顧客データの分析・活用はあらゆる業界で行われており、小売業でも同様の取り組みが進んでいます。顧客データを適切に管理したうえで分析・活用して販売戦略を立てることは、売上や集客への影響が大きく、変化し続ける市場で生き残るために必要不可欠です。
本記事では、小売業界の3つの課題と解決策、小売業界でのデータ分析・活用の具体例や成功事例、CDPによるデータ分析・活用について紹介します。
小売業界でデータ分析・活用の重要性が増している理由
近年、小売業界では消費者の嗜好の多様化に伴い、店舗運営や商品の在庫管理、売上予測など、ビジネスのあらゆる場面でスピーディかつ的確な意思決定が求められています。
経済産業省の2024年上期小売業販売を振り返るによると、小売業販売額は2021年以降は毎年増加しており、2024年上期も前年同期比2.7%増加の81兆3,890億円と成長を続けています。
しかし長期的に見ると、矢野経済研究所の2030年の小売市場に関する調査では、2022年比で約14%減と市場の縮小が予想されており、人手不足や物流の制約、少子化による人口減少などへの対応が急務となっています。さらに、昨今はエネルギーの高騰や円安・物価高といった外部要因が小売業に与える影響も無視できません。
こうした状況において、経験や勘に頼った従来の店舗運営には限界があり、売上・在庫・客数・商品回転率・従業員動線など、さまざまなデータを活かした意思決定が不可欠です。例えば、売れ筋商品の在庫を過不足なく確保する、閑散時間帯にスタッフを適正配置する、季節や天候に応じた商品展開をするといった施策を行うためには、在庫データや店舗内の来客数・売上額のデータをリアルタイムで把握できる環境や、季節や天候との情報と売上の相関の分析などが必要です。
しかし現実には、店舗やシステムごとにデータが分散している、データの粒度や収集頻度が異なる、そもそも十分なデータが取得されていないといった課題が多く、データを活かした施策や改善に結びつけられていないケースが少なくありません。
さらに、現場業務の効率化や売上向上だけでなく、顧客の購買体験をどう設計するかという視点も重要になっています。顧客の購買行動は変化・多様化しており、単純にモノやサービスを求めていた顧客が、商品購入だけでは得ることができない、体験や経験、時間の過ごし方などを重要視するようになっています。
関連:モノ消費からコト消費、さらにトキ消費へ。Z世代はイミ・エモ消費が増加
このような顧客の購買行動の変化・多様化に対応し、顧客と良好な関係を維持し、選ばれ続ける企業となるためには、顧客データの分析・活用が不可欠です。顧客のことを考えて実行した施策であっても、それが顧客の真に求めているモノ・サービスでなければ期待に応えられたとは言えず、想定する成果が得られない可能性があります。
顧客の期待に応えるためには、顧客に関するデータを集めて分析し、分析結果をもとに顧客のニーズに合わせた施策を実行する必要があります。
本記事では、小売業界のマーケティング領域における顧客データの分析・活用について解説します。
小売業界における3つの課題
顧客データ分析・活用に着手する企業が増えている中で、小売業界における主な課題は3つあります。
- 来店動機、売上への関与が正しく評価できない
- アプリや会員カードの利用が増えない
- チラシ(紙)の販促が主体となっている
来店動機、売上への関与が正しく評価できない
小売業では、催事やキャンペーンの集客を目的に、広告出稿やアプリのプッシュ通知など、さまざまな販促施策が行われています。しかしその効果は「期間中の売上が伸びたかどうか」といった結果のみで評価されることが多く、どのチャネルの施策が来店の動機になったのか、顧客が何を目当てに訪れたのかといった要因までは把握できていないケースが少なくありません。
例えば、百貨店で北海道展のような催事を開催する場合、テレビCM・折込チラシ・アプリ通知・SNS投稿など複数の手段を使って告知が行われますが、実際にどの情報を見て来店したのか、どの地域や店舗が高い集客効果を得たのかといった詳細までは分かっていないことが多いのが実情です。
来店や購買のプロセスを正しく把握できていないままでは、効果の薄い施策に予算を投じ続けたり、成功要因を再現できなかったりと、販促施策の精度が低下する原因となります。
こうした状況を改善するには、顧客の行動データやチャネル別の反応を適切に管理し、来店や売上への関与を明確にすることが重要です。データをもとに効果を可視化することで、費用対効果の高い施策の選定やブース配置の改善など、次回施策への具体的な改善に繋げることができます。
アプリや会員カードの利用が増えない
小売業界では、アプリや会員カードの利用が増えないという課題もよく挙げられます。
利用が増えないということは、そもそも顧客がアプリや会員カードを持ちたいと思うようなメリットを提供できていない、もしくはアプリや会員カードに圧倒的なメリットがあるにも関わらずそれを顧客に伝えられていない、というどちらかの問題があります。
小売業界でよくあるのが、アプリや会員カードがポイントのみの機能になってしまっているケースです。この場合は、ポイントだけしかメリットがないのであれば、アプリをわざわざ登録することが面倒であったり、かさばる会員カードを持ちたくないというデメリットが上回ってしまっているため、根本的な改善が必要になります。
一方で、ほかにもメリットがあるにも関わらず顧客に伝えられていない場合は、その顧客にマッチしたコミュニケーションを取れていないという課題があると考えられます。
近年、人々が取得する情報の量は爆発的に増えており、それに比例して受け取る情報自体も増えていると言えます。数多ある情報の中から的確に顧客へ情報を届けるためには、適切なコミュニケーションからの関係構築が重要です。
単純に発信する情報を増やしても顧客との関係が構築されていなければ、大量の情報の中で見過ごされてしまい、期待する反応は得られません。本来獲得したかった顧客には利用してもらえず、すでに利用している顧客は離れていってしまうかもしれません。
例えば、アプリとメールで同じ内容の通知が届いたり、遠い店舗のお知らせが送られてきたりすれば顧客はストレスを感じ、利用しなくなるでしょう。顧客を理解し、適切なコミュニケーションを図り、常に自社の情報を受け取ってもらえる関係を築いておく必要があります。
チラシ(紙)の販促が主体となっている
主にスーパーなどでは、現在でも紙のチラシを販促の主体としている企業が多く存在します。
紙での販促活動は売上相関での予測になり、実際にどの程度閲覧されたか、どのような宣伝効果があったかを正確に把握することは困難です。
また、若い世代はwebサイトやSNSなどオンラインでの情報収集が当たり前になっています。ポスティングは戦略次第で有効ですが、新聞の折込チラシに関しては、新聞購読者数の減少から、特に若い世代の集客にはあまり向いていません。
新しくデジタルチャネルを導入することで、販促の結果をデータ化し、正しく評価できるようになります。
小売業界における課題の解決策
小売業界における主な課題3つに対して、それぞれ解決策を紹介します。
- 来店動機、売上への関与を正しく評価するための施策
- アプリや会員カードの利用を増やす施策
- オンラインの販促を増やす施策
来店動機、売上への関与を正しく評価するための施策
顧客データを統合し、一元管理する
来店動機、売上への関与を正しく評価するためには、会員データや購入履歴などの顧客データを一人ひとりの ID に統合し、一元管理することが必要です。
- 会員カード
- アプリ
- メール
- LINE
- 店舗への来店履歴
- ネットスーパー(EC)の購入履歴
- 店舗での購入履歴(ID-POS) など
これらのデータがバラバラになっていると誰が・いつ・どの施策に触れて来店したのかを把握できないため正確な分析ができず、施策の検討、結果もズレやすくなります。このように、システムやツール別にデータがバラバラに管理されている状態を「データのサイロ化」と呼びます。
関連:データのサイロ化とは?2つの原因と解決策、サイロ化を解消するツールを紹介
データのサイロ化を解消し顧客データを一元管理することで、どの顧客がどこで情報を知り、何を目的に購入しているのかを可視化できるため、無駄のない販促を行えるようになります。マーケターのレポート作成業務や複数のExcelファイルを使用する煩雑さなど、作業コストも削減できます。
自社内にバラバラに管理されている顧客データをスムーズに統合するためには、いくつかのステップに分けて取り組んでいくことが重要です。データの持ち方・使い方について、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。
無料資料:企業を強くするデータの持ち方・使い方
顧客データの統合によって可能になる分析と施策
顧客データを統合することで、より正確な分析と効果的な施策の実行が可能となります。
例えば店舗とECのデータが分断されていると、顧客の正しい購入日や購入頻度でセグメント抽出ができず、分析の精度が低くなる場合があります。施策面でも、実店舗ですでに購入済みの商品の案内を何度も送ってしまうなど、不適切なコミュニケーションをしてしまう恐れがあります。
データ統合された顧客データを用いれば、RFM分析やバスケット分析などの代表的な分析手法により、より深い顧客インサイトを得ることが可能になります。
RFM分析は直近購入日・購入頻度・購入金額の3つの指標からユーザーをグルーピングする手法です。RFM分析をはじめとするユーザー分析の手法について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
関連:ユーザー分析・顧客分析の重要性と6つの手法。分析データの活かし方
RFM分析を通じて直近の購入があり、購買頻度と金額も高いセグメントを抽出し、その顧客に対してアンケートなどを実施することで、実際の来店動機を可視化できます。得られたインサイトをもとに、同様の属性を持つ顧客に対して効果的な販促施策を展開することが可能になります。
バスケット分析は、顧客が一度の購買でどの商品を一緒に買っているかを分析する手法で、特に併売されやすい商品の組み合わせを明らかにします。「おむつを買う人は、同時にビールを買うことが多い」のような、商品のセット買いの傾向を発見し、クロスセル施策設計などに役立てるための分析です。
バスケット分析を活用して同時購入されることの多い商品群を特定し、それらをセット割引やレコメンド施策として展開できます。例えば、店舗での購買が多い顧客にはアプリを通じたクーポン配信やプッシュ通知を行い、ECを主に利用する顧客にはwebサイト上でレコメンドポップアップを表示するなど、顧客の状況やチャネルごとに適切な施策を選択することで、施策の効果を最大化できます。
さらに、統合されたデータは需要予測や在庫コントロールにも活用できます。例えば、品切れによる機会損失を防ぐために、アプリのプッシュ通知で在庫復活を案内したり、在庫回転率を高めるために、雨の日に合わせてセール情報をメールで配信したりといった施策が可能です。
アプリや会員カードの利用を増やす施策
アプリや会員カードを通じて継続的に顧客と接点を持ち、関係性を深めていくためには、単に登録を促すだけでなく、登録後も継続して利用してもらえる仕組みを構築する必要があります。
アプリや会員カードの登録を促す施策
まずは顧客に「登録したい」と思ってもらえる動機付けが重要です。例えば、初回登録時に割引クーポンやポイント付与などの特典を提供することで、登録のハードルを下げることができます。
また、店頭でのレジ対応時やセルフレジ画面でアプリ登録を促すなど、購買行動の流れの中に自然に組み込むことで、登録率の向上に繋がります。SNSやLINE公式アカウントを活用し、登録メリットを事前に告知しておくのも効果的です。
アプリや会員カードを使い続けてもらうための施策
登録されたアプリや会員カードも、日常的に活用されなければ意味がありません。顧客に利用価値を感じてもらい継続的に利用してもらうためには、機能的なメリットの強化が必要です。例えば、購入金額に応じて会員ランクを設定し、ランクが上がるほど割引や特典が充実するような仕組みを用意することで、継続利用の動機付けになります。
さらに、アプリ限定のクーポンや、会員限定セール、誕生日クーポンの配信など、特別扱いされていると感じられる体験を設計することも効果的です。
来店・購入頻度を増やすための施策
アプリや会員カードの利用を増やすためには、来店・購入頻度そのものを増やす施策も必要です。
特に、誕生日クーポンのようなパーソナライズされたコミュニケーションは、顧客一人ひとりに「自分向けの情報が届いている」と実感できる顧客体験を提供し、顧客のファン化や継続利用に繋がります。
C Space Japanの顧客体験価値(CX)調査によると、顧客体験で重要なことは以下の5要素を顧客に感じてもらうことだとされています。
- 私向けのものだと思える
- 私にとって意味がある
- オープンで、正直である
- 私の立場で考えてくれる
- いい気分にさせてくれる
これらの要素を満たすコミュニケーションには、まず顧客一人ひとりの興味や行動傾向を把握して顧客理解を深め、それぞれにとって意味のある内容を届けることが重要です。
例えば、地域に応じた情報として近隣店舗のオープンをお知らせしたり、過去の購買履歴や行動データに基づいて、20代の女性には化粧品の情報を、40代の既婚男性には家族向けサービスを案内するなど、個々の状況に合わせたパーソナライズが求められます。
画一的なメッセージをすべての顧客に一斉送信するのではなく「これは自分にとって必要な情報だ」と感じてもらえる体験やコミュニケーションを設計し、日常的に使いたくなるような接点を築いていくことが、継続的な利用の促進に欠かせません。
データを活用し顧客と適切なコミュニケーションをとるための手順について、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。
無料資料:データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために
オンラインの販促を増やす施策
チラシ(紙)を中心とした販促に依存している小売企業では、デジタルチャネルを活用し、データをもとにした販促へとシフトすることが求められています。webサイト、アプリ、LINEなどのオンラインチャネルを活用することで、より柔軟で測定可能な販促活動が可能になります。
例えば、webチラシ限定クーポンの配布や、アプリのプッシュ通知を活用し、タイムセールや在庫復活、雨の日クーポンなどを配信する施策が考えられます。また、LINEではクーポン配信だけでなく来店スタンプ機能を活用し、店舗への再来店を促す施策も可能です。
オンラインチャネルを活用することで、どれくらい見られているのか、どの媒体が最も効果的だったかなどの効果をデータで可視化できます。また、顧客データや売上情報と紐付けることで、リピーターの獲得に貢献している媒体や施策の特定のような本質的な評価も可能になります。
さらに、O2O(Online to Offline)の施策にとどまらず、オンラインとオフラインの垣根を越えたOMO(Online Merges with Offline)の考え方も重要です。特に小売業界では、店舗に加えてECなどのオンライン販路を併せ持つケースが増えており、チャネルを問わず一貫した顧客体験の提供が求められています。
OMO実現に向けた顧客データの活用について、詳しくは下記の無料動画をご覧ください。
無料動画:OMO実現に向けた顧客データ活用の基礎|店舗×ECの連携で顧客体験を提供するために
小売業界のデータ分析・活用事例
Walmart
世界最大のスーパーマーケットチェーンであるWalmartの事例を紹介します。
Walmartは、2014年からスマートフォンの公式アプリ「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」を本格的に稼働し始め、2019年にはショッピング分野でのダウンロードが上位にランクインしました。
会員機能とQRコード決済に加え、特定エリアに限定したタイムセールの告知を行っており、さらには、ネットスーパーやピックアップ予約、現金の送金や処方箋機能まで備えています。
このように、顧客にとって非常に便利なアプリを提供することで、現在ではアメリカ国民の多くが利用するショッピングアプリとなり、コロナ禍にも関わらずECの売上を伸ばしています。
また、世界各国に店舗があり、1時間に2ペタバイト以上という大量のデータを収集できるネットワークの広さを活かして、消費者の行動を先回りした店舗運営を行なっています。
データ分析ツールを使って、急激に下がった製品の原因を20分ほどで究明したり、季節性の高いイベントで急激に需要が増えた商品に対して、在庫がない店舗へアラームを通知したりと、顧客の「欲しいときにない」という状況を生まない努力が行われています。
イオンリテール
イオングループの総合スーパー事業を担うイオンリテール株式会社の事例を紹介します。
イオンリテールは、総合スーパーである「イオン」「イオンスタイル」を運営し、国内に350以上の店舗を展開しています。同社は公式アプリを提供しており、会員数は1,000万人を誇ります。同社のアプリは、チラシやクーポンの配信、店舗の購買行動と連動したキャンペーンの実施など、顧客がお得な買い物ができるような情報発信に使われています。
また、このアプリは顧客データの収集・分析・活用にも寄与しています。公式アプリ内で会員データと店舗の購買データが紐付けられる仕様になっているため、どの顧客が、どの店舗で、どの決済方法で買い物をしたのか、などが分かるようになっています。そのような貴重な顧客データが蓄積されていくことで、より詳しく顧客を理解できるようになり、その結果より効果的なマーケティング施策が実行できています。
イオンリテールの事例は、データを収集・管理し、データをもとに顧客を正しく理解したうえで効果的なマーケティング施策を実行し、顧客体験の向上に成功した代表的な例です。
マツキヨココカラ&カンパニー
全国に1,700以上のドラッグストアを展開する株式会社マツキヨココカラ&カンパニーの事例を紹介します。
同社は会員向けスマートフォンアプリやECサイト、LINE公式アカウント、ポイントカードなどのタッチポイントを持ち、それらを合計すると7,000万以上の顧客接点があります。これらの接点から収集した顧客データを一元管理し、商品開発に活用しています。
その代表例が、プライベートブランド商品のエナジードリンクです。蓄積された顧客データを分析した結果、顧客の購買を決定する要素にカフェインの含有量があることが判明し、ほかのトップメーカーの商品よりも2倍カフェインが含まれる商品を開発しました。その結果、ほかのメーカーの商品の売上を上回るヒット商品を生み出すことに成功しました。
膨大な顧客データを収集・管理できる環境を構築し、そのデータを分析・活用して顧客の期待に応えた成功事例と言えます。
ローソン
大手コンビニエンスストアの株式会社ローソンの事例を紹介します。
ローソンでは、ID-POS(ポイントカードなどと紐付いた購買履歴データ)や、IDレシートデータ(顧客が撮影したレシート画像などから誰が・いつ・何を買ったかが分かる情報)だけに頼らない顧客データの活用・分析施策を進めており、主に以下の2つの施策に取り組んでいます。
1つ目の施策は、9つのペルソナの策定です。ローソンはID-POSに加えて、商品が持つ特性などさまざまなデータソースを融合し、年代や性別といった属性にとらわれない9つのペルソナを作り上げました。これらのペルソナに基づいた商品開発とマーケティング施策により、ターゲティング広告の商品購入率が12倍になるなど、大きな成果を上げています。
2つ目の施策は、顧客の購入動機を明らかにすることです。IDレシートデータと独自のアンケート調査データを組み合わせ、実際に購入された商品がなぜ選ばれたのかという購入動機を深堀りしました。
その結果、コンビニエンスストアでの購買モチベーションは「40.5%が本能、42.0%が生活、17.5%が理屈に基づくもの」であることが判明し、こうした知見を商品開発に役立てています。
このようにローソンでは、ID-POSやIDレシートデータのような店舗で取得できるデータに加え、ほかのタッチポイントから収集したデータを組み合わせることで、顧客像の明確化と商品開発・施策実行に役立てています。
顧客アンケートの進め方や成功事例について、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。
無料資料:BtoC向け|顧客満足度と市場調査のためのアンケート作成・分析・施策への活用
グッデイ
福岡県を中心に北部九州で64店舗を展開する、ホームセンターの株式会社グッデイの事例を紹介します。
グッデイは「経営判断のためにリアルタイムで数字が知りたい」という社長の意向のもと、経営に関するあらゆるデータを可視化し、データ分析・活用の文化を社内に根付かせました。
この取り組みが始まる以前は、Excelによるデータ集計に数日を要するなど、データは存在していても活用するための環境が整っていない状態でした。しかし、クラウドツールやBIツールの導入により、社員全員が必要なデータに即時アクセスできるようになりました。
例えば、あるスタッフが特定商品の売れ行きの良さに気づき、すぐにそれを裏付けるデータとともに上司に報告して売場強化を図るなど、データに基づいたスピーディな行動が可能になりました。その結果、売上高を5年間で26%増加させることに成功しています。
さらに、ID-POSデータを別のツールと連携させることで、単なるキャンペーン情報やクーポンの一斉配信にとどまらず、パーソナライズされた情報提供の仕組みの構築も進めています。
グッデイではデータ分析ができる人材育成の強化も行っており、組織全体でのデータ分析・活用を実現しています。
小売業界がアプローチを成功させるCDPでのデータ分析・活用
顧客理解を進めること、また顧客や商品データを一元管理するためには、インフラを整える必要があります。そのインフラとして、CDPが1つの解決策となります。
CDPとは「カスタマー データ プラットフォーム:Customer Data Platform」の略称で、企業が持つ顧客データを「実在する個人」に紐づけて統合・管理し、顧客一人ひとりの正確な理解を可能にするプラットフォームです。顧客データ活用に特化したシステムであり、企業の顧客に関するデータを管理し、各マーケティングツールに合わせて加工・連携することができます。
関連:CDPとは?機能や部門・業界別の活用例、今後の動向などをまとめて解説
小売業界でCDPを導入することで可能になること・メリットを3つ紹介します。
- 顧客データを一元管理
- 顧客データの分析
- 顧客との適切なコミュニケーション
顧客データを一元管理
CDPは、名前やメールアドレスなどの個人情報、webサイトやアプリでの行動履歴、POSレジの購入履歴など、顧客に関するすべてのデータを収集し「実在する個人」にデータを紐付けて一元管理できます。
多くの企業では、webサイトやSNS、メルマガ、アプリなどそれぞれのチャネルごとに顧客管理システムを持っており、1人の顧客に対して別々の顧客IDを割り振り、別人として管理されているケースが多々あります。これが前述したデータのサイロ化が起きている状態です。
データは顧客単位で紐付けられていなければ、実際は同じ人物が行った行動でありながらもデータ上では別の人物として認識し、顧客を正しく理解できなかったり誤ったコミュニケーションを行ってしまったりする可能性があります。
小売業界では、よく以下のようなツール・システムや自社構築のプラットフォームが導入・利用されていますが、データのサイロ化を解決するために、CDPはこれらのツール・システムと連携し、顧客データを1つに統合することが可能です。
ツール名 | webアクセス解析ツール | CRM / SFAツール | EC / 購買データ管理ツール | ID-POS |
---|---|---|---|---|
ツールの例 |
・Adobe Analytics ・Google Analytics ・Ptengine など |
・Salesforce ・Synergy! ・HubSpot CRM ・eセールスマネージャー ・F-RevoCRM ・kintone ・Zoho CRM など |
・EC being ・Shopify ・EC-CUBE ・ecforce ・EPR(マクロミル) ・W2 Unified など |
・スマレジ ・airレジ ・ORANGE POS ・POS+retail ・shopping Scan(True Data) ・ユビレジ など |
顧客データの分析
CDPは顧客データを一元管理できるだけでなく、BIツールなどの分析ツールとも連携可能です。分析に必要なデータの整形や統合処理をCDP側であらかじめ行い、分析ツールにスムーズに受け渡すことで、作業の効率化と分析スピードの向上が期待できます。
例えば、CDPは以下のようなツール・システムと連携できます。
ツール名 | BI / 分析ツール |
---|---|
ツールの例 |
・Tableau ・Looker Studio(旧Google Data Portal) ・Yellowfin ・Amazon QuickSight ・DOMO ・Redash など |
顧客理解を深めるためには、データの可視化が不可欠です。店舗での来店データやクーポン利用状況、ECサイトの閲覧履歴や購入履歴、アプリでのお気に入り登録、取得可能な情報は多岐にわたりますが、データを集めるだけでは顧客像の把握には繋がりません。
分析の前提として、これらのデータを整形・統合し、分析に適した形に加工する必要があります。こうした作業は通常、専門的な知識や時間が求められ、運用コストが課題となります。しかし、CDPはあらかじめ定義した形で必要なデータをスムーズに分析ツールへ連携できるため、データ分析・活用のハードルを大きく下げることが可能です。
CDPと分析ツールの連携で具体的にどのような分析・施策が行えるようになるのかについて、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。事例や分析・施策の例などを紹介しています。
無料資料:CDPによる顧客理解と分析|BI連携でひろがるデータの可視化
顧客との適切なコミュニケーション
CDPは施策を行うツール(MA・プッシュ通知・web接客ツールなど)に連携でき、分析した結果をもとに顧客に対して適切にアプローチしていくことが可能です。
例えば、CDPは以下のようなツール・システムと連携できます。
ツール名 | MA / メール配信 / その他施策 |
---|---|
ツールの例 |
・Marketo ・Marketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot) ・HubSpot ・Synergy! ・Karte ・DLPO ・LINE ・Repro ・WEBCAS email など |
CDPは、分析結果や保有データをもとにセグメントを作成でき、そのセグメント情報をコミュニケーションツールと連携することで、顧客一人ひとりへの最適な情報提供を可能にします。
例えば、ネットスーパーでの購買データを活用し、対象商品が値下げされた際にメールで通知する施策を行っている場合、すでに実店舗でその商品を購入している顧客にとっては、不満を与えるコミュニケーションとなる可能性があります。
このような事態を避けるためには、ネットスーパーと実店舗の購買情報を統合し、横断的に分析したうえでセグメントを作成することが有効です。CDPによって、顧客の状況に合わせたメッセージ配信が実現でき、より良い顧客コミュニケーションへ繋げることができます。
その他、小売業界でCDPを導入した際の具体的なイメージについて、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。弊社が提供しているCDP「INTEGRAL-CORE」を導入している小売企業さまの事例などを紹介しています。