2023.04.27

BIツールとExcelの違い、データ分析が正しく高速になる活用例

BIツールとExcelの違い、データ分析が正しく高速になる活用例

近年「勘、経験、度胸」に頼らず、データに基づいて意思決定や戦略の立案、実行、振り返りなどを行うデータドリブンマーケティングが注目されており、BIツールはデータを活用したマーケティングに欠かせないものになっています。

本記事では、BIツールの目的や機能、代表的なツール、BIに不足する機能と解決策を紹介します。

2024年マーケティング&データ活用最新トレンド

BIツールとは

BIツールの「BI」とは、「ビジネス・インテリジェンス(Business Intelligence)」を意味します。ビジネス・インテリジェンスとは、企業が日々蓄積されていく膨大なデータを分析し、その分析結果を経営意思決定に活用することをいいます。このBIを助けるシステムを総称したものを「BIツール」と呼びます。

出典:https://bi.lakeel.com/course/detail01/

BIツールは、分析や意思決定を行うために必ずしも必要というわけではなく、必要なデータがあればBIツールを導入せずとも意思決定をすることは可能です。しかし「正しく」「スピーディに」データを分析し、意思決定を行うためには、BIに必要な機能を備えたツールを使うべきと言えます。

BIツールは経営層やマーケティング以外にも、企業のあらゆる業務で利用することができます。

業種・業務 分析・支援の種類
経営部門 経営分析・財務分析・経営支援・予実分析など
マーケティング部門 顧客分析・販売時期分析・エリア分析など
営業部門 営業分析・売上分析・営業支援など
人事部門 人事データ分析・残業分析など
流通・小売業の現場 在庫分析・ABC分析・バスケット分析など
製造業の現場 購買分析・故障率分析・不良率分析など
バックオフィス全般 帳票自動作成など

BIツールの重要性が高まっている理由

BIツールが使われ始めたのは1990年ごろだと言われています。最初は米国の企業が中心でしたが、現在では日本の企業にも広く普及してきています。

すでに多くの企業がBIツールを導入していますが、近年より一層その重要性は高まっています。その理由として主に2つのことが考えられます。

データ量の爆発的な増加による顧客行動の多様化

従来、企業と顧客の関係は、企業がモノやサービスを一方的に提供するだけのシンプルなものでした。しかし、インターネット技術が発展した近年では、顧客は自ら情報収集を行い、比較・検討を重ねて自分の嗜好性に合ったものを選択できるようになったため、顧客のニーズや価値観は多様化しています。

テクノロジーの進歩やそれに伴う顧客行動の変化は激しく、これまでの経験則や思いつきなど不確実で偏った意思決定では、顧客のニーズを満たすことができなくなっています。

関連:モノ消費からコト消費、さらにトキ消費へ。Z世代はイミ・エモ消費が増加

また、企業も多様かつ高精度なデータや、オンラインの情報だけではなく実店舗での購入情報や位置情報などオフラインの顧客データも容易に取得できるようになっています。

直面している課題に対する解決策を導き出すために莫大なデータを集めても、人力で分析するには限界があります。

どのような未来になっていくのか予測が難しい状況でも競争優位性を確保するためには、データ(根拠)に基づいて、高速でPDCAを回していくことが不可欠です。

そのために、あらゆるデータの集計や分析機能を持つBIツールが重要だとされています。

IT人材の不足

データアナリストやデータサイエンティストは、分析手法の知見に優れ、分析結果から洞察を生み出すプロであり、データを有効な資源として活用するには欠かせない存在です。

しかし、日本におけるIT人材の不足は顕著で、みずほ情報総研株式会社が発行したIT人材需給に関する調査によると、IT人材の不足状況についての予測では、2030年に最大で約79万人の人材不足に陥る可能性があると報告されています。

データ分析に強みを持つ人材を採用する方法もありますが、根本的に人材が不足している現在、人件費も高くなりますし、企業同士での取り合いになるため採用に繋げることは難しいでしょう。

企業内でデータ活用や分析に取り組んでいかなければならない中で、BIツールはダッシュボードなどで誰でもグラフなどを使って莫大なデータを可視化することができるため、重要性が高まっています。

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BIツールを導入する目的

迅速な意思決定

BIツールは、営業・マーケティング・人事など、部門ごとにバラバラに存在しているデータを集約し、グラフや表などを使って可視化することができます。最新のデータが反映されたダッシュボードを見れるため、状況の把握が簡単にできるようになり、経営の意思決定スピードや精度が上がります。

また、現場レベルでの課題発見・解決にも役立ちます。今まで隠れていて気が付かなかった問題や課題をいち早く察知することで、迅速な対応が可能となり、早い段階での解決に繋がります。

分析精度の向上

各種システムに分散している莫大なデータを1か所に集め、BIツールで確認できるようにすることで、目的に応じた抽出を素早く行い、分析した結果をレポートとして作成することが容易になります。

BIツールの導入によって、システムを横断したデータの分析が簡単にできるようになり、今まで気付けなかったデータ間の関連性を発見することも期待できます。

レポート作成の時間削減

手作業でレポートを作成しようとすると、さまざまなシステムからデータを取得し、データの形式を合わせてから集計・分析を行い、分析結果をまとめてグラフなどに表してレポートを作成するといった作業が必要になります。データの加工時にミスがあれば、間違った分析結果を確認してしまうことにもなります。

対して、BIツールを導入すれば、これらの作業がほとんど不要になります。レポートの作成のための一連の作業に使っていた時間や手間が軽減され、最終的に人件費や労力の削減へと繋がるでしょう。

データの抽出や集計に費やしていた時間を、分析や考えるための時間にできるのはBIツールの大きなメリットです。

BIツールとExcelの違い

Excelは利用企業が多く、操作性の利便さやコストの面からも非常に便利です。

Excelもデータからグラフやチャートを作成することができるため、わざわざBIツールを導入する必要があるのか疑問に思われる方もいるかもしれませんが、内容に大きな違いがあります。

例えば、データの処理の観点では、Excelは大量のデータを処理する場合に非常に時間がかかったり、処理のキャパシティを超えて落ちてしまったり、データが欠損してしまうことがあります。BIツールは大量データ処理を前提としており、またデータを事前に加工しておくことで、高速でデータ処理を実現できます。

また、共有の手軽さも挙げられます。Excelで作成したレポートは、データベース内のデータが更新されても、以前の数値のままの内容となってしまいます。しかしBIツールであれば、データベース内のデータが更新されても最新の情報がすぐに反映されるため、レポートを修正することなく信頼性の高いレポートが完成します。

さらに、そのレポートを添付してメール送付したり共有フォルダに格納したりする必要もなく、インターネット環境さえあれば社内外の相手と共有することもできます。

大量のデータを分析・活用するためには、Excelは適切なツールとは言えません。詳しくは、下記の記事をご覧ください。

関連:Excelを利用したデータ活用のメリット・デメリット

BIツールの主な機能

BIツールには主に4つの機能があります。

  • レポーティング
  • OLAP分析
  • データマイニング
  • プランニング

それぞれ簡単に解説していきます。

レポーティング

必要なデータを必要なタイミングで取り出し、経営者やマネージャーが見やすいようにダッシュボードなどにまとめて共有することができる機能です。

KPIなどのパフォーマンスチェックや素早く異常を感知することで、意思決定を効率よく行えます。

関連:KGI・KPIとは?企業別の事例と設定手順、KPIツリーの作り方

OLAP分析

OLAPとは「Online Analytical Processing(オンライン分析処理)」の略称です。蓄積したデータを「スライシング」「ドリルダウン」などの処理を行うことで、要因を深掘り・特定するための分析手法です。

近年のBIツールは「インメモリ」という高速処理技術により、これらの処理を画面上でスピーディーに行うことが可能です。

データマイニング

データマイニングとは蓄積したデータに対して、統計的な処理を行うことで、経営やマーケティングを行ううえで有効なパターンや傾向をつかむための分析手法です。

データマイニングツールはクロス分析や相関分析、回帰分析といった複雑な統計分析を行うことができるツールです。

プランニング

過去のデータをもとに「シミュレーション」を行い、その計画の根拠を得るための機能です。主に経営者が「予算編成」などに使います。

What-if分析などを使い、条件の変化によって売上や利益がどのように変化するのかをシミュレーションすることができます。

BIツールの活用例

BIツールでのデータの可視化

BIツールにはデータをビジュアライズし、ダッシュボードを作れるものが多いです。データベース内に大量にあるデータの数値の羅列を見ただけでは、どれが重要な値なのかを判断するのは難しいでしょう。素早い意思決定のためにはデータを見やすく可視化することが不可欠です。

https://datastudio.google.com/u/0/reporting/0B_U5RNpwhcE6TmpwV2hBOGdKYWM/page/qlD/preview

上の画像はGoogleデータポータルが提供しているサンプルダッシュボードの1つです。

重要なデータがグラフで推移や比較しやすくなっています。また、前期間との比較値も色分けされ、パッと見でデータの良し悪しが判断できるようになっています。

使用するBIツールの機能にもよりますが、気になるデータはさらにドリルダウンしてBIツール上で細かなデータの内訳を確認することもできます。

可視化するデータの例としては、経営・財務データ、各種売上データ、市場データ、営業活動データ、広告配信データ、アクセス解析データ、人事データなどが挙げられます。

ビジュアライズだけでなく、分析を行いデータ変化の原因や注視すべきデータをアラートする機能を持つBIツールもあります。

YellowfinのRFM分析

顧客分析手法の1つである、顧客をランク付けし重要な顧客グループを導き出すRFM分析はYellowfinでは次のように表示できます。

YellowfinのRFM分析の例

Yellowfinのインサイト機能

BIツールごとに特徴的な機能もあり、Yellowfinではデータの気づきを得やすいように、データの差異や変化量を分かりやすく表示するインサイト機能があります。

Yellowfinのインサイト機能

データがBIツール上で常に最新の状態に反映されていれば、重要なデータの分析と意思決定を迅速に行うことができるでしょう。

BIツールの選び方

BIツールを選ぶ際には4つのポイントがあります。

機能と価格のバランス

自社に必要な機能を洗い出し、それが叶うツールを導入候補にしましょう。

比較・検討時は「多機能な方がいい」と考えがちですが、使わない機能が多すぎても操作性が悪くなりますし、コストも膨らみます。機能の過不足がないものを選ぶのがおすすめです。

連携できるシステム

社内の既存システムと連携できるBIツールを選ぶか、データを別で保管する場合はそのシステムと連携できるかどうか確認しましょう。

連携できない場合、手動でデータを抽出することになり、膨大な手間がかかるうえ、データを最新の状態に保つのも難しくなります。

BIツールを導入する意味が薄れてしまうため、連携できるかどうかは必ず確認します。

使いやすさ・求められる知識レベル

全社的に使う場合や専門的な知識を持った従業員が少ない場合は、直感的に操作できるBIツールを選ぶと良いでしょう。

目的や環境によっては高度なBIツールが適していることもあるため、BIツールは誰が何のために使うのかを明確にしておくことが大切です。

サポート体制

分からないことや不具合が起きた時に相談しやすい企業のツールを選ぶことも大切です。

導入支援が充実しているか、言語が対応しているか、サポートの範囲や問合せ方法なども確認しておくと良いです。

代表的な5つのBIツール

BIツールによってそれぞれ特長があるので、自社に合ったBIツールを選びましょう。

Yellowfin

Yellowfin

Yellowfinは、データの変化はだけでなくなぜそれが起きたのかというその原因までを追求できるBIツールです。Data Transformation(データ変換)やAssisted Insights(自動インサイト)、コラボレーションツールなどを網羅しているほか、機械学習アルゴリズムを採用したAssisted Insights(自動インサイト)機能を備えています。

Tableau

Tableau

非エンジニア・非アナリストでもデータ加工やダッシュボード作成ができ、対応しているデータソースの種類も豊富なBIツールです。Tableau DesktopやTableau Prepなど用途に合わせたラインアップが揃っており、個人向けのプランもあります。

DOMO

DOMO

各データソースと繋がるためのコネクタが1,000種類以上あり、また、API連携・OAuth認証でデータ連携が可能なため開発なしで初期設定ができるBIツールです。リアルタイムでのデータレポート生成ができる、アラート機能などもあります。

Googleデータポータル

Googleデータポータル

無料で利用できるBIツールの中でも非常に高機能で使いやすいツールです。 データソースのコネクタも増え続けています。まずはデータポータルで可視化を試してみるのも良いでしょう。

Redash

Googleデータポータル

OSSで提供されている、BIというよりはダッシュボードツールです。 SQLやデータソース側の知識が必要になるためエンジニアリソースが必要ですが、対応しているデータソースも多く、スケジュールやアラート機能もあり、簡単にデータを可視化することができます。

BIツールを導入する際に注意すべき4つのポイント

BIツール導入の目的を明確化する

BIツールがあれば意思決定まで円滑に進むと思われるかもしれませんが、実際はほとんどの場合がそうではありません。

また、グラフなどで単に見やすいダッシュボードを作れば良いということでもありません。そのダッシュボードで、何を判断するための分析が必要なのか、必要なデータをどのように取得し集計するかが重要です。

データを蓄積できる箱を用意する

BIツールはデータを可視化するためのものであり、基本的にはデータを貯める箱は別に存在します。ツールやデータベース、データの入ったファイルとその形はさまざまですが、まずは見るべきデータが蓄積されている必要があります。

このBIツールで見るべきデータが散らばっていて、必要なデータに自由にアクセスできない状態は、データ連携がうまくいかない原因のひとつにもなります。

そもそもどんなデータを貯めるべきなのかといった点については下記の記事をご覧ください。

関連:顧客データ収集の方法と有効なツール。収集すべき2種類の顧客データ

データの前処理を正しく行う

BIツールにはデータを取り込み整理する機能を備えているものもありますが、それだけでは不十分で、データの前処理が必要な場合が多いでしょう。

データの前処理には各データ型の指定やデータ粒度の整理、データのクレンジング、BIツールでデータを正しく表示するために足りないデータの補充などがあります。 具体的には、姓名のスペース有無などの表記ゆれ調整、特殊なセッション記録や参考にすべきでない値を除外する外れ値補正などです。

このような作業はExcelなどで行うことも可能ですが、最初の一回で済むわけではなく、BIツールへデータを送るたびに発生します。継続的に発生する同じ作業を人力で行うことは、業務効率化の観点で得策とは言えません。

自動でBIツールへのデータ送信できるようにする

前処理が済んだデータを送信(取り込み)することで初めてBIツールでデータを見れるようになります。

データ連携のための作業はすべて手作業で行うこともでき、データの種類や前処理が少なければそれで済む場合もあります。

しかし、データ連携は可能な限り自動化するべきです。データ分析の準備のための時間がかかりすぎるとPDCAを高速に回せず、BIツールを使うメリットも半減してしまいます。また、人的ミスによってそもそも正しいデータを見ていなかった、などの問題も発生します。

そのため、BIツールをより有効利用するためにはデータ連携を自動化する仕組みやツールが必要になってきます。

データを蓄積しているもの(以下、データソースと表現します)が自社システムやデータベースの場合、それらとBIツールを繋ぎデータ送信を自動で行うための仕組みの開発・構築が必要です。

利用するBIツールに対象のデータソースがコネクタとして公式に連携されていれば、BIツール側の管理画面からの操作でデータを取り込み、そのまま利用することもできます。

しかし、すべてのデータソースがBIツールと連携していることは少ないでしょう。その場合はETLツール、CDPのようなツールでデータ連携をより効率的に行うことができます。 これらのツールを使う場合もデータソースへのアクセスの仕組みを構築しておく必要がありますが、増え続けるデータソースへも幅広く対応できるのが強みです。

ETL(Extract/Transform/Load)はその名のとおり、必要なデータを抽出・変換し、指定の場所へ格納できるツールのことです。BIツールのような複数の環境から集めたデータを扱うツール・システムとのハブになります。

BIツールを最大限に活用するCDP

CDPとはカスタマーデータプラットフォームの略で、顧客データを管理するプラットフォームです。

BIツールで見るデータには、アクセスデータや売上、LTVなど顧客に関係するものが多くありますが、CDPはそれらを格納し管理するためのシステムです。

顧客に関するさまざまなデータを1か所にまとめるために、他システムからのアクセスが可能なETL機能を備えており、かつ大量のデータを蓄積できるのがCDPです。

BIツールとのコネクタがないツールであっても、CDPにデータを取り込む機構を開発すればスムーズにデータを受け渡すことが可能です。さらに他のメール配信システムなど、貯めたデータの送信先になるさまざまなツールに対しても連携ができるため、独自のシステムや業界特化の特殊なシステムとの連携という点でも、CDPにデータをまとめておくことでデータを柔軟に活用できます。

CDPとBIツール連携について、詳しくは下記の資料をご覧ください。

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CDPによる顧客理解と分析

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