2022.12.14

パルス型消費行動とは?スマホ普及による行動変化とジャーニー型との違い

パルス型消費行動とは?スマホ普及による行動変化とジャーニー型との違い

インターネットとスマートフォンの普及によって、人々はさまざまな商品やサービスをいつでもどこでも購入できるようになりました。その結果、今までにない新たな消費行動が見られるようになり、Googleはその1つとして「パルス型消費行動」を提唱しました。

本記事では、パルス型消費行動とは何か、変化していく顧客の消費行動に対して企業やマーケターがどのように対応していくべきかについて紹介します。

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Googleが提唱する「パルス型消費行動」とは

パルス型消費行動とは、2019年にGoogleが提唱した消費行動の分類の1つです。

「空き時間にスマホを操作しながら瞬間的に買いたい気持ちになり、買いたいと思う商品を発見し、その瞬間に買い物を終わらせるという消費行動」のことをパルス型消費行動と言います。

パルスとは瞬間的に流れる電流や電波のことです。パルス型消費行動で消費者が突発的に商品を買いたくなり、購買の意思を固めるときの感情がまさにパルスだと言えるでしょう。

Googleはデジタル化により人々の購買に関わる行動が大きく変化していることから、さまざまな角度から定量調査・定性調査を行いました。同調査の中でGoogleは、以下の3つのトレンドが見えてきたこともまとめています。

  1. 今、人々は買う瞬間まで知らなかった名前の商品を買うことに躊躇しなくなってきている
  2. 今、人々は何かを買うためにお店やECサイトに行く時点で、具体的にどの商品を買うかまだ決めていないことが多い
  3. 今、人々は暇つぶしにスマホを眺めている時に、偶然知った商品をその場で買うことに躊躇しなくなってきている

引用:Think with Google「データから見えた「パルス型」消費行動——瞬間的な購買行動が増えている:買いたくなるを引き出すために:パルス消費を捉えるヒント(2)

このトレンドや調査結果から、人々が「買いたい」と思ったその場で商品・サービスの購入までを行うことが増えていることが浮き彫りとなり、パルス型消費行動という新たな消費行動として名付けられました。

パルス消費型行動は、ある程度の段階を踏んで購入へいたる「ジャーニー型消費行動」や、予定外の買い物をする「衝動買い」とは異なるものとされています。

ジャーニー型消費行動とパルス型消費行動の違い

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参考:Think with Google「データから見えた「パルス型」消費行動——瞬間的な購買行動が増えている:買いたくなるを引き出すために:パルス消費を捉えるヒント(2)

従来の人々の消費行動は、商品・サービスを認知した後に広告などで詳細・魅力を知る機会を重ね、欲しい気持ちを生み出し購入へと動くAIDMAのように、認知から購買までを段階的に時間をかけて進んでいく「ジャーニー型消費行動」が主流と考えられており、顧客の行動を可視化するカスタマージャーニーマップのフレームワークなどにも用いられてきました。

しかし、パルス型消費行動では、人々が認知や比較検討の段階を踏まず、商品を知った瞬間に購買までたどり着くことが多々あります。

2つの消費行動の違いは、商品・サービスの認知から購買の意思決定までのスピードにあります。

関連:カスタマージャーニーとは?効果的なマップの作り方と2つの活用事例

衝動買いとパルス型消費行動の違い

パルス型消費行動の「瞬間的に買いたい気持ちになり、予定していなかったものを購入してしまう」という行動は衝動買いと同じようにも見えます。

しかし、Googleは衝動買いとパルス消費を異なるものとしており、次のように述べています。

調査を続ける中で、パルス消費とは「物を買う瞬間」、つまり「商品とお金を交換する瞬間」を指すのではなく、あくまで消費者が「特定の商品やサービスに対してピンとくる瞬間」のことを指す、ということも浮き彫りになってきました。この瞬間は、商品とお金を交換する前に起こることもあれば、場合によっては後に起こることもあります。

ただ、ある商品やサービスに「パルスする」状態であるということは、心理的にはすでに買い物かごに入っている状態であり、それ以降、同一カテゴリーでそれ以外のものを購入する可能性は、著しく低くなります。

引用:Think with Google「瞬間的に買いたくなる「パルス消費」、衝動買いと何が違う?

その時の感情に従って購入をする単なる衝動買いとは異なり、パルス消費はパルスしてから購入までに時間がかかることもあります。

また、パルスが発生する時、人々の中では自身が無意識に大切だと認識している「直感センサー」が働いており、購買の意思決定に繋がっています。これが単なる衝動との大きな違いです。

パルス型購買意欲を高める6つの「直感センサー」

Googleは、パルス型購買意欲が高まり消費に繋がるトリガーとなる「直感センサー」というものも定義しました。

直感センサーとは、パルス消費が起こる際にその商品・サービスを選ぶ要因となった感覚であり、心理的な反応のことで、以下の6つに分類されます。

直感センサー 内容
セーフティ 「より安心安全なもの」に反応 ・有名企業が販売している商品を購入する
・信頼している業者が配送を行っている商品を購入する
フォーミー 「より自分にぴったりだと思うもの」に反応 ・洋服を購入する際、ブランドや価格ではなく自分の身長や髪型と似ているモデルが着用している洋服の中からもっとも自分に似合いそうなものを購入する
コストセーブ 「お得なもの」に反応 ・複数の店舗やECサイトで商品価格を比較し、安価なものを購入する
・特定の商品が値下げされるまで購入を控える
・商品単価がより安くなる、数量が多い商品を購入する
フォロー 「売れているもの」や、「第三者が推奨するもの」に反応 ・口コミサイトで高評価の化粧品を購入する
・美容師に勧められた整髪料を購入する
アドベンチャー 「知らなかったもの」や「興味をそそるもの」に反応 ・新しいお菓子が出るたびに購入する
・毎回異なる入浴剤を購入する
パワーセーブ 「買い物の労力を減らせること」に反応 ・頻繁に購入するものの定期購入サービスを扱っているECサイトを選択する
・大きいものや重たいものをECサイトで購入する

参考:Think with Google「消費者が「ピンとくる」6つの直感センサー:買いたくなるを引き出すために:パルス消費を捉えるヒント(3)

消費者の状況と商材によって重視すべき直感センサーは異なる

直感センサーには一貫性がなく、その人の置かれた状況によって反応しやすいセンサーが異なります。

例えば、徒歩30分の地域で最安値のスーパーで毎回食材の買い物をしている人でも、怪我をしてしばらく歩くのが難しい状況ではそのスーパーを利用せず、近場のお店やネットスーパーを利用するでしょう。

また、商品自体がもつ性質、カテゴリによっても反応しやすいセンサーが異なります。Googleの調査によると、ヘアケア用品では「セーフティ」「フォーミー」の反応のしやすさが高くなり、ビール・ソフトドリンクでは「アドベンチャー」が高くなるなどの傾向が見られました。

パルス型消費行動に影響を与えるバタフライ・サーキット

バタフライ・サーキットとは

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「バタフライ・サーキット」とは、人々が商品やサービスを購入するために行う情報探索行動の中で見られる法則のことです。

パルス型消費行動関連の調査のさらに後に行われたGoogleの調査では、人々の購買に繋がる情報探索の分析が行われました。

その調査の中で、パルス発生から消費行動までに時間差が生じるケースの背景には、商品に関する情報を「さぐる」ための探索と「かためる」ための探索をくり返す法則を持つ行動があることが分かりました。図にすると蝶のように見えることから、Googleはこの法則を「バタフライ・サーキット」と名付けました。

さぐる探索には「情報収集自体を楽しみたい」「世間や周りの人が選んでいる商品・サービスを把握したい」といった検索動機が存在し、かためる探索には「自分の持つ考えが正しいかを確認したい」「商品・サービスに後でがっかりしないよう期待値を下げておきたい」などの検索動機が存在します。

バタフライ・サーキットの5つのパターン

バタフライ・サーキットには5つの型があり、以下のように分類されます。

全方位型 商品購入の思い立ちから実際の購入までの間、満遍なくバタフライ・サーキットを行い、「さぐる」と「かためる」のバランスが良いパターン。
SNSなどを通じてこれまで知らなかった興味をそそられる商品やサービスに出会うと、パルスに繋がることが多い。
主観型 商品購入の思い立ちから実際の購入までの間、モバイル検索を中心に満遍なくバタフライ・サーキットを行うパターン。
全方位型に比べると、情報収集自体を楽しんだり知識の蓄積を積極的に行ったりする傾向が強く、他人の評価をあまり気にしないことが多い。
直感センサーが働いた商品にパルスして購入を決めた後も、その商品のスペックなどの情報探索を継続する傾向にある。
慎重型 商品購入を思い立ち、その商品に対して網羅的なバタフライ・サーキットを行った後、実店舗でもその商品について確認し、購入をするパターン。
自分の周りの人々や店員の意見を積極的に聞き、情報元をオンラインに限定せず慎重に情報探索を行う。十分に情報を集めたうえでパルスし、購入にいたる。
真面目型 日常の雑誌や口コミなどオフラインの情報接触から購買意欲が刺激され、パルスしてからバタフライ・サーキットを始めるパターン。購入することを決めている商品について客観的な情報や機能性を中心にしっかりと情報収集をする。
瞬発型 オンラインでのバタフライ・サーキットを通して商品・サービスを発見することを楽しみ、気になるものに出会うとそのインスピレーションに忠実に情報探索を進め、一定の確信を得てパルスし、購入するパターン。
普段から興味のあるものについてバタフライ・サーキットを行っていて、パルスしてから購入までの時間が特に短い傾向がある。

参考:Think with Google「「全方位」「主観」「慎重」「真面目」「瞬発」5つに分類できる探索行動パターン:バタフライ・サーキットと8つの動機

バタフライ・サーキットのパターンによってパルスしやすい状況が異なるため、自社のターゲットが商品に出会うまでどのような探索行動を取っているのか、どのような情報や事象がパルスに繋がる傾向にあるのかを捉えておくことは、マーケティングにおいて重要です。

変化する消費行動にどう対応するべきか

人々の生活に関わる技術の変化によって、過去に提唱されてきたフレームワークなどに当てはまらない、新しい消費行動が日々生まれ続けています。さらに、人々の消費行動は時代や世代によっても異なる場合があります。

関連:モノ消費からコト消費、さらにトキ消費へ。Z世代はイミ・エモ消費が増加

また、人々が消費行動を起こすまでに通る情報探索にも、バタフライ・サーキットのパターンのようにさまざまなケースが存在します。

例えば、パルスが発生した後すぐ購買をせず、バタフライサーキットを継続するケースです。Googleの調査によると、新婚旅行をハワイと決定するパルスが発生した後、長期間に渡り他国などの旅行先の情報探索を行っていたが、結局行き先はハワイとなった人がいました。この時の情報探索行動は、ハワイの決断を後押しするためのものでした。

他にも、特定の商品について義務的に探索している時に、並行して何か楽しいことについてのバタフライ・サーキットを始め、まったく異なる商品の「ご褒美消費」が生まれるなど、一見関係性のない商品の背景にある情報探索行動が新たな消費行動のきっかけになることもあります。

対して、新しい消費行動を取る人が増える中でも、バタフライ・サーキットをまったく行わず、従来のジャーニー型の情報探索と消費行動を行う層が一定数存在することも分かっています。

人々の消費行動そのものとそれを取り巻く環境が複雑化している中、企業がマーケティングを行ううえでは、今現在の自社の顧客となりえる人々が置かれている状況と行動傾向を深く理解し、それぞれに合わせたマーケティング施策が必要と言えます。

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また、人々の消費行動が今後変わり続けても、顧客を理解したうえで最適なコミュニケーションを取り、商品やサービスを提供して売上に繋げていくことの重要さは変わりません。

そして、消費行動の多様化と変化に大きく影響を与えたデジタル化は、同時にタッチポイントを増やし、データで顧客と企業を繋ぐ役割を果たしたことも抑えておきたい点です。

データだけで顧客を理解しきるのは難しいですが、データによって顧客自身も気づいていない顧客インサイトを発見したり、行動分析の結果を施策の立案や改善に活用したりするなど、顧客データから得られる情報は顧客理解を深めるのに大きく役立ちます。

ただ、単純に自社内のデータを活用して顧客とコミュニケーションをとれば良いのかというと、そうとも言い切れません。例えば、事業部・グループ会社間で細切れになっている顧客データを使ってコミュニケーションをとろうとすると、顧客が求めるタイミングで適切な情報提供が行えず不信感を与えたり、場合によっては顧客を失ってしまう可能性があります。

顧客と適切な形でコミュニケーションをとるためには、正確なデータを活用してその都度分析・改善していく必要があります。データを活用して顧客起点でのコミュニケーションを構築する手順については、下記の無料資料で紹介しているのでご活用ください。

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セグメントから「個客」の分析までできるCDP

データドリブンマーケティングに着手しようと考える多くの企業が直面するのが、「データのサイロ化」の問題です。データのサイロ化とは、IT領域でシステムが部署ごとに分断されてしまいデータが連携されていない状態のことを指します。

前述した事業部・グループ間で顧客データが細切れになっている状態で顧客と適切なコミュニケーションがとれないケースも、データのサイロ化が原因と言えます。

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関連:「データのサイロ化」5つの問題と解決策。攻めのDX推進を妨げるサイロ化の原因とは

データのサイロ化を解消し、顧客を正しく理解したうえで顧客起点のコミュニケーションをとるためには、顧客に関わるすべてのデータを1か所に集約し、部署やシステムを横断してデータを分析できる環境が必要です。

そのインフラには、CDPが有効です。

CDPは「カスタマー データ プラットフォーム:Customer Data Platform」の略称で、あらゆる顧客のデータを収集・統合し、データを活用できる環境を整えるマーケティングシステムです。顧客一人ひとりに合わせた体験を提供できるよう、さまざまな外部ツールに連携することができます。

顧客は商品やサービスを購入するまでにさまざまな情報探索行動を取っており、自社と顧客との間だけでも、SNS・webサイト・アプリなどさまざまなタッチポイントが存在しています。CDPは顧客のタッチポイントを管理し、「個客」単位での分析を可能にします。

例えば、CDPに集約されたデータをもとにそれぞれのタッチポイントに接触したタイミングや前後の行動を分析し、パルス消費のきっかけとなる情報探索行動の傾向を見つけ出したうえで、同じような行動を取っている顧客のセグメントを作成し、施策に活用することができます。

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関連:CDPとは?カスタマーデータプラットフォームの機能やメリット、活用例を解説

顧客が消費を行った瞬間だけではなく、自社が顧客と関わったすべてのタッチポイントを俯瞰した分析も顧客理解には重要となるため、CDPのようなシステムで顧客データを一元管理できることが望ましいでしょう。

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