今年の5月に入ってから発生している「広告SDKが原因でのAppStoreからアプリがリジェクトされる問題」ですが、少なからず関わっている身としては、当ブログでも言及しておきます。
騒動について
騒動の詳細については、以下のBlogを見ていただくとして、簡単に言うと「ウォール広告という種類が入った広告 SDK が、アップルの審査でリジェクトされる」ということらしいです。
◆アドネットワークの名指しリジェクトについてのまとめ【2015/05/25更新】
http://adthrow.info/archives/87
※現在は削除されているようです
◆名指しリジェクトの総まとめ、サーバースイッチはやめなさい。
http://adthrow.info/archives/116
※現在は削除されているようです
なぜ、リジェクトされたかも触れますが、簡単に言うと、AppStoreのレビューガイドラインに抵触した(AppStoreのランキングに似ているため)らしいです。
ガイドラインの詳細に興味がある方は、以下を参照ください。
◆App Store Review Guidelines(本家) https://developer.apple.com/app-store/review/guidelines/
◆Developer:リジェクトされないために App Storeレビューガイドラインの和訳 2014年最新版 http://www.sirochro.com/note/app-store-review-guidelines/ ※最新版からは乖離があるようです
この騒動があって
この騒動により、一部の業界関係者は、右往左往しております。
…と言うよりも、名指しリジェクトされた企業さまは大変な目にあっているかと思います。
広告SDK起因のリジェクト自体は、昨年からありました。その際にも、以下のような記事が書かれています。
◆Appleのアプリ内広告などに関する規約厳格化の続報。すでにリワード付き広告のリジェクトを実施中。 http://www.gamecast-blog.com/archives/65795607.html
ただし、ここまで大規模に、広告配信企業を複数を挙げて、一気にリジェクトしたのは初めてじゃないでしょうか?また、今回の件の騒動が大きくなった要因として、アップルの審査基準が曖昧ということが挙げられます。上記したように、たぶん「ウォール広告が原因」でリジェクトされたんだろうとなっていますが、本当にそれが原因とは正式発表されていません。(Appleの担当者と話した企業さまからは、これが原因と聞いていますが)
この辺の正解が分からず、アイコン広告もダメなのか?ブーストもダメなのか?などのさまざまな憶測がたちました。実際には、ウォール広告のみの範囲でリジェクトされたようなのですが、この結果、ウォール広告がメインの広告配信事業社さまは、かなり苦境に立たされたはずです。
今後どうなる?
恐ろしいことに、AppStoreのガイドラインを厳密に適用されると、広告を沢山貼っているような無料アプリに関しては、すべてがリジェクト対象になります。そうなってしまっては、スマホアプリ広告自体が成り立たなくなります。(スマホサイト広告は別です)
スマホと言えば、AndroidのGooglePlayもあるので、影響としては半分で済むのではないか?と思われるかも知れませんが、ブースト広告が効きやすいという理由から、広告費の比率は、だいぶ iPhone 側に膨らんでいます。場合によっては、ほとんどの広告費が AppStore 向けに使われています。
アイコン広告や、ブースト広告は完全に禁止されたわけではないようなので、Apple の動向を見つつ、上手く付き合っていく事になるかと思われます。
補足:ブースト広告とは
ストアのランキング上位にアプリを表示するために、短時間でアプリを大量にダウンロードを促すインセンティブ付きの広告です。非常に投資対効果のよい広告です。 詳しくは、以下のURLをご覧ください。
◆リワード広告、アフィリエイト広告、ブースト広告の違いを解説 http://dmlab.jp/web/new_web/web150516_1.html
リジェクトされない広告SDKにするためには?
Apple の審査基準に依存する問題なので、確実な正解はないかと思います。ただし、打開する案はあります。
そのためには、なぜAppleはウォール広告SDKを入れているアプリをリジェクトしているのか?を考える必要があります。
なぜリジェクトしたのか?
広告料のみで儲ける無料アプリをAppStoreで出しても、Appleには何の利益も産みません。
もちろん、スマホの 無料でアプリを楽しめる文化は、Appleにとっても重要で、それらを支える広告収益モデルを、完全に駆逐することはありえません。ただし、人気アプリにあやかり、劣化コピーされた無料アプリが沢山Storeにアップされても、意味がありません。
そして、そういうアプリには、ベタベタと広告が貼り付けられているケースが多く、沢山のアプリ広告を一括で行うことができるのが「ウォール広告」だったのです。そのために、目を付けられたんだろうと、私は考えています。(そして、ブースト広告対策という面もありますが…)
配信事業社は何をすべきか?
無料劣化コピーアプリ自体を抑制することはできませんので、対処案は3点になります。
- アドフォーマットをIABやJIAA準拠とする
- 広告SDK発行の審査基準を変える
- 広告1impの価値をあげる
アドフォーマットを業界標準に見直すことで、Appleからのリジェクトを確実に避けられます。さすがに、業界が認めているアドフォーマットをリジェクトすることはありません。とは言え、業界標準以外でも効果の高いアドフォーマットは沢山あります(アイコン広告など)。その場合には、2に上げているとおり、広告SDKを発行する審査基準を厳しくすべきでしょう。
あまりに酷いアプリやそれらのデベロッパーには、広告アカウントを停止していく姿勢が大切かと思います。
3について、上記1と2を実施した場合に、下がってしまう広告効果を補うための施策です。「1imp の価値を上げる」と表現しましたが、正確には 広告との1回の接触価値を上げていくことを目指します。
具体的には、
- ネイティブ広告
- 動画広告
- リッチメディア広告
などを「RTBで狙ったオーディエンスに配信する」ことです。
広告枠を業界標準のフォーマットで配置するだけで、十分な収益性が確保できるのであれば、誤タップ狙いの枠や、広告枠だらけの画面といった状況を、回避することができるのではないでしょうか。
まとめ
個人的には、今回リジェクト対象になったウォール広告を悪だとは思っていません。また、Appleの今回の処置には、正直納得ができません。とは言え、どんな広告でも技術的にできるから「やって良い」かというと、そうではないとも思っています。
今回の件を、自浄作用を働かせる良い機会と捉えて、アプリ広告の世界が、より良い方向に向かっていけば幸いです。