2025.05.23

アパレル業界のデータ分析・活用

アパレル業界のデータ分析・活用

消費者のオンラインシフトにともない、アパレル業界では店舗の役割や顧客へのコミュニケーション方法を見つめ直すことが求められています。

本記事では、アパレル業界の3つの課題と解決策、アパレル業界でのデータ分析・活用の具体例や成功事例、CDPによるデータ分析・活用について紹介します。

データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

アパレル業界においてデータ活用が重要視されている理由

新規顧客の獲得コストの上昇

広告費の高騰や競合企業の増加により、新規顧客の獲得単価は年々上昇しています。もはや広告を出せば売れる時代ではなくなり、効率的な新規顧客の獲得が難しくなっているのが実情です。

このような背景から、アパレル企業では経営判断や店舗運営、商品企画といった領域ごとの意思決定におけるデータ活用が注目を集めています。また、新規顧客の獲得効率を改善するために、教育内容や人員配置を最適化するといったオペレーション面でのデータ活用のニーズも高まっています。

さらに、限られた予算の中で成果を最大化するためには、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客のLTV(顧客生涯価値)を高める取り組みも並行して進める必要があります。その実現においても、データ活用の重要性が一層高まっています。

商品の在庫管理の適正化

アパレル業界では、ファッショントレンドの変化に対応するため、需要予測をもとに前倒しで商品を企画・製造する必要があります。

しかし、トレンドの読み違いや需要変動によって過剰在庫が発生しやすく、値引き販売や廃棄を招く構造が常態化しており、結果として利益率の圧迫に繋がっています。このような状況の中で、データをもとに販売状況や市場動向を適切に把握し、在庫判断の精度を高める必要性が増しています。

サステナビリティ対応に関する情報整備と発信

環境配慮や倫理的な生産体制への対応は、企業の信頼性やブランド価値に直結するテーマとして、アパレル業界で注目を集めています。例えば「どの素材を使用しているか」「どの国で、どのような環境で作られた製品か」といった情報への関心が高まっており、背景の見える商品を選ぶ消費者も増加しています。

こうした状況では、サプライチェーン全体にわたる情報を適切に把握し、透明性のある形で社内外に共有する体制作りが求められます。その実現に向けて、取り組み状況を可視化するためのデータ整備と活用の重要性も高まっています。

このように、アパレル業界全体でデータ活用の重要性が増していますが、特にマーケティング領域における顧客データの活用に課題を抱える企業が少なくありません。本記事では、アパレル業界のマーケティング領域における顧客データの分析・活用に焦点を当てて解説します。

アパレル業界における3つの課題

アパレル業界における3つの課題を紹介します。

  • 消費低迷・消費者の成熟
  • オンライン・オフラインをまたいだ一貫した体験の提供
  • 非会員・非購入層に関するデータ収集

消費低迷・消費者の成熟

アパレル業界では、消費者の成熟と景気の低迷にともない、全体的に低コスト思考が広がっており、この傾向は総務省の家計調査にも表れています。総世帯の月平均における履物を含む衣服への支出額は、2023年には7,821円でしたが、2024年には8,172円とやや増加しました。しかし、2014年は10,269円であり、長期的に見ると依然として衣服への支出は減少傾向にあることが分かります。

出典:総務省統計局「家計調査結果」(家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要平成26(2014年)平均速報結果の概況

今までは安物はすぐにダメになるという認識が一般的でしたが、縫製技術や繊維の品質の向上により、安くても質が良くデザイン性の高い製品が数多く店頭に並ぶようになりました。また、トレンドに左右されないベーシックなアイテムを低価格で購入し、長期間着用するという節約志向の消費者も増加しています。一方で、ラグジュアリーなファッションを好む高級志向の消費者層も依然として存在し、アパレルにおける消費は二極化が進んでいます。

さらに、セールスフォースの調査によると、今後メインの消費者となる1981年以降に生まれたミレニアル世代の86%が「より良い顧客体験を受けるためならより多くのお金を払っても良い」と回答しています。つまり単なる価格やブランド力だけでなく、自分に合った体験やコミュニケーションを提供できるかどうかが、購買決定において重要視されていることが分かります。

今後、ブランドの名前に依存した販売戦略では、アパレル業界で生き残っていくことは非常に難しいでしょう。

オンライン・オフラインをまたいだ一貫した体験の提供

近年、アパレル業界でもデジタル化が進み、ECサイトではチャットによるオンライン接客や、アプリでのサイズ診断・スタイリング提案といったサービスが一般化しています。一方で、実店舗を起点とした来店・試着・購入といったオフラインの購買行動も依然として根強く、消費者はオンラインとオフラインを自由に行き来しながら買い物を行うのが当たり前になっています。

顧客の利便性を高めるために、企業は以下のようなさまざまな複数のチャネルを駆使してコミュニケーションを図っています。

  • 店舗
  • ECサイト
  • カタログ
  • アプリ
  • SNS
  • マスメディア
  • コールセンター
  • 屋外広告

しかし、チャネルごとに顧客情報が分断されており、オンラインとオフラインのデータを統合できていない企業も少なくありません。このように、システムや事業部ごとにデータがバラバラになり、統一管理されていない状態を「データのサイロ化」と呼びます。

data silos

関連:データのサイロ化とは?2つの原因と解決策、サイロ化を解消するツールを紹介

データのサイロ化が原因となり、顧客にとって不便さや不一致、ストレスのある購買体験が生じています。このような状況では、チャネルごとの最適化は進んでも、顧客視点での全体最適、すなわちシームレスな購買体験の実現には至らず、結果として購入機会の損失や顧客離脱のリスクが高まります。

今後は、オンライン・オフラインのチャネルを横断することを前提とした一貫した体験を設計・提供できるかどうかが、競争力を左右する重要な視点になります。

非会員・非購入層に関するデータ収集

アパレル業界では、実店舗で試着のみを行い購入には至らなかった来店者や、ECサイト・アプリを訪れた非会員ユーザーの行動が、データとして十分に記録されていないという課題があります。

この背景には、多くの企業で「購買」や「会員登録」を起点にデータを収集する仕組みが採用されていることがあります。例えば、ECサイトやアプリの非会員の行動は一時的なCookieやデバイスIDの識別にとどまり、再訪時の追跡やほかのチャネルとの統合が難しいのが現状です。実店舗においても、購入が発生しない限りはPOSにデータが残らず、試着や接客といった購買前の行動は会員・非会員を問わず記録されないケースが大半です。

こうした層の行動が可視化されないことで、施策の成果検証は「購入者」「会員ユーザー」など、識別可能な一部の層に偏ってしまいます。店頭での試着のみでの退店や、EC上での閲覧・離脱、SNS経由の流入といった「関心は示しているが購買に至っていない行動」は本来、分析対象とすべき重要な情報です。

しかし、こうした情報が十分に収集・蓄積されていないために、来店数や閲覧数と実際の購買数とのギャップの要因を正確に把握できず、改善すべきポイントを見誤るリスクが高まります。

アパレル業界における課題の解決策

紹介した各課題を根本から解決するためには、企業内で起きているデータのサイロ化を解消する必要があります。

プライバシーや法規制への配慮が前提となりますが、購買履歴・閲覧データ・試着情報・店舗接客ログ・アプリ内行動などのデータを「顧客ID」や「デバイス情報」などを軸に統合し、1人の顧客の行動として再構成することで「誰に・いつ・何を・どのように提案すべきか」が見えてきます。これにより、会員や購入者だけでなく非会員・非購入者の行動も、チャネルを横断して一貫したログとして管理・活用することが可能になります。

例えば、ECでの閲覧や実店舗での試着など、これまでは断片的に扱われていたデータも、後に会員登録や購入が発生したタイミングで過去のログと統合することで、精度の高い分析や施策を実現できます。

その結果、顧客理解が深まり、パーソナライズされた施策の実現や一貫した体験の提供が可能となります。

顧客データの統合によって期待できる変化について、詳しくは下記の無料動画をご覧ください。

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そのうえで、アパレル業界における3つの課題に対し、それぞれの解決策を紹介します。

消費低迷・消費者の成熟に対応する施策

消費が低迷し消費者が成熟した現代のアパレル業界において、その対応策となる施策・分析の例を顧客の購買フェーズに分けて紹介します。

  • 認知・興味段階
  • 比較・検討段階
  • 購入・決済段階
  • 購入後・リピート段階

認知・興味段階

顧客がブランドや商品と初めて接触するこの段階では「自分にとって本当に必要なのか、合うのか」といった判断が行われます。そのため、単に商品の価格やデザインを提示するだけでなく、顧客一人ひとりの関心や嗜好に合わせたアプローチ設計が重要です。

例えば、ECサイト上での行動データやweb広告への反応をもとに、ライフスタイルや関心軸に応じたセグメントを作成・分析することで、それぞれの感性的な傾向を把握できます。その結果をもとに、LP・バナーの改善やアプリ内のレコメンドの訴求内容を調整することで「自分向けに提案されている」と感じてもらえるきっかけを作れます。

このような初期接触での関心喚起が、顧客に「自分に合うかも」「もっとこのブランドについて知りたい」と思わせる体験に繋がり、比較・検討フェーズへのスムーズな移行を促進できます。

比較・検討段階

この段階では、サイズや色味などへの不安が購入をためらう要因となりがちです。閲覧された複数のアイテムの傾向やお気に入り登録の組み合わせを分析することで、顧客がどのような基準で迷っているのかを把握できます。

そのうえで、例えばサイズやスタイルの微妙な違いを中心に検討している顧客に対して、それらを視覚的に比較できるコンテンツを提示することが有効です。こうした行動傾向に基づいた情報設計により、顧客のスムーズな意思決定を後押しできます。

比較・検討のタイミングでどの情報が意思決定を左右するのかを見極め、仮説を立てて設計に反映していくことで、顧客がより安心して商品を選べる環境を整えることができ、購入促進に繋がります。

購入・決済段階

購入意思が固まった顧客に対しては、迷わず安心して購入できる状態を、適切なタイミングで提示できるかどうかが重要です。そのため、不安や迷いが生じやすい購入直前の心理を理解し、それに応じた情報提供やサポートの設計が求められます。

例えば、過去の閲覧履歴やカート投入後の離脱傾向を分析することで「決済直前に何が気になっているか」「どのような条件で離脱しやすいか」などの行動パターンを可視化できます。そのうえで、返品・交換ポリシーや配送スケジュール、問合せ手段など、顧客が不安を感じやすいタイミングで必要な情報を提示する仕組みを構築しましょう。

また、購入時に選択可能な支払い方法や配送オプションの出し分けについても、購買履歴や属性データをもとに、顧客ごとに最適な選択肢が目につきやすい構成に調整することで、離脱率の低減や購入体験の向上が期待できます。

購入後・リピート段階

購入後の対応は、顧客のブランドに対する信頼や次回以降の購買意欲を大きく左右します。接客時に得た情報や購入履歴、利用チャネルの傾向をもとに、顧客ごとにフォローのタイミングや内容を最適化する設計が効果的です。

例えば「着用頻度が高そうなアイテムを購入した顧客」には、数日後に洗濯や保管方法に関するアドバイスをLINEで配信するなど、購買行動や接点の文脈に応じたフォローアップ施策の出し分けが考えられます。

このように、一律の一斉配信ではなく、顧客ごとの状況や履歴を起点としたタイミングと内容の出し分けを行うことで「自分のことを理解してくれている」という実感が生まれ、信頼関係の深まったり再訪意欲の向上に繋がります。

オンライン・オフラインで一貫した体験を提供するための施策

オンライン・オフラインで一貫した顧客体験を実現するために、どのような施策・分析が有効なのかを、顧客接点のタイミングを軸に下記の3つに分けて紹介します。

  • 購入前
  • 購入中・直後
  • 購入後

購入前:不安を解消し期待を高める

顧客がオンライン・オフラインを行き来しながら商品を選ぶ際に「サイズは合うか」「実際の色味はどうか」「自分に似合うか」といった不安が購買の障壁となるケースは少なくありません。こうした不安を取り除くためには、チャネルを横断した一貫性のある体験設計が重要です。

例えば、ECサイトにチャットボットを導入し、サイズやコーディネートに関する相談内容を蓄積し、その履歴を店舗スタッフが確認できるようにすれば、来店時のスムーズな接客が可能となります。オンライン上でのやり取りが店舗体験に繋がることで「自分の情報を踏まえた提案を受けられる」という安心感が生まれます。

また、ECと店舗の在庫情報をリアルタイムで連携し、試着可能な店舗や店舗在庫の有無をECサイト上に表示することで、顧客は気になる商品をすぐ確認・試着できるようになり、購買行動の後押しになります。このように、不安を払拭しつつスムーズな導線を設計することは、顧客の期待を高め、より積極的な比較・検討に繋がります。

購入中・直後:利便性と満足感・納得感を高める

オンライン・オフラインを問わず、どのチャネルでも同様の情報やサービスを受けられることは、顧客のストレスを軽減し、購買行動を後押しします。

例えば、共通の会員IDを導入し、購入履歴やクーポン情報をアプリ・EC・店舗間で一元管理することで、どのチャネルでも同じように特典を受けられるようになり、スムーズな購買体験を実現できます。

また、購買後の体験設計も重要です。例えば、実店舗で購入した商品の関連アイテムやお手入れ方法などの情報をLINE・アプリを通じて提供することで、商品の利用イメージを広げられ、購入後の満足感・納得感の向上に繋がります。

こうした一貫した体験設計は「どのチャネルで買っても同じような体験ができる」といった信頼感を生み、顧客のブランドロイヤルティを高める土台となります。

関連:顧客ロイヤルティとは?顧客ロイヤルティ向上のための5ステップ&成功事例

購入後:発見や気付きを与え、継続的な関係を構築する

継続的な関係を構築するには、初回購入後も価値ある接点を提供し続ける仕組みを整えることが不可欠です。

例えば、店舗での接客時に得られた情報や試着履歴を、店舗への再訪時やEC利用でのレコメンド施策に活用することで「また自分に合った提案が受けられる」という期待感を生み、再購入の動機付けになります。

また、接客を担当したスタッフがアプリ上で「あなたにおすすめしたい新作」や「前回試着されたアイテムと相性の良い商品」といった、顧客に合わせた提案ができる仕組みを整えることで、オフラインで築いた信頼関係をオンラインでも維持・強化できます。

さらに、こうした体験がLTVや再購入率にどのような影響を与えているかを可視化することも重要です。例えば、店舗での接客履歴や試着情報をもとにECでの購買に繋がっているか、ECでのレコメンドが実店舗への来店に関係しているかなど、体験の継続性を指標化しLTVとの相関を分析することで、より効果的な関係構築施策の改善を図ることができます。

データを使って顧客中心のコミュニケーションを構築する手順や注意点について、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。

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非会員・非購入層のデータを収集・活用するための施策

購買情報があれば、最低限の分析や施策は可能です。しかし、会員情報を利用することで、顧客の属性・関心・購入傾向をより立体的に把握できるようになり、分析の解像度や施策の精度が格段に向上します。

例えば「誰が・何を・いつ・なぜ購入したか」「どのような情報接点を経て購買に至ったか」といった文脈を把握しやすくなり、パーソナライズやシナリオ設計の幅が広がります。

そのため、会員情報と購買情報が紐づいた状態を目指すことが重要です。その実現に向けて、ここでは顧客を下記の2つの状態に分け、データ収集・活用の起点となる具体的な施策・分析例をそれぞれ紹介します。

  • 非会員かつ非購入層
  • 非会員で購入済みの層

非会員で、かつ非購入層

非会員・非購入の顧客は、商品に関心はあるものの会員登録や購入には至っておらず、接点は一時的かつ断片的になりがちです。

このようなユーザーの関心や検討状況を把握するためには、CookieやデバイスIDを用いたログ記録の仕組みを整えることが重要です。そのうえで、閲覧ページ、閲覧時間、離脱箇所、商品カテゴリなどの情報をセッション単位で構造化・蓄積することで、匿名状態でもユーザーの関心傾向や行動パターンを把握できるようになります。

例えば「特定のアイテムカテゴリーを繰り返し閲覧している」「サイズやレビューばかり確認している」などの行動が見られる場合、購入直前で迷っているセグメントとして抽出できます。このようなセグメントに対して、比較表の表示やサポートコンテンツの提示などを通じて、購入行動を後押しできます。

また「会員登録をすると、お気に入り商品の在庫通知機能が利用できます」といったメッセージを、ユーザーの行動傾向に基づいたベネフィットとともに提示することで、自然な形での会員化を促すことが可能です。

非会員で、購入層

すでに商品を購入している非会員ユーザーに対しては、継続的な関係構築を見据えた会員化の導線設計が有効です。

例えば、ECでの購入時にメールアドレスが取得できている場合、それを起点に「購入アイテムに合った着こなし提案の閲覧」や「おすすめスタイル診断の結果の保存」など、会員登録後に利用可能となるパーソナライズ体験へと誘導するのが効果的です。

また、実店舗での購入においても、ポイントの付与や購入アイテムに合わせたスタイリング提案の提供など、登録によって得られる具体的な価値を提示することで、登録への動機付けがしやすくなります。

アパレル業界のデータ分析・活用事例

TSIホールディングス

「ナノ・ユニバース」や「ナチュラルビューティーベーシック」など、50以上の人気ファッションブランドを運営する大手アパレル企業の株式会社TSIホールディングスの事例を紹介します。

コロナ禍を契機に購買行動が大きく変化し、店舗とECをまたいだ購買スタイルが一般化する中で、このような変化に対応するための取り組みとして、チャネル横断型マーケティングの強化および1st Party Dataの活用を推進しました。

従来はブランドごとに分かれていたマーケティング施策や顧客データを全社的に統合し、オンラインとオフラインのデータを掛け合わせたOne to Oneサービスの提供を実現しました。さらに、Google BigQueryをはじめとするデータ基盤を整備することで、ブランド横断での顧客データの一元管理を可能にし、ロイヤル顧客と類似する層への的確なアプローチを行いました。また、機械学習の内製化と、それに伴う人材育成にも注力し、マーケティングの高度化を内製で実現できる体制を構築しました。

その結果、売上は目標比で60%増加し、広告のROAS(広告費用対効果)も他施策と比較して50%以上の向上を達成しました。さらに、機械学習の未経験者でも社内で高精度なマーケティング運用が可能になるなど、大きな成果を上げています。

Zoff

株式会社ゾフが展開する、眼鏡ブランドのZoffの事例を紹介します。

従来Zoffは、需要期や顧客の個別のニーズに応じて、オンライン・オフライン双方の施策を展開し、集客を図っていました。ただ、オフラインの施策において、オフライン広告中心の施策では見込み顧客にリーチしきれない、広告効果を図りにくい、という課題を抱えていました。

そこで、オンラインのデジタル広告のように施策のPDCAを回せる仕組み作りのために、位置情報サービスを利用した施策の効果計測を始めました。来店への寄与を図るためのアンケートを実施し、売上相関の見える化、Wi-Fiによる来店計測などの手順を経て、流客分析で店舗間の行動を可視化することに成功しました。

その結果、地域によって傾向が大きく異なることが分かり、エリア別の広告予算配分や配信エリア設計を最適化できるようになりました。

上記のようなデータ分析・活用の仕組みを作ったことにより、Zoffでは施策のPDCAを回しやすくなったという成果が見られました。今後は来店後や購入後の顧客のデータも分析し、一貫した施策を実行することでより良い顧客体験の提供を目指すとしています。

ユナイテッドアローズ

人気アパレルブランドを展開するユナイテッドアローズの事例を紹介します。

ユナイテッドアローズは、ロイヤルティが高い顧客を対象に「UAクラブ」というプログラムを開始しました。UAクラブでは、顧客が買い物を通じて貯めたマイルをクーポンに交換でき、次回以降お得に買い物できるようになっています。同時に、顧客が商品レビューを書くことでもマイルを貯めることができる仕様にしました。

この施策が功を奏し、ユナイテッドアローズは数多くのレビューを集めることに成功しました。レビューの蓄積によって顧客とともにコミュニティを形成しているような一体感を創出し、顧客との繋がりを強化することで、さらなる顧客ロイヤルティの向上を図っています。

この事例に代表されるように、ユナイテッドアローズでは顧客体験の全体像を考えながら購入後のストーリーまで想定し、それを実現するためにデータを活用しています。

アパレル業界がアプローチを成功させるCDPでのデータ活用

アパレル業界の課題を解決するためにはデータのサイロ化の解消が重要であり、そのためには顧客や商品データを一元管理するインフラを整える必要があります。そのインフラとして、CDPが1つの解決策となります。

CDPとは「カスタマー データ プラットフォーム:Customer Data Platform」の略称で、企業が持つ顧客データを「実在する個人」に紐づけて統合・管理し、顧客一人ひとりの正確な理解を可能にするプラットフォームです。顧客データ活用に特化したシステムであり、企業の顧客に関するデータを管理し、各マーケティングツールに合わせて加工・連携することができます。

integralcore integration

関連:CDPとは?機能や部門・業界別の活用例、今後の動向などをまとめて解説

アパレル業界でCDPを導入することで可能になること・メリットを3つ紹介します。

  • 顧客データを一元管理
  • 顧客データの分析
  • 需要予測・在庫管理

顧客データを一元管理

CDPは、顧客の名前やメールアドレスなどの個人情報に加え、webサイトやアプリでの行動履歴、実店舗での購買履歴など、あらゆる顧客データを収集し「実在する個人」として統合管理します。

例えば、webサイトやSNS・メルマガ・アプリなど各チャネルにおいて、別々の顧客IDが付与され、同一人物であるにも関わらず複数人として管理されているケースが多々あります。データは顧客単位で紐付けられていなければ、実際は同じ人物が行った行動でありながらもデータ上では別の人物として認識し、誤った分析やコミュニケーションに繋がるリスクが高まります。

アパレル業界では、よく下記のようなツール・システムや自社構築のプラットフォームが導入・利用されていますが、CDPはこれらのツール・システムと連携し、顧客データを1つに統合することが可能です。

ツール名 webアクセス解析ツール CRM / SFAツール EC / 購買データ管理ツール ID-POS
ツールの例 ・Adobe Analytics
・Google Analytics
・Ptengine など
・Salesforce
・Synergy!
・HubSpot CRM
・eセールスマネージャー
・F-RevoCRM
・kintone
・Zoho CRM など
・EC being
・Shopify
・EC-CUBE
・ecforce
・EPR(マクロミル)
・W2 Unified など
・スマレジ
・airレジ
・ORANGE POS
・POS+retail
・shopping Scan(True Data)
・ユビレジ など

CDPを導入することで、顧客を「1人の顧客」として正確に把握し、オンラインとオフラインを融合させるOMOも可能になります。

CDPの利用によって可能となるOMO戦略について、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。

無料資料:顧客体験を向上させるOMO戦略|オンラインとオフラインを繋げるCDP

顧客体験を向上させるOMO戦略|オンラインとオフラインを繋げるCDP

顧客の状態に合わせたコミュニケーション

CDPは顧客データを一元管理できるうえに、分析・施策を行うツール(BIツールやMAツール、プッシュ通知、web接客ツールなど)に連携でき、分析した結果をもとに顧客に対して適切にアプローチしていくことが可能です。

例えば、CDPは下記のようなツール・システムと連携できます。

ツール名 BI / 分析ツール MA / メール配信 / その他施策
ツールの例 ・Tableau
・Looker Studio(旧Google Data Portal)
・Yellowfin
・Amazon QuickSight
・DOMO
・Redash など
・Marketo
・Marketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot)
・HubSpot
・Synergy!
・Karte
・DLPO
・LINE
・Repro
・WEBCAS email など

これにより、顧客の興味関心に合わせてアプリでおすすめ商品を通知したり、サイト離脱やカゴ落ちに対してメルマガでクーポンを配信したりできます。CDPを導入し、セグメントを分けて顧客に対して適切なコミュニケーションを行うことで、売上の向上を図るとともに、機会損失を最小限に抑えることが可能になります。

CDPと各種ツールを連携することで、具体的にどのような分析・施策が可能となるのかについて、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。

無料資料:CDPによる顧客理解と分析|BI連携でひろがるデータの可視化

CDPによる顧客理解と分析|BI連携でひろがるデータの可視化

需要予測・在庫管理

CDPは顧客データのほかにも、商品データや3rd Party Dataである天候・位置情報などのデータも保有できます。

これらを利用することで、特定商品の在庫数や再入荷状況に応じた通知、あるいは天候や地域情報に基づくクーポン配信や情報提供といった施策の検討が可能となります。一方で、特定の施策においてはより専門性の高いSaaSやシステムを導入した方がコストや運用面でのメリットがあるケースがあるため、CDPの導入前にあらかじめ要件を定めておくことが重要です。

また、CDPで得られた分析結果は、BIツールなどによるレポート・ダッシュボードを構築して可視化することで社内やグループ会社間で共有することできます。これにより、各店舗でデータを活用できるようになり、需要予測による発注管理や人員配置・シフト調整といったオペレーションの最適化にも役立てることができます。

ここまで、アパレル業界の課題とその解決策を紹介しました。課題解決のためにはデータを効果的に活用することが重要であり、そのデータ基盤としてCDPを導入することも選択肢の1つです。

アパレルを含む製造小売業界におけるCDPの効果と活用例について、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。

無料資料:製造小売業界でのCDPの効果と活用事例|アパレル・日用品販売・家具メーカー向け

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