2021.05.19

アパレル業界のデータ活用

アパレル業界のデータ活用

消費者のオンラインシフトに伴い、アパレル業界では店舗の役割や顧客へのコミュニケーション方法を見つめ直すことが求められています。

本記事では、アパレル業界の3つの課題から解決策、CDPによるデータ活用について紹介します。

OMO実現に向けた顧客データ活用の基礎|店舗×ECの連携で顧客体験を提供するために

アパレル業界における3つの課題

アパレル業界における主な課題は3つあります。

消費低迷・消費者の成熟

アパレル業界では、消費者の成熟と景気の低迷に伴い、全体的に低コスト思考が広がっています。総務省統計局の家計消費状況調査平成29年品目別支出の状況によると衣類の支出額は年々減少傾向にあり、趣味や娯楽の要素が強いアパレル業界は不景気の時に影響を受けやすいです。

今までは「安物はすぐにダメになる」という認識がありましたが、縫製技術や繊維の品質の向上により、安くても質が良くデザイン性の高い製品が数多く店頭に並ぶようになりました。また、ファッションはトレンドの移り変わりが激しいですが、時代の流れに関係しないベーシックなアイテムも安く販売されており、安く買って長く使う節約志向の人々も増えています。一方で、ラグジュアリーなファッションにお金をかける消費者がいなくなったわけではありません。ブランド志向で高品質な物を求める人々も依然として多く、消費者の需要は二極化しています。

ただしセールスフォースの調査によると、今後メインの消費者となる1981年以降に生まれたミレニアル世代の86%が「より良い顧客体験を受けるためならより多くのお金を払っても良い」と回答しています。つまりシンプルに安い・高いという区切りで商品を選んでいるのではなく、どれだけ自分に合った体験やコミュニケーションを提供してくれるかが重要になってきていることが分かります。今後、ブランドの名前に頼っているだけではアパレル業界で生き残っていくことは非常に難しいでしょう。

オンライン・オフラインデータが分断されている

近年、技術革新によりチャットのようなデジタルコミュニケーションにおける接客をECでも実現できるようになっています。同時にデジタルシフトにより、消費者は実店舗に行かずともアプリで情報を得たり、ECサイトで買い物ができるようになりました。顧客にとって便利でストレスのない買い物をしてもらうために、企業はさまざまなチャネルを用いて顧客にアプローチを試みているかと思います。

  • 店舗
  • ECサイト
  • カタログ
  • アプリ
  • SNS
  • マスメディア
  • コールセンター
  • 屋外広告

しかし、これによって顧客がチャネルごとに分断されてしまったり、オンラインデータとオフラインデータをうまく融合できておらず、全体の売上拡大を逃してしまっているケースがあります。顧客データを幅広く活用できなければ、全体の売上で考えた時に先の見通しが明るくありません。今後は、チャネル全体で顧客をうまく循環させて全体の売上拡大を目指していくことが必要です。

商品の余剰在庫

商品の余剰在庫に頭を悩ませている企業は多いかと思います。アパレル業界では、どういった服が半年〜1年後に流行るのかを予測し、トレンドが起こる前に商品を生産をしておく必要があります。なぜなら、流行が起きているタイミングで生産を依頼すれば工場に相当な負荷がかかるうえに、需要の波が非常に大きいアパレル業界ではあらかじめトレンドを読んでいた競合他社に一瞬で遅れをとってしまうためです。

しかしトレンドが予測と外れれば、商品をさばき切ることは難しく、翌年にはトレンドが変わり商品の持ち越しもできないことが多いです。最悪のケースとして商品の大量廃棄に繋がってしまいます。廃棄するにも費用はかかりますし、廃棄を避けるためにセールを行うにしても、ブランドの価値を下げる恐れから破格の値段で売れないこともあります。

現代は世界的にSDGsの取り組みが重視されるようになっており、大量廃棄の問題はブランドの印象にも関わるようになりました。消費者発信のトレンドも増えていることから予測の難しさは増していますが、企業として無視できない課題であることは間違いありません。

アパレル業界における課題の解決策

消費低迷・消費者の成熟のための施策

消費低迷・消費者の成熟の傾向はありますが、衣類が生活必需品であることに変わりはありません。コロナ禍でスーツの売り上げは激減しましたが、代わりにルームウェアの需要が高まりました。つまり、消費者はその時代に合わせて必要なものや欲しい製品を購入しているので、企業は顧客のニーズをキャッチしてweb、モバイル、実店舗を含むすべてのチャネルやデバイスで説得力のあるコンテンツを提供することが大切です。そのために、顧客一人ひとりの理解を深めていくことは欠かせません。

消費低迷している中でも売上をあげている企業は「年齢」「性別」「職業」「居住地」「オンライン上の行動」「過去の購買データ」など、顧客データを豊富に集めており、顧客一人ひとりの詳しい個人プロファイルを作っています。不足するデータがあれば3rd Party Dataも活用して分析を行っているため、顧客のニーズをズレなくキャッチし、それに応えた施策を実施することができるのです。

また「どうすれば顧客の信頼を得ることができ、その信頼を保つことができるか」を考えることで、レンタルファッションや、自宅でのサイズ測定で体にピッタリ合う服をECサイトで購入できるなど、新しいサービスが生まれるきっかけにも繋がるでしょう。

オンライン・オフラインデータを融合させるための施策

apparel data utilization 01

実店舗に加えてECサイトやアプリなどのチャネルを運営しているアパレル企業は、オンラインとオフラインの垣根をなくし、顧客により良い体験を提供するためのマーケティング施策である「OMO」を進めていくのがおすすめです。そのためには各種データの統合が行えるようにするために会員証を1つに統合し、顧客データを一元管理しておくことが必要です。

OMOが実現できれば、顧客にオンライン・オフラインを意識させず「いつでも好きなタイミングで買い物をしたい、好きな場所で受け取りたい」という気持ちに応えていくことができます。加えて、ECサイトでお気に入り登録していた商品のクーポンを店舗来店時に配信したり、店舗の商品につけたQRコードをアプリで読み取ってもらいオンライン上の商品レビューやコーディネートを確認して購入を促したりすることも可能になります。

OMOについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。

関連:OMOとは?O2Oやオムニチャネルとの違い、実現に必要なポイント

商品の余剰在庫のための施策

商品の余剰在庫を防ぐためには、人間の経験や勘に頼ってしまっていた部分をなくし、データの活用によりトレンド予測の精度を高めていくことが必要不可欠です。例えば顧客の購買データやwebの行動履歴などから興味関心を分析したり、人工知能(AI)を用いることも有効です。予測がより正確になれば無駄な生産を抑え、商品の廃棄量も減らすことができます。

apparel data utilization 02

また在庫管理を改善することで、余剰在庫を減らすことができます。例えば、さまざまなチャネルで商品を販売しているアパレル企業は、それぞれの店舗やECサイトで個別に在庫を管理していると「店舗では売り切れたけどECの在庫は残っている」ということが往々にして起こります。

在庫が一元管理されていれば、店舗ごとの余剰在庫が出にくくなるため、商品の廃棄量を減らすことが可能です。また、顧客は来店した店舗に在庫がなくても取り寄せで欲しい商品を手に入れることができるため、欠品による利益損失も抑えられます。

アパレル業界がアプローチを成功させるCDPでのデータ活用

顧客理解を進めること、また顧客や商品データを一元管理するためには、インフラを整える必要があります。そのインフラとして、CDP(Customer Data Platform)が1つの解決策となります。

CDPとは「カスタマーデータプラットフォーム」の略称で、企業の顧客に関するデータを管理し、顧客一人ひとりを理解するための基盤のことです。

CDPについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。

関連:CDPとは?カスタマーデータプラットフォームの機能やメリット、活用例を解説

顧客データを一元管理

CDPは、名前やメールアドレスなどの個人情報、webサイトやアプリでの行動履歴、実店舗での購入履歴など、顧客に関するすべてのデータを収集し「実在する個人」にデータを紐づけて一元管理できます。

多くの企業では、webサイトやSNS、メルマガ、アプリなどそれぞれのチャネルごとに顧客管理システムを持っており、1人の顧客に対して別々の顧客IDを割り振り、別人として管理されているケースが多々あります。これは「データのサイロ化」と言い、データがシステムや部署ごとに分断されて管理されている状態です。

データは顧客単位で紐づけられていなければ、実際は同じ人物が行った行動でありながらもデータ上では別の人物として認識し、顧客を正しく理解できなかったり誤ったコミュニケーションを行ってしまったりという可能性があります。

アパレル業界では、よく以下のようなツール・システムや自社構築のプラットフォームが導入・利用されていますが、データのサイロ化を解決するために、CDPはこれらのツール・システムと連携し、顧客データを1つに統合することが可能です。

ツール名 webアクセス解析ツール CRM / SFAツール EC / 購買データ管理ツール ID-POS
ツールの例 ・Adobe Analytics
・Google Analytics
・Ptengine など
・Salesforce
・Synergy!
・HubSpot CRM
・eセールスマネージャー
・F-RevoCRM
・kintone
・Zoho CRM など
・EC being
・Shopify
・EC-CUBE
・ecforce
・EPR(マクロミル)
・W2 Unified など
・スマレジ
・airレジ
・ORANGE POS
・POS+retail
・shopping Scan(True Data)
・ユビレジ など

CDPを導入することで、顧客データが一元化され、1人の顧客として分析できるようになり、オンラインとオフラインを融合させるOMOも可能になります。データ管理について、詳しくは下記の記事をご覧ください。

関連:データマネジメントとは?DX・データ活用に必要不可欠な理由と実践事例

顧客の状態に合わせたコミュニケーション

CDPは顧客データを一元管理できるうえに、分析・施策を行うツール(BIツールやMA、プッシュ通知、web接客ツールなど)に連携でき、分析した結果をもとに顧客に対して適切にアプローチしていくことが可能です。

例えば、CDPは以下のようなツール・システムと連携することが可能です。

ツール名 BI / 分析ツール MA / メール配信 / その他施策
ツールの例 ・Tableau
・Looker Studio(旧Google Data Portal)
・Yellowfin
・Amazon QuickSight
・DOMO
・Redash など
・Marketo
・Marketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot)
・HubSpot
・Synergy!
・Karte
・DLPO
・LINE
・Repro
・WEBCAS email など

これにより、顧客の興味関心に合わせてアプリでおすすめ商品を通知したり、サイト離脱やカゴ落ちに対してメルマガでクーポンを配信したりできます。CDPを導入し、セグメントを分けて顧客に対して適切なコミュニケーションを図ることで、売り上げアップや機会損失を最小限に抑えられます。

選ばれ続ける企業となるために取り組むべきコミュニケーションの全体設計について、詳しくは下記の資料をご覧ください。

無料資料:データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

需要予測・在庫管理

CDPは顧客データの他にも、商品データや3rd Party Dataである天候・位置情報などのデータも保有できます。

データの保有の仕方により、集計の方法や顧客データの紐付け方法などが異なりますが、商品データをもとにしたお気に入り商品の在庫数や再入荷などに応じた通知、天候情報や位置情報をもとに天候に応じたクーポンや各種情報の通知などの施策も検討可能です。一方で、特定の施策においてはそれらに特化したSaaSやシステムを導入した方がコストメリットがあるケースがあるため、CDPの導入前にあらかじめ要件を定めておくと良いでしょう。

また、CDPでの分析結果をBIツールなどによるレポート・ダッシュボードを構築することで社内(グループ会社)で共有することもできるため、各店舗でデータを活用できるようになり、需要予測による発注管理やシフトの調整などでの利用も考えられます。

下記の資料では、アパレル業界をはじめとする製造小売業界の課題をCDPでどのように解決できるのか、事例を交えて分かりやすく紹介しています。ぜひお役立てください。

無料資料:製造小売業界におけるCDPの効果と活用例の資料ダウンロードはこちら

製造小売業界におけるCDPの効果とINTEGRAL-COREの活用例

EVERRISEが提供するCDP「INTEGRAL-CORE」

弊社EVERRISEでは、顧客データをノーコードで管理できるCDP「INTEGRAL-CORE」を提供しており、これまでTVerさまやキーコーヒーさま、hoyuさまなどを含め複数社の導入実績がございます。

  • CDP「INTEGRAL-CORE」の特長
    • 顧客に関するあらゆるデータを収集・統合
    • ノーコードでデータ集計やセグメント作成
    • 外部連携機能でBIツール・MA・CRMなどへデータを渡し、マーケティング施策へ活用可能
    • 自社開発システムならではの総合支援体制
    • 専用環境での提供も可能な国産CDP

CDP「INTEGRAL-CORE」の機能や特長、ユースケース、実際の画面については、以下の無料資料で詳しく紹介しています。データ活用にお困りの際はぜひお気軽にご相談ください!

無料資料:CDP「INTEGRAL-CORE」サービス資料のダウンロードはこちら

Related Post

関連記事