消費者のオンラインシフトに伴い、ECサイトの利用が増加している昨今。需要に応えるべくECサイトも運営する小売業が増えている一方で、Amazonや楽天などのECモールを利用しているユーザーが多く、自社ECを軌道に乗せられていない企業は多いかと思います。
本記事ではEC業界の4つの課題から解決策、CDPによるデータ活用について紹介します。
EC業界における4つの課題
EC業界における主な課題は4つあります。
- 新規顧客を獲得できない
- リピーターが増えない
- 実店舗とECの店舗が独立している
- 客単価が低い
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新規顧客を獲得できない
BtoCのEC市場が伸び続けている一方で、ECに参入しても新規顧客の獲得は難しくなっており、集客がうまくいかない企業が多いです。実店舗、かつ路面店であれば道を歩いている人々の目に止まりますが、ECの場合は適切に集客できないと存在すら認知してもらえないことが多々あります。加えて、当然ながらサイトに集まれば誰でもよいわけではなく、商品に興味があり、購入に繋がる顧客を呼び込む必要があります。
集客がうまくいったとしても、ECサイト訪問から購入に至るまでのプロセスで少しでも不便な点があれば、ユーザーはECサイトから離脱してしまいます。購入に至らない原因は、商品の魅力や特徴が伝わらない、欲しい商品が最短ルートで見つけられない、入力フォームが煩雑で購入をやめた、支払い方法が少ないなどさまざまです。
ECサイトへの集客から、実際にサイト訪問してくれた顧客がどこでつまずいて離脱したのかまでデータで把握しなければ、新規顧客を獲得できない原因を見つけることは難しいでしょう。
リピーターが増えない
長期的な売上を確保するためには、定期的に自社のECサイトを訪れて購入してくれるリピーターの獲得が必須です。しかし、ECサイトではこのリピーターを得るのが容易ではありません。
ECの顧客はネット上で立地や時間などに縛られずに買い物できるため、価格など少しでも良い条件の他サイトがあれば、すぐに競合他社へ流れてしまいます。特にAmazonや楽天市場などのECモールは、口コミ評価順や価格順などで商品をひと目で比較できたり、ワンクリックで注文できたりと顧客にとって非常に利便性が高いため競合になりやすいです。また、購入後のケアやコミュニケーションができておらず、売りっぱなしになっていることもリピーターが増えない原因としてあげられます。
定期的にコミュニケーションを取り、自社のECサイトを好きになってもらわないと、存在自体を顧客に忘れられ、リピートしてもらうことは難しいでしょう。
実店舗とECの店舗が独立している
実店舗とECを運営している場合は、実店舗の顧客とECの顧客がそれぞれ独立していることで全体の売上拡大を逃してしまっているケースもあります。近年、技術革新によりチャットのような実店舗に近い接客をECでも実現できるようになっていますが、同時に顧客が実店舗に足を運ぶ動機が乏しくなっている傾向があります。加えて、現在はECの業績が伸びていても、長期的に見れば少子高齢化による人口減少の影響により国内市場だけではいつの日か成長が止まることが予想されています。
実店舗とECが独立していると、実店舗の売上がECに移行しただけになってしまい、全体の売上で考えた時に先の見通しが明るくありません。今後は、実店舗の顧客とECの顧客をうまく循環させて全体の売上拡大を目指していくことが重要です。
客単価が低い
ECの売上は「ECサイトを訪れた人数×コンバージョン率×客単価」という計算式から求めることができます。客単価とは、1人の顧客が1回の購入で支払う合計金額のことで、コンバージョン率とはサイトを訪れた人数のうち実際に商品を購入した人数の割合のことを言います。
例えば10万円の売上をあげる時、客単価100円で1000人と、客単価10000円で10人では、同じ売上金額であっても梱包や発送作業などの時間や人件費が大きく変わってくるため、EC業界において客単価を上げていくことは非常に重要です。
客単価を上げるためには、商品1点あたりの価格を上げるか、顧客1人あたりの購入数を上げなくてはなりません。しかし、商品1点あたりの価格を上げる場合には注意が必要です。付加価値がない状態で価格だけ上がれば、顧客は他商品に流れてしまいます。まずは価格の設定よりも顧客1人あたりの商品の購入数を上げる施策から実施するのがおすすめです。
EC業界における課題の解決策
新規顧客を増やすための施策
新規顧客を増やすためにはECサイトへの集客が必要であり、集客を向上させるために効果的なのは広告宣伝です。中でもニーズが顕在化しているところに露出できるGoogleの商品リスト広告(PLA)や、商品の情報をもとに広告を自動生成するダイナミック広告はもっともECサイトの新規顧客獲得に繋がる施策です。
広告の他に、ECサイトのSEO対策を見直し、顧客になって欲しい人に響くようなコンテンツを作成して検索結果の上位表示を目指すのも良いでしょう。ただし特定のカテゴリに関するページや商品の選び方などのお役立ちコンテンツであれば新規顧客の獲得に効果的ですが、商品の使い方を紹介するコンテンツはまったく成果が出なかったりすることもあるため、キーワード選定やコンテンツ内容には注意が必要です。
また、せっかくサイトを訪問してくれた顧客を逃さないために、1度ユーザー目線に立って自社のサイトを見つめ直すことも大切です。アクセス解析のデータを参考にサイト内の購入までの導線が分かりやすくなっているか見直すことでCVR向上が期待できます。加えてカゴ落ち対策も行っておくとよいでしょう。カートに商品を入れた顧客は、それ以前に離脱した顧客に比べて購入意欲が高いと推測できます。この顧客を逃さないよう入力フォームを改善し、カートに商品が入ってることをお知らせするなどにより新規顧客を増やしやすくなります。
リピーターを増やすための施策
1度購入してくれた人に「もう1度このサイトで買い物をしたい」と思ってもらうために、商品自体の魅力をアップさせるとともに、新しい情報の提供と適切なコミュニケーションが大切です。
新しい情報は、アクセス解析や検索ワードの分析、競合調査などのデータを活用することでコンテンツを更新したり、定期的に新商品を入荷したりします。ただし、新しい情報を更新しても、顧客に届かなければ意味がないので、メールマガジンやDMなどで適切なコミュニケーションを図ります。接触回数が増えると、顧客に自社のECサイトを印象付けられるので、繰り返しサイトを訪問してもらえる可能性が上がります。
また、より顧客に自社サイトを好きになってもらうためには、購入金額や購入頻度などで顧客ステージを管理してランクやポイント、特典を付与したり、誕生日月に特別なクーポンを配布するのも効果的です。商品によってはSNSの運用も良いでしょう。
例えば、アパレルならショップスタッフが新商品を使ったコーディネート写真を投稿することで、顧客は商品を具体的にイメージできたり、ショップスタッフとコメント欄でコミュニケーションを取ったりできます。良い体験を提供できれば「このブランドで買いたい」「このショップスタッフから買いたい」と良質なリピーターの増加が期待できます。
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ECと実店舗の顧客を融合させる施策
ECと実店舗を運営している場合は、実店舗での顧客をECに誘導し、またECを利用した顧客に実店舗を利用してもらう「クロスユース」を進めていくのがおすすめです。クロスユースを実現するためにはECと実店舗の会員証を1つに統合しておき、実店舗での顧客をECへ誘導し、プッシュ通知やチャットでの接客によってEC利用を促進させます。
その後、顧客に再び実店舗に来店する動機を与えるためにチェックインスタンプの機能の導入や、実店舗に近づいたときにプッシュ通知でのお知らせを行い、来店した方には再度ECを利用して商品を知ってもらう…というようにECと実店舗で顧客を循環させることで、ECと実店舗が独立した店舗である時よりも格段に顧客満足度が向上します。
結果として、ECと実店舗の両方を利用する顧客は、ECまたは実店舗のどちらか一方を利用する顧客より年間購入額が高くなる傾向があることが分かっています。
今後は顧客にオンライン・オフラインを意識させず、「いつでも好きなタイミングで買い物をしたい、好きな場所で受け取りたい」という気持ちに応えていくことが企業全体の売上拡大に繋がっていくでしょう。
オンラインとオフラインのチャネルを融合させ、より良い顧客体験を提供していこうという考え方は「OMO」と呼ばれ、一貫した顧客体験を提供するための重要なキーワードとして注目を集めています。OMOについては、下記の無料資料で詳しく紹介しています。ECサイトと実店舗のデータを連携させ、より効果的なマーケティング施策を実施したい企業さまはぜひご活用ください。
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客単価を上げる施策
客単価を上げるためにできることとしては、顧客が興味を持ちそうな商品を「こちらも興味ありませんか?」と追加で購入を促すクロスセルという方法や、2着目以降は5%OFFのような複数の購入を促すアップセルという方法、8000円以上は配送料無料のような送料のしきい値を設ける方法を実施することが多いです。
また商品にもよりますが、価格が高くなる傾向にあるギフト商品を用意して母の日やお歳暮の時期に合わせて情報を配信したり、商品をいくつかのランクに分けて真ん中の価格帯を選びやすいという「松竹梅の法則」を利用したりする企業もあります。
紹介したようなおすすめ商品の紹介や商品の価格決めなどは、顧客のニーズと合致しないと効果を発揮しないため、実際のデータをもとにどの方法を取り入れるのか、どの金額にするのか検討していく必要があります。
EC業界のデータ分析・活用事例
アダストリアでのデータ分析・活用
30以上のブランドが集まる公式webサイト「.st(ドットエスティ)」を運営しているアダストリアのデータ分析・活用事例を紹介します。
アダストリアはリアル店舗を中心としながらデジタル施策にも注力していて、「ECサイトは買うだけの場所ではない」という認識のもとで自社ECサイトも運営しています。自社ECサイトで商品を購入しレビューまで行うと顧客のデータがたまっていきますが、そのデータを活用し顧客体験の向上に努めています。
実際にレビューコメントを分析し、その傾向をもとに商品を開発してヒット商品が生まれた事例もあります。また、実店舗の陳列商品を選ぶ際に自社ECサイトのデータを活用するなど、データを活用し顧客体験の向上を目指すさまざまな取り組みが行われています。
サンスターでのデータ分析・活用
大手日用品・トイレタリー用品メーカーであるサンスターのデータ分析・活用事例を紹介します。
サンスターは特定の製品を継続して購入するロイヤルユーザーに対する解像度の向上、拡大の道筋を立てることを目指していました。そこで、自社ECサイトとコミュニティサービス、スマートフォンアプリのデータを連携し全社的に横断して顧客理解に取り組むために、CDP(Customer Data Platform)を導入します。
CDPを導入することにより、自社ECサイトの会員とコミュニティ会員を結び付けることができ、顧客の解像度を上げることに成功しました。実際に、ECサイトとコミュニティの両方に登録しているユーザーがいることが判明し、そのユーザーはECサイトでの年間購入金額や購入期間が長いことが分かりました。
このような分析データを活用し仮説を立てて検証する作業を繰り返しながら、顧客体験の向上に取り組んでいます。
顧客理解の促進に有効なCDPについては、こちらをクリックしてください。CDPについて説明している部分までスキップできます。
アプローチを成功させる鍵
顧客一人ひとりの理解
いずれの施策も顧客のニーズをキャッチしてweb、モバイル、実店舗を含むすべてのチャネルやデバイスで、それぞれの顧客に合わせて個別に説得力のあるコンテンツを提供することが大切です。そのためには、顧客一人ひとりの理解を深めることが必要です。
顧客から選ばれている企業は、「年齢」「性別」「職業」「居住地」「オンライン上の行動」「過去のデータ」など、顧客データを豊富に集めており、顧客一人ひとりの詳しい個人プロファイルを作っています。不足するデータがあれば3rd Party Dataも活用して分析を行っているため、顧客のニーズをしっかりキャッチし、それに応えた施策を実施することができるのです。
事実、顧客が企業に対しより良い顧客体験を求めていることは、調査結果にも表れています。1981年以降に生まれたミレニアル世代を対象にしたある調査では、回答者の86%が「より良い顧客体験を受けるためならより多くのお金を払っても良い」と答えています。今までなら「いいブランドである」「商品が良い」という理由で購入していた消費者が多かったのに対し、「良い顧客体験ができなければ、商品やサービスを買わない」という消費者が増えてきていることを示しています。
関連:顧客体験(CX)向上の成功事例4選!効果的な施策と必要なステップとは?
マーケティング活動を行っていると、販促の指標となる売上・購買平均単価・訪問数・コンバージョン率・新規割合など「いかに売上を伸ばすか」ばかりで、広告の取り合いや価格競争に目が向きがちになっているケースが多くあります。しかし、それで顧客が喜ぶことはありません。顧客は自分のことを理解してくれて、良い体験を提供してくれる企業についていきたいと思っているのです。顧客を理解し、顧客のニーズに応えていくことが結果的に売上の向上に繋がっていきます。
顧客体験の改善については、下記の動画をご覧ください。データを統合し顧客体験を高めるために必要なポイントについて紹介しています。
無料資料:データ統合で何が変わる?顧客体験を高める顧客データ統合の基礎
顧客データを一元管理する
顧客を理解し、ニーズに応えていくためには、顧客データが正しく揃っていること、そしてそれが1つに統合されていることが重要です。一元管理されていないと、顧客のニーズとずれた的外れな施策をしてしまうリスクがあります。
EC業界では、実店舗に比べて顧客のサイト行動や購入履歴など収集できるデータが非常に多く、MAやCRMなどさまざまなマーケティングツールを活用してる企業も多いです。しかし、多くのツールを導入した結果、顧客のデータを別々の場所で収集することになり、顧客データがバラバラになってしまう「サイロ化」という状態に陥っているケースが多々あります。
データのサイロ化が起きている状態では、自社内のデータを効果的に活用できません。データのサイロ化とはどのような状態なのか、どのような方法で解決できるのかなどについては、下記の記事で詳しく紹介しています。
関連:「データのサイロ化」5つの問題と解決策。攻めのDX推進を妨げるサイロ化の原因とは
顧客データがバラバラになってしまう原因として、システム上うまく組み合わせられなかったり、組織的に異なる部署が管理していて連携が難しいこともあるかと思います。また、ECサイトだけでなく実店舗も運営している企業は、オンラインとオフラインデータを組み合わせて活用できてないケースも多いです。
しかし、そのように顧客データがバラバラに管理されていることで、顧客のニーズと合っていない的外れな宣伝をしてしまうといった問題が起きます。例えば、購買情報とメルマガ配信ツールが連携できていないことで、商品を購入した直後にクーポンを配信してしまったり、顧客像がしっかり見えていないために、顧客の興味・関心がない商品をおすすめしてしまったりすることはよくあります。いずれも顧客にとっては嫌な宣伝でしかなく、サイト自体を利用してもらえなくなる原因になりかねません。顧客データを管理するツールを連携し、顧客データを一元管理することは非常に重要です。
関連:データマネジメントとは?DX・データ活用に必要不可欠な理由と実践事例
EC業界がアプローチを成功させるCDPでのデータ活用
顧客理解を進めること、また顧客データを一元管理するためには、インフラを整える必要があります。そのインフラとして、CDP(Customer Data Platform)が1つの解決策となります。
CDPとは「カスタマー データ プラットフォーム:Customer Data Platform」の略称で、顧客理解を進めるために開発されたシステムです。名前やメールアドレスなどの個人情報、webサイトやアプリでの行動履歴、実店舗での購入履歴など、顧客に関するすべてのデータを収集し「実在する個人」にデータを紐づけて個人プロファイルを作ります。
ECサイトと実店舗を運営する企業を例にすると、ECサイトと実店舗でデータを統合できていないために、1人の顧客に対してECサイトと実店舗で別々のIDを振り、別人として管理されているケースが多々あります。このような場合にCDPを導入し、IDを1つにしてECサイトと実店舗での顧客データを統合することで、1人の顧客として分析できるようになり、ECと実店舗で顧客を循環させるクロスユースも進めることができます。顧客のデータはマーケティングツールに連携することもでき、分析した結果をもとに顧客に合った適切なアプローチをしていく機能を備えています。
CDPについてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。CDPの概要や部門・業界別の活用例などを紹介しているので、CDPに関する大枠を理解できると思います。
関連:CDPとは?顧客データ活用に特化したCDPの機能とメリット、事例などの基礎知識まとめ
顧客の状態に合わせたコミュニケーション
CDPで顧客データを統合することで、顧客の状態に合わせたコミュニケーションが可能になります。例えば、顧客の興味関心に合わせてアプリでおすすめ商品を通知したり、サイト離脱やカゴ落ちに対してメルマガでクーポンを配信したりできます。
CDPでのデータ活用によってこのような施策が可能になり、売上アップや機会損失を最小限に抑えられます。
顧客データをそれぞれの部署で共有
CDPはマーケティング部だけでなく、CRMや在庫管理、企画系の部署とも連携できるため、それぞれの部署に必要な顧客情報を得られます。
CRMでは顧客のお問合せ情報やクレームなどをキャッチできますし、在庫管理では顧客の行動などを蓄積することで、イベントや休日、時期的な需要変動のデータを得られ、需要予測もしやすくなります。在庫の保管スペースを確保するのはコストがかかるため、需要を正確に予測することはとても重要です。加えて、企画系では顧客理解や需要予測が進むことで、次にどのような商品を作るかという観点でデータを活用することができます。
CDPの導入が増えている背景やその他ツールとの違い、各部門のユースケースについては、下記の無料資料をご覧ください。
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- CDP「INTEGRAL-CORE」の特長
- 顧客に関するあらゆるデータを収集・統合
- ノーコードでデータ集計やセグメント作成
- 外部連携機能でBIツール・MA・CRMなどへデータを渡し、マーケティング施策へ活用可能
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