プライベートDMPを『開発無し』で作る方法
(※こちらの記事の内容は2015年10月27日時点のものであり、本文で紹介するサービス等は最新のものでない可能性があります。)
こんにちは、伊藤です。
今回は、プライベートDMPを『システム開発無し』で作る方法をまとめてみました。挑戦的なタイトルですが、ツールを組み合わせたり、設定したりする必要はあります。「開発無し=プログラミングなし」と読み替えていただければ幸いです。
それでは、どうぞ。
プライべートDMPを自作する意味
いくらプログラミングが不要だからと言って、必要ないものを作る意味はありません。
最初に「なぜプライベートDMPを自作するのか?」の意味を明確にしておきます。それを説明するには、プライべートDMPの機能をおさらいする必要があります。
プライべートDMPの機能とは?
プライべートDMPを簡単に説明すると
自社の顧客と潜在顧客のデータを貯めて、統合・分析し、利用するためのプラットフォーム
となります。
上記を満たすための機能が、プライべートDMPの機能であり、以下のようなものになります。
- 1.タグによりネット上のデータを取得する
- 2.購買・会員情報等を取り込む
- 3.1、2で取得したデータを統合・分析する
- 4.分析結果をセグメント化してプロモーション等に利用する
「MAツール」と似ていますが、それとは目的が異なります。どちらかと言うと、BIツール + ETLが一番近いシステムです。
BIツールのような汎用性は捨て、マーケティングに特化する形での統合・分析を提供し、各種プロモーション用のツールと繋がり易くなっているのが、プライべートDMPです。
(・・・という、個人的見解です!ご意見あれば、特に本業の方から是非。)
プライべートDMPで重要な事は?
分析結果をセグメント化してプロモーション等に利用する。
ここが最も重要な機能であることは、言うまでもありません。
プロモーションの効果を改善するためにも、仮説と検証を繰り返して、柔軟かつ高速にPDCAサイクルで回していく ことが重要になります。
なぜ自作するのか?
プライべートDMPを提供している事業社様は複数社あります。大体、月額10~30万円程度で利用できるものが多いようです。「まずは試しに利用したい」という場合であれば、自作する必要はありません。ただしそれらを本格運用する上では、足りない機能や過剰な機能はつきものです。その要望に応えるために、提供各社は「カスタマイズ」を用意しています。しかし、その事業社の空きリソース不足、システムの根幹なので修正が難しい、といった理由などから、すべての要望に応えてもらえないケースも多いはずです。
柔軟かつ高速にPDCAサイクルを回していくことを実現したいのであれば、先程挙げた4つのようなプライベートDMPのコア機能を、自社専用に作ってしまう事も選択肢の一つになります。とは言え、自作するのに時間がかかっては意味がありません。既存のクラウドサービスを組み合わせるだけで、お手軽にプライベートDMPが作れるのであれば、それが最高の答えになりえます。
コア機能に必要なもの
プライベートDMPの4つのコア機能を、もう少し詳細化してみましょう。
1.タグによりネット上のデータを取得する
タグによるデータ取得には、ビーコンを送る「タグ」と、ビーコンを受信する「サーバー」が必要です。さらにタグには、会員IDや購買IDを紐づけるためのカスタムパラメータなどを付与します。広告配信を行こなう場合は、ここでDSPとの同期も必要です。(場合によっては紐づけすら不要ですが、それは後述します)
2.購買・会員情報等を取り込む
購買情報、会員情報のCSVファイル(TSV、XML、JSON等)を、サーバーに取り込む口が必要です。専用の取り込みフォルダを用意しても良いですし、自社内のみであれば既存DBから直接取得しても良いです。
3.1、2で取得したデータを統合・分析する
SQLやロジックを組んで、サイトのログ・購買情報・会員情報などを高速に統合・分析する基盤を用意します。RFM分析、LTV程度であれば、SQLのみでもサクッと作りこめます。
4.分析結果をセグメント化してプロモーションに利用する
情報の統合・分析した結果を格納するDB(またはファイル)が必要です。それをメール配信に利用するには、そのメール配信サービスに合わせたリスト形式で出力します。広告配信で利用するには、DSPとのcookie同期処理を実施しておいて、そのリストをDSPへ渡します。(こちらも後述します)
各機能をどうやって実現するか?
ここで提示するのは、あくまで一つの案です。他にも様々な制作方法があると思いますが、簡単かつプログラミング無しで、ランニングコストも安く済むだろう案を記載してみました。
1.タグによりネット上のデータを取得する
タグとビーコンサーバーで、無料のものはありません(あったら教えてください!)。
一番簡単なのは、Googleアナリティクスのプレミアム(今後はユニバーサルアナリティクス)の生ログを、Google BigQuery に連携してしまうのが簡単です。当然開発無しです。
しかしこの方法では、毎月かなりのコストがかかります。よって、『開発無し』としましたが、タグとビーコンサーバーだけは、現実的には開発が必要です。
ただしタグに関しては、数行レベルの開発で済みます。ビーコン受信サーバーもそれほど難しいものではありません。人によっては数日でプログラミングが可能でしょう。
サーバ側の構成としては、nginx + Fluentd で、BigQueryにリアルタイムにログを流し込む方式が良いでしょう。
(なぜ、BigQueryかは後述します)
2.購買・会員情報等を取り込む
こちらもBigQueryを使用します。
まずは購買情報と会員情報のテーブルをBigQuery上に定義します。購買・会員情報が入っている既存のDBサーバから、CSV形式等でダンプします(日次や週次で抽出)。そしてそのデータをBigQueryにアップロードします。
自動化しない限りは、サーバー準備も開発も不要です。
3.1、2で取得したデータを統合・分析する
よほど複雑な分析をしない限り、基本的には『BigQuery上のSQLのみ』で統合・分析が可能です。その結果をCSVで出力することができます。
もちろん、サーバ準備も開発も不要です。
もう少し複雑な分析をしたい場合でも、API経由でSQLを投げ、結果データを別のプログラムで利用することができます。Google App Script(JSをラップしただけ)で、ちょっとしたロジックをサクッと作ってしまっても良いでしょう。
4.分析結果をセグメント化してプロモーションに利用する
3で出力したCSVデータが一つのセグメントになるかと思いますが、そのデータを加工するか、BigQuery上で出力項目を工夫すれば、メール配信サービスやDSPにそのまま投入することもできます。
この場合も、サーバー準備・開発は不要です。
なぜBigQueryなのか?
非常に単純な理由ですが、3つあります。
1.価格が圧倒的に安い
BigQueryはよほどのデータ量・分析量でない限り、月額数百円~数千円の利用料ですみます。利用停止中はデータをダウンロードしておいて、BigQuery上から消せば課金されません。
2.SQLライクで利用できる
ほぼSQLで書けるため、ほとんどの技術者やデータ分析官であれば、すぐに利用し始められます。クエリの結果をテーブル化して、再利用することも容易にできます。え?SQLもプログラミング?はて、何のことやら・・・。
3.管理が不要
始めるのも簡単、やめるのも簡単、利用中のメンテナンスもほぼ不要です。機能追加のテスト用にもう1台インスタンスを増やして・・・みたいなことも不要です。
タグでのDSP連携は場合によって不要
最近では広告配信の前に、タグによるID統合をしなくても、広告配信が可能になってきています。メールアドレス、電話番号をキーにターゲティングできるので、クライアントが集めた過去のデータを、そのまま最新のアドテクのターゲティングに利用することができます。
詳しくは、以下のニュースをご覧ください。
Facebook、メールアドレスと電話番号によるターゲティング広告を来週開始(2012年8月)
Googleがメールアドレスを入力すればその持ち主をターゲットに広告を表示可能な「Customer Match」を発表(2015年9月)
まとめ
いかがでしょうか?
プライベートDMPを作るというと、大きなシステム開発を想像されるかもしれませんが、プログラミング無しでも作れるものです。
どうしても自由にデータ加工したい、自由にカスタマイズしたいというニーズが強いのであれば、今回ご紹介したような方法もあるということです。また、簡易に様々なパターンを試した後に、本当に効果の高い必要部分だけを全自動化させるような開発を実施した方が、投資対効果が上がるのではないでしょうか。
・・・とは言え、まったくの新規設定を社内の人材で一から対応するのは大変でしょう。
初期設定の部分だけでも、弊社にご依頼いただければ、サクッと対応させていただきます!【PR】
追記1:2015/10/29
なんと偶然ではありますが、まさに『開発無しでDMPをつくる』実例をお書きになっていたという方からご連絡いただきまして・・許可をいただきご紹介させていただきます。
『BigQueryで初期費用ゼロ,開発ゼロでプライベートDMPを作る』
こちらも是非、合わせてご覧ください。
追記2:2017/06/19
ここまで「開発無しのプライベートDMP」をご紹介してきましたが、実際は開発に関する知識をそれなりに持っていなければ実現は難しいでしょう。
実はこの記事を書いてから1年半経ち、この度弊社にて「プライベートDMP」を開発いたしました!【PR】
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