2022.10.13

テレビ業界のデータ活用

テレビ業界のデータ活用

テレビの広告費は過去数十年にわたって常に首位にありましたが、昨今では若年層のテレビ離れの進行やインターネット広告市場の成長により、テレビ広告の売上規模が低下傾向にあり、インターネット広告がテレビ広告を上回る結果が出ています。テレビ業界は、テレビの価値向上のために現状の見直しが求められています。

本記事では、テレビ業界の3つの課題と解決策、CDPによるデータ活用について紹介します。

テレビ業界における課題

テレビ業界における主な課題は3つあります。

テレビ広告の売上規模の低下

テレビ業界においてテレビ広告の売上高が低下傾向にあることは、大きな課題として挙げられます。

経済産業省が2022年6月9日に発表した「特定サービス産業動態統計速報(2022年6月速報)」のうち広告業界の動向についての報告書をみると、テレビ業界の売上高は950億7,500万と、2020年5〜8月以来の1,000億円を下回る結果となっており、前年同月と比べると11.3%減少しています。

一方で、インターネット広告の市場は拡大しています。

インターネット広告の売上は1,056億6,900万円で前年同月比4.0%増と、テレビ業界の売上低下の影響を受けて広告業界全体の売上が減少している中でインターネット広告は増加を続けています。2022年2月24日に株式会社電通が発表している「2021年日本の広告費」によると2021年にはインターネット広告費がテレビ・ラジオ・新聞・雑誌を含む4大マスメディアの広告費を上回ったという結果が出ています。

広告自体の需要が減っているわけではなく、配信する手段や方法が変化していることが分かります。そのため、テレビ業界は既存の広告の見直しや新しい広告配信方法を検討する必要があります。

若年層の急速なテレビ離れの進行

若年層のテレビ離れが進行しているのも、テレビ業界の課題として挙げられます。

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NHK放送文化研究所の世論調査部が2021年5月25日に発表した「国民生活調査2020」によると、平日1日のうちにいずれの時間帯にテレビを見る国民の割合は79%で、これは5年前の85%から6ポイント減少しています。

年齢別に見ると、60代以上はほぼ同水準を維持しているのに対し、10代から40代にかけてはすべて10ポイント以上落ち込んでいます。もっとも下落幅が大きかったのは、16〜19歳のハイティーン層であり、24ポイント(71%→47%)と顕著です。次いで、10〜15歳が22ポイント減少(78%→56%)、20代は18ポイント減少(69%→51%)となっています。10〜20代においては「ほぼ半数がテレビを見ていない」と回答しています。

大きな要因としては、インターネットの普及が大きく関係していると考えられます。

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インターネットの利用に関して同調査結果を見ていると、テレビ視聴が大きく減った若年層(10〜20代)では、SNSや動画コンテンツの視聴を含むインターネットを利用する人が増加しています。特に16〜19歳では、1日にインターネットを利用する人が8割に上ります。

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また、1日にインターネットを利用する時間量は、16〜19歳と20代は2時間を超えています。そのうち動画視聴に占める時間は、1時間以上という結果になっています。

広告の細やかなターゲティングが難しい

テレビ業界の売上を支えているテレビ広告ですが、一度に多くの人々に情報を届けられるという大きな魅力を持っている一方で、細やかなターゲティングによる配信は難しく、このターゲティングの粒度がテレビ業界の課題として挙げられます。

昨今、成長が著しく市場を拡大しているインターネット広告には、データを活用した細かなターゲティングができるという大きな特徴を持っています。閲覧者一人ひとりの性別・年齢・広告の表示・クリックの回数などを把握することが可能なため、ターゲットの属性にあった情報を、ターゲットがよく利用する媒体を通じて適切なタイミングで配信することできます。また、広告主側も広告配信後の結果データとして取得できるため、PDCAが回しやすく、投資対効果の判断や改善に繋げやすくなるという利点もあります。

このような細やかなターゲティングによる広告の配信を行えるというのは、テレビ広告などのマスメディアにはなかった魅力の1つであり、インターネット広告が急成長している大きな要因でもあります。

テレビ業界でも、コンテンツの見直しも重要ですが、データを利用して細やかなターゲティングでの情報を発信できる環境を整えたりデジタルのチャネルでの広告の展開が必要となってきています。

一方向のコミュニケーションが中心

テレビでの情報発信が視聴者との一方向のコミュニケーションが中心であることも、テレビ業界の大きな課題です。

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昨今、消費者が求める企業とのコミュニケーションの形は変化しています。インターネットやSNSの発展により、自分にあったコミュニケーションを図ってくれる企業を重要視する消費者が増加しています。消費傾向の変化について、詳しくは下記の記事をご覧ください。

関連:モノ消費からコト消費、さらにトキ消費へ。Z世代はイミ・エモ消費が増加

各種プレゼント企画やSNSやファンサイトを利用した企画など、相互にコミュニケーションが取れるような企画を行っている番組もありますが、テレビからの情報発信はあくまで一方向のコミュニケーションが中心です。

昨今の消費者が求めているコミュニケーションの形とテレビ業界の実情に相違が生まれてしまっています。

テレビ業界における課題の解決策

広告収益の最大化・新たな広告枠の検討

テレビ広告の売上規模を向上させるためには、広告収益の最大化および新たな広告枠を検討する必要があります。

広告収益の最大化のためには、視聴者が必要だと思う情報と広告主が発信する情報がマッチするような施策を打ち、広告主の商品やサービスの利用促進を図ることで、テレビ広告の価値を高め単価を向上させる必要があります。

テレビの視聴ログからは、インターネット広告ほど細かなデータの取得や視聴者一人ひとりの属性情報を得ることは難しいですが、大まかな視聴時間帯や地域によって目に触れやすい視聴者の年齢層や性別などの属性を特定することは可能です。これにより広告主の届けたいターゲット層に合わせた広告枠の提案ができ、広告主の商品やサービスの利用促進により寄与することができます。

また、番組に関するアンケートやテレビ局のイベントなどで取得した顧客データを活用すれば、テレビ広告とは別にメールマガジンやポップアップなどで顧客一人ひとりに直接情報を届けるという新しい広告枠の検討が可能になります。

他にも新しい広告枠として、コネクテッドTVなどのインターネットを経由したテレビ番組の配信などのサービスもあります。インターネットを経由した配信を行うことで視聴ログから視聴者層を特定し視聴者層に合わせた広告の出し分けを行うことが可能になり、細かなターゲティングによりそれぞれの視聴者にあった情報を届けることができます。

顧客データの一元管理

今以上にテレビの価値を高めるためには、データの活用は必要不可欠です。有効なデータを取得できるようにし、データを一元管理することで、正しい顧客分析と施策の評価ができる環境を構築しましょう。

テレビ局では、ファンサイトの作成やアンケートの実施、テレビ番組の観覧・モニターなどのオフラインイベントの開催、番組内のプレゼント企画、ECサイトでの番組グッズ販売など、テレビ番組から別のチャネルに誘導する取り組みは増えているかと思います。

このような施策から得たデータを一元管理することで、視聴者の性別・年齢といった属性情報の分析からファンサイト、メールマガジンの登録、グッズの購入、イベントへの申し込みといった番組を視聴した後の行動データを一連の流れとして捉えることができます。そのため、視聴者の理解を深め、視聴者にあったコンテンツの見直しやチャネルの検討などの施策の改善に利用することができます。

ファンが喜ぶコミュニケーションの実施

テレビ広告だけでは、インターネット広告のような細かなターゲティングや視聴者とコミュニケーションを図るのは難しく、どうしても一方向のコミュニケーションになってしまいます。それらを解消するためには、テレビとインターネットを組み合わせて、ファンが喜ぶコミュニケーションを提供できる環境を作るのが効果的です。

例えば、登録制のファンサイトを作り会員限定の情報を配信したり、番組の観覧者の募集を行い視聴者にも参加してもらったりECサイトで番組関連グッズの販売を行うなどの施策があります。

重要なのは、そこで取得した視聴者の情報を活用し、視聴者が喜んで視聴し続けてくれるコミュニケーションに繋げることです。

テレビで番組を見るだけに留まってしまう方が大半を占める中で、視聴後にサイトを訪問しアンケートに参加してくれる、ファンサイトやECサイトを確認してくれる、イベントに参加してくれるなどのアクションを起こしてくれる視聴者は貴重です。その後も、引き続き番組を視聴してくれたり積極的にイベントに参加してくれるなど、コアなファンとなってくれる可能性が高いです。

視聴後にメールやLINEなどで番組に関する有益な情報を発信したりファンサイト限定で見られるコンテンツを配信したりするなど、継続的なコミュニケーションを図ることでファンを逃さない環境を作りましょう。

そのためには収集した視聴者のデータを活用し、視聴者分析からコンテンツの見直しやコミュニケーションの改善が行える環境作りが必要です。選ばれ続ける企業となるために取り組むべきコミュニケーションの全体設計について、詳しくは下記の資料をご覧ください。

無料資料:データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

データによる顧客中心のコミュニケーション再構築|これからの市場で選ばれる企業になるために

テレビ業界がアプローチを成功させるCDPでのデータ活用

データを活用して広告収益の最大化や新たな広告枠の検討をしたりコアなファンとより良いコミュニケーションを取りLTVを高めるためには、顧客データ基盤を整える必要があります。顧客データ基盤は自社で構築することも可能ですが、その顧客データ基盤としてCDP(CustomerDataPlatform)も1つの手段です。

CDPとは「カスタマーデータプラットフォーム」の略称で、企業の顧客に関するデータを管理し、顧客一人ひとりを理解するための基盤のことです。CDPについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。

関連:CDPとは?カスタマーデータプラットフォームの機能やメリット、活用例を解説

顧客情報を一元化

CDPは、webサイトやアプリでの行動履歴、ファンサイトの登録情報など、顧客に関するすべてのデータを収集し「実在する個人」にデータを紐づけて一元管理できます。

多くの企業では、ファンサイトの作成やアンケートの実施、テレビ番組の観覧などのオフラインイベントの開催、番組内のプレゼント企画など、各種接点の管理を行う部署が異なるため取得するデータに差があったり利用許諾の方法が異なるケースが多いです。これは「データのサイロ化」と言い、データがシステムや部署ごとに分断されて管理されている状態です。

データは顧客単位で紐づけられていなければ、実際は同じ人物が行った行動でありながらもデータ上では別の人物として認識し、顧客を正しく理解できなかったり誤ったコミュニケーションを行ってしまったりという可能性があります。

テレビ業界では、よく以下のようなツール・システムや自社構築のプラットフォームが導入・利用されていますが、データのサイロ化を解決するために、CDPはこれらのツール・システムと連携し、顧客データを1つに統合することが可能です。

ツール名 webアクセス解析ツール CRM / SFAツール EC / 購買データ管理ツール ID-POS
ツールの例 ・Adobe Analytics
・Google Analytics
・Ptengine など
・Salesforce
・Synergy!
・HubSpot CRM
・eセールスマネージャー
・F-RevoCRM
・kintone
・Zoho CRM など
・EC being
・Shopify
・EC-CUBE
・ecforce
・EPR(マクロミル)
・W2 Unified など
・スマレジ
・airレジ
・ORANGE POS
・POS+retail
・shopping Scan(True Data)
・ユビレジ など

関連:データマネジメントとは?DX・データ活用に必要不可欠な理由と実践事例

深い視聴者の理解

テレビ業界は今後、データを用いて顧客にあった広告の提案を行うことが求められています。広告収益の最大化や新たな広告枠の検討を行う際には、顧客情報をもとに視聴者を理解することが重要です。

CDPは、以下のようなBIツールとの連携が可能なため、収集・統合したデータを分析・可視化に利用できます。

また、CDPはMAやメール配信ツールなどコミュニケーションツールとの連携も可能なため、CDPで統合したデータをもとにセグメントを分けて顧客に対して適切なコミュニケーションを図る環境を作ることができ、顧客との関係性の構築および広告主のマーケティングの支援ができるようになります。

ツール名 BI / 分析ツール MA / メール配信 / その他施策
ツールの例 ・Tableau
・Looker Studio(旧Google Data Portal)
・Yellowfin
・Amazon QuickSight
・DOMO
・Redash など
・Marketo
・Marketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot)
・HubSpot
・Synergy!
・Karte
・DLPO
・LINE
・Repro
・WEBCAS email など

テレビ業界でのCDPの効果や施策例など、詳しくは下記の資料で紹介しています。無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください!

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