データは持っているだけでは意味がなく、目的をもって活用することで初めて価値がでます。しかし、データを活用するためには、持っているデータのうち必要なデータを集め(収集)、使いたい形に加工(統合)を行う必要があります。
この収集や管理・統合・集計などを行う際、表計算ソフト「Excel」を利用している方は、多いかと思います。2020年の段階で、日本企業の内の98.5%の企業がExcelを利用しているという調査結果も発表されています。操作性の利便さやコストの面からもExcelは非常に便利です。しかし、扱う情報や目的によっては、Excelでは限界を迎えてしまい、担当者の工数の圧迫や目的が達成されずに終わってしまうこともあるかもしれません。
本記事では、「顧客データの管理・利用」という点にフォーカスを当てて、Excelのメリット・デメリットと、Excelでの顧客データ活用の限界について紹介します。
顧客データとは
まず、顧客データの重要性と特徴について触れておきたいと思います。
LTV向上のために欠かせない顧客データ
情報量の増加やニーズの多様化に伴い、LTV向上のためにこれからは顧客を一人ひとりを理解することが重要です。顧客理解を深め、マーケティングを行うことが求められていきます。
顧客理解のためには、顧客データの活用が必須です。データを保有しているだけでは、意味がありません。正しく活用することではじめて意味があります。顧客データを管理する時は、LTV向上のための「活用」を念頭に置いて管理することを意識しましょう。
関連:顧客データ活用の課題と解決策|5つの成功事例から学ぶ分析・管理方法
顧客データは取得方法や種類はさまざま
現在、顧客とのコミュニケーションを図る手段は多様化しています。それに伴い、企業が取得できる顧客のデータは、種類も形もさまざまあり、1つの固定のフォーマットに落とし込むことは、難しくなってきています。
例えば、アパレルや家具類などのECサイトと実店舗を持つ小売業であれば、 会員情報などの属性情報、webサイトの閲覧情報や購入履歴や実店のPOSレジの情報などの行動情報が存在します。
不動産や保険などの対面営業のビジネスであれば、情報収集の際に閲覧するwebサイトやweb広告のアクセスログや広告、DMやメールマガジンの開封状況などデジタルで取得できるものから営業が顧客に直接ヒアリングした検討状況や購入対象の条件などが存在します。少し例に挙げただけでも、多種多様なデータが存在することが分かるかと思います。
顧客データを活用してLTVの向上を図るためには、チャネルや種類に問わず、必要なデータを活用することが求められ、これらをどのように管理するかを考える必要があります。企業の正しいデータ管理について、詳しくは下記の資料をご覧ください。
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顧客データの種類について
データには、大きく分けて2種類存在します。
基本データ
顧客の属性や、店舗・商品などの基本データを指します。これらは一般に、更新頻度が低いデータです。
- 顧客の会員情報
- 店舗情報
- 商品情報
- 社員管理名簿 など
行動データ
取引に関するデータ、つまり何らかのアクションが発生したでき事の詳細を記録したデータを指します。これらは一般に更新頻度が高いデータです。
- 購買情報
- webサイトアクセスログ
- キャンペーン応募ログ
- アプリ使用ログ
- 社員の勤務状況 など
それぞれのデータの詳細や収集方法について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
関連:顧客データ収集の方法と有効なツール4選|収集すべき2種類のデータとは
Excelを使ったデータ管理のメリット
安価に始められる
導入コストが非常に安いことは、Excelの最大の魅力かもしれません。現在はExcelのみの個別ソフトウェアの対応はなく、Microsoft 365(旧称:Office 365)の利用が主になっていますが、それでも数万円で購入することができます。
データベース管理システムの構築やツールの導入をすることから比べると、非常に安価に開始することができます。そのため企業によっては、1人1ライセンス所有していることが当たり前になっているかもしれません。
教育コストがかからない
オフィス製品を学生のうちから触れている方も多いかもしれません。場合によっては小中高で、オフィス製品の操作やExcelの関数・マクロの組み方について学ぶ機会があった方もいるでしょう。
そのため、企業で扱う際に、一からの訓練や専門的な技術者教育が不要で、誰でも触ることができます。また、わからないことがあった際には、webサイトで検索をかければ解決策を説いた記事が多く出てくるため、学習コストを抑えることができます。
操作が簡単
使い慣れている方が多いこともありますが、非常に操作性は簡単です。列の追加や加工操作が容易で、グラフなどの作成も特別な操作はなく、データが揃っていれば見せたいグラフの種類を選ぶだけで実現できます。マクロを組めば、ボタン1つで自動処理も可能です。
Excelを使ったデータ管理のデメリット
データ統合に膨大な工数がかかる
まず、Excelは複数人が同時編集に不向きなツールです。共有ブック機能やOneDriveなどのオンラインストレージを使用すれば同時編集は可能ですが、ラグが起きたりデータの破損に繋がる可能性が大きく、リスクが高いです。リスク面を考えると、基本的に作業を行うのも管理をするのも1人の人が行うことが望ましいですが、結果的に属人的になりやすくなってしまいます。
また、一度エラーが起きてしまうとデバッグがしづらく、改修までに多くの時間がかかってしまう場合があります。意図せず「#DIV/0!」や「#N/A!」などの表示出てしまった際、複雑な関数が挿入されていると、原因を探るのに多くの時間がかかります。自分で作成したものであればまだしも、他の人が作成したものであれば、原因の調査により時間がかかります。
SUMなどの単純な構文であれば原因の追及は簡単かもしれませんが、上記のようなIF関数がいくつも入れ子(ネスト)された関数からデバッグを行うのは、多くの時間を有する可能性があります。また、行を追加したり、テンプレートが異なるだけでエラーになってしまうなど、エラーの要因になりうる操作は多々あります。Excelのデバッグで何時間も業務時間を使ってしまったという経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
大量かつ複数の処理に耐えきれない
Excelは同時に大量の処理を行ううえでは適切なツールとは言えません。
例えば、「会員名簿(マスターデータ)から男性が何人いるかを集計する(COUNT)」や「マスターデータからAさんの住所を探す(VLOOCKUP)」などのマスターデータ同士の突合や1項目に対し返す処理が1つのような場合は、ある程度の行数のデータであってもExcelで処理が可能です。ただし、データ数によっては処理速度が著しく遅くなってしまったり、処理のキャパシティを超え落ちてしまう場合があります。
特にExcelでのデータ処理で考慮が必要なのがトランザクションデータの処理で、Excelではすぐに限界を迎え、処理が完了せずに停止してしまう可能性や最悪の場合操作途中の内容が消え(保存できず)データの欠損にも繋がります。
例えば、上記のデータをもとに「2021年5月16日〜25日間」の「製品番号『AB–C123』」の「在庫状況」を知りたいという場合、まず「期間の特定」を行い「製品番号」を確認し、その後「数量の合計値を算出」という3つの処理を一気に行うことになります。
大量のデータに対し、このように複数の処理を同時に走らせてしまうと、Excelは処理のキャパシティは、あっという間に超えてしまいます。画像は掲載の都合で15件ほどのデータですが、実際のトランザクションデータでは、万単位で存在します。
データの量と処理の能力を考えると、マシンスペックにもよりますがExcelでのトランザクションデータの統合は難しいでしょう。
保存できるデータ量に限界がある
Excelの1シートの行数は、1,048,576行(Excel2003までは65,536行)です。複数のシートの分けることで保存は可能ですが、その分処理は重くなり、管理も複雑になります。
データ数は、BotBでも数年の取り組みの中でリード数が数万件~数十万件ほどになり、それに付随するトランザクションデータが大量に存在します。BtoCでは、数百万人の会員データ・月間数億PV・数十万を超える商品関連のデータを扱う事になるため、Excelでの保存数の限界を考えると少々現実的ではないかもしれません。
データの改変・削除が容易
Excelでデータを修正する際は、基本的にシステムやツールから引き出した生のデータを直接修正する必要があります。そのため、誰でも簡単にデータの改変などが容易に行えてしまいます。
意図的でなくとも、うっかりの操作ミスで数字を変えてしまったり、空白を作ってしまうという可能性もあります。少量のデータであれば、目視で違和感などに気づくことができるかもしれませんが、大量のデータとなると確認は難しく、信憑性に欠けるデータとなってしまう場合もあります。
他のツールとの連携が不可
Excel上でデータを円グラフや表などで結果を可視化することができます。しかし、Excelで加工をしたデータをメールやメッセージなどのアクションツールに生かそうと思うと、手動でインポートする必要があります。
そのため、情報を取得するのにラグが生まれてしまい、最新の情報での施策の実施や結果の可視化は難しくオペレーション次第で更新頻度を高められますが、一定以上の更新頻度は担保できずリアルタイムでの連携などは不可能です。
デメリットを解消するためのCDP
Excelのデメリットを解消できるツールとして、CDPが有効です。CDPとは「カスタマー データ プラットフォーム:Customer Data Platform」の略称で、顧客データ基盤のことです。
上記はCDPの構造を簡単に図化したものです。CDPには、基幹システムのデータなどをCSVファイルなどで連携して処理を行うために、ファイルを配置しておくためのストレージ「Data Lake」、利用できるように構造化したデータを格納するデータベース「DWH(データウェハウス)」、DWHに対してデータを入れる際に加工したり他のツール・システムに対して連携を行う「ETL」が搭載されており、顧客データの「収集」・「統合」・「連携」を担えます。
CDPについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
関連:CDPとは?顧客データ活用に特化したCDPの機能とメリット、事例などの基礎知識まとめ
CDPを利用した顧客データ管理のメリット
大量の顧客データを扱いたい場合は、CDPの利用がおすすめです。
大量データの一元管理が可能
マスターデータはもちろん、トランザクションデータも収集し、CDPで一元管理ができます。さまざまなデータの管理が可能なため、顧客データを扱う際に起こりがちな、データのサイロ化の防止にも寄与します。データ管理について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
関連:データマネジメントとは?DX・データ活用に必要不可欠な理由と実践事例
大量データの加工が可能
「ETL」が搭載されているため、CDP内でのデータの抽出・加工が可能です。ETLは、Extract(抽出)・Transform(変換)・Load(格納)の略称で、データ統合時に発生する各プロセスの頭文字をとったものが名称の由来になっています。生データはシステムやツールにそのままに、抽出したデータをCDP内で加工を行うため、Excelのように生データを直接人の手で加工し、管理するということはありません。
アクションツールとの連携も可能
CDPは、メールやメッセージなどのコミュニケーションツールやweb広告の媒体、分析用のBIツールとの連携も可能です。そのため、CDPで加工したデータを使用して顧客とのコミュニケーションを図ることで改善に繋がったり、BIツールと連携することで、大量のデータから導き出される結果をダッシュボードなどでビジュアル的に可視化することで、データの民主化を実現できます。
関連:CDPはただのデータレイクではない!マーケティングツール連携で何ができる?
ExcelとCDPの使い分け
Excelの利用場面
マスターデータ同士の統合や少量のデータの少ない処理の際などの手軽なデータの管理や統合には、Excelのコラボレーション機能を利用したり、Googleスプレッドシートなどの利用も可能でしょう。
例えば、
- 10人程度の従業員の勤怠情報
- 1会員情報の管理
- 1従業員名簿
- 11か月の売上計算
- 1キャンペーンの予算管理
ただし、例に挙げたようなデータを利用して他のデータと統合したりトランザクションデータと紐付けたい場合は、Excelでは難しくなってしまう可能性があります。
その他は、CDPや各種データベース・分析用のシステムの利用がおすすめ
日々更新され大量の情報が行き交うトランザクションデータを利用したい場合やさまざまな部署やツール・システムからの情報を利用したいという場合は、その他のデータベースやツールを使用しましょう。
分析に適したBIツールを利用する際も、データを収集・管理するDWHなどのデータベースやETLなどの加工ツールを利用してデータを統合することが求められます。それぞれ開発するというのも選択肢の1つですが、どちらも搭載されているCDPの利用がおすすめです。
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