市場の変化や消費者のニーズの多様化に伴い、顧客ニーズを把握しながら最適な情報やサービスを提供する「パーソナライズ」の手法が注目されています。
一人ひとりの属性や興味関心に合わせたパーソナライズした情報を提供することで、少ないリソースで効果的にマーケティングを行えます。
本記事では、パーソナライズとはなにか、パーソナライズを実践するための具体例、パーソナライズを成功させるポイントについて紹介します。
パーソナライズとは
パーソナライズとは、顧客の属性や購買、行動データ履歴といったデータをもとに顧客ニーズを把握し、最適な情報やサービスを提供する手法です。
「BtoB」「BtoC」におけるパーソナライズの違い
BtoBのパーソナライズ
BtoBの事業では、購入に至るまでの時間がかかる商材が多く、顧客が情報収集の段階にあるのか・比較検討段階にいるのかを見極め、顧客のニーズと関心度合いに応じて、パーソナライズした情報を提供し、顧客を育成する必要があります。
分かりやすい例として、MA(マーケティングオートメーション)を利用して、顧客のニーズや検討段階に応じてパーソナライズされたコンテンツを提供するアプローチがあります。
BtoCのパーソナライズ
一方、BtoCの事業では、高単価の中長期検討商材もありますが、個人が決裁者のため検討から購入までのプロセスが短いケースが多く、顧客の属性や行動履歴を活用し、購買に繋がるパーソナライズを行うケースが多いです。
例えば、ECサイトなどで、購入履歴や閲覧履歴からおすすめ商品をレコメンドを行うアプローチがあります。
パーソナライズが重要視される理由
マスマーケティングの限界が見えてきた
従来のマスマーケティングは、テレビや新聞での広告で、企業側が伝えたい情報をすべての消費者を対象に一方的に配信するマスマーケティングの手法が高い効果を発揮していました。
しかし、インターネットやスマートフォンなどの普及によって、顧客自ら検索し、必要な情報の中から比較検討して購入することができるようになったため、不特定多数にアプローチするマスマーケティングの手法だけでは商品・サービスなどが売れにくくなっています。
消費者ニーズの多様化
インターネットやスマートフォンなどが普及したことで、消費者にとって膨大な情報が取り巻く環境となっています。情報量が増えたことにより多様な価値観が生まれ、消費者ニーズの多様化も加速しました。
こうした消費者ニーズの多様化によって、個々人に対する個別のアプローチを行うパーソナライズの重要性が増したと考えられます。
マーケティングテクノロジーが進化した
データ分析やAIなどのテクノロジーが進化したことにより、より正確にユーザーの好みや行動に合わせたマーケティングができるようになりました。
今までも購買履歴や属性などを組み合わせて一人ひとりにアプローチを行うことは可能でしたが、マーケティングテクノロジーが進化したことにより、webサイトのリアルタイムの行動も含めたデータをもとにコンテンツを配信したり、レコメンドするコンテンツを切り替えることが可能になりました。
パーソナライズのメリット
顧客の状態ごとのパーソナライズを行うメリットについて紹介します。
新規顧客にパーソナライズを行うメリット
購買率を高める
購買意欲はあるものの購入まで至っていない顧客に対して、顧客の好みや関心に合わせたパーソナライズした商品を勧めることで顧客の興味を高め、CV率を高めることができます。
例えば、webサイトの閲覧履歴をもとに、顧客の興味関心の高いと思われる商品をサイト内でレコメンドをしたり、顧客の属性やwebサイトの訪問履歴をもとにターゲティング広告を配信し、商品・サービスへの興味を高め購買率を高めることが期待できます。
既存顧客にパーソナライズを行うメリット
F2転換率を高める
F2転換率とは、初回購入をした顧客のうち、どれだけ2回目の購入に至ったのかの割合を示す指標です。商品やサービス購入後の顧客に対して、個人の属性や趣味嗜好に合わせた情報を提供し再購入を促すことで、F2転換率を高め、リピート化に繋がります。
例えば、購入履歴からパーソナライズしたクーポンを配信したり、限定商品を紹介したりするなどのキャンペーンを配信することで、F2転換率を高めることができます。
客単価を高める
顧客の心理や行動履歴から顧客を把握することで、顧客の状況に応じて提案を行い客単価を高めるためのコミュニケーションが可能になります。
例えば、ECサイトを利用している顧客が商品を購入するタイミングで、その商品の関連性のある商品やサービスをレコメンド機能を用いておすすめすることで、クロスセルでの客単価のアップを実現できます。
ロイヤル顧客にパーソナライズを行うメリット
顧客ロイヤルティを高める
顧客一人ひとりの属性や行動、要望に合わせて提供する情報や対応をパーソナライズすることで、顧客と企業との結びつきを強めたり、顧客ブランドに対する親しみ・信頼感を強化し、顧客ロイヤルティ化に繋げることができます。
例えば、顧客が意識的・無意識的に欲しいと感じている情報を的確なタイミングで届けることで「欲しい情報を届けてくれる」「私にとって有用な企業だ」と顧客に感じてもらえれば、企業と顧客との関係性の強化され顧客ロイヤルティを高めたり、LTV向上が期待できます。
関連:顧客ロイヤルティとは?顧客ロイヤルティ向上のための5ステップ&成功事例
パーソナライズを実践するための4つの視点
パーソナライズを実践するうえで必要な4つの視点を紹介します。4つの要素を組み合わせてパーソナライズを考えることで、顧客に合わせたコミュニケーションを実践できるようになります。
いつ:タイミング
パーソナライズを行う1つの要素として顧客に情報を提供するタイミングが重要です。顧客の購入意欲が高い状態は、お気に入り登録直後やカゴ落ち直後など、商品や顧客の属性によってさまざまですが、オンライン上の行動データから購入意欲が高いと予測できた直後にタイムリーにアプローチをすることで、レスポンス率やCV率を高めることができます。
どこで:チャネル
パーソナライズを行ううえで、どのチャネルで情報を提供するかは重要です。顧客が利用するチャネルは単一チャネルとは限りません。webサイトやSNS、メールマガジン、アプリのプッシュ通知などさまざまなチャネルがありますが、すべてのチャネルで一斉に同じアプローチをするのではなく、顧客にとって適切なチャネルに配信をすることが大切です。
関連:タッチポイント(顧客接点)とチャネルの違い、利益UPのための強化方法や注意点
誰に:セグメント
パーソナライズを行ううえで、顧客の状態別のセグメントを作成したアプローチが重要です。例えば、顧客のwebサイトの訪問回数や過去の行動・直前の行動をもとにコンテンツを切り替える、年齢・性別、住んでいる地域などの属性によってレコメンドする商品を切り替えるといったアプローチです。
行動から検討状態を推測する、属性によっておすすめする商品などのコンテンツを切り分けるなど、セグメントを切り分けてパーソナライズを行うことが重要です。
関連:セグメンテーションとは?2つの観点での活用方法と成功事例
何を:コンテンツ
パーソナライズを行う1つの要素として顧客ごとに適したコンテンツを提供することが重要です。すべての顧客に対して個別に最適化したコンテンツを提供するのは困難ですが、「いつ」「どこで」「誰に」という3つの要素から顧客の状況を絞り込み、それぞれの顧客にマッチしたコンテンツを当てていくことが重要です。
例えば、顧客の属性データをもとに関連性のある商品を紹介したり、興味関心が高い商品が特定できた段階で製品の特徴がわかる記事や解説動画などを紹介することで、より興味関心を高め、購入に繋げるといったアプローチが考えられます。
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パーソナライズに必要な4つのデータ
パーソナライズに必要な4つのデータを紹介します。
デモグラフィック(顧客の属性)
デモグラフィックとは、年齢、性別、顧客の興味関心といった「顧客の属性」を指します。デモグラフィックの取得方法として、ECサイトの会員登録時やスマートフォンアプリのインストール時にユーザー自身で個人情報を入力してもらう方法が一般的です。
最近ではSNSアカウントと連携し、情報を間接的に入手するケースも増えています。他の取得データと比べると、比較的データを入手しやすいのが特徴です。顧客の属性情報をもとに、顧客にあった情報を提供できます。
ジオグラフィック(地理学的属性)
ジオグラフィックとは、地理学的な統計データで、地域特性、人口、気候、文化、都市化の進展度などの要素があります。
例えば、空調機器などの季節性のある商材においては、気温や気候の変化をもとに広告の配信時期のプランニングを行います。また、デリバリーをしている飲食業界においては、雨が降っている該当の地域にクーポンを配信するなどがあります。
サイコグラフィック(心理学的属性)
サイコグラフィックとは、心理学的な特性のデータのことで、消費者の価値観、趣味・嗜好、ライフスタイルなどがあり、顧客の心理的な要素で市場をセグメンテーションするのに有効です。サイコグラフィックは、単体で活用されるデータではなく、デモグラフィックやジオグラフィックと併用されるケースが多いです。
例えば、デモグラフィックやジオグラフィックは「誰が購入しているか」という表面的な情報であるのに対し、サイコグラフィックは「なぜ購入しているか」という内面的な情報を表すデータです。
ビヘイビアー(顧客の行動データ履歴)
ビヘイビアーとは、顧客の行動データ履歴のことで、もっとも高い効果が期待できる情報です。
例えば、ECサイトでどのような商品を閲覧しているかや購買履歴などが行動データ履歴に当たります。ビヘイビアーの解析は難しいケースが多いですが、解析ができるようになると精度の高いパーソナライズが実現できます。
webマーケティングにおけるパーソナライズの施策例
広告
広告の観点では、主にタイミングおよびセグメント(広告の配信設定の観点ではセグメントに包含されることも多い)が重要で、顧客はどのチャネルで広告を見たいという意識はあまりないため、企業としての広告効果の観点でチャネルの選択が重要です。
広告、特にデジタル広告に利用するデータとしては、主にビヘイビアーデータやデモグラフィックデータが重要です。ビヘイビアーデータやデモグラフィックデータの利用に関しては、コンバージョンしたユーザーの除外という観点では広く利用されていますが、新規顧客と既存顧客を切り分けられていないケースや、既存顧客のうちF2転換を狙う広告と、よりLTVを高めるべきそれ以降のフェーズの顧客を切り分けられていないケースが見受けられます。
予算と広告の管理にかかる工数との見合いではありますが、これらのデータの扱い方を見直して適切にパーソナライズを行うことは、顧客にとっては関係のない広告が表示されず、企業としては不要な広告費の削減が可能となります。
webサイト / モバイルアプリ
顧客がwebサイトやモバイルアプリを閲覧している中で、適切なタイミング・セグメントに対して適切なコンテンツを提供することで、欲しい商品や情報とマッチする確率を高められます。
特にECサイトにおいては「閲覧履歴からのおすすめ」「チェックした商品の関連商品」など商品レコメンドによるパーソナライズを行っていることが多いかと思います。
広告の内容との一致や再訪時の適切な情報の提供を目的としてトップページのコンテンツをユーザーごとにパーソナライズして出し分けるといった施策もあります。LPO(ランディングページ最適化)という考え方が日本では行われているケースがありますが、グローバルで見るとジオグラフィックを利用して、天候や住んでいる地域によって表示を切り分けるといった取り組みもあります。
どのような種類のサイトであっても、web接客ツールやアプリ内メッセージを利用して顧客が何らか迷っているであろうタイミングで適切な情報提供をコンテンツの切り替えやポップアップを用いて表示するといったパーソナライズを行うサイトも増えています。
メール配信 / LINE / プッシュ通知 / DM
メール配信やLINE、モバイルアプリのプッシュ通知、お知らせの手紙などのDMといったプッシュ型のコミュニケーションチャネルにおいてもパーソナライズが重要です。
適切なタイミングやセグメントに対してのみでなく、それぞれのチャネルの特性や顧客が希望するチャネルを利用して、適切なコンテンツを提供していきます。
メールやDMに関しては配信してから顧客が閲覧するまでに一定の時間がかかることが想定されますが、コンテンツとしてはリッチな内容が提供できるという特性があります。LINEやアプリのプッシュ通知はリアルタイムでのコミュニケーションには向いていますが、コンテンツとしてはリッチな内容を提供しづらいといった特性があります。
データの利用方法として広告と似ている部分はありますが、これらのプッシュ型のコミュニケーションチャネルにおいては、配信を行うタイミング・セグメントが特に重要です。それらをチューニングするうえで、次のような配信手法を用いてパーソナライズを行います。
セグメント配信
セグメント配信とは、属性や購入履歴、行動履歴から、顧客を条件別に分類し、それぞれのニーズに合った情報を配信する手法です。
顧客のニーズに合った情報を配信するので、顧客はその情報に興味を持ちやすく開封率やクリック率だけでなく、CV率の向上に繋がります。また、顧客にとって有益な情報源であると解除率の減少も見込めます。
シナリオ配信
シナリオ配信とは、顧客ごとの状況や行動に応じて、事前に準備していた内容を自動で配信し、顧客に購買やwebサイト訪問などのアクションに促すことができます。
例えば「顧客が●●のメールを開封したら」「●●のURLをクリックしたら」「●●の商品を購入したら」このメールを次に送るというようなシナリオに沿って配信されます。
パーソナライズの注意点
CVに注視したパーソナライズを行うと脅迫的なコミュニケーションになってしまうケースが多くあります。顧客に自社のサービスや商品を知ってもらうためにパーソナライズされた情報を何度も表示することは大切ですが、フリークエンシー過多(頻繁に表示しすぎる)状態になると嫌悪感を覚える顧客が出てきます。そのためフリークエンシーをコントロールし、最適な回数に調整することが重要です。
また、パーソナライズはOne to Oneマーケティングの考え方をもとに、顧客理解・体験の向上のためのシナリオ設計を行ったうえで、パーソナライズの施策を行うことが大切です。One to Oneマーケティングについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
関連:One to Oneマーケティングとは?成功事例・具体的な手法・実施手順を紹介
パーソナライズを成功させるポイント
優れたパーソナライズされた体験を提供するには、webサイトの行動データなど1部のデータのみを利用するのではなく、購入した顧客の属性情報や、ECでの購入履歴、店舗もあれば店舗での購入履歴(オンライン・オフラインも含めた購入履歴)も含めて扱うことで、適切なコミュニケーションが行えるようになります。
各チャネルごとに部分最適された状態では、適切なパーソナライズを行うことができないため、すべてのデータを統合し全体最適でパーソナライズを進めることが重要です。
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パーソナライズを実現させるソリューションの1つにCDP
オンライン・オフラインも含めた顧客データ基盤を自社で構築することも可能ですが、その顧客データ基盤として、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)も1つの手段です。
CDPとは「カスタマー データ プラットフォーム:Customer Data Platform」の略称で、企業の顧客に関するデータを管理し、「実在する個人」に紐づけて顧客データを集め、顧客一人ひとりを理解することを可能にするプラットフォームです。また、顧客一人ひとりに合わせた体験を提供できるよう、さまざまな外部ツールに連携することができます。
CDPの導入によって顧客データを一元管理できるので「誰が・いつ・何をした」という情報だけでなく、顧客はなぜ購入したのか?なぜ他企業を選んだのか?という顧客インサイトを突き詰めていくことができます。
そのうえで「顧客目線」のコミュニケーションを実施し、スピーディーに改善を進めていくことが可能です。CDPについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
関連:CDPとは?カスタマーデータプラットフォームの機能やメリット、活用例を解説
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