デジタルマーケティング領域において顧客データを活用し広告効果の最大化を図るために、CDPやDMPを導入するケースが増えています。
言葉として聞いたことがあっても、CDPとDMPの違いについて理解できていない方もいるかと思います。
本記事では、CDPとDMPの違いやそれぞれの機能・特徴、活用例、CDPとDMPの使い分けの考え方などについて紹介します。
CDPとDMPの違い
CDPとDMPは、どちらもデータを集めて統合するためのプラットフォームです。同じような機能を提供しているツールも多いですが、もともとのツールの思想や目的において異なる点があります。
主な相違点は以下のとおりです。
項目 | CDP | DMP |
---|---|---|
ツールの目的 | 顧客理解 | 広告の最適化 |
活用するデータの種類 | 1st Party Data中心(2nd・3rdも可能) | 3rd Party Data中心(1st・2ndも可能) |
個人識別情報の取り扱い | 個人識別情報を含む詳細な顧客データ | 匿名データ |
データの保存期間 | 長期間保持 | 限られた期間だけ保持 |
使用する部署 | マーケティングや営業などの部門間、グループ会社間など多岐にわたって利用可能 | デジタルマーケティング担当のみ |
ツールの目的
DMPの主な利用目的はweb広告です。デジタル広告ターゲティングの精度を改善し、広告を最適化します。特定のユーザー属性や行動パターンをもとにセグメントを作成し、短期的な広告パフォーマンスの向上を目指します。
一方で、CDPの主な目的は顧客理解をもとにした施策の実施です。CDPはセグメントではなく「実在する個人」に紐付けて顧客データを集め、顧客体験のパーソナライゼーションと顧客との長期的な関係構築のために利用します。
活用するデータの種類
DMPはオーディエンスセグメントの作成とターゲット広告に重点を置いているため、3rd Party Dataなどの匿名性の高いデータの活用がメインです。
CDPは顧客一人ひとりの分析・パーソナライゼーションを行うため、個人にフォーカスしたZero Party Data・1st Party Dataを中心としたデータを活用します。
データの種類 | Zero Party Data (ゼロパーティーデータ) |
1st Party Data (ファーストパーティーデータ) |
2nd Party Data (セカンドパーティーデータ) |
3rd Party Data (サードパーティーデータ) |
---|---|---|---|---|
データの内容 | 顧客が意図的・積極的に企業と共有するデータ | 自社が直接取得したデータ | 他社から入手取得したデータ | データ収集専門企業から取得したデータ |
データの例 | ・家族構成 ・趣味嗜好 ・興味関心 ・購入意向 など |
・会員ID ・氏名 ・住所 ・生年月日 ・メールアドレス ・位置情報 ・オフラインでの購買情報 など |
・自社に関連する他社の1st Party Data など | ・ユーザーのwebサイト行動履歴データ ・ユーザーの属性データ ・ユーザーの興味関心データ など |
データの精度 | ◎ | ◎ | ◯ | △ |
データの量 | △ | △ | ◯ | ◎ |
Zero Party Data・1st Party Data・2nd Party Data・3rd Party Dataについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。それぞれのデータの違いやZero Party Dataが重要視されている理由などについて紹介しています。
関連:ゼロパーティデータとは?1st Party Dataとの違い、収集・活用事例を紹介
個人識別情報(PII)の取り扱い
「個人識別情報」とは、名前、住所、電話番号、メールアドレスなど、その人物を特定または追跡できるデータです。
DMPは主に3rd Party Dataを扱うため、webサイト訪問者の年齢や性別などの匿名トラッキングデータや集計データを使用します。
CDPはZero Party Data・1st Party Dataが中心なので、個人識別情報を含む詳細な顧客データを扱います。
データの保存期間
DMPは主に広告配信目的で利用されるため、Cookieの有効期限に基づき、データの保存期間は短いことが多いです。
CDPは顧客と長期間の関係を築くため、データは長期間にわたって保存され、顧客プロファイルとして顧客一人ひとりのデータをリッチにしていきます。
関連:顧客プロファイルの活用例と管理方法|分析・施策の幅を拡げる顧客の可視化
使用する部署
DMPは広告での利用になるため、主にデジタルマーケティングの担当者が利用します。
CDPは企業全体で一貫性のあるコミュニケーションを提供すること、各部門が顧客データを利用して利益向上や業務効率化に取り組むことを想定して設計されています。そのため、マーケティングだけでなく、営業やカスタマーサポート、実店舗、グループ会社など多岐にわたって利用可能です。
DMPとは
DMPとは「Data Management Platform(データ マネジメント プラットフォーム)」の略称で、インターネット上に蓄積された膨大な情報データを管理し、広告の最適化に利用するための基盤のことです。
パブリックDMPとプライベートDMPの違い
DMPは取り扱うデータの種類によって「パブリックDMP」と「プライベートDMP」の2種類に分けられます。「パブリックDMP」は3rd Party DataをメインとするDMPで「プライベートDMP」は1st Party DataをメインとするDMPです。
プライベートDMPはCDPよりもより広義な意味を持っています。CDPは個々の顧客データに焦点を当て、より個人的な情報を集約します。
パブリックDMPとプライベートDMPの違いについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
関連:プライベートDMPとは?パブリックDMP・CDPとの違い・比較や要注意ポイント
DMPの機能・特徴
DMPの主な機能は以下のとおりです。
- データの収集
- データの統合(ユーザーごとに記録)
- 広告配信ツールとの連携
データの収集
パブリックDMPは、主に3rd Party Dataを収集します。広告目的で利用するため個人を細かく特定する必要はなく、年齢や性別などのオンライン行動をもとにしたセグメント情報や位置情報といった、匿名データのトラッキングがメインです。
プライベートDMPは3rd Party Dataに加えて、1st Party Dataも収集します。同一ユーザーを特定することができ、セグメントを作成する際にパブリックDMPと比べて使えるデータが多いのも特徴です。
自社サイトでの行動履歴や会員登録データなどのオンラインデータだけではなく、店舗への訪問や購買履歴などのオフラインデータも取得できます。
データの統合
DMPでデータを統合し、一元管理することができます。パブリックDMPは個人の特定まではできず、多様な属性情報の取得にとどまりますが、プライベートDMPであればCDPのように顧客データも統合可能です。
広告配信ツールとの連携
DMPは広告配信ツールと連携し、広告を最適化できます。
web上での行動履歴から読み取ったニーズをもとに見込み顧客をセグメント分けし、各セグメントのニーズに沿ったキャンペーン情報を表示します。そうすることで、すべての見込み顧客に対して画一的な訴求をするのではなく、それぞれに合わせた広告訴求ができます。属性情報に合わせてバナー画像を切り替えるなどの広告施策も可能です。
DMPの活用例
パブリックDMP
3rd Party Dataには自社が持っていないユーザー情報が豊富にあるため、新規顧客の開拓に活用できます。また、既存顧客が他社サイトでどのような行動をとっているかをより深く分析するために活用したり、見込みのない顧客に無駄な広告を配信しないといった広告の最適化に活用することも可能です。
プライベートDMP
主に既存顧客への購買活動を目的として、ほかのツールと組み合わせて優良顧客を選定してキャンペーンメールを配信したり、お問合せフォームで離脱したユーザーだけをターゲットに広告を配信する、などの用途で利用されます。
DMPの今後の方向性
近年のプライバシー保護規制の強化や主要webブラウザの3rd Party Cookieの制限により、DMPで活用できるデータが減少しています。その中で、現在DMPはさまざまな方向性で変化しています。
1つはすでに紹介したプライベートDMPのように、1st Party Dataを利用した広告配信を目的としたDMPです。これらは取り扱うデータからも、後ほど説明するCDPのような広告以外の利用の幅があります。
もう1つは、データクリーンルームやIDソリューションを利用したDMPです。
データクリーンルームは、企業間でデータを直接共有することなく、安全な環境で統合・分析を行う仕組みです。データクリーンルームを活用することで、異なる企業のデータを組み合わせ、より精度の高い広告分析やターゲティングが可能になります。
IDソリューションは、Unified ID 2.0やLiveRampなどの統一ID技術を活用し、異なるサイトやデバイスを横断してユーザーを識別する仕組みです。 これにより、Cookieに依存せずに広告ターゲティングの精度を維持しながら、プライバシー保護にも対応できるようになりました。
DMPに求められている1st Party Data以外を利用した広告配信は、このような技術の導入により、プライバシー規制へ適応した形で行うようになっています。
CDPとは
CDPとは「Customer Data Platform(カスタマー データ プラットフォーム)」の略称で、企業の顧客に関するデータを管理し「実在する個人」に紐付けて顧客データを集め、顧客一人ひとりを理解することを可能にするプラットフォームです。
CDPの機能・特徴
CDPの機能としては下記のとおりです。
- データの収集
- データの統合(顧客ごとに記録)
- データの連携
データの収集
CDPは主にZero Party Data・1st Party Dataを収集し、人単位の情報管理に特化しています。そのため、DMPよりも機密性の高い情報を持ったり、より多くのデータソースを持つことを想定していることが特徴です。
CDPはデータ収集において、さまざまな顧客接点における基幹システムやツールに入力・登録されたデータを該当のシステム・ツールと連携して行います。
ツール名 | webアクセス解析ツール | CRM / SFAツール | EC / 購買データ管理ツール | ID-POS |
---|---|---|---|---|
ツールの例 |
・Adobe Analytics ・Google Analytics ・Ptengine など |
・Salesforce ・Synergy! ・HubSpot CRM ・eセールスマネージャー ・F-RevoCRM ・kintone ・Zoho CRM など |
・EC being ・Shopify ・EC-CUBE ・ecforce ・EPR(マクロミル) ・W2 Unified など |
・スマレジ ・airレジ ・ORANGE POS ・POS+retail ・shopping Scan(True Data) ・ユビレジ など |
Zero Party Data・ 1st Party Dataを活用したマーケティング施策や具体的な活用事例について、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。
無料資料:Zero / 1st Party Dataを活用したマーケティング施策5選|強まるCookie規制に対する次の一手
データの統合
プライベートDMPと同様、CDPも企業内に散らばったデータを顧客ひとり一人のデータとして統合し、一元管理できます。
データ統合の重要性や顧客データ統合プロジェクトの進め方について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
関連:顧客データ統合の失敗ケースと最適な進め方|解決策となるデータ基盤のCDP
データの連携
CDPは顧客理解をした後に顧客により良いアプローチを行うため、分析・施策を行うツールと連携できるようになっています。以下のようなBIツールやMAツール、プッシュ通知、web接客ツールなどにも連携可能です。
ツール名 | BI / 分析ツール | MA / メール配信 / その他施策 |
---|---|---|
ツールの例 |
・Tableau ・Looker Studio(旧Google Data Portal) ・Yellowfin ・Amazon QuickSight ・DOMO ・Redash など |
・Marketo ・Marketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot) ・HubSpot ・Synergy! ・Karte ・DLPO ・LINE ・Repro ・WEBCAS email など |
CDPと各種BIツールを連携することで可能となる具体的な分析の例について、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。
無料資料:CDPによる顧客理解と分析|BI連携でひろがるデータの可視化
CDPの活用例
CDPを利用することで、Aさんという顧客が実店舗にいつ来店したのか、ECサイトでの購入履歴、興味関心、個人情報に至るまで、Aさんに関する詳細な情報を集められます。さらに、Aさんに対して広告配信だけでなく、メール配信やプッシュ通知などのさまざまな方法で良好な関係を築くためのコミュニケーションを取ることが可能です。
また、ツールや設計次第の部分もありますが、CDPではリアルタイムな処理に強みを持っているツールもあります。DMPの思想として広告のセグメント作成を中心としている場合、web上のコンバージョン計測などリアルタイムな反映は広告媒体の機能に依存しているものも少なくありません。
リアルタイム性に強みを持つCDPを利用すれば、顧客が店舗へ来店したタイミングで、その顧客に合わせたクーポンを配信する、というような施策も可能です。リアルタイムな解析結果をもとに、顧客目線で最適な情報を配信することで、より良い関係を築けるようになります。
その他、CDPの役割や部門別・業界別の活用例について、詳しくは下記の記事をご覧ください。CDPの導入が増えている理由やDMP以外のマーケティングツールとの違いなどについても紹介しています。
関連:CDPとは?機能や部門・業界別の活用例、今後の動向などをまとめて解説
CDPとDMPどちらを選ぶべきか
CDPとDMPはツールとして異なる思想・目的で開発されていることから、DMPでCDPのような機能を求めても対応できない場合があります。
CDPやDMPを導入する際には、どういった目的でデータを活用していきたいのか決めておくことが大切です。
広告配信で匿名のユーザーのデータを活用するならDMP
インターネット上の匿名ユーザーを分析し、多くのターゲットに対して広告配信を実施したい場合はDMPが適しています。DMPを利用すれば、年齢・性別などの属性データをもとにセグメントを作成し、それぞれに最適化された広告配信が可能です。
ただし、最近ではwebサイトのトラッキングにおいて、3rd Party Cookieの規制が進んでいることもあり、活用できないデータが増えているため注意が必要です。
また、2022年4月施行の改正個人情報保護法により、パブリックDMPから提供を受けた情報を自社のシステムに連携をおこない、個人情報と紐付ける場合には同意が必要になります。プライバシー問題について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
関連:顧客データ活用とプライバシー問題の両立。顧客に信頼されるデータの扱い方
顧客を特定し、一人ひとりに合わせたコミュニケーションを取るならCDP
特定顧客にアプローチしたい場合にはCDPがおすすめです。 CDPは「実在する個人」に紐付けて顧客データを管理でき、顧客一人ひとりに合わせたOne to Oneマーケティングを実行できます。
また、個人情報保護法などの法規制を順守しながら顧客データをビジネスに活用することが可能です。プライベートDMPの中にもCDPと機能の類似したものは存在しますが、CDPは設計段階からパーソナルデータの取得を前提として作られているため、プライバシー保護の観点から考えればプライベートDMPより安全性に優れています。
さらに、3rd Party Dataの利用が難しくなってる中で1st Party Dataの重要性は高まっており、それに付随してCDPを使って自社データを収集・統合することの必要性も増してきています。
CDPの導入を検討する際に知っておきたいポイントについて、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。