2023.04.11

ポイントシステムの仕組みと導入時の注意点|ポイントの効果を高めるために必要なこと

ポイントシステムの仕組みと導入時の注意点|ポイントの効果を高めるために必要なこと

家電量販店や飲食店・アパレル企業などをはじめとした多くの企業がポイントサービスの提供・ポイントシステムの構築を行っており、マーケティングに活用しています。

矢野経済研究所のポイントサービス市場に関する調査によると、ポイントサービスの市場規模は年々増加傾向で、国内のポイント発行額は2026年に3兆円を超えると予想されています。

さまざまな企業が提供するポイントシステムの導入を進めていることに加え、国が主体となってマイナポイント事業を進めるなど、ポイントサービスは人々の生活の中に浸透していると言えます。

本記事では、ポイントサービスのメリット・デメリットや、自社ポイントシステムの導入方法について紹介します。

なお、弊社EVERRISEでは最新のマーケティング・データ活用のトレンドをまとめた資料を公開中です。以下のボタンからダウンロード可能ですので、最新のトレンドを自社のマーケティング活動に活かしたい企業のマーケティング担当者は、本記事とあわせてぜひご活用ください。

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ポイントサービスとは

ポイントサービスとは、企業の商品やサービスの利用状況に応じて顧客に付与されるポイントを顧客が貯め、貯まったポイントをさまざまなことに利用できるサービスのことです。ポイントサービスは「ポイントプログラム」とも呼ばれ、古くから多くの企業が採用してきました。

ポイントを貯める仕組みには、紙のカードにスタンプを貯めるアナログなものや、磁気カード・アプリなどを使ってデジタルに管理するものがあります。ポイントをデジタルで管理するためには、企業の商品やサービスの利用状況に応じて顧客にポイントを付与するシステムが必要です。近年はスマートフォンの普及に伴い、アプリを用いたポイントサービスが増えています。

顧客がポイントを得るタイミングは、来店ごとや商品購入時、サービス利用時などさまざまです。また、ポイントの利用方法も景品交換・値引きなど、企業によって異なり、それぞれの特色があります。

ポイントサービスの種類

ポイントサービスには、共通ポイントサービスと自社ポイントサービスの2種類があります。どちらかを扱う企業が多いですが、共通ポイント・自社ポイントのどちらも提供し、1回の商品購入やサービス利用で両方を獲得できるようにしている企業もあります。

共通ポイントサービス

共通ポイントサービスとは、顧客がさまざまな企業・店舗をまたいで、同じポイントを貯めたり使ったりすることができるサービスです。国内では「Tポイント」「楽天ポイント」「dポイント」などが代表的です。

共通ポイントサービスでは、共通ポイントの運営会社がポイントシステムの構築と管理を行います。共通ポイントサービスを利用したい企業は加盟店として、導入費用・ポイント発行手数料・ポイント原資(発行したポイント数に応じた費用)を運営会社に支払う仕組みになっています。

自社ポイントサービス

自社ポイントサービスは、顧客が自社商品購入やサービスの利用でポイントを貯めたり使ったりすることができるサービスです。

自社ポイントサービスでは、ポイントの単位や付与方法、交換可能な景品など、あらゆるルールを企業側が自由に設計し運用できます。

共通・自社ポイントサービスそれぞれのメリット・デメリット

共通ポイントサービス、自社ポイントサービスにはそれぞれ異なるメリット・デメリットがあり、自社に適したものを採用する必要があります。

共通ポイントサービスのメリット

新規顧客の獲得に繋がる

共通ポイントの利用者は初めての店や商品でも「ポイントが貯まるなら利用してみよう」と選択のハードルが低くなりやすいため、新規顧客獲得に繋がりやすくなります。新たなポイントカード作成や会員登録の手間がないことは、顧客側のメリットにもなります。

初期コストを抑えることができる

必要なものは共通ポイント運営会社側が用意しているため、すぐに導入・ポイントサービスを開始できます。また、販促用のツールも共通ポイント運営会社側が準備・提供することが多いため、ポイントサービスに係る販促費も抑えることができます。

共通ポイントサービスのデメリット

企業独自の運用ができない

共通ポイントサービスは、加盟店側で自由にポイントキャンペーンや還元率の設定ができないため、サービス内容を他社と差別化しづらいです。また、競合企業が同じ共通ポイントの加盟店になることもあり、顧客の囲い込みがしづらくなります。

顧客データを活用しづらい

共通ポイント運営会社から提供してもらえる顧客データの内容は限られているため、思うように顧客データを活用できない場合があります。

すでにポイントシステムを導入している企業さまの中で、顧客データの活用に課題を感じている場合は、下記の記事で顧客データ活用の課題や必要な5つのステップを紹介しているので参考にしてください。

関連:顧客データ活用の課題と解決策|5つの成功事例から学ぶ分析・管理方法

自社ポイントサービスのメリット

自由な運用ができる

自社ポイントサービスでは、「合計金額◯◯円以上購入でポイント付与」「特定の日付の日はポイント◯倍」など、独自のキャンペーン実施や還元率の設定を自社でコントロールできます。ポイントサービス自体と、ポイント関連の顧客へのコミュニケーションの内容で他社との差別化を図り、顧客の囲い込みに繋げることができます。

現時点で交換可能な商品やポイント有効期限のような、利用状況に応じた内容のお知らせメールを送信するなど、ポイントを上手く活用することで既存顧客とのコミュニケーションを活発化でき、顧客単価アップも期待できます。

顧客データを活用しやすい

ポイントサービスの利用には会員登録が伴うため、顧客情報を獲得できます。顧客情報を得ることでロイヤル顧客の把握や、顧客育成に繋がるマーケティング施策の打ち出しなどに顧客データを活用できるようになります。

「家族の有無」「興味のある商品ジャンル」などを質問するアンケートへの回答でポイントを付与するなど、ポイントを使ってより多くの顧客情報を集めることも可能です。上記のアンケート質問例のような、顧客が自ら企業へ提供する情報のことをゼロパーティデータと言います。

世界的にプライバシー規制の動きが加速しており、企業は今後ゼロパーティデータを軸にマーケティング施策を実行していく流れがより強くなると予想されます。下記の記事で、ゼロパーティデータの概要から収集・活用事例について紹介しているので参考にしてください。

関連:Cookieレス時代に「ゼロパーティデータ」が生み出す真の顧客理解

また、ゼロパーティデータを活用した具体的な施策やデータを活用していくうえで必要なことについては、下記の無料資料でご紹介しています。時代の変化に対応したマーケティング施策を検討するうえで参考になるかと思いますので、ぜひご覧ください。

無料資料:Zero / 1st Party Dataを活用したマーケティング施策5選|強まるCookie規制に対する次の一手

Zero / 1st Party Dataを活用したマーケティング施策5選|強まるCookie規制に対する次の一手

自社ポイントサービスのデメリット

導入・運用コストが大きい

ポイント管理の方法から運用ルールまで1から検討が必要になるため、サービス開始までに時間がかかります。自社ポイントシステムを用いる場合は、カスタマイズが多いほど開発費用が上がります。また、サービス開始後も、ポイント管理や顧客からの問合せ対応などの運用コストが発生します。

どのようなサービス内容にするかで開始までの時間や開発費用の有無などは大きく変わりますが、総合的なコストに見合う効果が得られるか、十分な検討が必要です。

新規顧客の獲得には繋がりにくい

顧客から見ると、1社でしか利用できない自社ポイントは、共通ポイントと比較すると登録・利用のハードルが高くなります。自社ポイントがあるかどうかは、新規顧客の獲得には貢献しづらいと言えます。

自社ポイントの管理に不可欠なポイントシステム

自社ポイントサービスの提供には、自社でポイントシステムを導入する必要があります。

紙のスタンプカードなどのアナログなポイント管理は手間がかかり、情報の活用範囲も限られてしまいますが、ポイントシステムを使うことで管理が容易になります。顧客がポイントを貯め、貯まったポイントの確認や利用をするためには、アプリやwebサイトなどを用います。

ポイントシステムによって、企業はポイントと顧客情報を適切に管理しながらデータとして活用できます。自社ポイントシステム内のデータは、分析によって顧客理解を深めたり、マーケティング施策へ活用したりすることで既存顧客との関係強化・LTV向上などに役立ちます。

自社ポイントシステムは導入・管理コストがかかりますが自由度が高く、機能のカスタマイズなどによってポイントサービスに独自性を持たせることができます。

自社ポイントシステムを導入する3つの手順

自社ポイントシステムの導入・運用には考慮しておくべきことが多々あるため、適切な手順と考慮すべき事項を解説します。

1. 自社ポイントサービスの全体設計をする

自社ポイントシステムの導入前に、以下について考慮しておくことで、より適切な機能や導入方法の選択に役立ちます。

目的を明確にする

自社ポイントサービスを何のために行うのか、目的を明確にしておきましょう。自社ポイントサービスは一度始めるとすぐに終了することが難しいサービスです。顧客に利用してもらえなければ最終的に目指すべき利益に繋がらず、ポイントや自社ポイントシステムはコストとして重くのしかかってしまいます。

顧客単価向上や店舗間の送客など、目的が明確に決まっていればシステムの条件や分析に必要なデータの種類が決まります。自社ポイントシステムにかかるコストを最小限にしながら有効活用するためには、目的を明確化しておくことが重要です。

自社ポイントサービス全体のコストを洗い出す

自社ポイントシステムそのものの開発費用や導入コストだけでなく、その他にかかるコストも考慮しておきましょう。

例えば、磁気カード・アプリ・webサイトといったインターフェースや、その利用方法を伝える手段などが必要です。店舗での対応や問合せ窓口の設置など、従業員側のコストが発生する場合もあります。

ポイント運用の全体設計をする

どのようにポイントを付与するのか、利用してもらうかを事前に想定しておきましょう。ポイント付与のタイミングは、サービスの利用時、商品や特定商品の購入・クーポン利用時、来店時などさまざまなケースが考えられます。

また、ポイントの有効期限や有効期限の延長条件の設定、会員ランク別に付与率を調整するといった各種条件、特典・キャンペーンの内容なども考慮しておきましょう。

さらに、ポイントサービスは顧客にとって、自社とのさまざまな接点で触れるサービスの1つでしかありません。自社の既存のサービスやコミュニケーションの内容も含め、顧客とのコミュニケーション全体について、ポイントサービスを含めたうえで再構築することが望ましいです。

顧客とどのようにコミュニケーションを取るべきなのか悩んでいる企業の担当者さまは、ぜひ下記の記事をご覧ください。顧客を中心としたコミュニケーションの再構築を進めるための手順や注意点を詳細に解説しています。

無料資料:データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

ポイント・顧客情報の管理方法を決める

ポイントそのものはポイントシステムで管理できますが、既存の顧客管理システムやMAなどと連携してデータを管理・活用したい場合には、各システムに連携機能が備わっているか、情報の更新をどのように行うかなどの設計が必要です。

システム・ツール間の連携ができないと、システムが部署ごとに分断されてしまいデータが連携されていない状態である「データのサイロ化」が起こり、ポイントサービスによって得られるデータを活用しきれない場合があります。

データのサイロ化は、データ活用に着手する大半の企業がぶつかる問題です。なぜサイロ化が起きるのか、どのような解決策があるのかについて、下記の記事で詳しく紹介しています。ポイントシステムを導入するうえで理解しておくべき内容なので、ぜひこの機会にご覧ください。

関連:「データのサイロ化」5つの問題と解決策。攻めのDX推進を妨げるサイロ化の原因とは

2. 自社ポイントシステムの機能を決める

自社ポイントサービスの目的や運用方法に応じて、ポイントシステムに必要な機能を決定します。企業によって必要な機能は異なりますが、ポイントシステムの主な機能には以下のようなものがあります。

自社ポイントシステムの主な機能

管理機能

1. 顧客管理機能 顧客の個人情報の登録・管理、カード紛失時の対応のための検索・照会、条件に応じた会員ランク付けなど。
2. グループ管理機能 店舗や加盟店など、さまざまなグループ単位での管理機能。
3. キャンペーン管理機能 特定の期間やテーマ単位で、ポイント付与のルールやクーポンの種類、対象の顧客リストなどを管理できる機能。
4. ポイント管理機能 ポイントや仮ポイントの発行・加算・減算、ポイント付与率のコントロールや利用履歴など。
5. 販売促進機能 ポイントの獲得状況や分析結果をもとに、クーポンの発行やメール・プッシュ通知など、販売促進のためのコミュニケーションを行える機能。
6. 分析機能 顧客の属性や、ポイント獲得状況や商品の購入頻度などを分析できる機能。分析手法にはRFM分析やデシル分析、各種クロス集計などがある。

連携機能

7. 外部システム連携機能 POSシステム、販売管理システム、CRMやCDP、MA・メール配信システム、分析ツールなどへの連携機能。

ユーザー側機能

8. マイページ機能 顧客がポイントを確認するためのwebページやアプリの画面など。

3. 自社ポイントシステムの構築方法を決める

スクラッチ開発

自社で1からシステムを開発する方法です。初期コストが高くなりやすいものの、自由度が高いため自社に最も適した形のシステムにすることができます。

SaaSなどの他社サービスではサービスやサポートが終了してしまうリスクがありますが、自社専用であれば長期での利用が可能です。

パッケージソフトウェア・SaaSなどの導入

ポイントサービスに必要な基本的な機能をパッケージ化したシステムとして提供している、パッケージソフトウェアの導入やSaaSを利用する方法もあります。

ポイントシステムを提供する企業は多岐に渡ります。サービスの提供形態もオンラインで利用可能なクラウド型や、自社のサーバーで運用できるオンプレミス型など企業規模に合わせたさまざまなものが存在します。

パッケージに含まれない機能は使用できませんが、ある程度カスタマイズが可能な場合もあり、スクラッチ開発よりも初期コストを抑えることができます。

自社ポイントサービスの効果をより高めるために必要なこと

ポイントシステムを構築して自社ポイントサービスを行う理由は企業によってさまざまですが、最終的に企業の利益に繋げるには、ポイントとともに顧客データを蓄積・管理・分析し、顧客理解に役立て、活用することが重要です。

しかし、ポイントに関わるデータだけを通した分析では、顧客の一面しか見ることができません。顧客理解には、webサイトの閲覧状況や、ポイントの発行・利用を伴わなかった店舗利用の記録など、その顧客に関わるすべてのオンライン・オフラインデータを俯瞰した分析が必要です。顧客をより深く理解することで、企業にとっての本当の優良顧客の把握や効果的なマーケティング施策の選定に繋げることができます。

自社ポイントシステム内の機能だけで顧客データ管理を完結させることもできますが、ポイントが直接関わらない情報との紐付けや、データの蓄積・分析には適していません。

自社ポイントシステムはあくまでポイントの管理システムとして運用し、別途ポイントシステムを含めたさまざまなシステム・ツールと連携して情報を集約できる顧客管理システム・仕組みを持つのが望ましいと言えるでしょう。

上記のようなオフライン・オンラインの購買行動を融合させたマーケティング概念は「OMO」と呼ばれ、近年注目を集めています。OMOマーケティング施策の代表例として、ECサイト・アプリと実店舗のポイント連携が挙げられます。OMOの考え方をもとに顧客をより深く理解することで、企業にとっての本当の優良顧客の把握や効果的なマーケティング施策の選定に繋げることができます。

OMOのチャネル

OMOの条件や具体的なマーケティング施策の例、またOMO実現のために必要なポイントを下記の記事で紹介しているので、参考にしてください。

関連:OMOとは?O2Oやオムニチャネルとの違い、成功事例と実現に必要なポイント

あらゆるツールと連携可能なCDP

ポイントシステムとその他のシステム・ツールを連携するには、CDPの導入が有効です。

CDPとは「カスタマーデータプラットフォーム:Customer Data Platform」の略称で、企業の顧客に関するデータを収集・統合・管理するためのプラットフォームです。

CDPのデータ収集・統合・変換・連携

CDPはほかのシステム・ツールとの連携を前提に設計されており、収集して1つに統合したデータを、さらにさまざまなマーケティングツールへと受け渡すことができます。

例えば、顧客のポイント保有状況や利用状況に応じた細かなセグメントを作成し、MAでのメール配信シナリオやweb接客ツールでのコンテンツの出し分けに活用できます。

CDPについてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。CDPの概要や導入する企業が増えている理由、業界別の活用例などを詳細に解説しているので、全体像の理解に役立ちます。

関連:CDPとは?カスタマーデータプラットフォームの機能やメリット、活用例を解説

また、CDPによって自社ポイントシステムを含め、自社にあるすべての顧客データを統合した状態での分析ができます。BIツールと連携することで、データをより分かりやすく可視化しながら高度な分析も可能です。

CDPとBIツールの連携については、下記の資料をご覧ください。CDPとBIツールによって拡がるさまざまな分析手法について紹介しています。

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CDPによる顧客理解と分析

EVERRISEが提供するCDP「INTEGRAL-CORE」

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