2024.09.10

ダッシュボードの作り方|必要なスキルと開発手順、ダッシュボード構築でよくある2つの課題

ダッシュボードの作り方|必要なスキルと開発手順、ダッシュボード構築でよくある2つの課題

ビジネスにおいて意思決定を迅速かつ正確に行うためには、データの視覚化が欠かせない要素です。その中でも、BIツールのダッシュボードは、企業が持つ膨大なデータを活用し、経営戦略を強化するための有効なツールです。

しかし、BIダッシュボードを構築するためには、単にデータを並べるだけでなく、ビジネスの目標を理解したうえでの設計が求められます。

本記事では、BIダッシュボードを作るうえで必要なスキルから、構築するうえでのよくある課題、効果的なBIダッシュボードの作り方まで紹介します。

EVERRISEによるBIダッシュボード・レポート構築

弊社EVERRISEは、毎日数億~数十億件のビッグデータが発生する高負荷なデータを専門的に扱ってきた経験を活かし、現在はデータを中心に据えて、マーケティング領域をメインに、企業のIT環境の構築・運用、リアルタイムデータ処理に至るまで、包括的に支援しています。

創業より15年以上続けてきたシステム開発の技術を用いて企業の目的に合わせたBIツールの選定や実装、データ基盤との連携、カスタマイズしたダッシュボード構築などを行っています。

記事の後半で事例も紹介していますので、BIツールやデータの可視化に関してお困りのことがあればお気軽にお問合せください。

ダッシュボードを作るうえで必要なスキル

BIツールでダッシュボードを作る前に、必要なスキルを知っておきましょう。社内にいない場合は外部パートナーへの依頼や人材の採用を検討する必要があります。

ハードスキル

BIツール操作スキル

TableauやYellowfin BIなど特定のBIツールを操作するスキルです。BIツールのメイン機能は同じなので、1つのBIツールをある程度操作できれば、ほかのBIツールも操作できます。細かい設定、特にグラフの見た目の調整や権限設定などがツールによって方法や操作感が大きく異なる部分です。

BIツール環境構築スキル

BIツール導入時のシステム面での対応や、BIツールのソフトウェアが稼働するサーバーの運用・保守を行う技術です。

データパイプライン構築スキル

複数のデータソースからデータを収集し、必要なフォーマットに変換して、効率的にダッシュボードに反映できるようにするための一連のプロセスを設計・実装するスキルです。データを正確に取得し、ダッシュボードに常に最新の情報を反映するために必要です。

データベース環境構築・運用保守スキル

データベースのパフォーマンスチューニング、セキュリティ対策、データバックアップの実施など、システム全体を安定して稼働させるためのスキルです。データベースの信頼性と安定性を確保することが求められます。

SQLなどを用いたデータ抽出スキル

SQLなどを用いてデータベースからダッシュボードの目的に最適化されたデータを作成する技術です。クエリを書いて、必要なデータをフィルタリングし、ダッシュボードに適した形で抽出することが求められます。

ソフトスキル

ビジネス理解

ビジネスの目標や課題を理解し、それに基づいてダッシュボードを設計するスキルです。経営層や各部門のニーズに応じたダッシュボードを作成するために不可欠です。

ダッシュボード構築においては、エンジニアだけでもSQLを書いてデータ分析を行える人物だけいてもうまくいきません。正しくビジネスを理解して分析の目的をもとに設計して実行する能力を持つ人が必要です。

分析スキル

データを適切に解析し、その結果をもとにビジネスにとって有益な情報を引き出す技術です。BIダッシュボードが単なるデータの表示ツールにとどまらず、実際にビジネス戦略に反映するために不可欠です。

デザインスキル

データの優先順位を考慮したレイアウトの設計や、視覚的なバランスを保ちながら情報を効果的に伝えるためのグラフィックデザインのスキルです。ダッシュボード構築では、UXを考慮した設計が求められます。

ダッシュボード作成・構築でよくある課題

BIツールでダッシュボードを作る前に、多くの企業で起こっているよくある課題についても認識しておきましょう。

一番よくある課題は「ダッシュボードが使われなくなる」ことです。リリース後には使われていたのに、だんだん使われなくなったり、みんなが使えると思ったが使う人が限定されてしまう、さらに作った本人すら使っていないといったこともよく起きます。

なぜこのようなことが起きるかというと、大きく2つの問題に分けられます。

要件定義や設計の問題

1つ目は、要件定義や設計の問題です。

  • ダッシュボードを見ても課題が分からない・次に何をしたら良いか分からない
  • そもそもダッシュボードの目的が分かっていない
  • どんなデータが必要なのかあいまいなまま作られた
  • 誰がどのような業務で使うのか想定せずに作られた
  • データをグラフや表にしてダッシュボードに埋められてるだけ

このような状況は、ダッシュボードを作る前に関係者と目的をすり合わせておくことで解決できます。ダッシュボードを作った後に使い方のレクチャーをすれば解決する問題ではないため注意が必要です。

データの構造や運用・サポートの問題

2つ目は、データの構造や運用・サポートの問題です。

  • 使い方がよく分からず使わなくなった
  • ダッシュボードの指標の定義がわからない
  • 使い方を誰に聞けばいいのか、どこで調べればいいのかわからない

このような状況は、マニュアルや勉強会の開催で使われるようになる可能性が高いです。作って終わりではなく、どのように使えば良いかをレクチャーすることで、本当に使われるダッシュボードにすることができます。

また、以下のようなお悩みもよく挙げられます。

  • 動作が重く知りたいことを調べるのに時間がかかる
  • データの更新が止まっている
  • 追加したい機能やデータがあるけど反映されてない

この場合は、ツール・データ基盤の選定が重要になります。データの量や反映したいグラフの数によって、適切なシステムは異なりますので注意が必要です。さらに、データ更新の運用者も決めておきましょう。運用ルールで改善できます。

効果的なダッシュボードを作る5つのステップ

ダッシュボード作成・構築でよくある課題をふまえて、それらを回避しながら効果的なダッシュボードを作る方法を紹介します。

1.要件定義・ダッシュボードの種類の決定

ダッシュボードを作成する最初のステップは、目的とターゲットユーザーを明確にすることです。ダッシュボードを利用する人が誰なのか、利用する人のKPIは何なのかを整理しておく必要があります。

また、ダッシュボードにどのような情報を載せておくべきなのかも考えます。ダッシュボードの種類は大きく分けて3つあるため、どのダッシュボードが要件に対して有効か確認します。

モニタリング用ダッシュボード

モニタリング用ダッシュボードの例

モニタリング用ダッシュボードは、見るべき指標を観測できることが求められます。見るべき指標は業界や部門によって異なりますが、売上やコストといったKPIを設定しているものが中心になります。

モニタリング用ダッシュボードは、モニタリングが目的であるため原因特定までは求められません。状態を確認する健康診断のようなもので、現状や問題の有無を素早く診断できることが重要です。

部門別によく構築されるモニタリング用ダッシュボードの例は以下のとおりです。

部門 モニタリングダッシュボードの例
経営 ・主要KPI管理
マーケティング ・webサイト流入管理
・リード / 顧客管理
・顧客満足度評価
営業 ・売上管理
・営業活動管理
販売 ・来店管理
・在庫管理
製造 ・設備稼働管理
・異常検知
人事 ・従業員評価
・従業員満足度評価

戦略・方針立案用ダッシュボード

戦略・方針立案用ダッシュボードの例

戦略・方針立案用ダッシュボードは、原因特定までできることが求められます。モニタリング用ダッシュボードを健康診断とすると、戦略・方針立案用ダッシュボードは精密検査のようなものです。

特定のフィルタをかけたり、細かな粒度で指標を確認することで、売り上げが下がった理由・商談数が増えない原因などを解明するために用います。

部門別によく構築される戦略・方針立案用ダッシュボードの例は以下のとおりです。

部門 戦略・方針立案用ダッシュボードの例
経営 ・部門別ボトルネック抽出
マーケティング ・流入別コンバージョン分析
・リードクオリフィケーション
営業 ・受注分析
・営業プロセス改善分析
販売 ・顧客カルテ
・新商品の発売初動分析
製造 ・生産効率改善
・不具合要因特定
人事 ・従業員パフォーマンス分析
・定着分析

効果測定用ダッシュボード

効果測定用ダッシュボードの例

効果測定用ダッシュボードは、実行した施策の効果を確認できることが求められます。

モニタリング用ダッシュボードでも施策前後の傾向の変化を確認できますが、その傾向が施策によるものかどうかまでは分かりません。

また、戦略・方針立案用ダッシュボードでも確認可能かもしれませんが、施策の目的によって見るべき指標や見たい切り口は異なるため、効果測定用ダッシュボードを用意する必要があります。

2.ダッシュボード設計

どのようなダッシュボードを作るか決めたら、データを直感的に理解できるように分かりやすいレイアウトでダッシュボードを設計します。過度に色や装飾を用いると見にくくなるため、極力シンプルにしておくと良いでしょう。

適切なチャートやグラフを選択することで、データが視覚的に伝わりやすくなります。さらに、ダッシュボードがより使いやすくなるように、インタラクティブな要素も考えます。例えば、フィルタリング機能やドリルダウン機能を実装することで、必要な情報を柔軟に取得することができます。

ダッシュボードで表示できるもの

ダッシュボードの機能はツールによって異なりますが、多くのBIツールのダッシュボードで表示できるものを紹介します。

項目 内容
グラフ 折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフ、ヒートマップなど、データのトレンドや分布を視覚的に表現することができます。
テーブル・表 データの詳細を表示するための表形式の情報です。
カード・タイル 売上高、利益率、顧客獲得コスト、サイト訪問者数などKPIを表示するのに便利です。
フィルターパネル ドロップダウンメニュー、チェックボックス、スライダーなど、データを特定の条件で絞り込むために使用します。
テキストブロック・リンク・ボタン ダッシュボードの説明やデータの解釈、注釈などを表示するために使用します。また、外部のwebページやレポートなどのリンクを入れることも可能です。
画像・動画・アイコン 関連する画像や視覚的なアクセントとしてのアイコンを表示できます。また、データの解説などの動画を埋め込むことでより使いやすいダッシュボードにしている企業もあります。
地図 地理的なデータを視覚化するためのインタラクティブな地図を表示できます。
アラート・通知 重要なイベントや異常値を強調するためのアラートメッセージを表示できます。

3.データ準備・インフラの設計

どのようなグラフや表を表示させるか決まったら、ダッシュボードに必要なデータを集めます。適切なデータが揃うことで、ダッシュボードが信頼性の高い情報源となり、意思決定をサポートする役割を果たします。そのためには、いきなりデータを集めるのではなく、どのようなデータを組み合わせれば正しく表示できるのかを考える必要があります。

例えば、商品Aの店舗ごとの月次の売上推移を折れ線グラフで表示させたい場合、日付データ・店舗ごとの売上データが必要であり、さらに商品Aでフィルターできる必要があります。また、売上といっても、消費税や手数料、送料などを足した金額で算出するのかなど、定義されている必要があります。

これらが洗い出せたら、実際にデータを集める段階に入り、どこからデータを利用するのかを検討します。MAツールやCRMツールなどからデータを持ってくることもできますが、データがバラバラだと重複や間違いが起きやすいため、DWHなどに連携してから、ダッシュボード用のデータマートを作成するケースが多いです。

データ統合の仕組みについては、下記の記事で詳しく説明しています。

関連:顧客データ統合に必要な仕組み・データレイク/ETL/DWH/データマートとCDP

4.ダッシュボード構築

いよいよダッシュボードの構築をしていきます。その際に重要となるのがデータ更新のルール化です。

ダッシュボードは日々更新してデータを確認したい企業が多いかと思いますので、自動更新がおすすめです。ただし、使用するツールによっては自動更新できない場合があるので、その際は誰がどのタイミングで手動でデータを反映させるのか決めておく必要があります。

また、ダッシュボードの更新頻度は、日次での更新が基本となることが多いです。前日分のデータが当日の始業前に反映されていると使い勝手が良いです。ある程度リアルタイムにデータを確認したい場合は、数時間に一度などに設定することも可能です。

5.運用・レビュー・サポート

ダッシュボードが完成したら実際に使用し、担当者やチームメンバーにフィードバックをしてもらうことが大切です。どの部分が使いやすく、どの部分に改善の余地があるかを把握し、フィードバックをもとにダッシュボードの修正や改良を行います。

また、ダッシュボードを常に最新の状態に保つため、継続的なメンテナンスと更新が必要になります。KPIが変わったり、より詳細な情報を見たくなったりすることも多々あります。このような修正や改良についても誰がどのタイミングで行うか事前に決めておくことが重要です。

弊社支援実績

EVERRISEがダッシュボード構築についてご支援した2社を紹介します。

日本テレビ

2023年に開局70周年を迎え、放送事業を中心にさまざまな事業を展開する日本テレビの事例を紹介します。

日本テレビでは、インターネットを通じて届けたコンテンツがどのように視聴されているかをデータで可視化するため、各コンテンツの視聴データ、広告やSNSから収集したデータだけでなく、会員情報などの個人情報や収支情報まで、多種多様なデータを集約し管理するための基盤を作るFACTlyプロジェクトを立ち上げました。

しかし、そのプロジェクトの中で、主に2つの課題がありました。

  • 多数のデータソースからデータ収集をしているデータ基盤のデータ管理とメンテナンスにコストがかかっていた
  • プロジェクト内の複数のチームにそれぞれ個別のパートナーが参画しており、開発したシステムの品質のばらつきやナレッジの分散が起きていた

これらを解決するため、EVERRISEは、データ基盤のメンテナンスや、安定稼働のためのインフラ改善などに取り組んだほか、BIツールのダッシュボード構築や、収支データの集計・可視化・分析システム、生成AIなどの社内システムツール開発などに貢献しました。

結果として、データ基盤をスリム化し、接続サービスや機能追加を継続的に行っても最適なコストでの運用が可能になりました。また、FACTly全体の品質の安定化への実現とナレッジの集約も行いました。

東京ガスリブソリューションズ

東京ガスの子会社で、暮らしや社会課題解決型の新規事業創造と運営を行う東京ガスリブソリューションズの事例を紹介します。

東京ガスリブソリューションズでは、子会社の事業の運営支援を行うとともに、技術革新や市場構造の変化を捉えつつ、既存の販売モデルとは異なる手法で素早く事業を創出・提供していく会社です。

しかし、東京ガスリブソリューションズと子会社の3社ではデータがバラバラに管理され、事業ごとに見られる経営指標なども異なり、事業を横断した経営状況の判断ができず、手作業で分析を行おうとしても必要なデータを集めるだけでも相当の時間がかかっており、そのコストも大きな問題になっていました。

これを解決するため、EVERRISEは、実験的に現状のデータの収集と統合を行い、本格的なデータ統合基盤構築時に活かすための簡易的なデータ統合の仕組みを開発支援しました。

現在はBIツールにデータを取り込み、グラフなどの見やすい形でのデータ表示により、データの可視化、分析の部分をさらに強化するよう取り組んでいます。

BIダッシュボードのカスタマイズ

弊社EVERRISEは、創業より15年以上続けてきたシステム開発の技術を用いて企業の目的に合わせたBIツールの選定や実装、データ基盤との連携、カスタマイズしたダッシュボード構築などを行っています。

BIダッシュボード・レポート構築

ダッシュボード・レポート構築可能なBIツール

さまざまなBIツールを取り扱っており、ダッシュボード・レポート構築が可能です。下記以外のツールであっても、BIツールやデータの可視化に関してお困りのことがあればぜひお気軽にご質問・ご相談ください。

  • Power BI
  • Tableau
  • Amazon QuickSight
  • Qlik Sense
  • Domo
  • Looker
  • Looker Studio
  • Yellowfin BI
  • Exploratory
  • Motion Board など
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