マーケティングにおいて、企業と顧客の「タッチポイント」を戦略的に設定することが必要です。
本記事では、マーケティングにおけるタッチポイントについての基本的な内容から強化方法まで説明します。また、タッチポイントが増えた場合によく起こる注意点についても紹介します。
タッチポイントとは
マーケティングにおけるタッチポイントとは、顧客のサービスや商品への考え方に対し、何らかの変化・影響を及ぼす可能性のある企業との接点を指します。日本語では、顧客接点とも言います。
タッチポイントはオンラインとオフラインの両方にあり、顧客がサービス・商品を購入するタイミングだけでなく、その前後にも存在します。オンラインとオフラインのタッチポイントの代表例を、サービス・商品の購入前・購入時・購入後の3つのタイミング別にまとめた表は以下のとおりです。
タイミング | オンライン | オフライン |
---|---|---|
購入前 |
・webサイト、オウンドメディア ・web広告 ・口コミサイト ・SNS ・ウェビナー |
・テレビCM ・新聞、雑誌広告 ・チラシ ・展示会 |
購入時 |
・ECサイト ・決済システム ・オンライン商談 |
・実店舗 ・接客 ・オフライン商談 |
購入後 |
・SNS ・ファンサイト |
・コールセンター ・カスタマーサポート |
タッチポイントとチャネルの違い
タッチポイントを説明する際に、よく混合される言葉にチャネルがあります。チャネルも一般的には、顧客と企業の接点と説明されます。
チャネルはweb広告やテレビCM、SNSといった顧客との接点に用いられる手段そのものを指す言葉です。一方、タッチポイントは手段(=チャネル)を通じて、顧客の商品やサービスへの考え方に変化を及ぼす過程も含まれます。
例えば、ECサイトでタッチポイントを持ちたいといった場合、ECサイト単体はチャネルと呼び「初回訪問者から○回目で購入に至るケースが多い」「SNSからの訪問者が多い」「訪問者の9割が20代女性」など顧客の情報を加味し、顧客に合った適切な表現やデザイン・内容を考え、より多くの顧客の考え方や行動に影響を与えられるよう働きかけるのが、タッチポイントの役割です。
本記事では、手段をチャネルとして定義し、タッチポイントについて詳しく説明していきます。
2種類のタッチポイント
タッチポイントには、企業がコントロールできるタッチポイントと、間接的に影響を及ぼせるタッチポイントがあります。
直接コントロールできるタッチポイントは、企業が直接的に顧客に影響を与えることができる接点です。例としては、公式webサイトやSNSアカウント、店舗での体験、ECサイトなどが挙げられます。これらのタッチポイントは、企業の意図したとおりの情報やメッセージを顧客に伝えることができるため、ブランドのイメージを構築する際に有効です。
対して、間接的に影響を及ぼせるタッチポイントは、企業が直接手を加えることは難しいものの、何らかの形でブランドのイメージや認知に影響を与えることができる接点です。例としては、メディアの取材記事や口コミ、レビューサイト、SNSなどが挙げられます。
近年はSNSの普及に伴い、ユーザー同士の情報共有が加速しているため、顧客の意見や感想の影響は大きいです。良い口コミや評判はブランドを大きく後押ししますが、逆に悪い評判はブランドイメージを著しく低下させるリスクがあります。そのため、間接的に影響を及ぼせるタッチポイントに対しても、顧客との信頼関係を築いたり、良好な口コミを増やす戦略を検討することが重要です。
例えば、メディアの取材時に事前に記者と内容をすり合わせる、SNSキャンペーンでポジティブな投稿を増やす、レビューやコメントをモニタリングし否定的なものにスピーディーに対応するなどの取り組みにより、企業が影響を及ぼせる範囲を広げることが可能です。
また、間接的に影響を及ぼせるタッチポイントは、ブランドに対する世間の反応を定量的に把握することで、タッチポイントの改善施策の成果を検証する指標としても活用できます。
マーケティングにおいてタッチポイントを増やす・強化する重要性
企業間の競争力の強化
企業間の競争力を強化するために、タッチポイントを増やす・強化することは重要です。
かつての企業競争の争点は製品にあり、タッチポイントもテレビCMや実店舗での接客などが中心でした。そのため、限られたタッチポイントの中での商品の売り出し方を考えれば大きな問題はありませんでした。
しかし、世界的にデジタル化が進んだことによってオンラインを中心にタッチポイントが増え、企業競争の争点も製品から体験へと変化しています。多様化するタッチポイントの中で、いかに顧客が望む体験を提供できるかが、企業間の競争力を強化するために重要になっています。
実際にタッチポイントの整理や強化も含めて、顧客とのコミュニケーション戦略を見直している企業は増えています。今後は、このような流れに沿ってタッチポイントを見直し、顧客に選ばれる体験を設計できるかどうかが、企業成長の鍵を握ると言えます。
タッチポイントやコミュニケーションを設計するうえで留意すべきことや手順、フレームワーク、事例について、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。
無料資料:データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために
認知度の拡大・ブランディングの強化
タッチポイントを増やす・強化することで、認知度を拡大したりブランディングを強化できます。
タッチポイントには、見込み顧客にサービスや商品を知ってもらう場も含まれます。タッチポイントを増やすことで、自社のサービスや商品をより多くの顧客に認知してもらえます。特に、新しい市場の開拓などのケースにおいて、タッチポイントを増やし認知度を拡大する戦略の設計は効果的です。
また、各タッチポイントで共通のブランドメッセージを発信できれば「〇〇といえば△△」のように顧客が持つ企業のイメージをコントロールできるようになり、ブランディング強化に繋がります。
リピート率の向上
タッチポイントを増やしたり強化することで、リピート率を向上できます。
特定のサービス・商品を1回のみ購入する顧客もいれば、何度も購入するリピーターも存在します。「1:5の法則」でも言われるように、新規顧客の獲得コストは既存顧客を維持するコストの5倍かかると言われています。そのため、リピート率の向上が効率的なマーケティング活動のポイントになります。
リピーターを増やすためには、サービスや商品の質を高めることはもちろん、購入後のタッチポイントを強化することも重要です。FAQやカスタマーサポートなどのタッチポイントを強化することで、顧客満足度の向上に繋がり、リピート率の向上も期待できます。
また、サブスクリプションモデルのサービスを提供している企業の場合、タッチポイントを強化し顧客満足度を向上させることで、解約率を低下させることが可能です。
関連:F2転換とは?転換率の計算方法と向上施策、リピーターを増やした事例を紹介
フェーズごとのタッチポイントと有効なチャネルの選択
タッチポイントは、オンライン・オフライン問わず多種多様に存在し、消費者の購入プロセスに沿って有効なチャネルが異なります。
ここからは、消費者のフェーズに合わせて、タッチポイントを設定する際に意識すべき点を有効的なチャネルの例と合わせて説明します。
認知
まずは、消費者に自社の製品やサービスを認知してもらうためのタッチポイントを設定しましょう。
一度に不特定多数の認知を得る場合には、テレビCMや店頭ディスプレイ、置き型看板、折り込み広告などがあります。ある程度ターゲットを絞りたい場合は、雑誌や新聞の広告、もう少し絞りたい場合はweb広告やSNS広告などのチャネルがあります。BtoBの場合、展示会が認知拡大やリードの獲得に有効なチャネルです。
認知は、消費者が初めてその商品やサービス、企業を知るフェーズです。そのため、タッチポイントの設定の仕方によっては、商品やサービスひいては企業のイメージに大きな影響を及ぼします。設定の際は、それぞれのチャネルの特性を見極め、適切な活用方法を検討することが重要です。
興味・関心
消費者が認知をしただけで購入に至るパターンは少ないです。より商品やサービスに興味を持ってもらえるようにタッチポイントを増やしていくことが重要です。
例えば、展示会やイベントで獲得したリード情報に対してDMを送ったり、営業からフォローの連絡を入れることで、企業の商品やサービスを知る機会を増やせます。webサイト上での行動履歴に基づいてユーザーを分類し、それぞれに最適な広告を配信する行動ターゲティング広告も、顧客の興味関心を高めるタッチポイントとして有効です。
関連:リードナーチャリングとは?成功事例と有効な施策例、失敗しない7つのステップ
比較・検討
ネットの普及やSNSの発展により、消費者が興味のある製品やサービスについて自ら情報を収集し比較検討を行うケースが増えています。興味を持ったから購入に至るというケースもありますが、複数の商品・サービスと比較・検討を行うケースが多いです。そのため、比較・検討を行う消費者を対象にしたタッチポイントも設定する必要があります。
比較・検討を行う消費者へのタッチポイントとして、主にランディングページや自社ホームページ、SEO記事、ブログ、SNS、レビューサイトなどがありますが、もっとも頻繁に行われる行為は検索です。タッチポイントを設ける際は、消費者の検索行動を前提にチャネルやコンテンツを設定しましょう。
検索の上位に表示されるように、SEO対策を行なった記事やランディングページを作成するのも有効です。また、検討の際にお客さまの声やレビューを参考にする消費者も多いため、ランディングページにお客様の声を載せたり、レビューサイトへの対策なども行いましょう。
購入・契約
購入・契約で有効なチャネルは、商品やサービスの形態によって異なります。
アパレルや雑貨などwebでの購入が可能な商品の場合、自社のECサイトや楽天・AmazonなどのECモール、自社アプリなどがあります。実店舗を持っている場合、店舗での接客もチャネルの1つに含まれます。不動産やリラクゼーションなどの対面営業モデルの事業であれば、営業担当者の商談も購入・契約フェーズのチャネルです。
購入は重要なステージであるため、タッチポイントを設定する際は、消費者視点での使いやすさや分かりやすさを意識することが重要です。自分に合う商品を選択しやすくする、幅広い決済方法を選べるようにするなど工夫することで、購入フェーズにいる消費者を逃さないタッチポイントを設定することができます。
リテンション
リテンションとは、維持・保持といった意味の言葉ですが、マーケティング領域で使用されるときは「既存顧客維持」といった意味になります。
商材の金額にもよりますが、マーケティングで重要なのは、売れ続ける仕組みを作ることです。その実現のためには、企業が顧客目線に立って、継続的に企業と関係を続けてもらえるためのタッチポイントを設定する必要があります。
有効なチャネルとして、ファンサイトやSNSやFAQページ・コールセンターなどがあります。これらを活用することで、顧客のブランドへの愛着を育てたり、不満が蓄積してネガティブな印象を抱くリスクを軽減できます。
アドボカシー
アドボカシー・マーケティングとは、顧客からのレピュテーション(評判)を徹底的に高めることで、長期的利益を獲得しようとするマーケティングの考え方です。つまり、消費者が自社のブランドや商品を熱心に支持し、継続的に利用してくれるファンとなるフェーズを指します。
有効なチャネルには、限定イベントやプロモーションへの優待があります。企業からの特別待遇は、顧客自身も特別感を覚えるため、ファンとしてのロイヤルティを高める効果を期待できます。
また、ファン同士の交流サイトやSNS、ブログを通じて顧客自らがレビューを行ってくれることで、新たな認知拡大にも繋がります。タッチポイントで、顧客同士を繋げるように促すことも有効です。
業種別のタッチポイントと戦略の考え方
小売業界
小売業界のタッチポイントの例は、以下のとおりです。
- チラシ
- ECサイト
- 店頭イベント
- 店員の声かけ
- 実店舗での体験
- ポイントシステム
- アプリ通知 など
小売業界では、実店舗やECサイト、アプリ、SNSといった多様なチャネルが存在し、顧客との接点が複雑化しやすい傾向があります。そのため、単にタッチポイントを増やすだけでなく、多様なチャネルを利用して一貫した体験を提供できるような仕組みを構築することが重要です。
タッチポイント戦略の設計において、どの接点で顧客データを収集できるか、データを活用できる機能があるのに収集できていないものはないかなどを整理し、確実に顧客データを収集・活用する設計を行う必要があります。
例えば、店頭で配布しているチラシや店頭イベントの場合、認知や来店を促進する効果はある一方で、誰がチラシを見たか、誰が来店したかなどの個別のデータを取得することが難しいです。
自社でアプリを運用しアプリ通知やチラシ、ポイントシステムなどを提供することで、購買履歴や閲覧行動、来店頻度などの1st Party Dataを蓄積し、データをもとにした一貫した体験を提供しやすくなります。
一般消費財メーカー
食品・飲料、化粧品、日用雑貨といった一般消費財メーカーのタッチポイントの例は、以下のとおりです。
- SNS広告・自社アカウントの投稿
- ブランド公式サイト
- 店頭陳列・POP
- 商品パッケージ
- クーポン配信
- リマインドメール・LINE通知 など
一般消費財メーカーの商品は小売店やECモールなどの流通チャネル経由で販売されることが多いため、メーカー自身が直接顧客と接点を持つ機会が限られます。その中で、特に認知段階の顧客接点の設計が重要です。
例えば、SNS上で生活シーンに合わせたレシピやルーティン動画の配信は、商品の認知獲得に効果的です。朝の忙しい時間やリラックスしたい夜の時間など、ユーザーの生活に合わせた商品の使い方を提案することで、共感を生み出しつつ商品との接点を作ることができます。
また、商品パッケージや店頭のPOPでは、顧客が商品を目にした瞬間に価値が伝わるメッセージ設計を意識したり、QRコードを読み取ることでブランドサイトに誘導し商品の価値や魅力を伝えるタッチポイントとして活用することも有効です。
耐久消費財メーカー
家電や自動車、住宅設備などの耐久消費財メーカーのタッチポイントの例は、以下のとおりです。
- ブランド公式サイト
- 製品カタログ・資料請求
- 製品シミュレーター
- 導入事例ページ
- 修理サポート・定期メンテナンスの案内
- 延長保証案内 など
耐久消費財メーカーの場合、購入前の比較検討に時間がかかる傾向があります。また、購入後にも重要なタッチポイントが多くあるため、長く製品が使われることを前提とした、検討段階から購入後の接点も含めたタッチポイント戦略を設計する必要があります。
例えば、公式サイトに製品スペックを掲載するだけでなく、使い方や導入シーンを具体的に紹介した導入事例ページや製品シミュレーターを設置することで、購入検討中の顧客の心理的ハードルを下げることが可能です。
また、検討フェーズで取得した顧客の興味・関心データを購入後のタッチポイントにも活用することで、体験の一貫性を高められます。関心の高かった機能や使用シーンに応じて、関連商品の提案やメンテナンス情報提供をしたり、購入時の設定や使用傾向をもとに消耗品の交換時期を通知するなど、適切なフォローが行えるようになります。
IoT家電やアプリ連携などにより使用状況をリアルタイムで取得できる場合、実際の利用実態に基づいてより正確なタイミングで通知やサポートを行うことで、顧客との関係を維持できます。
ホテル業界
ホテル業界のタッチポイントの例は、以下のとおりです。
- 旅行予約サイト
- 予約確認メール
- 自社公式LINEやアプリでのリマインド通知
- チェックイン時のフロント対応
- 滞在後のサンクスメール
- リピーター向けのクーポン配信 など
ホテル業界では、予約サイト(OTA)や自社サイト、電話、SNSなど多様なチャネルを通じて顧客と接点を持っています。その中で、宿泊前・宿泊中・宿泊後の各フェーズにおけるタッチポイントの設計が、顧客満足度や再訪意向を左右する重要な要素になります。
例えば、宿泊前の予約確認メールでアクセス情報や館内案内に加え、過去の宿泊履歴や属性に基づいて興味関心が高いと想定されるプランやオプションサービスを提案することで、顧客の期待値を高めることができます。
宿泊時には、自社アプリを活用し、チェックイン手続きやルームサービスの注文、施設予約などを一元化することで、スムーズな滞在体験を提供できます。
宿泊後には、利用履歴に基づいた次回予約時の特典付きサンクスメールや、関心に応じた再訪プランの提案などを行うことで、顧客との接点を維持しやすくなります。
不動産業界
不動産業界のタッチポイントの例は、以下のとおりです。
- 物件情報ポータル・自社サイト上の物件検索
- 来場予約・内見時の接客
- LINEでの物件紹介
- 契約・引き渡し時の対応
- 引き渡し後のアンケート
- 定期フォローアップメール
- ライフイベントに応じた再提案の通知 など
不動産業界では、顧客との関係が長期にわたる一方で、複数の物件・会社を比較しながら検討を進める中で顧客との関係性が途切れてしまう傾向があります。比較検討を続ける中で顧客との関係が途切れないよう、契約後も含めた顧客のフェーズに応じたタッチポイント戦略の設計が重要です。
例えば、検討初期にはポータルサイトや自社サイトでの物件情報の提供に加え、資料請求後に物件の選定をサポートするメールやLINEを送付することで、顧客との関係を維持できます。
検討比較フェーズでは、モデルハウスへの来場前に予約リマインドや特典案内を送ることで、来場促進と同時に接点を強化できます。
契約後には、自社アプリを通じて近隣情報の提供やアフターサポートを行ったり、ライフステージの変化に応じた資産価値の診断や住み替え提案などを行うことで、検討初期からリテンションフェーズまで継続的に顧客との接点を作れます。
タッチポイントを強化する方法
ここからは、タッチポイントを強化するにあたって重要なポイントについて説明します。
ブランドイメージを明確にする
消費者はさまざまなタッチポイントを通じて、商品やサービスへの考え方を変化させていきます。消費者が1つのタッチポイントだけで企業を見ているケースは非常に少ないです。
そのため、顧客が触れるタッチポイントごとに発信メッセージの軸が頻繁に変わる場合、企業へのマイナスイメージに繋がるうえに、顧客に商品の魅力を十分に伝えられない可能性もあります。
ブランドイメージを明確にしつつ、各タッチポイントで伝えたい軸をブラさないことが重要です。
顧客を理解する
テクノロジーの発展により、チャネルもそれに伴うプラットフォームも数多く存在するようになりました。そのため、顧客一人ひとりに合ったチャネルを選択し、タッチポイントを設定する必要があります。
例えば、中国発のTikTokは2010年代後半に日本でもサービスが開始された比較的新しいSNSですが、「2025年4月版!性別・年齢別 SNSユーザー数(X(Twitter)、Instagram、TikTokなど13媒体)」によると、TikTokの日本国内の月間アクティブユーザー数は2,700万人で、Facebookの2,600万人を超えています。
また、ダイレクトメールや新聞広告や折込チラシなどは若い層の利用は減ってしまいましたが、今でも一部の高齢者の方々や地方の方々には重要な情報源となっています。このように、消費者が利用する情報収集先は数多くあるうえに、常に変化し続けています。
顧客をマスで捉えるのではなく個として捉えて理解し、自社の顧客に合うタッチポイントは何かを見極めることが重要です。
顧客理解を深める手段の1つに、顧客アンケートが挙げられます。アンケートを実施することで顧客の意見やフィードバックを直接取得でき、属性や行動パターン、顧客の意図を理解できるようになります。
顧客アンケートの進め方やポイントについて、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。そのまま使える設問例についても紹介しています。
無料資料:BtoC向け|顧客満足度と市場調査のためのアンケート作成・分析・施策への活用
カスタマージャーニーマップを活用する
カスタマージャーニーマップとは、消費者の商品との出会いから購買、購買後までの行動や心理を時系列にまとめて可視化したものです。カスタマージャーニーを設定することで、顧客の変化が明確になり、メンバーと共通認識を持ってタッチポイントの戦略を立てることができます。
消費者の行動や心理が動く際には、必ずタッチポイントが存在します。それぞれのフェーズにどのような心理変化をもたらしたいかをマップに記し、それをもとに適切なチャネルの選択と発信する情報や見せ方を検討しましょう。
関連:カスタマージャーニーとは?効果的なマップの作り方と2つの活用事例
複数のチャネルでも一連の体験を提供する
タッチポイントにはオフラインのチャネルとオンラインのチャネルがあります。ただし、オンラインとオフラインを別々のチャネルとして分けるのではなく、それぞれを融合させてより良い顧客体験を提供することが重要です。このような考え方をOMOと呼びます。
現代において、実店舗で商品を見てからwebで購入をするショールーミングや、逆にwebで事前に検索をしてから実店舗で購入するウェブルーミングという形で、購買行動を取る顧客は珍しくありません。その際に、webでのタッチポイントばかりを強化し、実店舗での接客などを疎かにしてしまうと、顧客は購入に至らない可能性があります。
オンラインのチャネル、オフラインのチャネルと分けずに、共通の体験を提供できるようなタッチポイント戦略を設計しましょう。
関連:OMOとは?効果的なマーケティング戦略を立てるポイントや成功事例を紹介
タッチポイントごとに顧客満足度を上げる
タッチポイントを強化するには、それぞれの接点で顧客満足度を高める設計が必要です。
顧客のフェーズや属性、行動に応じて発信内容を調整することで、顧客満足度が向上します。その結果、顧客にとってそれぞれのタッチポイントが、単なる顧客接触の機会からブランドへの信頼や満足に繋がる価値ある体験に変わります。
顧客を深く理解したうえで、それぞれのニーズに合うチャネルや情報の見せ方を選択し、それぞれのタッチポイントで顧客満足度を高められるように工夫しましょう。
PDCAを回す
タッチポイントを強化するには、PDCAを回して継続的に改善していくことが欠かせません。
例えば、無闇に広告を配信して顧客接点を増やしても、顧客に合わない内容であれば、不要な情報を発信する企業としてイメージダウンに繋がりかねません。
各タッチポイントでどのような成果が得られたのか、なぜ効果が出なかったのかを振り返り、仮説を立ててPDCAを回しましょう。顧客との接点は一度作って終わりではなく、検証と改善を繰り返すことで、精度の高いコミュニケーションが実現できます。
関連:デジタルマーケティングの効果測定の方法と指標、分析に役立つツール
タッチポイントを強化・増やす際のポイント
各チャネルで一貫性を持つ
タッチポイントを増やすために多様なチャネルを活用するのは有効な手段ですが、それぞれのチャネルでメッセージや価値観が一貫していることが不可欠です。一貫性を保つことで、顧客はどのチャネルを通しても同じ体験が得られ、信頼感やブランドロイヤリティを強化することができます。
1つのチャネルだけに集中しない
デジタル化が進む昨今、特定のチャネルだけに依存したコミュニケーションはリスクが高いです。顧客の属性や状況によって情報に触れる手段は多様化しており、1つのチャネルでは対応できないケースが増えています。さまざまな顧客セグメントやシチュエーションに対応するため、マルチチャネル戦略を採用し、タッチポイントを多様化させることが重要です。
チャネルごとの特性を把握しておく
各チャネルにはそれぞれ特性や目的があり、最適なコンテンツやアプローチが異なります。例えば、SNSはリアルタイムな情報共有が得意である一方、メールは深い情報提供やプロモーションに適しています。各チャネルの特性を理解し、それに合わせて適切なコンテンツや戦略を展開することで、タッチポイントを最大限に活用することが可能です。
ゼロパーティデータ・1st Party Dataを活用する
近年のプライバシー保護の強化に伴い、第三者データの取得や利用が制約される傾向にあります。この背景のもと、企業が直接顧客から得るゼロパーティデータ、および自社のwebサイトやアプリケーションを通じて収集する1st Party Dataの価値が高まっています。これらのデータを効果的に活用することで、顧客の関心や行動をより正確に把握でき、それに基づいたマーケティングやサービス提供が可能となります。
ゼロパーティデータ・1st Party Dataを活用した施策や事例について、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。
無料資料:Zero / 1st Party Dataを活用したマーケティング施策5選|強まるCookie規制に対する次の一手
タッチポイントの強化に成功した企業事例
クラシエ
日用品・化粧品・薬品・食品の事業を展開する大手メーカーであるクラシエ株式会社の事例を紹介します。
クラシエは親子で使えるヘアケア&スキンケア商品である「マー&ミー ラッテ」というブランドを展開していましたが、ブランドの浸透とリピート率の向上に課題がありました。そこで、定量調査とN1分析®を実施し、子育て中の母親が「自分と子どもでシャンプーを使い分けるのが面倒」と感じている実態を発見しました。
このようなインサイトをもとに、製品のパッケージ表現や店舗POP、webサイト、SNSなどの各チャネルにおいて、ブランド世界観を一貫して伝えるタッチポイント設計を行います。具体的には、SNSで母親の気持ちに寄り添う言葉選びや投稿内容を徹底し、店頭でもコピー表現にその世界観を反映することで、心理的な接点の強化を図りました。
その結果、ブランドと顧客との関係が深まり、リピート率の向上に成功しました。
レック
日用品雑貨メーカーのレック株式会社の事例を紹介します。
レックが展開する「激落ちくん」というブランドは、メラミンスポンジから始まり、現在では多様な清掃用品に拡大展開しています。その成功の背景には、ブランドの一貫性を保ちつつ、顧客との多様なタッチポイントを戦略的に設計した点が挙げられます。
例えば、ブランド名の「激落ちくん」は、製品の機能性を直感的に伝えるネーミングで、後発ブランドとして市場での存在感を高めることに成功しました。キャラクターのデザインも、濃い眉毛や大きな目など、店頭で目を引く要素を取り入れています。また、異業種とのコラボや受験生向けのお守りとしての提案など、ユニークな取り組みも行っています。
これらの施策をとおしてブランドの世界観を広げたことで、新たな顧客層へのアプローチを実現しました。
マイプロテイン
THG Nutrition Limitedが提供するマイプロテインの事例を紹介します。
マイプロテインはイギリスのマンチェスター発のスポーツ栄養サプリブランドで、2016年から日本で販売を開始しました。当初は価格を前面に出したプロモーションが中心で、筋トレ上級者層からは一定の支持を得ていた一方で、ライト層への訴求を強める必要がありました。
そこで、バナー広告や動画広告のクリエイティブを一新し、食品としての安全性や品質の高さ、日本人向けの味の良さなどを前面に打ち出す方針を立てました。加えて、YouTubeでのインフルエンサー起用や、オフラインイベントによる体験機会の創出など、オンライン・オフライン双方での接点の強化を図りました。
その結果、従来アプローチできていなかった健康・美容・ダイエット目的の顧客層との関係構築に成功しました。
タッチポイントが増えることで起こる問題
タッチポイントが増えれば、顧客に与える影響力も増加します。認知拡大や購入の促進、継続利用のサポートなどを目的として、多種多様なチャネルを用いてタッチポイントを設けている企業は多いです。しかし、タッチポイントが増えることで発生しやすいのが「データのサイロ化」の問題です。
データのサイロ化とは、それぞれのチャネルに使用しているシステムやツールにデータが管理されているために、データがバラバラになってしまっている状態を指します。
関連:データのサイロ化とは?2つの原因と解決策、サイロ化を解消するツールを紹介
データがバラバラに管理されている状態では、顧客理解を深めることもタッチポイントごとに評価を行いPDCAを回すこともできません。また、管理も煩雑になり、業務効率の低下にも繋がります。
それぞれのタッチポイントごとに導入しているシステムやツールのデータを1か所に集約し、統合して実在する個人としてデータを紐付けることが重要です。
データ統合により期待できる変化について、詳しくは下記の無料動画をご覧ください。
無料動画:データ統合で何が変わる?顧客体験を高める顧客データ統合の基礎
タッチポイントの管理に有効なCDP
各タッチポイントで収集したデータを統合・管理するのにおすすめなのがCDPです。
CDPとは「カスタマー データ プラットフォーム:Customer Data Platform」の略称で、企業が持つ顧客データを「実在する個人」に紐付けて統合・管理し、顧客一人ひとりの正確な理解を可能にするプラットフォームです。顧客一人ひとりに合わせた体験を提供できるよう、さまざまな外部ツールに連携することができます。
関連:CDPとは?機能や部門・業界別の活用例、今後の動向などをまとめて解説
CDPを導入することで顧客データを一元管理できるようになるので「誰が・いつ・何をした」という情報だけでなく「顧客はなぜ購入したのか?」「なぜ他企業を選んだのか?」という顧客インサイトを突き詰めていくことができます。
そのうえで「顧客目線」のコミュニケーションを実施し、各チャネルでストーリーに沿った一貫性のある顧客体験を提供できます。データの送受信も速いため、スピーディーに改善を進めていくことが可能で、タッチポイントの強化ひいては事業成長に役立ちます。
CDPについて、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。CDPの機能や役割、ほかのツールとの違いなど、導入前に知っておくべき情報をまとめて紹介しています。