。その結果、DMを受け取った顧客は、受け取っていない顧客よりも購入率が約20%アップしました。この取り組みによって、ディノスコーポレーションは日本郵便主催の「全日本DM大賞」で第33回のグランプリを受賞しました。
レコメンデーションの施策については、レコメンドするタイミングの最適化に注力しました。海外ブランドの掃除機を購入する顧客は、数日後に掃除機を収納するスタンドを購入する傾向があったため、顧客がスタンドの必要性を感じるタイミングでレコメンドを行ったところ、購入数が増加し、結果としてクロスセルにも成功しています。
このように、ディノス コーポレーションはきめ細かな提案やフォローなどを行うことを通じてOne to Oneマーケティングの実現に努めています。
リンナイ
給湯機器やガスコンロなど、熱エネルギー機器の製造販売を行う大手メーカーのリンナイの事例を紹介します。
リンナイは、料理レシピや暮らしに関するコラムなどを提供している「リンナイのある暮らし」というオウンドメディアと、「Rinnai Style」という自社ECサイトを運営しています。
顧客と良好な関係を築き、より長く自社製品を選んでもらうために、ECサイトやオウンドメディアで収集した顧客データの分析・活用に着手しました。会員データ、注文データ、商品データ、クリック履歴、販売したい商品の情報を分析し、その商品に反応しそうな対象顧客を抽出できる仕組みを作り、パーソナライズされたDMの送付を開始しました。
顧客データをもとに抽出された約1万人の顧客とそれ以外の約8万人の顧客の反応を比較すると、前者は開封率が約3.7倍、クリック率が約2.4倍、購買率も約12.6倍という結果が出ました。同様に、メールの解除率も後者に比べて63%低いということも判明しています。
加えて、顧客へ行ったアンケート結果をもとに、行動パターンを12の価値観に分類する価値観分析も実施しました。その結果、ある商品の利用顧客には特定の価値観パターンを持つ傾向があることがわかりました。リンナイは商品ごとに利用する顧客の価値観が異なるという前提をもとに、それぞれの顧客に適したコミュニケーションのとりかたを模索しています。
One to Oneマーケティングの実施手順
One to Oneマーケティングの実施手順を、以下の4つの工程に分けて紹介します。
1.顧客データの収集・統合
One to Oneマーケティングの実現のために、まずは顧客データの収集・統合に着手する必要があります。
収集すべきデータには、webや店舗での購買履歴、自社サイト内の行動データ、広告データ、CRMデータ、売上データなどが挙げられます。これらのデータが自社内に蓄積されているものの、ツールや事業部ごとにバラバラに管理されていて連携できない企業が多いです。このような状態を「データのサイロ化」と呼びます。
関連:「データのサイロ化」5つの問題と解決策。攻めのDX推進を妨げるサイロ化の原因とは
データのサイロ化を解消するためには、顧客データを一元管理するインフラ・データ基盤が必要です。インフラやデータ基盤を構築し、顧客データを収集・統合することで、多面的に顧客を分析できるようになり、顧客理解が深まりOne to Oneマーケティングの施策の精度も上がります。
データを一元管理するインフラ・データ基盤の構築に取り組む際、ベスト・オブ・ブリードとベスト・オブ・スイートのどちらの製品を利用するかを検討する必要があります。両者の違いやメリット・デメリット、選び方については、下記の記事をご覧ください。
関連:ベスト・オブ・ブリードとは?スイートとの違い、それぞれのメリット・デメリット
2. セグメンテーション・分析
顧客データの収集・統合の後は、セグメンテーションとその分析を行います。セグメンテーションとは、市場や顧客を細かく分類し特定のニーズや属性を持ったグループに分けることで、特定のニーズや属性に分割された固まりをセグメントと呼びます。
セグメンテーションはいくつかの変数をもとに分類されますが、代表的なものは以下のとおりです。
- 地理的変数:地域など
- 人口動態変数:年齢、性別など
- 社会的心理的変数:ライフスタイル、嗜好など
- 行動変数:購入時間帯、購入経路など
セグメンテーションの実施後は、それぞれのセグメントにどのような特徴があるのかを分析します。そのうえで、自社の戦略との相関やセグメントの規模などをもとに、アプローチをかける優先順位を決定しましょう。
関連:セグメンテーションとは?2つの観点での活用方法と業界別の具体例
3. ペルソナ・カスタマージャーニーマップの作成
続いて、ペルソナ・カスタマージャーニーマップの作成に入ります。
ペルソナ作成時は、主に以下の2つの項目をもとに考えるのが有効です。
- デモグラフィック:性別や年齢、職業、年収などの統計学的属性
- サイコグラフィック:趣味や性格、価値観などの心理学的属性
自社のwebサイトのアクセスデータや購買データ、問合せデータをもとに、顧客の悩みや購買の動機などをイメージしながら具体的なペルソナを作ることが重要です。
カスタマージャーニーマップ作成の際は、新規の接点だけでなく継続的な接点も考慮することが重要で、どのセグメントに、どのタイミングで、どのチャネルを用いて、どのようなコンテンツを提供すべきか、などを考える必要があります。これらのシナリオをあらかじめ用意しておくことで、顧客にとって良いコミュニケーションをとることができるようになります。
特に、どのチャネルでどのコンテンツを提供するかが重要です。チャネルを顧客とのコミュニケーションの側面で分けると、プッシュ型とプル型があり、両者の違いを意識して戦略を設計する必要があります。
プッシュ型のチャネル
プッシュ型のチャネルは、メールやモバイルアプリのプッシュ通知などが挙げられます。配信を行う時間(いつ)や、どのチャネル(どこで)といった観点での設計が重要で、配信するコンテンツとして誰に・どのような内容を提供するのかという観点とあわせて設計を行って実施します。
注意点は、顧客に適切なコンテンツを提供することです。
One to Oneのコミュニケーションのために、各種パーソナライズの施策を実施していくことになります。しかし、パーソナライズの設計次第では、複数のプッシュ型のチャネルで共通のメッセージが何度も届くことになる可能性があります。このような形で多くの顧客の体験を損ねていては、One to Oneマーケティングとは言えません。
その改善のために、例えば顧客の行動から他のチャネルですでに提供した情報を他のチャネルで提供しない、といった手段が考えられます。また、顧客が情報を受け取りたいチャネルを顧客自身がカスタマイズできるような機能を提供するのも1つの手段です。
チャネルの考え方とあわせて顧客ごとに配信するコンテンツをコントロールする、また顧客が受け取りたい情報をカスタマイズできる機能を提供する必要があります。
プル型のチャネル
プル型のチャネルは、webサイトやモバイルアプリにアクセスしてもらい閲覧・体験をしてもらうなどが挙げられます。プル型のチャネルの内、webサイトやモバイルアプリ、また接客を伴わない実店舗も同様に設計が必要となります。ただし、利用するチャネルを選択するのは顧客なので、それぞれのチャネルにおけるメリットを提示することと複数チャネルをまたがって違和感のないコミュニケーションを行うことが重要です。
オウンドメディアなどを運営している場合には、関連している情報の提供や何らかのCVの導線の設計を行うことになるかと思います。しかし、すでに購入している商品をおすすめしていたり、すでに閲覧されている情報の提供を積極的に行っていてはOne to Oneマーケティングとは言えません。コンテンツ同士の関係によるレコメンドのみでなく、顧客の行動情報も用いたレコメンドを行う必要があります。
ECサイトなどでの商品レコメンドの観点では、webサイトとモバイルアプリの2つで提供している場合、顧客ごとの商品の閲覧情報や購買情報を用いた設計にして共通の体験が提供できるようにすべきです。また、実店舗がある場合は実店舗での購買情報もあわせた設計にする必要があります。
ただし、とにかく顧客にとって良い体験ということを追い求めて膨大なシステムコストがかかり、数年規模で利益を圧迫し続けて回収できないようでは、企業活動として本末転倒です。各チャネルの利用率や、複数チャネル横断のクロスユース率に関する現状と今後の目標をもとに判断して進める必要があります。
4. 施策の実施・評価
作成したペルソナ・カスタマージャーニーマップをもとに施策を実行します。
定量的なデータに基づき実施した施策でも、初めからうまくいくとは限りません。定期的に施策の振り返りを行ったうえでそれを評価し、新たな施策を実行することが重要です。顧客データをもとに効果検証を繰り返し行っていくことで、施策の精度向上を期待できます。
効果検証の際は、BIツールなどを用いてダッシュボードを構築することで結果を共有しやすくなり、意思決定のスピードを上げられます。
関連:デジタルマーケティングの効果測定の方法と指標、分析に役立つツール
One to Oneマーケティングを実現するCDP
One to Oneマーケティング実現のための顧客情報を統合管理、活用できるインフラ・顧客データ基盤を自社で構築することも可能ですが、顧客データ基盤としてCDPを導入することも1つの手段です。
CDPとは「カスタマー データ プラットフォーム:Customer Data Platform」の略称で、企業の顧客に関するデータを管理し、「実在する個人」に紐づけて顧客データを集め、顧客一人ひとりを理解することを可能にするプラットフォームです。また、顧客一人ひとりに合わせた体験を提供できるよう、さまざまな外部ツールに連携することができます。
関連:CCDPとは?顧客データ活用に特化したCDPの機能とメリット、事例などの基礎知識まとめ
CDPの導入によって顧客データを一元管理することで顧客を深く理解できるようになるので、「誰が・いつ・何をした」という情報だけでなく、顧客はなぜ購入したのか?なぜ他企業を選んだのか?という顧客インサイトを突き詰めていくことができます。そのうえで「顧客目線」のコミュニケーションを実施し、スピーディーに改善を進めていくことが可能です。
CDPについて、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。他のツールとの違いや顧客体験の向上におけるCDPの役割、各部門のユースケースなどについて紹介しています。
EVERRISEが提供するCDP「INTEGRAL-CORE」
弊社EVERRISEでは、顧客データをノーコードで管理できるCDP「INTEGRAL-CORE」を提供しており、これまでTVerさまやキーコーヒーさま、hoyuさまなどを含め複数社の導入実績がございます。
- CDP「INTEGRAL-CORE」の特長
- 顧客に関するあらゆるデータを収集・統合
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