マーケティングの全体設計の中でどのツールやシステムを導入・構築するかを選ぶ際、ベスト・オブ・ブリード、スイートのどちらの製品にするかを検討する必要があります。
本記事では、ベスト・オブ・ブリードとスイートの違いとそれぞれのメリット・デメリット、マーケティングにおけるツール、システムの導入・構築においてどちらを選ぶべきかについて紹介します。
ベスト・オブ・ブリードとスイートの違い
ベスト・オブ・ブリードとは
ベスト・オブ・ブリード(Best of Breed)とは、企業のシステム構築において、同一のベンダーやプラットフォームではなく、各分野で最適な製品やソフトウェアを採用し、組み合わせてシステムを構築することです。マルチベンダーとも呼ばれています。
例えばCRMツールはA社、MAツールはB社、BI・分析ツールはC社のように、業務や目的ごとに最適な製品を選択するのがベスト・オブ・ブリードです。
近年、すぐに導入できるSaaSの製品が主流になったことにより、ベスト・オブ・ブリードでのシステム構築がしやすくなりました。
スイートとは
スイート(Suites)とは、ベスト・オブ・ブリードとは反対に、同一のベンダーやプラットフォームの製品やソフトウェアに統一してシステムを構築することです。
また、スイートとして採用されるような多機能な製品そのものを指す場合もあり、オールインワン(All in One)とも呼ばれています。
デジタルマーケティングに必要な機能を備えているスイート製品の代表例としては、Adobe Experience CloudやSalesforceなどがあります。
ベスト・オブ・ブリードのメリット・デメリット
ベスト・オブ・ブリードのメリット
自社に最適な機能を使える
それぞれの分野にあわせて最適なものを組み合わせるため、各業務や部門ごとに適した製品やシステムを使うことが可能です。
高い柔軟性
製品やシステムがそれぞれ独立しているため、より優れた機能や最新技術を取り入れた製品に移行しやすいです。
また、各製品がそれぞれの分野に特化しており、機能のカスタマイズをしやすいことが多いです。初めからカスタマイズが容易な製品を選択することで、運用開始後の新たなニーズや要件にも柔軟に対応できます。
リスクを分散できる
異なる製品を使用することで、セキュリティや製品自体のサービス存続に関する問題が起きた際に、問題のある製品やシステムだけへの対処で済み、影響を最小限に抑えることができます。
ベスト・オブ・ブリードのデメリット
システム構成や運用が複雑になりやすい
製品ごとにデータが管理されているため、データの統合・連携・管理や、データの一貫性を保つためのシステム構成、運用が複雑になってしまうことがあります。
導入・運用の負担が大きくなりやすい
導入面では、製品ごとに使用感やUIが異なるために学習コストが大きくなりやすいです。
運用面では、製品ごとのライセンス管理やアップデート、連携のための追加開発といった手間や、トラブル時に各ベンダーからのサポートを受ける必要があるなど、さまざまな工数が発生します。
スイートのメリット・デメリット
スイートのメリット
データ連携がしやすい
同一ベンダーの製品のため、製品やアプリケーション間のデータ・機能に互換性があり、連携して使えることが多いです。
導入・運用の負担が少ない
同一ベンダーの製品のため、UIや操作性が統一されていることが多く、学習コストを抑えやすいです。トラブル時にも同じベンダーから一貫したサポートを受けることができます。
スイートのデメリット
不足機能や不要な機能がある
一般的な機能が多数用意されている反面、分野によっては不足している機能や、逆に使わない機能がある場合があります。スイート製品は多機能な分費用が高額なことが多く、不要な機能があるとその分無駄な費用となってしまいます。
また、機能の細かなカスタマイズには対応していないことも多いです。
スイートのメリットにはデータ連携のしやすさがありますが、M&Aを繰り返してラインナップを拡大しているスイート製品も多く存在します。その場合、データ連携が簡単であるというカタログスペックであっても、各機能ごとの製品においてデータの持ち方や定義が異なり、利用用途によってデータ連携のしやすさというメリットを享受できないケースも考えられます。
ベンダーロックインになってしまう
1つのベンダーに依存してしまい他製品への切り替えが困難になる、ベンダーロックインという状態になってしまいます。
一部の機能がなくなったり、足りない機能があったりする場合でも同じ製品を使い続けなければならず、目的の実現への選択肢が狭まってしまうなどの問題が起こりやすいです。
問題が起きた時の影響範囲が大きい
アップデート時などにトラブルがあると、複数の機能やアプリケーションに影響を与えてしまうリスクがあります。また、セキュリティ面や製品自体のサービス存続に関わる問題が起こると、多くの機能が使えなくなる、他の製品への移行が必要になるなど影響範囲が大規模になってしまいます。
ツールやシステムを選定する前に必ず行うべき機能の整理
マーケティングの全体設計ではツールなどの選定の前に、まずマーケティングの目的達成のために行うべき施策や分析、またそれらの実現のために必要な機能を洗い出すことが重要です。
洗い出した機能をどのような手段で実現するかを検討する中で、ベスト・オブ・ブリードかスイートかの選択を行います。
例として、ECサイトの既存顧客の年間売上の向上を実現するために、既存顧客へのクーポンのメール配信の施策実行と効果測定、クーポンを利用したうえで年間売上の高い顧客の属性の分析を行うケースを考えてみましょう。
この場合「指定リストへのメール配信」「メールの配信結果の記録」「顧客のクーポン利用の記録」「顧客の商品購入金額の記録」「各顧客データ同士の紐づけ」「紐づけた顧客データの蓄積・管理」などが、行いたいことに対して必要な機能です。
次に洗い出した機能を実行するための手段を決めます。
ベスト・オブ・ブリードでは、「メール配信・配信結果の記録」はメール配信システムやMAツール、「クーポン利用・商品購入金額の記録」はCRMツールやアクセス解析ツール、「データ同士の紐づけ、蓄積・管理」はCDPや自社構築したシステムなど、それぞれ自社にとってベストなものを選択します。
単に既製品のツールを選ぶだけでなく、人の手で行ったり新しいシステムを開発したり、さまざまな選択肢があります。
スイートの場合は、各機能を備えている製品を選択します。
ベスト・オブ・ブリードとスイート、どちらを選択すべきか
ベスト・オブ・ブリードとスイートには双方にメリット・デメリットがあり、マーケティングで実現したいこと、重視しているものによってどちらを選択すべきかは変わります。
弊社EVERRISEはマーケティングに関わるツールやシステムの導入・構築で、ベスト・オブ・ブリードの考え方を推奨しています。理由としては以下の2つがあります。
ビジネスフェーズに合わせて最適なコストで導入・構築を進められる
新規事業のようなビジネスの立ち上げ段階では、あるべきデータの持ち方や必要なマーケティング施策が不透明で、製品選定の要件を決められない状態が多いです。
最初からMAツールやCRMツールなどの機能が組み込まれた多機能なスイート製品を採用してしまうと、事業の初期段階から不要な機能にも費用がかかる、逆に事業の成長に伴い必要になった機能が不足する、といった問題が生じる可能性があります。
ベスト・オブ・ブリードであれば、初期は事業規模やフェーズにあう低コストで導入・運用可能な製品を採用し、事業の成長や要件に応じて適切な製品に切り替えていくことで、最適なコストでシステムやマーケティングの環境を構築できます。
例えば最初はメール配信に特化したツールを使い、リード数の増加やビジネス成長によって実施したい施策が変化したら、必要な機能を備えたMAなどの高機能なツールに切り替える、というような進め方ができます。
既存ツールを使い続けながらシステムを導入・構築できる
既存事業では、すでにMAツールやCRMツール、BIツールなどのマーケティングツールを導入済みの場合が多いです。
既存のマーケティングツールの機能を持ったスイート製品を導入する場合、既存ツールの入れ替えが必要になり、それに伴うコストが発生してしまいますが、ベスト・オブ・ブリードであれば使い慣れたツールを使い続けていくことができます。
下記の資料では、データ活用の正しい捉え方から大手企業の取り組み例とともに、企業を強くするデータの持ち方について詳しく説明しています。新たなツール導入・システム構築の際に、新規事業だけでなく既存事業においても改めて考えるべきことがまとまっている資料となっています。ぜひご活用ください。
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EVERRISEが提供するCDP「INTEGRAL-CORE」
弊社EVERRISEはCDP「INTEGRAL-CORE」を提供しています。CDPとは、顧客データ活用に特化したマーケティングシステムです。
関連:CDPとは?顧客データ活用に特化したCDPの機能とメリット、事例などの基礎知識まとめ
CDPの中には顧客データ管理の部分以外のマーケティングに役立つ機能を備えたスイート製品がありますが、CDP「INTEGRAL-CORE」はデータ管理と各種ツールとの柔軟なアクセスを目的として設計・開発されているベスト・オブ・ブリードの考え方で作られたCDPです。
CDP「INTEGRAL-CORE」は、顧客データをさまざまなツールやシステムから収集して「実在する個人」のデータに紐づけて統合し、一元化するツールです。柔軟なセグメント作成と、そのセグメントを各マーケティングツールに適した形で加工・連携できることが特長で、名寄せや集計処理などの機能も最初から組み込まれています。顧客データの統合とツール連携によって、既存のツールを継続利用しながらも強力なデータ基盤を構築することが可能です。
CDP「INTEGRAL-CORE」はこれまでTVerさまやhoyuさまなどを含め複数社の導入実績がございます。また、EVERRISEではCDPの提供だけでなく、デジタルマーケティング領域における300件以上の開発実績で培ったノウハウから、データ活用基盤構築のためのコンサルティングや自社の基幹システムを含めた各種システムと連携を行うための開発も可能です。
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