本記事では、ユーザーへの最適化技術と深い関わりがあるDMPについて説明します。
DMPとは?
DMPとは「データ・マネジメント・プラットフォーム」の略称です。
DMPという言葉の定義が、やや曖昧なこともあって、人によって解釈が異なる場合があります。特に次の区別が重要です。
しかし概念としてのDMPは、大きくふたつに分けられる。ひとつは広告配信先のデータセラーとしてDMP、もうひとつは企業が自社でデータを格納するプライベートDMPだ。もうひとつの見方でいうと、広告だけのためのDMPと、広告配信も含むがもっと多くのマーケティング施策を最適化するためのDMPである。
引用:業界人間ベムRELOAD「DMPとは何か - 業界人間ベム」
このように、アド用のDMP(以後、アドDMP)と、プライベートDMPは別として考える必要があります。機能としては非常に近いので、一括りで語られることが多いのですが、ビジネスの利用目的が違うのでご注意ください。
DMPが管理するデータ
マーケティングデータを管理するのがDMPです。
狭義では広告出稿用のデータ、広義では商品開発や顧客育成に利用されるデータです。
DMPが注目されている理由
「ビックデータ!ビックデータ!」と騒いでいたIT業界が見つけた1つの答えでしょうか。
ビックデータをもうちょっと噛み砕いて説明すると「企業の持つ大量のデータを、属性による分析をかけて、その結果をもとに次のアクションに繋げる」というものです。
さらに、最近は個人情報をそのまま扱う事ができなくなってきています。よって、個人を特定しないで属性による分析を実施するビックデータは都合がよかったと言えます。
また、個人特定されていない情報は、基本的には企業の所有物で、自由に利用できます。
それらのデータを、企業横断でさまざまなデータと連携し、自社の活動を最適化することを考えたのが、DMPです。
DMPの機能
DMPの機能は「アイメディアドライブ」の記事に「7つの特徴」としてよくまとめられています。
上記ですべての概要が網羅されているとして、各機能カテゴリ別にざっくりまとめ直してみます。
- データ収集
- 自社サイト(提携サイト)訪問ユーザーのデモグラフィック情報を可視化
- 自社が保有している顧客情報(CRMデータ)やソーシャルメディア情報と連携
- Cookie同期
- トラッキングツールやリターゲティングタグなど、サイト内にあるタグの一元管理
- 各配信サーバとのIDの同期
- データ分析
- 特定のオーディエンスセグメントと類似しているデータを解析し拡張
- ユーザーのサイト閲覧や検索などの行動情報から興味関心を分析
- 第三者のデータと自社データを統合することで、より詳細な自社データ分析
- データ利用・提供
- 各チャネル(DSP、メール、LPO、etc)にデータを提供
- DMPの利用ユーザー間でオーディエンスデータを共有
以上を分かりやすくまとめてくれている図がありますので、こちらも紹介します。
「データストレージ」の部分が「1.データ収集」と「2.Cookie同期」にあたります。後の「アナリティクス」と「チャネル」はそれぞれ「3.データ分析」と「4.データ利用・提供」に該当します。
それでは、機能カテゴリ別の説明をしていきます。
1.データ収集
収集するデータは、主に2つあります。
ブラウザーに保持しているCookie情報(アドDMP、プライベートDMP両方で利用)
Cookie情報の集め方としては、DMPシステムの独自タグを発行し、それを各サイトに貼ってもらいます(現実的には、タグ管理システムの1つのタグとして入れてもらう)。
ここで重要なのは、とにかく沢山のCookie情報をさまざまな場所から集めるか、またはオーディエンスに特徴のあるデータを集めることです。
会員IDと紐付いた個人情報(主にプライベートDMPで利用)
会員IDと紐付いた個人情報の集め方としては、データフィードが一般的です。各広告主から顧客の基本情報、購買情報などを集めます。この際、データ利用(プロモーション用)のために、メールアドレスや住所なども集めます。
2.Cookie同期
Cookie同期させるデータは、主に3つあります(同期自体は2つ)。
集めたCookie情報と広告配信サーバのCookie情報(主にアドDMPで利用)
集めたCookie情報をデータ提供するために、広告配信サーバが保有するCookieと同期させます。これをしておかないと、のちの広告配信に利用できなくなります。この同期の際に、タグ管理システムなどが利用されます。
同期の方法は単純で、どちらかのサーバ(DMPか配信サーバ)でIDを発行したら、そのIDをもう片方に渡して管理する、という方法です。
集めたCookie情報と集めた会員情報(主にプライベートDMPで利用)
集めたCookie情報とデータフィードしてもらった会員情報とを同期させます。「CookieID 925番=会員ID 1023番」などと紐付けることで、のちに会員ごとのデータ分析をして、その会員属性の人たちに、広告配信するといった事が可能になります。こちらの同期方法は、やや面倒です。
会員情報を発行する広告主サイトには、ログイン機能がある場合がほとんどですが、そのログイン処理時にCookieIDと会員IDとを紐付ける処理を埋め込む必要があります。
3.データ分析
データの分析は、主に2つあります。
集めたCookie情報と行動からユーザーを拡張させる(主にアドDMPで利用)
効果が高いと特定できるユーザ数は限られているので、その行動に近い行動(サイト訪問履歴や検索履歴など)をもとに、似たようなユーザとして扱います。「似たようなユーザもターゲティング対象にする」ことをユーザ拡張と呼びます。
分析方法としては「接触媒体と行動パターン別にユーザーを括っていく」事が多いはずです。
集めた会員情報のセグメント化(主にプライベートDMPで利用)
デシル分析、RFM分析、クラスタ分析など、さまざまな計算手法をもとに顧客をセグメント化していきます。
この分析結果をどのように利用するかで、広告効果などが変わってくると言われています。
4.データ利用・提供
データ利用・提供方法は、代表的なもので3つあります。
他にもさまざまな利用方法がありますが、とりあえず体表的なものだけピックアップしています。
広告配信:DSP(主にアドDMPで利用)
データ連携しているDSPに、集めたCookieデータをもとに配信をさせます。
配信の仕組みは、各DSPによってさまざまかと思いますが、基本的には、配信ターゲティングにカスタムパラメータで、DMP側で付与したセグメント値を指定して配信させる、といった方式だと思います。
メールなどの個人特定配信:DM(主にプライベートDMPで利用)
会員情報に紐付いたメールアドレス宛にDMを打ちます。
メール機能だけであれば、基本的には既存CRM機能と、さして変わりはないのですが、外部サイトへの広告と連動させる事で、さまざまなバリエーションのプロモーションが展開できます。
サイト訪問時などのサイト最適化:LPO(主にプライベートDMPで利用)
サイト訪問時に会員ID別にサイトページを切り替えます。
LPOサービスとの連携は非常に単純で、訪問会員のセグメント情報をLPOに送ることで、そのセグメントにあったサイトに切り替えます。
DMPの活用がもっとも進んでいるのは広告
企業横断でマーケティングデータを利用できる場があるとしたら、何に使うでしょうか?
もっとも簡単な利用方法は、広告のターゲティングです。
例えば、マンション販売業者がDMPを利用する場合、「自社以外のマンション検索サイトに訪問したユーザー」を狙い撃ちしたいでしょう。また、上記以外にも「クルマ比較サイトに訪問したユーザで、小学生用品サイトに訪問したユーザー」などにも狙いを定めたいでしょう。そう言う事を可能にする場がDMPなのです。
データがどこまで開示されるかが、DMPの今後の課題
マーケティングデータはその企業の大事な資産です。むしろ、IT化が進んだ今では、最大の強みとも言えるでしょう。それを、ライバル企業に使われるかも知れないDMPに開放する訳には行きません。 この問題がネックとなり、まだ広く利用されていない状態です。
まずは、自社の内部データおよび自社で出稿した広告データをもとに、プライベートでDMPを実施するのが流行っています。
さいごに
いかがでしょうか?
最近はやりのDMPですが、ご理解いただけましたでしょうか?
EVERRISEでは、自社で蓄積したデータを活用するプライベートDMPや、データを提供するオープンなDMPの構築・カスタマイズも承ります。
またプライベートDMPの進化系である、CDP「INTEGRAL-CORE」の提供も行っています。
データ活用のための一歩として、ぜひEVERRISEへご相談ください。