2022.10.05

カスタマージャーニーとは?効果的なマップの作り方と2つの活用事例

カスタマージャーニーとは?効果的なマップの作り方と2つの活用事例

インターネットが普及している現代において、多くの情報が溢れているため顧客理解の重要性が増しています。

顧客理解を深める方法の1つとして、カスタマージャーニーがあり、顧客目線での施策の立案や自社が抱える課題を明確化できます。

本記事では、カスタマージャーニーとは何か、効果的なカスタマージャーニーマップの作り方や事例も紹介します。

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カスタマージャーニーとは

カスタマージャーニーとは、顧客が自社の製品やサービスを購入・利用するまでの一連の体験のプロセス、または特定のブランドとの関係において顧客がたどる段階のことです。

認知から検討、購入意向、さらにはロイヤルティにいたるまで、消費者の意思決定の過程は人によって異なりますが、カスタマージャーニーは顧客が何を考え、どのような行動を経て購入にいたるのかを把握することができるので、マーケティング戦略を改善するのに役立ちます。

また、カスタマージャーニーの中でのペルソナの行動・思考・感情などを整理し、顧客体験や行動モデルを時系列順に可視化した図をカスタマージャーニーマップと言います。ペルソナとは、ターゲットよりも具体的で多数の項目を設定し、人格が想像できるようなレベルまで落とし込んで設定された「架空の個人」のことです。

カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の視点や顧客体験を分析することができ、顧客目線に立った施策立案や関係者間の認識統一が可能になります。

カスタマージャーニーを用いたアプローチが広まった背景は、1998年にイギリスの経営コンサルタント会社であるOxfordSMがブランディングの手法として導入し、その後、フィリップ・コトラーの著書「コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則」においてカスタマージャーニーが紹介されたことにより、日本でもより広く認知されるようになりました。

カスタマージャーニーを作成するメリット

課題を明確化できる

顧客の感情や行動を可視化できるカスタマージャーニーは、目標を達成するまでのプロセスを明確にし、場面ごとの課題や新たな接点の発見に繋がり、課題に合わせたマーケティング施策を立案できます。

例えば、顧客の行動や感情を起点にどのような施策を打つか、どのチャネルで情報を発信するかなどが設計しやすくなります。

マーケティング戦略の立案などは、企業目線や理想など主観が強くなってしまうケースが多くあるため、カスタマージャーニーを使うことで客観的に課題を明確にすることができます。

関係者間での共通認識を持つことができる

カスタマージャーニーを用いることで、関係者間での認識が統一されるので、課題に対する共通認識を持つことができ、連携がとりやすくなります。

例えば、マーケティング戦略をさまざまなメンバーで検討する際に、カスタマージャーニーを使って顧客の共通認識を持つことで、認識のズレから生じるトラブルを減らし、効率よく戦略を立てることができます。

また、カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の視点を共有できるためインサイトを捉えやすくなります。その結果、顧客視点を第一に考えるスタンスを共有できるようになったり、企業として一貫したメッセージを届けられるようになります。

顧客体験(CX)を向上できる

カスタマージャーニーによって、顧客の潜在的なニーズの掘り起こしや顧客接点における課題を見つけることができるため、顧客体験(CX)の向上に繋がる具体的な施策を検討できます。

また、顧客体験を向上させることで顧客満足度を高め、他社との差別化に繋げることができ、売上を高めることができます。

カスタマージャーニーをもとに立案された施策は、顧客にとって価値のある情報を提供でき、顧客とのより良い関係を築くことが可能です。

関連:顧客体験の向上に必要な5つの準備とCX管理に役立つマーケティングシステム

カスタマージャーニーマップを作成するための7つのステップ

1.目的やゴールを決める

カスタマージャーニーマップ作成に取り組む際は、まず最初に目的やゴールを決めます。目的・ゴールが問合せ、購入まで、リピート購入なのかによって、収集する情報や考える施策は変化していきます。カスタマージャーニーマップを作ること自体を目的にしてしまうケースがあるため、目的やゴールを決めてから取り組みましょう。

カスタマージャーニーマップを作成する際は、部署や役職を超えて組織横断的に取り組み、より多くの視点を盛り込んだ方が効果的です。例えば、マーケティングチームだけでなく、営業、カスタマーサポートやカスタマーサクセス、商品企画、経営層など、より多くのステークホルダーを巻き込みましょう。さまざまなメンバーで集まり、ワークショップ形式で行うことで偏りのないカスタマージャーニーマップを作ることができます。

注意点として、ワークショップに参加するメンバーを闇雲に集めただけでは、期待どおりのカスタマージャーニーマップを作ることはできません。参加してもらうメンバーは、基準を設けて選定したり、ワークショップを円滑に進めるファシリテーターという進行役的な役割を担う人物を決めることが重要です。

ファシリテーターがメンバーの発想を広げたり、論点を深めたりしつつカスタマージャーニーマップを作っていきます。

2.ペルソナ設定

目的やゴールを決めたら、ペルソナがどのような人なのかをイメージしながら設定します。

ペルソナを作る際は、年齢や性別、居住地、趣味、職業、年収といった属性データに加えて、ペルソナの趣味、嗜好、パーソナリティ、ライフスタイルのような心理的属性データも加えて具体的な顧客像を決めます。

また、ペルソナを設定するときに自社の理想を詰め込むのではなく実際のwebサイトのアクセスデータや購買データ、問合せデータなどの自社データを活用し、分析とリサーチに基づいて具体的なイメージを行いながらペルソナを作ることが重要です。

3.フェーズ定義

よくあるカスタマージャーニーマップでは、横軸に興味関心、認知、情報収集、比較検討、購入など顧客のフェーズ・プロセスを置きます。縦軸にはタッチポイント、行動・感情・思考、課題やマーケティング施策をマッピングするケースが多いです。

カスタマージャーニーマップでは扱う製品やサービスによって設定すべき項目が異なったり、事業内容やBtoC・BtoBなどのビジネスモデルで変化するため、自社のビジネスに合うものを設定しましょう。

例えば、下記のフェーズ・プロセスのフレームワークをもとに、自社と相性のよさそうなものを取り入れつつアレンジすると良いでしょう。

フレームワーク フェーズ・プロセス 意味
AIDMA(アイドマ) Attention(注意) 製品やサービスの認知段階。消費者は製品やサービスをまだ知らない状態
Interest(興味・関心) 製品やサービスの良さを認識する段階。消費者に製品やサービスに対して興味を持ってもらう段階
Desire(欲求) 製品やサービスに興味はあるが欲しいと思っていない段階。製品やサービスを欲しいと思ってもらう
Memory(記憶) 製品やサービスを欲しいと思うが購買する動機がない。製品やサービスの魅力を記憶してもらい購買動機に繋げる段階
Action(行動) 製品やサービスを購入する動機はあるが買う機会がない。製品やサービスを購入・契約してもらう段階
AIDA(アイダ) Attention(注意) 製品やサービスの認知段階。消費者は製品やサービスをまだ知らない状態
Interest(興味・関心) 製品やサービスの良さを認識する段階。消費者に製品やサービスに対して興味を持ってもらう段階
Desire(欲求) 製品やサービスに興味はあるが欲しいと思っていない段階。製品やサービスを欲しいと思ってもらう
Action(行動) 製品やサービスを購入する動機はあるが買う機会がない。製品やサービスを購入・契約してもらう段階
AISAS(エイサス・アイサス) Attention(注意) 製品やサービスの認知段階。消費者は製品やサービスをまだ知らない状態
Interest(興味・関心) 製品やサービスの良さを認識する段階。消費者に製品やサービスに対して興味を持ってもらう段階
Search(検索) 製品やサービスに関する情報を検索して評判や他社との違いを調べる段階
Action(行動・購入) 製品やサービスを購入・契約してもらう段階
Share(共有) 製品やサービスを愛用し、商品評価をインターネットやSNS上で共有したり、使用感を友人に共有する

4.自社と顧客とのタッチポイントを洗い出す

カスタマージャーニーマップの縦軸には、自社と顧客とのタッチポイント、顧客の行動・感情・思考、課題やマーケティング施策などを想定して設定します。

自社と顧客とのタッチポイントを洗い出し、ペルソナに応じてタッチポイントをフェーズに合うように割り振りましょう。例えば、次のようなタッチポイントがあります。

  • webサイト
  • 商品ページ(ランディングページ)
  • 広告
  • ダイレクトメール
  • 新聞折り込みチラシ
  • SNS
  • 実店舗
  • ECサイト など

また、自社と顧客の接点であるタッチポイントは、段階ごとに変化します。認知段階では自社のwebサイトや広告、比較検討のプロセスでは口コミサイトなど、購入段階では実店舗やECサイトなどがタッチポイントとなります。

加えて、ペルソナごとにタッチポイントが異なるケースがあるため注意が必要です。例えば、若年層と高齢層では、認知段階でもタッチポイントが異なります。インターネットなどに慣れ親しんだ若年層には、ホームページやSNSがタッチポイントになる可能性が高く、一方の高齢層には、新聞折り込みチラシなどのタッチポイントを含めた方がより効果的です。

タッチポイントについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。

関連:タッチポイント(顧客接点)とチャネルの違い、利益UPのための強化方法

5.ペルソナの行動・感情・思考を洗い出す

ペルソナの行動・感情・思考を洗い出す際は、付箋などを使ってブレストを行うのが効果的です。それぞれのフェーズごとに顧客の感情や思考を洗い出していきましょう。洗い出しの際、ポジティブ・ネガティブの両面の感情や思考も考えるとより良いマップが作成できます。

特にネガティブな感情の中には、自社が把握しきれていない課題が隠されている可能性があるため、多角的な視点から顧客の心理を洗い出しましょう。

また、ペルソナの行動・感情・思考の洗い出しは、自社に点在しているオンラインやオフラインのデータを分析をすることで情報を得られることがあります。加えて、分析するための情報が足りなければ、顧客にインタビューを実施したり、市場調査を行ったりして顧客の情報を集めるのが効果的です。

関連:顧客データ収集の方法と有効なツール。収集すべき2種類の顧客データ

6.課題やマーケティング施策を洗い出す

行動や心理に合わせて、それらに合う課題やマーケティング施策を洗い出します。顧客の感情が上がっているところ、下がっているところに対してどのような課題があるのか考えながら、何ができるかなどの具体的なマーケティング施策を書き出していきます。

ポイントとして、顧客の行動やタッチポイント、感情を行ったり来たりしながら、課題に間違いがないかやマーケティング施策が的確なものなのかを話し合います。

7.カスタマージャーニーマップを仕上げる

customer journey 01

作成したフレームに情報を落とし込み、整理をすれば完成です。抽象的になりすぎていないか確認をしつつ、具体性を持ったカスタマージャーニーマップを作りましょう。

下記の資料では、カスタマージャーニーマップの作成にも役立つ顧客とのコミュニケーションの全体設計について、事例とともに詳しく紹介しています。あわせてご活用ください。

無料資料:データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

カスタマージャーニーマップ作成の注意点

消費行動は常に変化していることを意識する

近年、ネットショップなどが普及し、スマートフォンを用いていつでも手軽にネットショッピングを利用できるようになり、空いた時間など24時間すべてが消費行動のタイミングとなりました。

その結果、消費者が明確な理由はないにもかかわらず、瞬間的に買いたいという気持ちになった時に、そのまま購入にいたるなど、カスタマージャーニーのような顧客が購入にいたるまでのプロセスを踏まない行動が増えているため、カスタマージャーニーは古い考え方だと言われることがあります。

このような消費行動は、Googleが2019年に提唱した「パルス型消費行動」と呼ばれる概念で、消費者の消費行動はカスタマージャーニーからパルス型消費行動へと変化していると言われています。

しかし、パルス型消費行動によってカスタマージャーニーがまったく機能しないというわけではなく、カスタマージャーニーは、顧客の目線に立ったマーケティング戦略を立てるために欠かせないフレームワークの1つです。

消費者行動は行き来していますが、行き来しながらも、目標達成に向けてプロセスを踏んでいるというイメージを持ち、パルス型消費行動があることも踏まえながら活用すると良いでしょう。

関連:パルス型消費行動とは?スマホ普及による行動変化とジャーニー型との違い

ペルソナの設定を慎重に行う

カスタマージャーニーマップを作成する際、ペルソナをもとに感情・行動などを整理しますが、ペルソナ設定が不適切であれば、カスタマージャーニーマップの精度は低くなり、最終的にできるカスタマージャーニーに大きなズレが生じます。

適切にペルソナを設定していても、実際の顧客行動と大きくかけ離れてしまうといったケースも少なくありません。

顧客の感情の変化を理解し、オンライン・オフライン問わず、顧客行動のデータからペルソナを設定を行うことが大切です。

関連:ユーザー分析・顧客分析の重要性と6つの手法。分析データの活かし方

企業側の願望や憶測だけで作らない

カスタマージャーニーマップを作成する際、企業側の願望や憶測があまり入り込まないように注意しましょう。一般的に仮説や主観が入ると、カスタマージャーニーで重要な顧客目線を忘れてしまい、施策と結果のズレが大きくなる可能性があります。

例えば「このような行動を取ってほしい」などの考えはなるべく排除しましょう。願望や憶測を入り込まないようにするためには、web上のアクセス履歴、アンケート結果など、事実に基づく客観的なデータを入れ込むことが大切です。また、幅広い部署や役職のメンバーを集め、偏った分析にならないように作業を進めると良いでしょう。

アップデートを定期的に行う

カスタマージャーニーマップが完成したあとも、定期的なアップデートが必要です。顧客の行動や心理は、トレンドや季節などによって変化します。また、競合他社が新商品や新サービスを発表するなどの外部要因によっても顧客の状況は変わります。

カスタマージャーニーマップ作成時の状況が長く続くとは限らないため、時代や状況に合ったものに作り変えていくことが大切です。

また、継続的にPDCAサイクルを回しつつ、検証を行いカスタマージャーニーマップをアップデートしていきましょう。

関連:デジタルマーケティングの効果測定の方法と指標、分析に役立つツール

カスタマージャーニーマップの事例

採用活動でのカスタマージャーニーマップ

就活生と企業がワークショップを通じて共同で作成した採用活動でのカスタマージャーニーマップの事例を紹介します。

実際のwebサイトの企画を通してカスタマージャーニーマップを作成する仮定を、ペルソナである就活生自らの行動や感情を挙げて、課題を抽出しカスタマージャーニーマップを作成しています。

ワークショップによって採用のwebサイトをリニューアルする際の方向性が定まりました。

旅行代理店でのカスタマージャーニーマップ

北米の旅行代理店でのカスタマージャーニーマップの事例を紹介します。

旅行代理店を利用する顧客へのサービス向上を目的としたカスタマージャーニーマップです。顧客の一連の行動を可視化しており、カスタマージャーニーマップ内にイラストを使うことで、顧客の行動を一目で分かるようにしています。

カスタマージャーニーマップを作成したことで、予算や技術リソースなど、どこに集中させるべきかが特定できました。

CDPを利用したカスタマージャーニー

一番最初に行うペルソナ設定の際、事実に基づく客観的なデータをもとにペルソナ設定を行うことが大切です。しかし、webの行動履歴やメール・SNSを通じてやり取りしたコミュニケーション履歴、広告、アプリ、検索など、顧客はさまざまなチャネルを行き来しているため、カスタマージャーニーは以前よりも複雑なものになっています。

また、顧客の購買行動はオンラインだけでは完結せず、実店舗への来店などのオフラインの行動データもあるため、これらのデータを組み込みながらペルソナを設定するのは容易ではありません。

加えて、これらの顧客データはタッチポイントごとに管理している部署が違い、データがバラバラになっていたり、各事業や各部署でデータが閉じて連携されていないケースが多いです。

例えば、事業ごとに異なる顧客IDであったり、製造部門であれば製品データ、マーケティング部門であれば顧客データやデモグラフィックの集計データなど、各部署でデータが閉じているため、企業内でのデータ連携が行えず、正確なカスタマージャーニーを作ることができません。

事業や部署で分断されているオンラインの顧客データや実店舗などのオフラインの顧客データを利用するには一元管理するインフラが必要です。そのインフラとして、CDP(Customer Data Platform)が1つの解決策となります。

CDPとは「カスタマーデータプラットフォーム」の略称で、企業の顧客に関するデータを管理し、顧客一人ひとりを理解するための基盤のことです。CDPについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。

関連:CDPとは?カスタマーデータプラットフォームの機能やメリット、活用例を解説

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