2022.08.17

顧客ランクの付け方。スコアリングとの違いとランク付けに必要な分析

顧客ランクの付け方。スコアリングとの違いとランク付けに必要な分析

マーケティングの戦略や施策を考えるうえで、顧客に重み付けを行う顧客ランクというものがあります。顧客に対して​​適切な対応をとり、良好な関係を構築・維持・促進するために顧客ランク付けは非常に重要です。

本記事では、顧客ランクとは何かについてから顧客ランク付けの際の注意点、必要なことについて紹介します。

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顧客ランクの概要や必要性についてご存知の方は、こちらをクリックしてください。顧客ランクを付ける際の注意点までスキップできます。

顧客ランクとは

顧客ランクとは、顧客を購買行動や実績に応じてランク付け(重み付け)をすることをいいます。すでに自社製品の購入やサービスの利用を行っている顧客に対してアプローチ手段を分ける場合に使用され、顧客との関係性をマネージメントするCRM(Customer Relationship Management)を行う際に重要となります。

一般的には、売上や来店頻度、サービスの利用状況によってランク付けします。新規顧客・一般顧客・ロイヤル顧客・休眠顧客など顧客ランクの名称やどこで分けるかなどの設定方法や条件は、会社やビジネスの形態によってさまざまです。

顧客ランクの一例

顧客ランクの分け方や考え方・活用の方法は、企業や事業によって異なります。例えば、下記のように顧客ランク付けをすることができます。

ランク名 条件
ロイヤル顧客 購入単価と利用回数がともに高く、売上の上位を占める顧客
一般顧客 購入単価もしくは利用回数のどちらか一方が高い顧客
新規顧客 1回目の購入をしてくれた顧客
見込み顧客 購入までは至っていないが、サイトの閲覧などは行ってくれている顧客
休眠顧客 最終購入から一定期間アクションのない顧客

このようにランク付けすることで、新規顧客を一般顧客へ引き上げるための施策を考えたり、一般顧客をロイヤル顧客に引き上げるためのコミュニケーション方法を見直したりなどマーケティング戦略を検討することができます。

例えば、新規顧客に2回目の利用をしてもらい一般顧客に引き上げたい(F2転換)という場合は、2回目利用で割引になるクーポンを発行するなどの施策をとることができます。また、休眠顧客を復活させるために、過去に購買した商品の傾向をもとに、現在の人気商品や類似商品を割引で購入できるクーポンを発行することで利用の再開を促すことができます。

関連:F2転換とは?重要性と転換率の計算方法、リピーターを増やす施策例

中でも、ロイヤル顧客を増やすことが重要です。ロイヤル顧客の定義はさまざまですが、一般的に売上の上部を占めており、商品の購入回数や単価が高かったりサービスの利用回数が多かったりする顧客のことを指します。例えば以下のような条件でロイヤル顧客の定義ができます。

  • ECと店舗を持つビジネス:売上の上位○○%以上で、店舗とECのクロス利用しているユーザー
  • シーズナリティがある商品を持つビジネス:該当の季節や時期以外での購入や利用しているユーザー
  • 予約を伴うビジネス:特定期間においてn回以上利用しているユーザー

ロイヤル顧客は、その企業自体や商品・サービスに愛着・信頼を感じている場合が多いため、競合の商品が多少安い価格であったり、競合店の利便性が上がったりしても、離れる可能性は低いです。

そのため、すでに一度でも商品を購入したりサービスを利用したりしている顧客をいかにロイヤル顧客へ引き上げるか否かを重点に、マーケティング戦略を立てることがおすすめです。

関連:顧客ロイヤルティとは?顧客満足度との違い、顧客ロイヤルティの高め方&事例

顧客ランクとスコアリングの違い

顧客ランクとよく混合して使用されることの多い言葉に「スコアリング」があります。顧客ランクもスコアリングも、どちらも顧客とのコミュニケーションを効率よくまた円滑に進めるために大事なマーケティング手法です。

スコアリングは、主にMA(マーケティングオートメーション)にて、見込み顧客に対するリードナーチャリングにおいて使用されるケースが多いです。リードの行動や属性に対して点数をつけるなどの評価方法を指す際に、スコアリングが使用されます。

一定期間、リード獲得の施策を行っているとハウスリスト内のリードが大量に蓄積されていきますが、すべてをフォローするのは工数もかかりますし、非効率な手法です。そこで、スコアリングを用いて効率的にアプローチを行い、リードから購入顧客に引き上げることができます。

見込み顧客は、まだ購入や契約に至っていないため、売上や利用回数などでランク付けすることができません。そのため、webサイトの訪問回数や自社のコンテンツやイベントの利用回数などに応じて点数をつけるなどしてリードに重み付けを行います。

どちらも、多くいるユーザーの中から積極的にアプローチを行うべきホットなユーザーを洗い出し、適切なコミュニケーションを取るために必要な手法です。

関連:MAにおけるスコアリングの手順。効果を最大化する評価基準と活用例

顧客ランクの必要性

既存顧客の維持に繋がる

アメリカのコンサルティング企業であるBain&Company社の名誉ディレクター、フレデリック・F・ライクヘルド氏が提唱したとされている「1:5の法則」によると、新規顧客の獲得コストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかると言われています。

この法則に基づくと、少ないコストでマーケティング活動の成果を得るためには、新規顧客の獲得以上に既存顧客の維持が重要です。

既存顧客は、すでに一度商品を購入しているため、少ない獲得コストで再び商品を購入してくれる可能性の高く、会社に対してのロイヤルティが高い顧客ほど、大きな利益をもたらす可能性が高いと考えられています。

ただし、将来的な利益をもたらす新規顧客の獲得も重要な要素となるため、既存顧客の維持と両方のバランスを上手く取ることがマーケティングにおいては重要です。

顧客ランク付けを行うことで、ランクに応じた既存顧客へのコミュニケーションを図ることができるようになります。ロイヤル顧客とまだ一度しか購入に至っていない顧客では、求められるコミュニケーション内容が異なります。その差分を明確化し、戦略を立て、既存顧客が継続的に利用してくれるような環境作りを行うために、顧客ランクが必要です。

効率的な施策の実現

顧客をランク付けすることで、会社が現状抱えている顧客はどの層が多いのかが明確になります。合わせて会社全体で増やしたい顧客の条件(ロイヤル顧客の条件)を整えることで、そこに向けて他のランクの顧客には何が足りないのか、足りない部分を埋めるためにはどんな施策が適切かなどの戦略を立てやすくなります。

顧客ランクごとに立てた戦略に対して施策を行い、その後の効果測定も顧客ランクごとに行えるため、うまくいっていない場合は全体を変えるのではなくランクごとに分けて修正するなど小さな範囲で素早く細かいPDCAを回すことが可能です。

また、ランクごとに絞って顧客分析を行うことで、ランクに属する顧客の特徴が分かり、顧客のランクに合わせた適切なコミュニケーションを図ることができるようになります。

今、どの顧客層が多く、どの戦略に注力すべきかを明確にし、効率的な施策を実現するためにも顧客ランクが必要です。

顧客ランクは顧客と企業との間にあるさまざまなコミュニケーションの中で生まれる顧客行動によって決まっていきます。しかし、顧客のランク付けに影響する部分だけしか見ていないと、一貫性のあるコミュニケーションが取れなくなる恐れがあります。

顧客ランクとともに顧客とのコミュニケーション全体を組み立てたうえで施策を実施することで、より高いランクの顧客を増やすことなどにも繋がります。顧客とのコミュニケーションの全体設計については、下記の無料資料で詳しく紹介しています。実際の手順や注意点を弊社が関わった事例を交えながら紹介しているので、ぜひご覧ください。

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顧客ランク付けにおける注意点

目的をしっかりと立ててから行う

顧客ランク付けを行う際に、顧客ランク付けすることそのものが目的になってしまい、細かく顧客分析をしてランク付けしてもその後戦略に生かせずに終わってしまうという失敗ケースは多くあります。

顧客ランク付けのために必要な顧客のデータ分析は、ある程度の時間と労力がかかります。かけたコストを無駄にしないよう、分析の前に目的をしっかり立ててから進めるようにしましょう。

関連:KGI・KPIとは?企業別の事例と設定手順、KPIツリーの作り方

売上だけを見て偏った判断をしない

顧客ランク付けを行う際、売上データをもとに分析することは重要です。しかし、単純に売上だけを見てランク付けすることで戦略に繋がるランク分けができるとは限りません。顧客ランクが生きるのは、分ける基準となる数値にばらつきが多い時です。

売上で分けた場合、基準の値の差がそれぞれわずかしか変わらない場合、別々に対策をする必要性は少ないといえます。売上にばらつきのない場合、必ずしも売上のデータだけではなく他のデータにも目を向けましょう。例えば、BtoCの場合は客単価や利用頻度、利用時期なども参考になります。BtoBの場合は、その企業の事業規模や年間予算、取引実績などを参考にすることをおすすめしています。

売上のデータだけに偏り、ばらつきの少ないランク付けを行った結果、必要性の低い戦略や施策を取ることにならないように注意しましょう。

変化に合わせて顧客ランクを見直す

顧客ランクを付けることで選択と集中を行い、効率的に顧客とのコミュニケーションを図ることができる環境を作れます。

しかし、顧客ランク至上主義にならないように注意しましょう。ランクの幅に捕らわれすぎてしまうと、顧客一人ひとりを理解したコミュニケーションを図るという重要な部分の妨げになってしまう可能性があります。

また、売上は季節や状況に応じて変化する場合があります。その際にはある程度期間を設け、変化や新たな仮説に合わせて改めてデータ分析で検証を行い、顧客ランクの見直しを行うなどして、変化に対応できるようにしましょう。

正しく顧客ランクを付けを行うために必要なこと

仮説に合わせて分析手法を選択する

顧客ランク付けのためには、あらゆる顧客のデータを分析し、仮説の検証を行う必要があります。顧客データの分析手法にはさまざまあるため、目的に応じて正しい分析手法を選択しましょう。

顧客ランク付けのために用いられる主な分析手法の例は下記のとおりです。

分析手法 内容
RFM分析 顧客のデータを分析することで「優良顧客」「休眠顧客」「新規顧客」などにグループ化する分析手法。短期的な売上向上に効果的
CPM分析 顧客データを分析することで細かくグループ化する分析手法。長期的な売上向上に効果的
デシル分析 定期間の売上金額で優良顧客を簡易的に割り出せる分析手法
NPS分析 顧客が企業やブランドに対してどの程度の愛着や信頼度があるのか」を数値化する分析手法

関連:ユーザー分析・顧客分析の重要性と6つの手法。分析データの活かし方

顧客ランク付けのために必要なデータを把握する

目的に応じて分析に必要なデータは異なります。

どんなデータが必要なのか、事前に把握しておくことが重要です。また、データは取得できるシステムによって保管方法や種類も異なるため、こちらもあらかじめ整理をしておく必要があります。ボリュームが少ない・そもそもデータがないという場合は、取得する施策から考えましょう。

関連:データマネジメントとは?DX・データ活用に必要不可欠な理由と実践事例

データを収集・統合する

顧客ランク付けには、一部のデータだけでは不十分です。

売上のデータや顧客の属性データ、サービスなどの利用回数や利用時期、また顧客ランクに応じたコミュニケーションの改善を行う場合は、ランクごとの顧客がどのタッチポイントを頻繁に利用しているかなどの情報も必要になるため、これらの顧客データ収集が可能な環境が必要です。

また、それらのデータがバラバラの状態では、目的に合った分析結果を得ることは難しいです。必要なデータを収集・統合し、1人の顧客として分析状態を整えてから顧客ランク付けのためのデータ分析を行いましょう。

下記の無料動画で、顧客データを統合することでどのような変化を期待できるかについて、ビジネスモデル別に紹介しています。データを収集・統合し顧客分析に活用する具体的なイメージが掴めるかと思いますので、ぜひご覧ください。

無料資料:データ統合で何が変わる?顧客体験を高める顧客データ統合の基礎の動画はこちら

適切なツールの選定を行う

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データ分析と聞くとBIツールの利用を想定される方が多いと思いますが、BIツールだけでは分析や可視化を行えない場合があります。

例えば、店舗の売上データとECの売上データを合わせて顧客ランク付けを行いたいという場合、まずは店舗で管理している売上データとECの売上データを収集し統合する必要があります。この場合、BIツールだけでは十分に分析ができない可能性があります。

必要なデータと保有しているデータを把握した後、システムやツールは何が必要なのかもしっかり選定することが必要です。

関連:BIツールとExcelの違い、データ分析が正しく高速になる活用例

CDPを利用した顧客ランク付け

顧客ランク付けを行うためには、まず現在保有している顧客データをもとに、顧客を理解することが必要です。また、顧客ランク付けを行った後、コミュニケーション改善の施策を取りたい場合は、売上のデータだけではなく、顧客の属性やランクごとによく利用されているタッチポイントなどの理解も必要になります。

さらに、ビジネスの形態によっては、オンライン・オフラインや部署ごとに顧客データがバラバラに管理されているケースもあり、このような状態を「データのサイロ化」と呼びます。データのサイロ化が起きていると、自社内に蓄積されたデータを十分に活用できず、適切な顧客ランク付けができない恐れがあります。

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関連:「データのサイロ化」5つの問題と解決策。攻めのDX推進を妨げるサイロ化の原因とは

データのサイロ化を解消する手段の1つに、CDPの導入が挙げられます。

CDPとは「カスタマー データ プラットフォーム:Customer Data Platform」の略称で、顧客理解を深めることを目的としたマーケティングシステムです。顧客データ活用に特化したシステムであり、顧客データを各ツールから収集して「実在する個人」にデータを紐づけて一元管理したうえで、各マーケティングツールに合わせて加工・連携することができます。

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関連:CDPとは?カスタマーデータプラットフォームの機能やメリット、活用例を解説

CDPを利用した顧客ランク付けのメリット

顧客分析の精度を上げる

顧客ランク付けで重要になってくるのは、仮説を検証するための顧客分析です。CDPを利用することによりECサイトと店舗の売上情報などのオンラインとオフラインのデータを統合して顧客分析を行うことができます。

注意点でも述べたように、顧客ランクを一部の偏った情報だけをもとに行うのは危険です。正しいランク付けには繋がらない恐れがあります。

CDPを利用して、ECサイトや店舗などのオンライン・オフラインまたはマーケティングや営業など部署を問わない、必要な顧客データを網羅した分析結果を元に、顧客ランク付けを行いましょう。

オンラインとオフラインを融合させ、複数チャネルで一貫した顧客体験を提供していこうという考え方はOMO(Online Merges with Offline)と呼ばれ、顧客の購買行動が多様化する現代のマーケティング活動において重要なキーワードになっています。OMOが重要視されている理由やCDP導入で可能になるOMOの施策の例については、下記の無料資料で詳しく紹介しています。

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顧客体験を向上させるOMO戦略

BIツールの連携で効率的な顧客分析ができる

CDPはBIツールとの連携が可能です。BIツールだけでは分析ができない場合に、複数のタッチポイントや部署で保有しているデータを1か所に収集・統合して1人の顧客として処理をしてからBIツールにデータを入れる必要がありますが、その収集・統合の役割を担えるのがCDPです。

CDPとBIツールと連携することでオンライン・オフライン問わずデータ分析が可能です。また、情報に変更があった際にもデータの加工や抽出がCDP上で行えるため、都度エクスポートして加工し直すなどの手間が省け、効率的な顧客分析を実現します。

CDPとBIツール連携について、詳しくは下記の資料をご覧ください。1人の顧客を深掘りする360°顧客分析(n1分析)をはじめ、セグメンテーション分析(クラスタ分析)などの顧客理解を深める分析手法について、図で分かりやすく解説しています。

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CDPによる顧客理解と分析

分析後の施策にも繋がる

CDPはコミュニケーションツールとの連携が可能です。そのため収集・統合したデータはメールやプッシュ通知などのコミュニケーションツールにも使用することができます。

CDPと連携可能な、主なコミュニケーションツールは以下のとおりです。

ツール名 BI / 分析ツール MA / メール配信 / その他施策
ツールの例 ・Tableau
・Looker Studio(旧Google Data Portal)
・Yellowfin
・Amazon QuickSight
・DOMO
・Redash など
・Marketo
・Marketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot)
・HubSpot
・Synergy!
・Karte
・DLPO
・LINE
・Repro
・WEBCAS email など

顧客ランク付けのためにユーザー分析で使用したデータをそのままコミュニケーションツールに利用し、顧客に合わせた施策の実施が可能です。

ここまで、顧客ランク付けのための有効なデータ基盤として、CDPについて簡単に紹介してきました。より詳しくCDPについて知りたい方は、下記の無料資料をご活用ください。CDPの基本機能や他のツールとの違い、各部門ごとのCDPのユースケースなどを紹介しています。

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