2013年10月1日にエクスペリアンがAdTruthを買収($324M/約300億円)したことがニュースになりました。AdTruthはCookieが動作しない環境においてもトラッキングを実現する技術を持つ企業として有名です。
業界的にはビッグニュースでしたので、本記事ではCookie非利用化に向かう広告業界の流れについて説明します。
今後の流れはオーディエンスターゲティング
アドテックのレポートでも触れましたが、次のアドテクの流れは確実にオーディエンスターゲティングです。
ネット広告におけるターゲッティングの仕組みはさまざまな問題を含んでいて、ネットではことあるごとに話題になるテーマですが、大きな流れとしてもはや止まることはないでしょう。
オーディエンスターゲッティング2つの問題
集めたオーディエンスデータをもとに広告を配信したい場合、どうしてもやらなければならないことがあります。広告配信サーバのIDとオーディエンスデータのIDとの同期です。(IDとは、データを一意に判別するキーのことです)
この際、2つの大きな問題があります。それは「データを同期する手間」と「スマートフォンとの連携」です。
データを同期するには手間がかかる
一つひとつの広告配信サーバと、集めたオーディエンスデータを連携するのは、そこまで手間ではありません。しかし、広告配信サーバは無数にあります。それらすべてに対応するとなると、かなりの手間がかかることでしょう。
スマートフォンとの同期は難しい
広告もスマートフォン向けに出稿するのが当たり前になってきましたが、ターゲティング広告を配信するには、かなりやっかいなデバイスです。
オーディエンスを判別する根幹の技術は「Cookieターゲティング」ですが、この仕組みがスマートフォンではうまく動作しません。iPhone のデフォルトブラウザーである Safariは、3rd Party Cookieの受入れ設定がデフォルトでオフですし、ネイティブアプリに出ている広告にいたっては、そもそもCookieが利用できません。
2つの問題を解決するCookieを使わないターゲティング!
上記2点を解消するために、Cookieを利用しないでIDを判別するシステムが登場しました。
それが、最初に触れたAdTruth の保持している技術です。
この技術を使えば、基本的にすべてのブラウザー、端末を一意に判別できます。つまり、Cookieを利用せずに、Cookieターゲティングと同じことができるようになるということです。後は、オーディエンスデータをこのIDと同期させてしまえば、どの配信サーバ、どのデバイスでも利用可能となるわけです。
どんな技術で実現しているのか?
そもそもCookieを使った技術の場合、Cookie内にIDを保持させておくという単純なものです。Cookieが使えないという事は「IDを保持させることができない」と読み替えられます。そこで、IDが保持できないのであれば、毎回ID代わりになるものを利用しよう!という発想から生み出されたのが、この技術です。
技術の詳細は、各社公開していないので不明ですが、簡単に説明すると、さまざまな取得可能な要素を組み合わせて、端末を一意に判別するということらしいです。いわゆる、フィンガープリント技術ですね。
それでも残る深い問題
この技術は、個人を完全に特定する情報(スマートフォンのUDIDなど)を取得していないので、個人情報のセキュリティ保護の観点でも有効では?との話も上がってます。
ただし、個人的にはそんなことはないと思っています。
CookieにIDを持とうが、毎回IDを推測しようが、オーディエンスの行動履歴データは裏側に持つ必要があり、そのデータと何らかのタイミングで、IDが紐付いてしまえば同じことです。そんなことよりも、そもそもサイトの行動履歴データに秘匿性があるのか?という事を一般の方々に理解してもらうべきかと思います。
今後の流れは?
とても素晴らしいシステムだと思いますが、とは言え、今後必ずこのシステムが標準になるとは限りません。ID判別の精度がまだまだ甘いのと、利用料金次第というところでしょうか。
でも、どこかで一気にブレークスルーが起こりそうな予感はヒシヒシとします。今後が楽しみです。