2022.07.22

セグメンテーションとは?2つの観点での活用方法と業界別の具体例

セグメンテーションとは?2つの観点での活用方法と業界別の具体例

マーケティングの戦略を考えたり、施策を行ううえで重要な活動の1つにセグメンテーションがあります。

本記事では、セグメンテーションとはなにか、セグメンテーションで用いられる属性データを説明したうえで、各業界でどんなセグメンテーションを行えるかの例を紹介します。

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セグメンテーションとは

セグメンテーションとは、市場・顧客を細かく分類して同じニーズや属性を持ったグループ(セグメント)に分割することを指します。

年齢や性別、国や市町村、業種などの特定の属性をもとに分割した一つひとつの固まりのことをセグメントと呼び、複数のセグメントに分けることをセグメンテーション(市場細分化)やセグメント化と呼びます。

セグメンテーションが重要視される理由

消費者ニーズの多様化

インターネットやスマートフォンなどが普及したことで、消費者にとって膨大な情報が取り巻く環境になりました。情報量が増えたことにより多様な価値観が生まれ、消費者ニーズもそれぞれの嗜好に合わせて多様化しています。

こうした消費者ニーズの多様化によって、マスメディアを利用して不特定多数にアプローチしても顧客の興味を引くことが難しくなりました。そのため、セグメンテーションを行い、顧客ニーズに対応できるよう自社に適したセグメントを見つけだし、マーケティング戦略を策定することが重要になったと考えられます。

また、消費者ニーズの多様化によって、顧客一人ひとりに合わせたアプローチやコミュニケーションを取る重要性が増したと考えられます。セグメントに対して適切な施策を打つことで顧客との関係性を高めることができます。

テクノロジーの進化

テクノロジーが進化したことにより、より正確に顧客の好みや行動をもとにしたセグメンテーションを行い、顧客に合わせたマーケティングができるようになりました。

今までも顧客の属性データや購買履歴などを組み合わせて一人ひとりにアプローチを行うことは可能でしたが、テクノロジーが進化したことで、webサイトやモバイルアプリなどのアクセスログをもとにリアルタイムにセグメントを作成して、コンテンツを切り分けることが可能になりました。このようなオンラインのみでなく、店舗・商業施設における行動データや購買データを取得できる手段も増え、データを用いた顧客コミュニケーションが可能になっています。

セグメンテーションで使用される変数

セグメンテーションは、いくつかの変数をもとに分類されます。代表的な変数を紹介します。

セグメンテーション変数 代表的な変数 具体例
地理的変数(ジオグラフィック) 地域
人口
気候
関東・関西・東北・日本・国名
都市部・郊外
温暖・寒冷 など
人口動態変数(デモグラフィック) 年齢
性別
家族構成
職種
所得
学歴
~20代・30~40代・70代以降
男性・女性・その他
独身・既婚者・子供の有無
営業職・サービス職・技術職
300万円未満・300万~400万円未満・1,000万円以上
最終学歴 など
社会的心理的変数(サイコグラフィック) ライフスタイル
パーソナリティ
趣味
嗜好
アウトドア派・オーガニック製品を好む
社交的・内向的
スポーツ・音楽鑑賞・読書
お酒を飲む・タバコを吸う など
行動変数(ビヘイビアー) 使用率
購入時間帯
購入経路
行動データ履歴
ヘビーユーザー・ライトユーザー
ランチの時間帯・夕方以降
SNSからの遷移・広告からの遷移
webサイトのアクセスログ など

地理的変数(ジオグラフィック)

地理的変数(ジオグラフィック)とは、地理学的な統計データで、地域、人口、気候、文化、都市部の進展度などマクロな観点から対象を分類する際に利用します。

例えば、生活用品や空調機器などの季節性のある商材など、住んでいる地域や気候で、売り上げに影響が出やすい商品・サービスを扱う際に有効です。

人口動態変数(デモグラフィック)

人口動態変数(デモグラフィック)とは、年齢、性別、所得といった顧客の属性などで分類します。

人口動態変数は大まかなセグメンテーションを行う際に使用されることが多いため、また、社会的心理的変数や行動変数を組み合わせると、より細かい顧客のニーズに沿ったセグメンテーションを行うことができます。

社会的心理的変数(サイコグラフィック)

社会的心理的変数(サイコグラフィック)とは、心理学的な特性のデータのことで、消費者の価値観、趣味・嗜好、ライフスタイルなどがあり、顧客の心理的な要素でセグメンテーションを行う際に有効です。

社会的心理的変数は、単体で活用されるデータではなく、人口動態変数や地理的変数と併用されるケースが多いです。また、消費者の行動は心理的要因をもとに行われるケースが多いため、社会的心理的変数のセグメンテーションは顧客の理解に繋がると考えられます。

行動変数(ビヘイビアー)

行動変数(ビヘイビアー)とは、顧客の行動データ履歴や消費行動を参考にした分類方法です。

不特定多数に向けたマスマーケティング手法が主流だった時代は、BtoC向けの製品・サービスを提供する際は、人口動態変数と地理的変数の2つを使用するのが一般的でした。

しかし近年、ECサイトやSNSの増加や消費者ニーズの多様化によって、社会的心理的変数や行動変数を含めた分類も増えてきています。

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セグメンテーションの2つの観点

セグメンテーションは、次のように大きく2つの観点で使用されることが多いです。

  • 自社の製品やサービスのターゲットとして意味のある層を特定する、市場分析の観点
  • 特にデジタルマーケティングにおける、顧客コミュニケーションの観点

それぞれ詳しく紹介していきます。

市場分析の観点でのセグメンテーション

市場分析の観点でのセグメンテーションは、自社の製品・サービスが市場のどの層にマッチするのかを特定する際に使用されます。また、アメリカの経済学者フィリップ・コトラー博士が提唱したSTP分析における1つの要素です。

セグメンテーションを行い、市場を細分化して分類することによって、自社の製品やサービスをどの層に、どのようにアプローチするのが効果的かを考え、限られた経営資源の中で有効な販売戦略を練ることができます。

市場分析の観点でのセグメンテーションに必要な4つの判断基準

市場分析のセグメンテーションを行う際、いくつかの変数をもとにセグメンテーションを行うと作成したセグメントが現実から乖離してしまうケースが多くあります。そうならないために、具体的にどのような方策を打つことができるかなどを考えながら、セグメンテーションが適切であるかを4Rをもとにチェックする必要があります。

セグメンテーションが適切であるかを評価するための4Rは、Rank(優先順位)、Realistic(有効規模)、Reach(到達可能性)、Response(測定可能性)です。それぞれのポイントごとに紹介します。

Rank(優先順位)

Rank(優先順位)は、経営戦略と照らし合わせながら、重要度によってセグメントがランク付けできるかを見極める判断基準です。

企業の資金や人材は有限なため、優先順位を正しく定めてリソースを分散させないのがポイントです。

Realistic(規模の有効性)

Realistic(規模の有効性)は、事業戦略やマーケティング戦略に沿って、対象となるセグメントが十分な売上や利益を確保できる規模があるかを調べる条件です。

自社の商品やサービスがニーズと合致していても市場規模が小さいセグメントの場合、十分な売上・利益を期待できないケースが多いため、費用対効果をよく考えたうえで対象から除外する必要があります。

Reach(到達可能性)

Reach(到達可能性)は、顧客に対して、自社のプロモーションおよび商品やサービスを的確に提供ができるかを調べる条件です。

例えば、需要を見込めても、対象が離島や海外だと輸送コストの高さがネックになりやすいです。Reachを活用することで、プロモーションにかかるコストを抑えながら、売上を伸ばせる可能性があります。

Response(測定可能性)

Response(測定可能性)は、セグメントの規模や購買力などを定量的に計測でき、マーケティング施策後の顧客の反応を分析できるかを調べる条件です。

マーケティング施策からどれくらいの購買に繋がったかを確認できれば、今後そのセグメントに注力すべきかの判断ができ、効果的な施策を検討できるようになります。

市場分析の観点でのセグメンテーションの事例

大手アイスクリーム食品メーカーA社の事例を紹介します。

従来、アイスクリーム市場のターゲット層は子どもで、価格帯も手ごろなものが主流でした。そこでA社は、市場拡大のためセグメンテーションを行ったところ、高価でも高品質な食品を求めるセグメントを見つけ出すことに成功しました。

大人向けの高級アイスクリーム路線でマーケティングを実施した結果、現在は定番アイスクリームとして市場に定着しています。

顧客コミュニケーションの観点でのセグメンテーション

デジタルマーケティングにおいて、顧客との関係性を高めるCRM施策などを行う際、より良い顧客コミュニケーションを行うためにセグメンテーションを実施します。

顧客の属性に合わせてセグメンテーションを行うことによって、その顧客に合った情報を届けられ、顧客体験を向上させることができます。

顧客コミュニケーションの観点での注意点は、元データである顧客データが適切に管理ができていなかったり、データがばらばらな状態では正確なセグメンテーションが行えないことです。正確なセグメントでなければ、顧客ごとに適したアプローチやコミュニケーションを行うこともできないため、正しくコミュニケーションをとるために、顧客データを一元管理することが大切です。

加えて、必要な顧客データをいつでも取り出せる状態にしておくためには顧客データ基盤を整える必要があります。顧客データ基盤は自社で構築することも可能ですが、その顧客データ基盤として、CDP(Customer Data Platform)も1つの手段です。

CDPとは、企業の顧客に関するデータを管理し、顧客一人ひとりを理解するための基盤のことです。顧客のwebのアクセスログや行動データ履歴など、オンライン・オフラインのデータも含めて顧客データが統合されているのでセグメンテーションが素早く行えます。また、CDPで生成したセグメントをもとに分析ツールに連携でき、顧客理解を深めることができます。

CDPについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。

関連:CDPとは?カスタマーデータプラットフォームの機能やメリット、活用例を解説

顧客コミュニケーションの観点でのセグメンテーションの事例

大手人材会社

大手人材会社B社の事例を紹介します。

大手人材会社B社は、従来、求職者が希望した職種に応じて画一的な情報を提供していましたが、求職者の職種や転職のタイミングがそれぞれ異なることから、マッチング精度を高めたOne to Oneマーケティングを実施することにしました。

求職者ごとの転職活動の状況やwebの行動データの収集、分析を行い、セグメンテーションにより求職者に合わせたサイト表示やメール配信を自動で行うなど、コミュニケーションを自動化する仕組みを取り入れています。

より一人ひとりに合わせた顧客コミュニケーションを展開したことで、求人への応募数を最大で1.8倍にまで増加させることに成功しました。

大手自動車メーカー

大手自動車メーカーC社の事例を紹介します。

大手自動車メーカーC社は、今すぐ車が欲しい人と、将来的に車がほしいと考えている人とではアプローチが異なるため、顧客一人ひとりの検討度合いに応じたマーケティングを実施することにしました。

webの行動データ、ディーラーのイベントでのオフラインデータ、広告データなどを統合したことで、顧客の購入検討状況を把握することができるようになりました。

結果、検討度合いに応じた広告を配信して、CTRが350%、CVRが18%から31%に向上しました。また、購入する可能性の高い顧客を特定し、ディーラーでの接客やリソースの配置を変更したことで成約率を14%も上げることに成功しています。

業界別のCDPを利用したセグメンテーション例

業界によって悩みや課題はさまざまです。CDPは幅広く活用できるため、業界別にCDPで作成したセグメントでどのようなマーケティング施策が実施できるかの例を紹介します。

製造小売業界のCDPを利用した施策例

アパレル・日用品販売・家具メーカーなどの製造小売業界において、ECユーザーのみか、実店舗のユーザーのみのデータを活用したセグメンテーションしかできていなかった場合、CDPを導入することで、ECと実店舗のユーザーも含めたデータをもとにセグメンテーションを実施することができ、分析を行ったり、適切なコミュニケーションを行うことができるようになります。

例えば、ECの行動データ履歴をもとに、店舗の近くにいる顧客のセグメントを作成してプッシュ通知を送って来店を促すことができます。

製造小売業界のCDP活用について、詳しくは下記の資料をご覧ください。

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不動産業界のCDPを利用した施策例

見込み顧客のオフラインとオンラインのマスタ情報や行動情報などをもとにセグメントし、分析することで顧客理解を深められます。また、顧客に状況に適した顧客接触や提案活動を行うことで、顧客体験の向上に繋がります。

例えば、webサイトの行動データや来店後のアンケート、商談時の営業管理システムのデータをCDPで統合、セグメンテーションを行いBIツールを利用して分析を行うことで顧客の状況に応じたコミュニケーションを行うことができます。

不動産業界のデータ活用について、詳しくは下記の資料をご覧ください。

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小売業界のCDPを利用した施策例

百貨店・スーパー・コンビニなどの小売業界において、店舗・EC・アプリ・DMの顧客データをCDPで一元管理し、顧客をセグメンテーションすることでwebサイトのバナーやDMなど顧客の状況に合わせて配信することが可能になります。また、天気や地域などの地理的変数をもとに状況に応じた情報発信ができます。

例えば、横浜市が雨の日の場合に、横浜市に在住している顧客にのみ、雨の日限定のセール情報を発信することが可能です。

小売業界のCDP活用について、詳しくは下記の資料をご覧ください。

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メーカーのCDPを利用した施策例

過去の問合せやフィードバックなどの顧客の声や自社が保有する顧客データをもとにセグメンテーションを実施し分析を行うことで、営業・マーケティング・新規開発などに活用できるデータを作成することができます。

例えば、業務効率の観点では、よくある問合せをFAQサイトに掲載することで、同じような問合せでの回答を減らすことができたり、チャットボットなどのweb接客の導入によってサポートコスト削減にも繋がります。

メーカーのCDP活用について、詳しくは下記の資料をご覧ください。

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