近年、顧客データ活用に取り組む企業の中でCDPの導入が増えています。CDPは顧客データを管理し、さまざまな分析や施策を行えるシステムですが、導入・活用を進めるうえで以下のようなお悩みを持つ企業が多いです。
- CDPの導入がなかなか進まない
- 導入しようと動き出したが、途中でプロジェクトが頓挫した
- CDPを導入したものの活用されない
本記事では、CDP導入が失敗する原因と、失敗しないためのCDP導入のポイントについて紹介します。
CDPの導入が失敗する原因
1. CDPを導入する目的が明確になっていない
CDPの導入が失敗する原因としてもっとも多いのが、 CDPを導入する目的が明確になっていないことです。
デジタルマーケティングすべてにおいて言えることですが、データを収集するのみでなく、取得したデータを分析し、事業に反映させることで効果が発揮されます。CDPにおいても、事業に必要な情報を得て、分析をした後には事業に対して何らかのアクションを起こし、その結果である顧客エンゲージメントの改善や売上の向上、新規サービスの展開が、CDP活用の最終目標になるべきです。
また、企業によって業種やターゲット、チャネル、取得しているデータなどが異なるため、CDPを活用してどのようなビジネスゴールを達成するのかは利用する企業によって異なるはずです。
しかし、いまだにCDPを導入すること自体を目的としてしまっているケースがあります。例えば「CDPで顧客データが統合されれば顧客理解が進む」「他社が取り組んでいるからデータ活用を始めたい」「CDPを導入すれば顧客体験の向上ができるのだろう」といった考え方です。
これは目的が定まっている状態とは言えず、このままCDPの導入を進めていくと、以下のような問題が起こります。
- スコープが定まらずプロジェクトの見直しが何度も入る
- 大手事例・他社事例を真似してツールを選んでしまい、自社にはフィットせずCDPを利用した分析や施策が進まない
- KPIや分析対象の項目が不明確で、意味のある分析ができない
- 後から足りないデータが判明し、期待していた分析や施策が実施できない
適切なCDPを選び、データを意味ある形で使えるように「自分たちはCDPを入れて何をしたいのか」「やりたいことのためにどのようなデータをCDPに入れておく必要なのか」などを具体的に定めることが重要です。
2.現状のデータの把握・管理方法が整理されていない
CDPを導入する目的を決めていざ蓋を開けてみたら、データの量や質が不十分なケースは多いです。例えば、以下のような問題はさまざまな企業で起こっています。
- Keyとなる会員IDやメールアドレスが存在しないため統合できない
- フォームの必須項目になっておらずデータ入力率が低い
- 分析・施策の条件に入っているがそもそもデータを取得してない
- ハイフンの有無などデータの形式が決めらておらず適切な状態で収集できない
またCDPはインプットするデータにもアウトプットするデータにも決まった型はありません。そのため、現状のデータの把握と管理方法、どのチャネルでどのようなデータを取得するかを整理することが大切です。
企業が持つデータは千差万別です。業界はもちろん、利用しているツールやシステム、またその設定が異なれば、異なるデータが存在するため、企業が顧客データ活用を行うためには、必ず企業それぞれでデータを見直す必要があります。データの調査や見直しの方法については、下記の動画で紹介しているため、あわせてご覧ください。
無料動画:顧客データ活用をはじめる前に知っておきたい「データ調査」の4つのステップ
3.適切な人材の不足・ベンダーの協力を得られない
CDPは顧客データの分析・施策の実施を支援するツールであるため、導入時にも運用時にもデータについて理解できる人材が不可欠です。スキルが不足していると、最初の目的を定めるところからつまずく可能性があります。例えば、以下のような状態でCDPの導入を進めようとしている企業は多いです。
- データ分析で、分析の対象項目は明確になっているが分析におけるノウハウがなく、良い・悪い部分に対して深堀りをする方法が分からない
- どのような施策・顧客とコミュニケーションを取るべきか分からない・設計できない
これでは、いくらCDPを入れたところで高度な分析を行っていくことはできないですし、導入の目的を明確にすることも、分析の結果を施策に生かすことも難しいです。
蓄積したデータをマーケティングにどう活用するのかノウハウがなければ、適切にPDCAを回せず投資対効果も得られません。投資対効果が得られないために、早々にCDPの運用を中止するといったケースもあります。そうならないためには、内部での適切な人材の確保や育成、外部ベンダーの協力を得る必要があります。
しかし、外部ベンダーについてはサポートの内容に幅があります。CDPベンダーの場合、CDP製品を提供およびツールの使い方のサポートがあっても、導入時の目的からデータの整理等も含めた要件の整理から初期構築の推進、導入ごの分析や施策実施など運用・活用サポートは行っていない、または他のコンサルティング会社や開発会社に別途依頼が必要となるケースがあります。
CDPベンダー・ツールを選ぶ際には、どれほどのサポートがあるのかきちんと確認することが大切です。CDPベンダー・ツールの選び方は、下記の記事をご覧ください。
関連:CDP導入ガイド:メリット・選び方・注意点を導入事例とあわせて紹介
4.連携がうまくいっていない
CDPは、ECサイトを管理する部署が持つ顧客のフォーム登録や行動情報、店舗を管理する部署が持つ各店舗で行った会員登録情報、マーケティングの部署が持つ顧客へのメール配信履歴、カスタマーサポートの部署が持つ顧客の問合せ履歴など、さまざまな部署の持つ顧客データを1つにまとめるシステムです。
多くの部署が関係することになるため、1つのプロジェクトチームを作り、そのチームを中心として、CDPの導入を進めていくのが効率的です。しかし、部門間の連携や認識のすり合わせがうまくいかないケースがあります。
例えば、各部署のユースケースを洗い出し、それぞれの部署での目的やゴールを踏まえてプロジェクトチームが優先順位を決めて進めていきますが、各部門の利害関係の衝突で優先順位が頻繁に入れ替わってしまい、プロジェクトが進まなくなることがあります。
また、他部署の保有しているデータを利用したい場合に、データを提供する部署のメリットや事業全体におけるプロジェクトの価値の合意を得られず、他の業務が優先されて協力を得られなかったり、なかなかデータをもらえない、といったこともよく耳にします。
これらを回避するために、CDP導入プロジェクトは1つの部署に閉じず、ゴールに向かって会社全体で取り組んでいくこと、実際に作業に取り組み始める前に社内調整を行うこと、また都度全員の認識を一致させ、誰が何をやるのか明確にしておくことが重要です。
効果的なチーム体制については、下記の資料で紹介していますのであわせてご覧ください。
無料資料:顧客データ活用が進まない6つの原因と解決策のダウンロードはこちら
5.社内稟議が通らない
大企業ほど陥りがちな問題として、社内稟議が通らず見送りになってしまったり、承認が得られずいつまでもプロジェクトが進まないケースがあります。
よくあるのは、経営層にCDPが重要なものだと理解してもらえず予算を確保できないことです。また、担当者は明確にやりたいことがあり、そのために必要な機能を備えたCDPを選びたくても、承認者・経営層に目的が伝わり切らず、明確な理由なく大手のCDPや企業間での関係性でCDPが選ばれてしまう、などもあります。
担当者は、自社のデータ活用の目的を明確化し、それを達成するためにCDPが必要だということ、どのゴールに向かっているかということを承認者に伝え、組織全体で認識を合わせる必要があります。
また、承認者・経営層としては以下のような疑問を持っているため、担当者はこれらの内容を網羅した稟議書を作り、疑問に答えられるようにすることも大切です。
- なぜCDPを入れる必要があるのか
- 費用対効果はどれくらいなのか
- 導入にはどのくらい時間がかかるのか
- 導入によって逆に現場の負担が増えたりしないのか など
具体的な稟議書の作り方や、より詳しい経営層からの質問集、稟議を進めるうえでのポイントなどは下記の資料で紹介しています。
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6.最初から理想の状態を目指してしまう
CDP導入では、完璧なシステムを目指すあまり、導入初期の段階で複雑な要件をすべて満たそうと、最初から理想の状態を目指してしまう企業が多いです。
しかし、一度にすべての機能を実装しようとすることは、時間とリソースが大量に消費され、プロジェクトが進まなくなることがあるため、非常にリスクが高いです。また、初期段階での過剰なカスタマイズや機能追加は、後々の運用やメンテナンスに大きな負担をかけることになる可能性もあります。
CDP導入においては、理想の状態を見据えながらも、現状からのステップアップで解決できる、達成可能な領域からスモールスタートで進めるのがおすすめです。
まずはデータの統合と基本的な分析機能を導入し、段階的に高度な分析機能やパーソナライゼーション機能を追加していくことで、安定した運用を確保しながらシステムの拡張が可能となります。
失敗しないためのCDP導入のポイント
明確な目標を設定する
CDPの導入では、プロジェクトの目標を明確に設定し、その達成に向けたロードマップを作成することが大切です。あいまいな目標ではなく、具体的で測定可能な目標を設定することで、プロジェクトの進行状況が見えやすくなり、必要な調整を行うことができます。
まずは「顧客の購買履歴を分析してパーソナライズされたマーケティングによるカスタマーエンゲージメントの向上を目指す」「複数のデータソースを統合して顧客理解の深化を目指す」のように明確な目的を設定しましょう。
目的が決まったら、詳細な目標を設定します。目標の設定はSMARTの法則に基づいて立てるのがおすすめです。
- SMARTの法則
- Specific:具体的な、明確な
- Measurable:計測可能な
- Achievable:達成可能な
- Relevant:関連している
- Time-bound:期限が明確
SMARTの法則に基づいた目標の例としては「6か月以内に顧客満足度を10%向上させる」「1年以内に顧客理解を進めてLTV向上のきっかけを見つけ、2年以内に施策を実施しLTVを5%向上させる」のような内容が挙げられます。
さらに、目標達成に向けた具体的な行動計画を立てることも重要です。行動計画には、目標達成のために必要なタスクやリソース、担当者、期限を明示すると良いでしょう。
例えば、データクレンジングやデータ統合のプロセス、CDPの選定と導入、トレーニングの実施など、各ステップを詳細に計画します。これにより、各担当者が自分の役割を明確に理解し、効率的に業務を進めることができます。
目的や目標の立て方については、下記の資料をご覧ください。
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データの品質を確保する
CDPを導入する際には、高品質なデータを維持することが重要です。
CDPは全自動でデータ管理をするわけではないため、どこからデータを収集しているのか、異なるシステムから収集されたデータはそれぞれどのような形式や構造になっているか、どこにあるどのデータをCDPでの統合の対象とするか、などを把握・整理する必要があります。
さらに、CDP上で取り扱うデータフォーマットを決め、正しい形でデータを保管できるようにします。重複データや欠損データがある場合にはデータクレンジングを、同一顧客のデータが複数ある場合には名寄せも行います。
関連:データクレンジングと名寄せとは?正確な顧客データ管理のやり方
データの品質は、データ分析やコミュニケーションの精度に関わるため、CDPを導入する時だけ行えば良いのではなく、永続的に行なっていく必要があります。データを人が運用するシステムがある場合は、適切にデータを更新してデータの最新性を維持したり、定期的にデータの品質評価を行い、問題が発生した場合には迅速に対応することも大切です。
データ品質を確保するためのこれらの取り組みはCDP導入の成功を左右しますが、各データをどのように紐付けるかという部分については技術に関する知識が必要だったり、そもそもデータが取得できていない部分に関してはどのようにデータを取得できようにするのかの検討が必要だったりするため、社内で判断しきれない可能性があります。
特に自社やグループ会社で開発組織を持っていない場合に社内で完結するのは難しいため、システムベンダーの協力を得る形で進めると良いでしょう。
弊社EVERRISEでは、「データ統合アセスメントサービス」を提供しています。スムーズにデータを統合し、活用できる状態まで構築できるよう、データの整理や品質評価、プロジェクト計画の作成までサポートが可能です。データについてお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。
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適切な人材を配置する
CDPの導入を成功させるためには、適切な人材を配置することが重要です。
まずはプロジェクトの中心となるプロジェクトマネージャーを社内から選出し、配置しましょう。プロジェクトマネージャーは、CDP導入における全プロセスを統括し、チーム全体を指揮する役割で、進捗の確認や課題の早期発見と解決を行い、プロジェクトを円滑に進める責任を負います。この役割には、データ戦略に精通し、異なる部門との調整能力が高い人物が適しています。
また、CDP導入プロジェクトは、大きく4つのフェーズが存在します。
- 企画・戦略:理想形を描いたうえで、ユースケースの洗い出しをし、ビジネス要件を決めるフェーズ
- データ整理:データを調査し、目的に合わせてデータを集めるフェーズ
- CDP導入:データを収集・加工・統合するフェーズ
- 分析・施策の実行:各種マーケティングツールに連携し、当初の目的通りのことができるか確認するフェーズ
フェーズ1では、ユースケースを作成し、戦略を立てられる人材が必要であり、フェーズ2・3では要件に対するデータの整理・加工・統合ができる人材、フェーズ4ではCDPを使いこなし、分析・施策を行える人材が必要です。社内に適切な人材がいない場合、必要に応じて外部パートナーを利用するのがおすすめです。
特にユースケースを具体化するフェーズや施策の実行フェーズにおいてはマーケティングコンサル会社と連携したり、プライバシーポリシーの見直しをする場合はデータプライバシーのコンサル会社との連携も良いでしょう。また、CDPと既存システムを連携したい場合には、CDPベンダーと既存システムのベンダーとの相談・調整も行う必要が出てくるかもしれません。
CDP導入に必要な人材について分からない場合は、CDPベンダーに聞き、調整していく必要があります。
組織全体で協力する
CDP導入では、組織全体での協力が不可欠です。
特に重要なのが経営層の理解です。CDPの導入は1部門のプロジェクトに留まらず、組織全体のデータ戦略に大きく関わるものであるため、経営層がその重要性を認識し、適切な人材と予算を確保することで、プロジェクトの成功率が高まります。
CDP導入のプロジェクトチームは、経営層と、マーケティング・営業・情報システムなどの主要部門と密に連携を取っていくことが大切です。定期的にプロジェクトの進捗状況や課題、成功事例を共有することで、CDPの重要性とメリットが伝わり、積極的に協力する意識を持ってもらえるようになります。
また、CDPは組織全体で活用していくことができるシステムです。導入後は全社員に対するCDPの教育や研修を行うのがおすすめです。
CDPの利用方法やデータの扱い方についての理解を深めることで、データ入力の精度が向上し、一貫性のあるデータ管理が実現します。これにより、データ品質の向上とともに、CDPの効果を最大限に引き出すことが可能です。
自社に合ったCDP・ベンダーを選定する
市場にはオールインワン型のCDPから、特定の機能に特化したCDPまで、多種多様なCDPが存在し、それぞれに特長や機能があります。
各CDPのデータ統合能力、リアルタイム処理性能、管理画面のUI、セキュリティ機能、既存のシステムやツールとの互換性などを比較し、自社のビジネスニーズや目的にもっとも適したCDPを選定することが大切です。
また、コストも重要な要素です。CDPの導入・運用に要する費用は、月額数十万円程度から、高額なものでは100万円以上とツールにより大きく異なります。初期費用だけでなく、運用コストや拡張性といった長期的な視点でのコスト評価も必要です。使用する予定のない機能まで備えた、目的と見合わない高額なCDPを導入してしまうケースが多いため注意が必要です。
さらに、導入後のサポートやトレーニングが充実しているCDPベンダーを選ぶことで、スムーズな導入と運用が期待できます。ベンダーが提供するサポート体制がしっかりしていることは、問題が発生した際の対応や、長期的に運用していくうえで重要な要素となります。
関連:CDPの比較|人気のCDPタイプ・比較時に確認するべき12のこと
適切なCDPの選び方は、下記の資料で詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
EVERRISEが提供するCDP「INTEGRAL-CORE」
弊社EVERRISEでは、顧客データをノーコードで管理できるCDP「INTEGRAL-CORE」を提供しており、これまでTVerさまやキーコーヒーさま、hoyuさまなどを含め複数社の導入実績がございます。
本記事で紹介したように、CRMと組み合わせて利用することも可能です。
CDP「INTEGRAL-CORE」の機能や特長、ユースケース、実際の画面については、以下の無料資料で詳しく紹介しています。データ活用にお困りの際はぜひお気軽にご相談ください!