GA4(Google Analytics 4)とBigQueryを連携することで、RAWデータを扱えるようになり、データの長期保存が可能になるなど、データ利用の幅が広がります。そのため、多くの企業がBigQueryの利用を検討していますが、料金体系が分かりにくいという声をよく耳にします。
GA4とBigQueryの連携自体はデータ量が大きくなければ無料で利用できますが、BigQueryを利用する際にはデータストレージやクエリの実行に伴う料金が発生する可能性があります。
本記事では、GA4とBigQueryを連携した場合に発生する料金や費用を抑える方法、BigQuery利用時に料金以外に想定すべきコストとその解決策について紹介します。
※本記事は、2025年1月時点の情報をもとにしています。また、BigQueryの料金は、東京リージョンでの利用を前提に記載しています
なお、弊社EVERRISEでは、GA4のデータの高速抽出・AWS連携をスムーズにするツールとして「JetJunction」を提供しています。JetJunctionを利用することで、ユーザー単位ですべてのRAWデータを最短1分間隔で取得できるうえに、Amazon RedshiftおよびAmazon S3に出力可能なため、コストを大幅に削減できる可能性があります。詳細は、下記の無料資料をご覧ください。
GA4とBigQueryを連携する際の費用の考え方
GA4とBigQueryを連携する際に発生する可能性のある費用には、以下の2種類があります。
- GA4とBigQueryを連携する料金
- BigQueryを利用する料金
GA4とBigQueryを連携する料金
1つ目が、GA4とBigQueryを連携する料金です。基本的に、GA4とBigQueryは無料で連携できます。
GA4以前に提供されていたUniversal Analytics(UA)では、BigQueryと連携しデータをエクスポートするために、有料版のUniversal Analytics 360(UA360)を契約する必要がありました。しかし、GA4では無料版でもBigQueryとの連携機能が提供されています。
ただし、データのエクスポート方法やデータ量によっては、料金がかかる可能性があります。
GA4ではデータをBigQueryにエクスポートする方法として、下記の2つが提供されています。
- バッチ処理:当日以前のデータをまとめて連携する
- ストリーミング処理:当日のデータをニアリアルタイムで連携する
GA4の設定で、これらの処理のどちらか一方、または両方を選択できます。両方を選択した場合は、バッチ処理が完了した時点で、ストリーミング処理でエクスポートしたデータが削除されます。
バッチ処理の場合、データエクスポートの料金は無料です。一方で、ストリーミング処理を選択した場合、0.05ドル/GBの料金が発生します。
また、無料版のGA4では、100万イベント/1日のエクスポート制限があります。この上限を超える場合、有料版のGA4であるGoogle Analytics 4 360(GA4 360)を利用するか、エクスポートするデータ量を調整して100万イベント以内に抑える必要があります。
BigQueryを利用する料金
2つ目が、BigQueryの利用にかかる料金です。BigQuery内にデータを保管する「ストレージ料金」とクエリの実行にかかる「コンピューティング料金」の2つが該当します。これらは、GA4からBigQueryにエクスポートされたデータの量や、実行するクエリの処理量に応じて料金が発生します。
ストレージ料金とコンピューティング料金には、データ量やクエリの処理量に対する無料枠が設けられているプランがあります。そのため、利用状況によっては無料で利用できるケースもあります。ただし、無料枠内に収めようと利用を制限しすぎると、十分な分析が行えず、期待通りの成果を得られない可能性があります。
ビジネスの拡大に伴い、データ量やクエリの処理量が増加し、無料枠を超える可能性は十分にあります。そのため、現在無料で利用できる場合でも、将来的に発生する料金を見据えて計画を立てておくことが重要です。
BigQueryの利用料金
多くの企業が想定しておく必要のあるBigQueryの利用料金について、下記の2つに分けて紹介します。
- ストレージ料金
- コンピューティング料金
BigQueryの料金体系については、Google Cloudの公式サイトでも紹介されています。
ストレージ料金
ストレージ料金とは、GA4からエクスポートしたデータをBigQueryに保管するためにかかる費用を指し、下記の2つによって金額が決まります。
- データのサイズ
- データの利用状況
データのサイズ
ストレージ料金を決める要素の1つに保存するデータのサイズがあり、算出方法は下記の2つがあります。
- 論理ストレージ:圧縮していない状態のデータのサイズを基準に料金を算出
- 物理ストレージ:圧縮後のデータのサイズを基準に料金を算出
どちらも毎月10GBの無料枠が設けられており、この枠内であれば料金は発生しません。
データの利用状況
ストレージ料金は、保存しているデータの利用状況によっても料金が異なります。料金の観点において、保存しているデータは利用状況に応じて下記の2種類に分けられます。
- アクティブストレージ:最後に読み取り、または書き込み操作されてから90日以内のデータ
- 長期保存ストレージ:最後に読み取り、または書き込み操作されてから90日を超えるデータ
頻繁に利用するデータに迅速にアクセスできるように設計されているため、アクティブストレージの料金は長期保存ストレージよりも高く設定されています。
データのサイズと利用状況の2つの要素をもとに、BigQueryのストレージ料金をまとめた表がこちらです。
料金 | |
---|---|
アクティブ論理ストレージ | 0.02ドル/GB |
長期保存論理ストレージ | 0.01ドル/GB |
アクティブ物理ストレージ | 0.04ドル/GB |
長期保存物理ストレージ | 0.02ドル/GB |
論理ストレージと比較して、物理ストレージは1GB当たりの料金が高く設定されています。ただし、物理ストレージはデータの圧縮率が高いため、データを圧縮することで論理ストレージよりも料金を抑えやすくなります。
コンピューティング料金
コンピューティング料金とは、データを集計・加工する際のクエリ処理にかかる費用です。
コンピューティング料金は、定額制の「BigQuery Editions」と従量課金制の「オンデマンド」の2つの料金モデルから選択できます。その中でも、BigQuery Editionsは予算やユースケースに合わせて、下記の3つから自社に適したプランを選べます。
- Standard
- Enterprise
- Enterprise Plus
BigQuery Editionsの3つのプランとオンデマンドの主な違いをまとめた表がこちらです。
モデル名 | BigQuery Editions | BigQuery Editions | BigQuery Editions | オンデマンド |
---|---|---|---|---|
プラン名 | Standard | Enterprise | Enterprise Plus | - |
料金体系 | 定額制 | 定額制 | 定額制 | 従量課金制 |
料金の基準 | 予約したスロット数 | 予約したスロット数 | 予約したスロット数 | クエリでスキャンしたデータ量 |
無料枠 | - | - | - | 1TB/月 |
スロット料金 | 0.04ドル/スロット/時間 | 0.06ドル/スロット/時間 | 0.1ドル/スロット/時間 | - |
長期利用割引 | - | ・1年:0.048ドル ・3年:0.036ドル |
・1年:0.08ドル ・3年:0.06ドル |
- |
スロット上限 | 1,600スロット | 1,000スロット | 1,000スロット | 1,000スロット |
主な利用可能な機能 | ・スロットの自動スケーリング ・Google 管理の暗号鍵 |
・Standardの機能 ・BigQuery ML ・BI Engine ・行、列レベルのセキュリティ |
・Enterprise の機能 ・顧客管理の暗号鍵 ・障害復旧 |
・Enterprise Plusの機能 |
SLA(可用性) | 99.9% | 99.99% | 99.99% | 99.99% |
BigQuery Editionsとオンデマンドでは、料金の基準が異なります。BigQuery Editionsの場合、クエリの実行時に必要なスロット(計算リソース)の数が基準となり、オンデマンドの場合はクエリでスキャンしたデータ量が基準になります。無料枠は、オンデマンドでのみ設けられており、毎月1TBまで無料で利用可能です。
BigQuery Editionsの3つのプランは、基本的に高額なプランほど利用可能な機能が増え、サービスの品質保証レベル(SLA)も向上します。オンデマンドモデルの利用できる機能やSLAは、一部を除きBigQuery Editionsの最上級プランであるEnterprise Plusと同等です。
なお、BigQuery Editionは、スロット数を自動的に調整するオートスケーリング機能が実装されています。この機能により、データ量やクエリの複雑さに応じて最適なリソースが割り当てられ、効率的にクエリを実行できるため、料金の最適化が容易になっています。
分析の頻度が低い場合やクエリでスキャンするデータ量が少ない場合は、オンデマンドモデルのほうが料金を抑えられる可能性があります。一方で、大規模な分析や高頻度の分析を行う場合、BigQuery Editionsモデルで適切なプランを選択したほうが、料金を最適化しやすいです。
GA4とBigQueryを連携する際の料金目安の計算方法
GA4とBigQueryを連携する際の費用の内、コンピューティング料金は実行するクエリによって料金が大きく異なるため、目安を出すのは難しいです。
よって、本記事では、ストレージ料金の目安の計算方法について紹介します。
具体例として、論理ストレージの料金体系を選んだケースを想定して計算します。GA4の公式ページでは、データ容量とGA4のイベント件数の関係について、下記のように説明されています。
1 GB は、Google アナリティクスのイベント約 60 万件に相当します(この数は、イベントのサイズによっても異なります)
引用:アナリティクスヘルプ「[GA4] BigQuery Export」
この数値と自社サイトのBigQueryにエクスポートする月間イベント数を参考にすることで、おおよその料金目安を計算できます。
例えば、webサイトの月間イベント数が600万件だった場合、月間のストレージの増加分は10GBになります。
毎月10GBまでがストレージ料金の無料枠であり、それを超えた分は0.01(長期保存論理ストレージ)〜0.02ドル(アクティブ論理ストレージ)/GBかかります。毎月一定で600万件のイベントデータをエクスポートすると仮定した場合、下記のような計算になります。
保管しているデータ量 | 料金 | |
---|---|---|
1ヶ月目 | 10GB | 無料 |
2ヶ月目 | 20GB | 2~4ドル |
3ヶ月目 | 30GB | 6~12ドル |
4ヶ月目 | 40GB | 12~24ドル |
5ヶ月目 | 50GB | 20~40ドル |
6ヶ月目 | 60GB | 30~60ドル |
7ヶ月目 | 70GB | 42~84ドル |
8ヶ月目 | 80GB | 56~112ドル |
9ヶ月目 | 90GB | 72~144ドル |
10ヶ月目 | 100GB | 90~180ドル |
11ヶ月目 | 110GB | 110~220ドル |
12ヶ月目 | 120GB | 132~264ドル |
1年間の合計 | 120GB | 572~1144ドル |
BigQueryで管理するデータは日々増え続けるため、データ量の増加に伴いストレージ料金も高くなります。そのため、見積もりの期間によって料金が大きく変動する点に注意が必要です。
また、上位の計算はあくまでも論理ストレージを選んだ場合であり、物理ストレージを選択した場合の料金は異なります。加えて、上記はストレージ料金のみの計算であり、コンピューティング料金が別途発生する可能性があります。
Google Cloudの公式サイト上にも、料金のシミュレーションができるページがあるので参考にしてください。
BigQueryの料金を抑える方法
BigQueryの料金を抑える方法として、下記の3つを紹介します。
- 無料枠内で利用する
- BigQueryにエクスポートするデータ量を減らす
- クエリを最適化する
無料枠内で利用する
BigQueryのストレージ料金やコンピューティング料金には、一部無料で利用できる枠が設定されているため、場合によってはBigQueryを無料で利用できる可能性があります。
ストレージ料金は、アクティブストレージ、長期保存ストレージの両方で、毎月10GBが無料枠として提供されています。コンピューティング料金については、オンデマンドモデルの場合、毎月1TBまでのクエリ処理が無料です。
ただし、無料枠を超えた分には料金が発生するため、保存するデータ量や分析の頻度を適切に管理する必要があります。
BigQueryにエクスポートするデータ量を減らす
GA4からBigQueryにエクスポートするデータ量を減らすことで、ストレージ料金を抑えることが可能です。
ストレージ料金は、GA4からBigQueryにエクスポートするデータの内、無料枠を超えた分が課金対象になります。よって、エクスポートするデータ量を調整し、BigQuery内に保存するデータ量を削減することで、ストレージ料金を抑えることに繋がります。
具体的には、GA4の管理画面の設定でBigQueryにエクスポートするイベントデータやデータストリームを限定できます。例えば、同一のGA4プロパティ内でwebサイトとアプリを運営している場合、アプリのデータをエクスポートする必要がないケースがあります。その際、GA4の設定を変更し、アプリのデータストリームをエクスポート対象から除外することで、データ量を減らして料金を抑えられます。
エクスポートしているデータを定期的に見直し、不要なデータが含まれていないか確認する体制を整えることは、ストレージ料金を最適化するうえで重要です。
クエリを最適化する
クエリを最適化することで、コンピューティング料金を抑えることが可能です。
BigQueryのコンピューティング料金は、オンデマンドモデルを選択した場合、クエリでスキャンしたデータ量に応じて課金されます。BigQuery Editionsモデルの場合も、クエリでスキャンしたデータ量が増えることで、効率的なデータ処理に必要なスロット数が増えます。そのため、スロット数の上限に応じたデータプランを選ぶ必要があります。
クエリを最適化し、スキャンするデータ量を調整することで、コンピューティング料金を抑えることに繋がります。
具体例として、スキャンするデータの期間を短縮することが挙げられます。例えば、日常的なモニタリングでは、数カ月分のデータのスキャンのみで問題ないケースが多いです。この場合にクエリを調整し、1年間分のデータをスキャンしていた設定を必要な期間のみに絞ることで、料金を抑えることができます。
モニタリングや分析の際に、どういったデータが必要か明確にすることで、クエリの最適化を実現可能です。
BigQueryと連携してGA4のデータを利用する際の料金以外のコスト
GA4のデータをBigQueryに連携する際には、直接的にかかる料金に加えて、そのほかのコストが発生する点にも留意する必要があります。
1つ目が、エンジニアのサポートにかかるコストです。
BigQueryにエクスポートしたデータを利用するためには、JSONデータを解析したり、扱いやすい形式に加工する作業が必要になります。そのようなデータ加工を行うためには、専門的な知識を持つエンジニアのサポートが必要であり、サポート体制を構築するためのコストが発生する可能性があります。
2つ目が、BigQueryを管理するためのコストです。
BigQueryを利用するためには、GCPを管理する必要があります。AWSをメインで利用している企業の場合、GCPの管理業務が追加で発生し、その分のコストがかかります。
GA4とBigQueryのデータ連携コストを削減するJetJunction
GA4とBigQueryのデータ連携コストを削減する方法の1つに、JetJunctionの利用があります。
JetJunctionとは、GA4のデータを簡単に抽出・集計できる、弊社EVERRISEが提供するツールです。GA4のRAWデータを扱うことができ、管理画面上で簡単にデータ加工ができるため、分析に必要なデータ加工コストを削減可能です。また、AWSなどGoogle以外のサービスにもデータを連携できるため、AWS環境をメインで利用している企業の場合、BigQueryの管理コストを削減できます。
料金面についても、イベント数やテーブル数に基づいた料金プランが用意されているため、BigQueryを利用するケースと比較して、コスト管理がしやすいです。
JetJunctionのより詳しい機能や特長、料金の目安については、以下の無料資料で詳しく紹介しています。
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GA4のデータを連携し顧客視点でのコミュニケーションを可能とするCDP
GA4はwebサイトやアプリのユーザー行動を分析するのに便利なツールです。しかし、分析の内容によっては、ほかのツールやシステムで収集したオンライン・オフラインのデータを統合し、利用することが必要になるケースもあります。
そのような場合に、オンライン・オフラインのデータを収集・統合し、一元管理するための基盤としてCDPを利用することが有効です。
CDPとは「カスタマー データ プラットフォーム:Customer Data Platform」の略称で、顧客に関するデータを収集・統合し、各マーケティングツールに適した形で加工・連携することができる、顧客データ活用に特化したシステムを指します。
関連:CDPとは?顧客データ活用に特化したCDPの機能とメリット、事例などの基礎知識まとめ
JetJunctionとCDPを利用することで、GA4のデータとほかの顧客データを組み合わせて分析できるようになり、分析の幅が広がります。また、CDPで組み合わせたデータを利用して、セグメントを作成し、分析・施策に利用することも可能です。
JetJunctionとCDPの連携によって、より正確に顧客を分析・理解できるだけでなく、シームレスに施策を実行できるようになり、顧客視点でのコミュニケーションが可能になります。
CDPとほかのツールとの違いやCDPの導入が増えている理由、各業界で収集できるデータの例について、下記の無料資料で紹介しているので、ぜひご覧ください。
EVERRISEが提供するCDP「INTEGRAL-CORE」
弊社EVERRISEでは、顧客データをノーコードで管理できるCDP「INTEGRAL-CORE」を提供しており、これまでTVerさまやキーコーヒーさま、hoyuさまなどを含め複数社の導入実績がございます。
CDP「INTEGRAL-CORE」はJetJunctionと連携でき、JetJunctionの加工データなどの機能を使いながら、CDPとしてのデータ収集・統合・加工・連携の機能も扱えるため、より顧客データ活用がしやすいシステムとなっています。
- CDP「INTEGRAL-CORE」の特長
- 顧客に関するデータをノーコードで統合
- 統合データをノーコードで加工・セグメントを作成
- 統合データを外部連携機能でBIでの分析やMAやCRMでのマーケティング施策に利用
- 国産CDP・自社開発システムならではの総合支援体制
- SaaSプランのみでなく、専用環境での提供も可能
CDP「INTEGRAL-CORE」の機能や特長、ユースケース、実際の画面については、以下の無料資料で詳しく紹介しています。データ活用にお困りの際はぜひお気軽にご相談ください!