2021.11.04

ホテル・旅館業界のデータ分析・活用

ホテル・旅館業界のデータ分析・活用

ホテル・旅行業界では、OTA依存による利益の圧迫や、顧客が多数の情報を持ってホテル・旅館を選べる状況によるリピート率改善の難化などの課題が大きくなっています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が一時期よりも落ち着きを見せ、宿泊需要は回復傾向にあることから、改めてホテル・旅行業界における課題に取り組むべきタイミングであるとも言えると思います。

本記事ではホテル・旅館業界の3つの課題と解決策、CDPによるデータ分析・活用について紹介します。

なお、弊社EVERRISEでは、データ分析・活用の正しい捉え方や大手企業の取り組み例などについて、下記の無料資料で紹介しています。「データ取集・統合に着手したいが、具体的なイメージがわかない」という企業の担当者さまは、本記事とあわせてぜひご活用ください。

\ 意味のあるデータの使い方とは? /

企業を強くするデータの持ち方・使い方

ホテル・旅館業界における課題

ホテル・旅館業界における主な課題は3つあります。

  • OTA手数料による利益の圧迫
  • 既存顧客のリピート化ができていない
  • データをもとにした、ホテル利用時・旅行中の顧客体験の向上ができていない

OTA手数料による利益の圧迫

ホテル・旅行業界において、OTA(Online Travel Agent)集客での予約が大部分を占めていることにより、集客コストが大きくなってしまい利益率が圧迫されていることは大きな課題として挙げられます。

ユーザーとしては、ホテル・旅館を調べる際にOTAを利用するのは一般的になっていることから、単にOTAへの掲載を止めてしまうと、客室稼働率の観点で売上が下がり利益とのバランスがとれないケースも多いかと思います。

OTAへの掲載を止めるのではなく、適切なバランスをとりにいくホテル・旅館における集客のOTA「依存」からの脱却は、ホテル・旅館業界において大きなテーマとなっています。

近年、新型コロナウイルス感染症の影響によって国内観光とインバウンドの宿泊需要は大きく低迷し、厳しい状況が続いていましたが、それも回復傾向にあります。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2022年の延べ宿泊者数(全体)は4億5,046万人泊で、前年比の 41.8%でした。また、世界的な円安も相まって、外国人観光客を中心に今後も需要拡大が期待されます。

そのような状況下において、OTA集客の割合をいかに減らせるかが今後ホテル業界で確実に利益を上げるためのポイントになると考えられます。

既存顧客のリピート化ができていない

安定した収益を生み出すために、既存顧客に継続的に利用してもらうことも重要です。アメリカのコンサルティング企業であるBain& Company社の名誉ディレクター、フレデリック・F・ライクヘルド氏が提唱したとされている「1:5の法則」によると、新規顧客の獲得コストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかると言われています。

そのためホテル・宿泊業界は既存顧客に対して、どのようにアプローチしていくかが重要ですが、現状存在する顧客に対してリピート促進できていないケースが多くあります。

既存顧客に対して、効率良くリピート促進ができていない主な原因は、予約情報、顧客情報、ポイントカード情報、POS情報などがバラバラで、顧客の属性が見えていないことが挙げられます。単に一斉配信のメールなどによる情報提供ではなく、顧客の状態に合ったコンテンツを提供できないと効率よくリピート化に繋げることは難しいでしょう。

上記のように、データがバラバラに管理されていて連携できていない状態を「データのサイロ化」と呼びます。データのサイロ化が起きている状態では、自社の顧客データを活用し既存顧客に効果的なアプローチを行うことが難しいです。

データのサイロ化

データのサイロ化が起きる2つの原因と解決する方法については、下記の記事で詳しく紹介しています。

関連:「データのサイロ化」5つの問題と解決策。攻めのDX推進を妨げるサイロ化の原因とは例

データをもとにした、ホテル利用時・旅行中の顧客体験の向上ができていない

宿泊中の関連施設やサービスの紹介が、チェックイン時にコンシェルジュが顧客にお声がけを行ったり、パンフレットをお渡しするだけにとどまっているケースが多くあります。

データをもとにした、旅行中の状況に適した施設やサービスの提案や接客、オンライン・オフラインも含め、顧客に喜ばれるコミュニケーションを行うことで顧客体験が向上し、顧客のロイヤルティ化にも繋がります。

関連:顧客ロイヤルティとは?顧客満足度との違い、顧客ロイヤルティの高め方&事例

ホテル・旅館業界における課題の解決策

直接予約による新規顧客の獲得

予約が大部分を占めているOTAの集客を引き続き行うことも大切ですが、自社の直接予約を強化する集客経路の獲得にも取り組んで行くことも重要です。自社の直接予約を強化するためには、新たな集客経路の獲得とブランドの構築が重要です。

幅広い客層に認知してもらうために、自社のSNSやブログ発信などを積極的に行ったり、広報活動によるメディア掲載を狙ったり、メディアの広告枠の利用など、OTA以外の新たな集客経路を獲得することが重要です。

しかし、単に集客経路を増やし、露出したとしても競合他社と差別化したホテル・旅館の強みを主張できるブランド構築が行えていなければ大きく予約が増えることは期待できません。顧客から共感を得るブランディング戦略を練り、それらをもとにした集客の戦略を練る必要があります。

直接予約を引き上げるためにまずwebサイトの改善に取り組むというケースもありますが、あくまでブランディング戦略と集客戦略をもったうえで進める必要があります。

サイトに来た顧客が予約まで到達するように、ホテル・旅館に対して興味を持ってもらえるサイトとなるよう見直しましょう。例えば、宿泊をイメージしやすいサイトデザイン、シンプルなサイト設計、予約率が上がる導線設計、シーズンごとのアクティビティなどがイメージできるコンテンツの拡充などを行います。また、自社サイトからの予約した際の特典などをつけるのも効果的です。

直接予約経由で溜まった顧客データをもとに、どのような属性の顧客がサイトに訪問していて、どのような行動をしているかを分析し、顧客理解を深めつつ、最適なプロモーションを実施できるよう改善も行うことも大切です。

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2024年マーケティング&データ活用最新トレンド

リピーターを増やす施策

宿泊してくれた人に「もう1度このホテルに泊まりたい」と思ってもらうために、ホテル・旅館の魅力をアップさせるとともに、顧客などの状態に合わせた適切なコミュニケーションを行うことが大切です。

予約前では、何度か宿泊をしたことのある優良顧客と、休眠復帰を促したい顧客のコミュニケーションを分けるとよいでしょう。

休眠復帰の難易度は高く、休眠する前に再利用を促す、つまり休眠しないようなコミュニケーションが重要です。一般に、休眠顧客はコストメリットなどわかりやすい訴求でないと復帰しない傾向にあるため、利用後にお得な情報を提供して再予約を促進しましょう。

何度か足を運んでいただいている優良顧客に対しては、各シーズンで旅行を検討する時期に再予約・利用を促進するコミュニケーションを取りましょう。訴求内容はさまざまありますが、例えばゴルフ、温泉、地域のイベント、シーズンごとのアクティビティ、季節の料理などを組み合わせて何種類か訴求を作り、顧客の属性に合った訴求を行い、再予約を促しましょう。

予約完了後も、ホテル・旅館を利用する楽しみを醸成するとともに、他の施設やサービスの予約・利用を促進することも忘れずに行いましょう。

世界的にデジタル化が進み顧客ニーズが多種多様になっている中で、顧客は価格よりも顧客体験を受けることを優先した購買行動をとることが分かっています。そのような傾向を踏まえると、顧客が求めるタイミングで適切な情報を届けるといった、コミュニケーション再構築に関する全体設計を考える必要があります。

データを活用した顧客中心のコミュニケーション再構築の手順と注意点については、下記の無料資料で事例を交えながら紹介しています。

無料資料:データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

データをもとにした、ホテル利用時・旅行中の顧客体験の向上

宿泊前にホテル・旅館を調べるお客さんは多いかと思います。顧客が事前に自社サイトで調べていた興味関心の高い関連施設やサービス、顧客の属性にあったアクティビティを宿泊中におすすめすることで顧客体験を向上させられます。

例えばチェックイン時に、コンシェルジュからホテル・旅館からおすすめしたい施設やサービスを紹介するケースは多くあると思いますが、すべての施設やサービスを紹介することはできないため、事前に関連施設やサービスの予約の有無など顧客の興味関心の高そうなデータが特定できていれば、より効率的に利用促進を行うことができます。

コンシェルジュを介して紹介する以外に、宿泊前・チェックイン時にモバイルアプリをダウンロードしてもらい、アプリでショップ来店を検知したタイミングでおすすめ商品情報の紹介やクーポンをリアルタイムでプッシュ配信を行うことで、購入促進を行うことができます。

関連:顧客体験の向上に必要な5つの準備とCX管理に役立つマーケティングシステム

ホテル・旅館業界のデータ分析・活用事例

ニセコでのデータ分析・活用事例

北海道ニセコ町の宿泊事業者のデータ分析・活用事例を紹介します。

ある宿泊事業者は、以前まで海外観光客の予約リードタイムを定量的なデータをもとに把握できておらず、キャンペーンなどを一律で実施していました。それらを解決するために、データ収集・分析プラットフォームを利用し、旅行者の国籍によって予約が活発になるタイミングが異なることが判明しました。

その分析結果をきっかけに、プロモーションの実施時期を国別に変えることも検討すべきであると実感し、オーストラリアの旅行者には1年前からプロモーションやキャンペーンを展開、中国をはじめとした東南アジアからの旅行客に対しては予約が活発になるシーズン前に集中的にキャンペーンを展開するなど、データを踏まえた取り組みを実践できるようになりました。

出典:「観光地域づくり法人による宿泊施設等と連携したデータ収集・分析事業」(観光庁)

下呂エリアでのデータ分析・活用事例

岐阜県下呂エリアの宿泊事業者のデータ分析・活用事例を紹介します。

下呂エリアのとある宿泊事業者は、ビジネスパーソンの需要が一定数あると感じていたものの、宿泊客の大多数が一泊二食プランを利用していることから、素泊まりプランといった需要に適したサービスの検討を進めていませんでした。しかし、さらなる集客力の向上を図るため、データ収集・分析プラットフォームを利用してビジネスパーソン向けのプラン作成の検討を始めました。

利用客の食事タイプを性別や年齢別に分析したところ、素泊まりや1泊朝食付きのプランも一定数需要があることが改めて判明しました。同時に、素泊まり利用者の約9割が若者層であることも分かりました。

上記の結果を踏まえ、夕食を抜いた1泊朝食プランの充実や、到着時間がはっきりしないために夕食付きプランを申し込まない利用者を対象とした弁当付きプランの検討を進めるなど、分析データを活用し具体的な施策の検討を進めています。

出典:「観光地域づくり法人による宿泊施設等と連携したデータ収集・分析事業」(観光庁)

ホテル・旅館業界がアプローチを成功させるCDPでのデータ分析・活用

顧客データをもとに顧客理解を進めたり、顧客スピーディーかつより正確なコミュニケーションを行うためには、顧客データ基盤を整える必要があります。顧客データ基盤は自社で構築することも可能ですが、その顧客データ基盤として、CDP(Customer Data Platform)も1つの手段です。

CDPとは「カスタマーデータプラットフォーム」の略称で、企業の顧客に関するデータを管理し、顧客一人ひとりを理解するための基盤のことです。

関連:CDPとは?顧客データ活用に特化したCDPの機能とメリット、事例などの基礎知識まとめ

ここからは、ホテル・旅館業界でCDPを導入するとできるようになることについて、以下の2点を紹介します。

  • 顧客情報の一元化
  • 購買ファネル分析による顧客と営業とのコミュニケーション改善

顧客情報を一元化

CDPは、名前やメールアドレスなどの個人情報、webサイトやアプリでの行動履歴、POSレジの購入履歴、宿泊後のアンケート情報など、顧客に関するすべてのデータを収集し「実在する個人」にデータを紐づけて一元管理できます。

多くの企業では、webサイトやSNS、メルマガ、アプリなどそれぞれのチャネルごとに顧客管理システムを持っており、1人の顧客に対して別々の顧客IDを割り振り、別人として管理されているケースが多々あります。これが、先述した「データのサイロ化」が起きている状態です。

データは顧客単位で紐づけられていなければ、実際は同じ人物が行った行動でありながらもデータ上では別の人物として認識し、顧客を正しく理解できなかったり誤ったコミュニケーションを行ってしまったりという可能性があります。

ホテル業界では、よく以下のようなツール・システムや自社構築のプラットフォームが導入・利用されていますが、データのサイロ化を解決するために、CDPはこれらのツール・システムと連携し、顧客データを1つに統合することが可能です。

ツール名 webアクセス解析ツール ホテル予約管理システム CRM / SFAツール ID-POS
ツールの例 ・Adobe Analytics
・Google Analytics
・Ptengine など
・Oracle Hospitality OPERA(オラクル)
・NEHOPS(NEC)
・Dynalution(ダイナテック)
・GLOVIA smart(FUJITSU)
・HOTEL SMART(ホテルスマート)
・Wincal(ウィンカル)
・予約プロ+(プラス) など
・Salesforce
・Synergy!
・HubSpot CRM
・eセールスマネージャー
・F-RevoCRM
・kintone
・Zoho CRM など
・スマレジ
・airレジ
・ORANGE POS
・POS+retail
・shopping Scan(True Data)
・ユビレジ など

hotel data utilization 02

CDPを導入することで、顧客データが一元化され、1人の顧客として分析できるようになり、オンラインとオフラインを融合させた施策の実施も可能になります。

オンラインとオフラインが融合したマーケティング概念はOMO(Online Merges with Offlineと呼ばれ、複数チャネルで一貫した顧客体験を実現するためのカギを握ります。OMOが重要視されている理由やOMO実現に向けて必要な3つの要素について、下記の無料資料で紹介しています。徹底した顧客目線で顧客体験を向上させるためのマーケティング施策を実行したい企業さま、ぜひご活用ください。

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顧客体験を向上させるOMO戦略

顧客との適切なコミュニケーション

CDPは顧客データを一元管理できるうえに、分析・施策を行うツール(BIツールやMAツール、プッシュ通知、web接客ツールなど)に連携でき、分析した結果をもとに顧客に対して適切にアプローチしていくことが可能です。

例えば、CDPは以下のようなツール・システムと連携することが可能です。

ツール名 BI / 分析ツール MA / メール配信 / その他施策
ツールの例 ・Tableau
・Looker Studio(旧Google Data Portal)
・Yellowfin
・Amazon QuickSight
・DOMO
・Redash など
・Marketo
・Marketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot)
・HubSpot
・Synergy!
・Karte
・DLPO
・LINE
・Repro
・WEBCAS email など

CDPを導入し、セグメントを分けて顧客に対して適切なコミュニケーションを図ることで、売り上げアップや機会損失を最小限に抑えられます。

以下の無料資料で、ホテル業界でCDPを導入した場合の効果やユースケースについて紹介しています。CDPを導入した際に自社のどのような課題を解決できるのかより具体的なイメージを掴みたいホテル・旅館業界の関係者さまは、ぜひご活用ください。

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ホテル業界におけるCDPの効果とINTEGRAL-COREの活用例

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  • CDP「INTEGRAL-CORE」の特長
    • 顧客に関するあらゆるデータを収集・統合
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