2025.04.15

アパレル業界のデータ分析・活用

アパレル業界のデータ分析・活用

消費者のオンラインシフトにともない、アパレル業界では店舗の役割や顧客へのコミュニケーション方法を見つめ直すことが求められています。

本記事では、アパレル業界の3つの課題と解決策、データ分析・活用に成功したアパレル企業の事例、CDPによるデータ活用について紹介します。

データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

アパレル業界においてデータ活用が重要視されている理由

近年、アパレル業界においては、従来のようにモノを売るだけでは売上を維持することが難しくなってきています。特に、ECやSNSの普及によって、顧客との接点は多様化・複雑化しており「誰に・いつ・何を・どのように届けるか」を設計することが、成果を大きく左右するようになっています。

その設計の基盤となるのが、顧客データです。顧客一人ひとりの行動履歴を正確に把握・活用する重要性は、これまで以上に高まっています。

消費行動の多様化

SNSやECの利用が一般化したことで、顧客の購買行動は、SNSで商品を知る、ECで情報を調べる、店舗で試着、ECで購入といったように、チャネルをまたいで複雑化しています。購買プロセスは顧客ごとに異なるため、従来のような画一的な販促や店舗スタッフの経験に頼った接客だけでは、最適な対応が難しくなっています。

このような状況においては、顧客データを活用してチャネル横断の行動パターンを可視化し、それをもとにシームレスな購買体験を設計することが不可欠です。

新規獲得コストの上昇

広告費の高騰や競合企業の増加により、新規顧客の獲得単価は年々上昇しています。もはや広告を出せば売れる時代ではなくなり、効率的な新規顧客の獲得が難しくなっているのが実情です。

そのため、既存顧客との関係性を深め、継続的に購買してもらうことでLTV(顧客生涯価値)を最大化していく戦略が重要になっています。このような取り組みを実現するには、購買履歴や来店頻度、閲覧履歴などの顧客データをもとに、それぞれの顧客に最適なタイミングで提案を行うことが求められます。

体験の質に対する顧客の期待値の変化

現在の消費者は、単に商品を購入するだけでなく、自分に合った情報や提案が自然に届くことを当然のように期待しています。特にデジタルネイティブ世代では、パーソナライズされたアプリ体験やチャネルをまたいだ一貫性のあるサービスが標準化しており、それが欠けていると違和感を抱かれる可能性があります。

このような期待に応えるには、年齢や性別といった表面的な属性だけでなく、購買頻度や閲覧履歴といった購買の背景や理由までを理解することが重要です。個別の行動データを活用して状況に即した提案を行うことで、顧客満足度や反応率の向上が期待できます。

アパレル業界における3つの課題

アパレル業界には、消費者行動や市場環境の変化に対応するうえで障壁となる、業界構造による課題が存在します。アパレル業界における主な課題は、以下の3つです。

  • 消費低迷・消費者の成熟
  • オンライン・オフラインデータが分断されている
  • 商品の余剰在庫

消費低迷・消費者の成熟

アパレル業界では、消費者の成熟と景気の低迷にともない、全体的に低コスト思考が広がっています。総務省統計局の家計消費状況調査平成29年品目別支出の状況によると衣類の支出額は年々減少傾向にあり、趣味や娯楽の要素が強いアパレル業界は不景気の時に影響を受けやすい業界と言えます。

今までは安物はすぐにダメになるという認識が一般的でしたが、縫製技術や繊維の品質の向上により、安くても質が良くデザイン性の高い製品が数多く店頭に並ぶようになりました。また、トレンドに左右されないベーシックなアイテムを低価格で購入し、長期間着用するという節約志向の消費者も増加しています。一方で、ラグジュアリーなファッションを好む高級志向の消費者層も依然として存在し、アパレルにおける消費は二極化が進んでいます。

ただしセールスフォースの調査によると、今後メインの消費者となる1981年以降に生まれたミレニアル世代の86%が「より良い顧客体験を受けるためならより多くのお金を払っても良い」と回答しています。つまり単なる価格やブランド力だけでなく、自分に合った体験やコミュニケーションを提供できるかどうかが、購買決定において重要視されていることが分かります。今後、ブランドの名前に依存した販売戦略では、アパレル業界で生き残っていくことは非常に難しいでしょう。

関連:顧客体験(CX)向上の成功事例4選!効果的な施策と必要なステップとは?

オンライン・オフラインデータが分断されている

昨今の技術革新により、ECサイト上でもチャットを通じた接客などが可能になっています。同時に、デジタルシフトにより、消費者は実店舗に行かずともアプリで情報を得たり、ECサイトで買い物ができるようになりました。顧客の利便性を高めるために、企業は以下のようなさまざまな複数のチャネルを駆使してコミュニケーションを図っています。

  • 店舗
  • ECサイト
  • カタログ
  • アプリ
  • SNS
  • マスメディア
  • コールセンター
  • 屋外広告

しかし、チャネルごとに顧客情報が分断されており、オンラインとオフラインのデータを統合できていない企業も少なくありません。このように、システムや事業部ごとにデータがバラバラになり、統一管理されていない状態を「データのサイロ化」と呼びます。

data silos

関連:データのサイロ化とは?2つの原因と解決策、サイロ化を解消するツールを紹介

データのサイロ化が発生し、自社内に蓄積された顧客データを幅広く活用できなければ、マーケティングや販売戦略の最適化が難しくなります。今後は、チャネル横断でのデータ統合を進め、顧客の購買体験全体を最適化する視点が求められます。

顧客データの統合によって期待できる変化について、詳しくは下記の無料動画をご覧ください。

無料動画:データ統合で何が変わる?顧客体験を高める顧客データ統合の基礎

データ統合で何が変わる?顧客体験を高める顧客データ統合の基礎

商品の余剰在庫

アパレル業界では、ファッションのトレンドを先読みして商品を事前に生産する必要があるため、どうしても在庫リスクがともないます。半年〜1年後を見据えて商品を企画・製造するため、トレンドの読みが外れた場合、大量の売れ残りが発生することも珍しくありません。

売れ残った商品は翌年には販売できないことが多く、結果的に廃棄処分にいたることもあります。廃棄にはコストがかかるだけでなく、過度な値下げによるブランド価値の毀損といったリスクも生じます。近年はSDGsの観点から、企業の廃棄体質に対する消費者の目も厳しくなっており、ブランドイメージへの悪影響も無視できません。

アパレル業界における課題の解決策

アパレル業界における3つの課題に対し、それぞれの解決策の例を紹介します。

  • 消費低迷・消費者の成熟のための施策
  • オンライン・オフラインデータを融合させるための施策
  • 商品の余剰在庫のための施策

消費低迷・消費者の成熟のための施策

消費低迷・消費者の成熟の傾向はありますが、衣類が生活必需品であることに変わりはありません。コロナ禍でスーツの売上は激減しましたが、代わりにルームウェアの需要が高まりました。

消費者はその時代に合わせて必要なもの・欲しいものを選び続けており、企業側にはそのニーズを的確に捉え、web、モバイル、実店舗を含むすべてのチャネルやデバイスで説得力のあるコンテンツを提供することが大切です。そのために、顧客一人ひとりの理解を深めていくことは欠かせません。

関連:タッチポイント(顧客接点)とは?チャネルとの違いや強化方法、増やす際の注意点

消費低迷している中でも売上をあげている企業は、年齢や性別、職業、居住地、オンライン上の行動、過去のデータなどの顧客データを豊富に集めており、顧客一人ひとりの詳しい個人プロファイルを作っています。不足するデータがあればサードパーティデータも活用して分析を行っているため、顧客のニーズをズレなくキャッチし、それに応えた施策の実施が可能です。

また、いかに顧客の信頼を得て、その信頼を保つことができるかを出発点とすることで、レンタルファッションや自宅でのサイズ測定をもとにしたECでの購買支援といった、新しいサービスが生まれるきっかけにも繋がるでしょう。

オンライン・オフラインデータを融合させるための施策

apparel data utilization 01

実店舗に加えてECサイトやアプリなど複数のチャネルを運営しているアパレル企業は、オンラインとオフラインの垣根をなくし、統合的な購買体験を提供することが差別化のポイントになります。このような戦略の一例として、OMO(Online Merges with Offline)と呼ばれる、チャネル横断型のマーケティング手法の導入が挙げられます。

OMOの実現には、顧客情報をチャネルごとに分断せず、一元管理するための基盤の整備が不可欠です。例えば、店舗用とEC用で分かれていた会員証を1つに統合し、統一された顧客IDでデータを管理することにより、顧客行動を正確に把握しやすくなります。

OMOが実現できれば、顧客にオンライン・オフラインを意識させず、いつでも好きなタイミングで買い物をして、好きな場所で商品を受け取れる環境を構築でき、顧客の期待に応えることができます。

加えて、ECサイトでお気に入り登録していた商品のクーポンを店舗来店時に配信したり、店舗の商品につけたQRコードをアプリで読み取ってもらいオンライン上の商品レビューやコーディネートを確認して購入を促すことも可能です。

OMOの実現に向けたポイントについて、詳しくは下記の無料動画をご覧ください。

無料動画:OMO実現に向けた顧客データ活用の基礎|店舗×ECの連携で顧客体験を提供するために

OMO実現に向けた顧客データ活用の基礎|店舗×ECの連携で顧客体験を提供するために

商品の余剰在庫のための施策

商品の余剰在庫を防ぐためには、経験や勘に頼らず、データに基づいた予測と意思決定が求められます。

例えば、顧客の購買データやwebの行動履歴などから興味関心を分析したり、人工知能(AI)を用いることも有効です。正確な予測が可能になれば、生産の最適化を図り、結果として廃棄量を抑えることができます。

apparel data utilization 02

また在庫管理を改善することで、余剰在庫を減らすことができます。例えば、多くの企業では店舗ごとやECサイトごとに在庫を管理しているため、店舗では売り切れたけどECの在庫は残っている、といった状況が発生しがちです。

在庫を一元的に管理できていれば、店舗ごとの余剰在庫を抑制できるだけでなく、顧客が欲しい商品を別チャネルで取り寄せるといった柔軟な対応も可能となり、欠品による利益損失も抑えられます。

アパレル業界における具体的なデータ分析・施策例

アパレル業界における顧客データ活用は、単にどの施策を打つかを検討するだけでは不十分です。どの顧客に対して、どのチャネルを通じて、どのタイミングで、何を届けるのかを一貫して設計することが、施策全体の成果を左右します。

特に注意すべきなのは、会員登録の有無によって分析可能な顧客かどうかが大きく異なる点です。店舗では、当然ながら会員登録をせずに購入する顧客がいます。この場合、購入金額や商品カテゴリーなど、その瞬間の取引情報は取得できても、誰が行動したかという個人に紐づく情報がないため、継続的な行動分析や次回以降の施策への活用ができません。

そのため、顧客セグメントを整理・分析する際は「新規/既存」や「EC/店舗」といった接点だけでなく、会員か非会員かという視点も考慮する必要があります。特に非会員顧客に対しては、会員登録を促すための導線設計や、非会員のままでも購買に繋がる店舗体験の設計など、仮説・検証していくことで、データ取得と活用の前提を整えることが重要です。

以上を踏まえたうえで、顧客の状態(新規/既存)・接点(EC/店舗)・役割(分析/施策)の3つの軸に加え、会員登録の有無という観点を補足しながら、体験フェーズごとの分析手法と施策例を整理します。

認知・初回接点のフェーズ

新規×EC:ECに初めて訪問・購入する顧客の動き

ECにおける初回訪問では、流入チャネルやCVRなどのデータをもとに、どの接点が成果に繋がっているかを可視化し、接点の質を高めていくことが求められます。

分析手法の例は下記のとおりです。

  • 流入チャネル別のCVR・直帰率(SNS・検索・広告など)
  • LPやバナーごとの反応率(CTR)
  • 初回来訪者の属性(年齢・性別・デバイスなど)

施策の例は下記のとおりです。

  • SNS流入ユーザー向けにトレンド商品を中心としたLPを設計
  • 初回購入者向けに送料無料やクーポンなどのインセンティブを提供

新規×店舗:初来店・初購入した顧客の店舗体験

店舗での初回接点では、接客や導線設計が顧客行動にどのような影響を与えているかを把握することが重要です。ただし、会員登録を伴わない非会員顧客については、誰がどのような行動をとったかを特定できず、データ取得が難しいケースも多く見られます。そのため、このような前提を踏まえて、会員登録や初回購入に繋がる接点の設計や接客アプローチを、仮説と検証を繰り返しながら改善していくことが必要です。

会員登録者をベースに行う、分析手法の例は下記のとおりです。

  • 来店経路別の来店数・新規購入率(駅近・SNS告知など)
  • スタッフ別の会員登録率
  • POP・接客導線ごとの会員登録効果測定(A/B比較)
  • 会員登録者の初回購入傾向

施策の例は下記のとおりです。

  • 初回限定の割引や特典の提供
  • 手に取りやすい導線設計・トレンド商品の掲示
  • 会員登録で使える割引やポイントなどのインセンティブの案内
  • EC・アプリ連動の登録特典を用意
  • 売上の高いスタッフの接客トークのマニュアル化

初回購入後のフォローのフェーズ

新規×EC:ECに初めて訪問・購入する顧客の動き

初回購入後のフェーズでは、いかに次回の接点をつくり、継続的な関係構築に繋げるかが重要です。ECにおいては、会員登録率が高く、行動データが蓄積されやすいため、顧客ごとのタイミングに応じたフォロー施策を設計できます。

分析手法の例は下記のとおりです。

  • 初回購入から再訪までの期間分析
  • ステップメールごとの開封率・クリック率
  • 購入商品カテゴリー別の再購入率

施策の例は下記のとおりです。

  • 商品ジャンルごとのリピート傾向に合わせて、クロスセルを設計
  • ステップメールでタイミングよく配信し、再訪・再購入を促進
  • 反応が出やすい初回メールは構成や訴求内容を工夫

新規×店舗:初来店・初購入した顧客の店舗体験

店舗においても、初回来店後に適切なタイミングでアプローチを行うことで、2回目の来店を促進できます。この際も、行動分析が可能となるのは初回来店時に会員登録を済ませた顧客に限られるため、会員化を前提とした設計が必要となります。

分析手法の例は下記のとおりです。

  • 購入日からの再来店率(◯日以内で再来店する人の割合)
  • 再来店率とフォロー施策(DM・LINE)の関係分析
  • 店舗別・スタッフ別のリピート率比較

施策の例は下記のとおりです。

  • 初回来店から10日以内の再来率が高いことを踏まえ、フォロータイミングを設計
  • 購入商品に関連したアイテムのDMやLINEでの新作案内を配信
  • 来店後の対応内容や接客ログを活用して、再来店時の提案に繋げる

リピート・LTV向上のフェーズ

既存×EC:ECを繰り返し利用している既存顧客の行動

ECでは、顧客の行動履歴や購買データが継続的に蓄積されるため、個別最適化された提案がしやすく、LTVの最大化に繋がる施策設計が可能です。

分析手法の例は下記のとおりです。

  • RFM分析(直近購入日・頻度・購入金額)
  • 商品カテゴリー別のリピート間隔
  • 閲覧履歴・カゴ落ち商品との相関分析

施策の例は下記のとおりです。

  • リピートされやすい商品の購入周期に合わせて、買い忘れ防止の通知を自動化
  • ロイヤル顧客には限定商品の先行販売情報を配信
  • 購入履歴に基づき、LTVを意識した差別化施策を展開

既存×店舗:店舗に継続的に来店するリピーターの様子

店舗においては、スタッフとの関係性や接客記録も施策設計に活用できます。ただし、これらも会員登録を通じて顧客との継続的な接点が確保されていることが前提となります。

分析手法の例は下記のとおりです。

  • 会員別の来店頻度と購買単価の相関
  • スタッフ別の購買促進効果(接客後の購買率)
  • お気に入り店舗の登録率とLTVの関係

施策の例は下記のとおりです。

  • 来店頻度が落ちた高LTV顧客に、担当スタッフからパーソナルメッセージを送信
  • 限定イベントや特別招待など、個別性の高い施策を案内
  • 接客ログと購買傾向を組み合わせて、提案の質を高める

クロスチャネル活用・ファン化

新規・既存×EC・店舗

ECと店舗をまたいで複数チャネルで接点を持つ顧客に対しては、一貫した体験を提供することが重要です。クロスチャネルを前提とした体験設計とロイヤル化施策を推進していくことが求められます。

分析手法の例は下記のとおりです。

  • 購買チャネルの切り替えパターン
  • クロスユース顧客と単一チャネル顧客のLTV比較
  • アプリ利用状況とチャネル行動の相関

施策の例は下記のとおりです。

  • 店舗での試着履歴をECのレコメンドに反映し、購買につなげる
  • ECで購入した商品の店舗受取や店舗での返品に対応し、利便性を向上
  • クロスユース顧客限定で、ポイント優遇やファンイベントの招待を実施し、ロイヤル化を促進

アパレル業界のデータ分析・活用事例

TSIホールディングス

「ナノ・ユニバース」や「ナチュラルビューティーベーシック」など、50以上の人気ファッションブランドを運営する大手アパレル企業の株式会社TSIホールディングスの事例を紹介します。

コロナ禍を契機に購買行動が大きく変化し、店舗とECをまたいだ購買スタイルが一般化する中で、このような変化に対応するための取り組みとして、チャネル横断型マーケティングの強化およびファーストパーティデータの活用を推進しました。

従来はブランドごとに分かれていたマーケティング施策や顧客データを全社的に統合し、オンラインとオフラインのデータを掛け合わせたOne to Oneサービスの提供を実現しました。さらに、Google BigQueryをはじめとするデータ基盤を整備することで、ブランド横断での顧客データの一元管理を可能にし、ロイヤル顧客と類似する層への的確なアプローチを行いました。また、機械学習の内製化と、それに伴う人材育成にも注力し、マーケティングの高度化を内製で実現できる体制を構築しました。

その結果、売上は目標比で60%増加し、広告のROAS(広告費用対効果)も他施策と比較して50%以上の向上を達成。機械学習の未経験者でも社内で高精度なマーケティング運用が可能になるなど、大きな成果を上げています。

Zoff

株式会社ゾフが展開する、眼鏡ブランドのZoffの事例を紹介します。

従来Zoffは、需要期や顧客の個別のニーズに応じて、オンライン・オフライン双方の施策を展開し、集客を図っていました。ただ、オフラインの施策において、オフライン広告中心の施策では見込み顧客にリーチしきれない、広告効果を図りにくい、という課題を抱えていました。

オンラインのデジタル広告のように施策のPDCAを回せる仕組み作りのために、位置情報サービスを利用した施策の効果計測を始めます。来店への寄与を図るためのアンケートを実施、売上相関の見える化、Wi-Fiによる来店計測などの手順を経て、流客分析で店舗間の行動を可視化することに成功しました。その結果、地域によって傾向が大きく異なることが分かり、エリア別の広告予算配分や配信エリア設計を最適化できるようになりました。

上記のようなデータ分析・活用の仕組みを作ったことにより、Zoffは施策のPDCAを回しやすくなったと成果を実感しており、今後は来店後や購入後の顧客のデータも分析し、一貫した施策を実行することでより良い顧客体験の提供に努める予定です。

ユナイテッドアローズ

人気アパレルブランドを展開するユナイテッドアローズの事例を紹介します。

ユナイテッドアローズは、ロイヤルティが高い顧客を対象に「UAクラブ」というプログラムを開始しました。UAクラブでは、顧客が買い物を通じて貯めたマイルをクーポンに交換でき、次回以降お得に買い物できる仕様になっています。同時に、顧客が商品レビューを書くことでもマイルを貯めることができる仕様にしました。

このレビューを集めるための施策が功を奏し、数多くのレビューを集めることができました。多くのレビューが集まることで、顧客とともにコミュニティを形成しているような一体感を創出でき、さらなる顧客ロイヤルティの向上を図っています。

この事例に代表されるように、ユナイテッドアローズでは顧客体験の全体像を考えながら購入後のストーリーまで想定し、それを実現するためにデータを活用しています。

アパレル業界がアプローチを成功させるCDPでのデータ活用

顧客理解を進めること、また顧客や商品データを一元管理するためには、インフラを整える必要があります。そのインフラとして、CDPが1つの解決策となります。

CDPとは「カスタマー データ プラットフォーム:Customer Data Platform」の略称で、企業が持つ顧客データを「実在する個人」に紐づけて統合・管理し、顧客一人ひとりの正確な理解を可能にするプラットフォームです。顧客データ活用に特化したシステムであり、企業の顧客に関するデータを管理し、各マーケティングツールに合わせて加工・連携することができます。

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関連:CDPとは?機能や部門・業界別の活用例、今後の動向などをまとめて解説

顧客データを一元管理

CDPは、顧客の名前やメールアドレスなどの個人情報に加え、webサイトやアプリでの行動履歴、実店舗での購買履歴など、あらゆる顧客データを収集し「実在する個人」として統合管理します。

例えば、webサイトやSNS、メルマガ、アプリなど各チャネルにおいて、別々の顧客IDが付与され、同一人物であるにも関わらず複数人として管理されているケースが多々あります。これが、データのサイロ化が起きている状態です。

データは顧客単位で紐づけられていなければ、実際は同じ人物が行った行動でありながらもデータ上では別の人物として認識し、誤った分析やコミュニケーションに繋がるリスクが高まります。

アパレル業界では、よく下記のようなツール・システムや自社構築のプラットフォームが導入・利用されていますが、データのサイロ化を解決するために、CDPはこれらのツール・システムと連携し、顧客データを1つに統合することが可能です。

ツール名 webアクセス解析ツール CRM / SFAツール EC / 購買データ管理ツール ID-POS
ツールの例 ・Adobe Analytics
・Google Analytics
・Ptengine など
・Salesforce
・Synergy!
・HubSpot CRM
・eセールスマネージャー
・F-RevoCRM
・kintone
・Zoho CRM など
・EC being
・Shopify
・EC-CUBE
・ecforce
・EPR(マクロミル)
・W2 Unified など
・スマレジ
・airレジ
・ORANGE POS
・POS+retail
・shopping Scan(True Data)
・ユビレジ など

CDPを導入することで、顧客を「一人の顧客」として正確に把握し、オンラインとオフラインを融合させるOMOも可能になります。

一元管理できるようになったデータを、具体的にどのように活用し顧客とのコミュニケーションを再構築していくのかについて、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。

無料資料:データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

顧客の状態に合わせたコミュニケーション

CDPは顧客データを一元管理できるうえに、分析・施策を行うツール(BIツールやMAツール、プッシュ通知、web接客ツールなど)に連携でき、分析した結果をもとに顧客に対して適切にアプローチしていくことが可能です。

例えば、CDPは下記のようなツール・システムと連携できます。

ツール名 BI / 分析ツール MA / メール配信 / その他施策
ツールの例 ・Tableau
・Looker Studio(旧Google Data Portal)
・Yellowfin
・Amazon QuickSight
・DOMO
・Redash など
・Marketo
・Marketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot)
・HubSpot
・Synergy!
・Karte
・DLPO
・LINE
・Repro
・WEBCAS email など

これにより、顧客の興味関心に合わせてアプリでおすすめ商品を通知したり、サイト離脱やカゴ落ちに対してメルマガでクーポンを配信したりできます。CDPを導入し、セグメントを分けて顧客に対して適切なコミュニケーションを図ることで、売上アップや機会損失を最小限に抑えられます。

CDPと各種ツールを連携することで、具体的にどのような分析・施策が可能となるのかについて、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。

無料資料:CDPによる顧客理解と分析|BI連携でひろがるデータの可視化

CDPによる顧客理解と分析|BI連携でひろがるデータの可視化

需要予測・在庫管理

CDPは顧客データのほかにも、商品データや3rd Party Dataである天候・位置情報などのデータも保有できます。

データの保有の仕方により、例えば特定商品の在庫数や再入荷状況に応じた通知、あるいは天候や地域情報に基づくクーポン配信や情報提供といった施策の検討が可能となります。一方で、特定の施策においてはより専門性の高いSaaSやシステムを導入した方がコストや運用面でのメリットがあるケースがあるため、CDPの導入前にあらかじめ要件を定めておくことが重要です。

また、CDPで得られた分析結果をBIツールなどによるレポート・ダッシュボードを構築することで社内やグループ会社間で共有することもできるため、各店舗でデータを活用できるようになり、需要予測による発注管理や人員配置・シフト調整といったオペレーションの最適化にも活用できるようになります。

ここまで、アパレル業界の課題とその解決策を紹介しました。課題解決のためにはデータを効果的に活用することが重要であり、そのデータ基盤としてCDPを導入することも選択肢の1つです。

アパレルを含む製造小売業界におけるCDPの効果と活用例について、詳しくは下記の無料資料をご覧ください。

無料資料:製造小売業界でのCDPの効果と活用事例|アパレル・日用品販売・家具メーカー向け

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